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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:16.3.23)
第120巻 第3号/平成28年3月1日
Vol.120, No.3, March 2016
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日本小児内分泌学会推薦総説 |
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有阪 治 547 |
第118回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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細野 茂春 560 |
教育講演 |
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傷害予防に取り組む―変えられるものを見つけ,変えられるものを変える―
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山中 龍宏,他 565 |
教育講演 |
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浦上 達彦 580 |
原 著 |
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永井 貞之,他 594 |
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清水 彰彦,他 603 |
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関 奈緒,他 612 |
症例報告 |
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堀之内 智子,他 623 |
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竹下 佳弘,他 629 |
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中田 昌利,他 635 |
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星 雄介,他 642 |
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648 |
生涯教育・専門医育成委員会報告 |
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小児科医のための臨床研修指導医講習会:優れた小児科専門医の育成をめざして
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356 |
子どもの死亡登録・検証委員会報告 |
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パイロット4地域における,2011年の小児死亡登録検証報告―検証から見えてきた,本邦における小児死亡の死因究明における課題
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662 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 58 男児用水着のメッシュ生地による陰茎包皮の絞扼
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673 |
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677 |
専門医にゅーす No. 15 |
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680 |
男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合6 |
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681 |
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682 |
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683 |
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685 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2016年58巻1号1月号目次
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687 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2016年58巻2号2月号目次
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688 |
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690 |
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【原著】
■題名
神経性やせ症制限型における入院時血液検査の異常頻度
■著者
西神戸医療センター小児科1),同 精神神経科2) 永井 貞之1) 松原 康策1) 高宮 靜男2) 針谷 秀和1) 仁紙 宏之1) 岩田 あや1) 上月 愛瑠1) 川崎 悠1) 磯目 賢一1) 堀 雅之1) 田坂 佳資1) 深谷 隆1)
■キーワード
摂食障害, 神経性やせ症制限型, 血液検査, 生化学検査, 再栄養症候群
■要旨
本研究は1994年8月〜2015年3月に入院した神経性やせ症制限型(anorexia nervosa restricting type:ANR)62例を対象に,入院時血液検査の異常値の出現頻度と,AN重症度との関連性を検討した.血算指標では,白血球減少(<4,000 /μl),貧血(<12 g/dl),血小板減少(<15万/μl)を各々37%,16%,23%に認めた.生化学指標では,低血糖(<70 mg/dl)を21%に認めたが全例無自覚であった.肝機能異常(AST,ALT:>35 IU/L)を各々26%,34%に,高T-cho血症(>230 mg/dl)を53%に,高BUN血症(>20 mg/dl)を47%に認めた.これら4指標はANR重症度と有意な相関関係を認めた.ナトリウム値異常は0%,低カリウム血症(<3.5 mEq/L)を3%,低リン血症(<年齢標準下限)を13%に認めた.第3入院病日に肝不全を合併した1例は,入院時既に複数の重大な異常(AST 352 IU/L,ALT 328 IU/L,CK 700 IU/L,BUN 59 mg/dl等)が存在していた.多臓器に亘る異常値の併存は再栄養症候群の高危険因子と示唆された.本研究は我が国最大規模の小児ANR例を解析した研究で,これらの結果はANRの検査値異常の分布と入院適応を把握する上で重要な情報を提供する.
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【原著】
■題名
小児の気道感染症患者における維持輸液組成と血清Na値の後方視的検討
■著者
亀田メディカルセンター小児科 清水 彰彦 河村 誠次 植松 浩司 小川 優一 戸田 壮一郎 帯包 エリカ 市河 茂樹 上原 貴博
■キーワード
維持輸液, 医原性低Na血症, 低張液, 等張液, 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
■要旨
医原性低Na血症は,神経学的後遺症などの原因となる重篤な合併症である.低張液の使用が危険因子となるが,手術例や重症例での検討が多い.当院では2008年度より,維持輸液を等張液に変更した.血清Na値から,等張液が低張液と比較し安全であるか検討した.2007年4月〜2010年3月に気道感染症で当院に入院した生後1か月〜18歳の患者331例を検討した.入院時正Na血症は241例であった.低Na血症の発症は,等張液投与133例中の7例(5.3%),低張液投与108例中の9例(8.3%)で,有意差は認めなかった.等張液投与の3例(2.3%)が高Na血症を発症し(p=0.12),3例全例が基礎疾患を有していた.入院時低Na血症は90例であった.入院後も低Na血症が遷延した症例は,等張液投与54例中6例(11.1%),低張液投与36例中6例(16.7%)で有意差は認めなかった.等張液投与例では,低張液に比較して有意に血清Na値の上昇幅が大きかった.等張液投与例の7例(13.0%)が低K血症を発症し,有意に多かった(p=0.03).等張液と低張液で,入院後の低Na血症の発症率には,有意差を認めなかった.しかし,基礎疾患を有する症例では,有意に高Na血症の発症が多く(p<0.001),入院後も血清Na値の変化に注意が必要である.入院時に低Na血症を呈している場合,等張液の使用は,低K血症の危険因子となる.
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【原著】
■題名
園児,学童におけるインフルエンザ予防行動実践状況とその効果
■著者
新潟大学医学部保健学科1),佐渡市立両津病院小児科2),佐渡総合病院小児科3),新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野4),新潟県立大学人間生活学部健康栄養学科5),新潟青陵大学看護福祉心理学部6) 関 奈緒1) 岩谷 淳2) 岡崎 実3) 菖蒲川 由郷4) 齋藤 玲子4) 田邊 直仁5) 鈴木 宏6)
■キーワード
インフルエンザ, 園児・学童, 予防行動効果
■要旨
本研究の目的は,園児,学童におけるワクチン接種,手洗い等の予防行動実践状況とその効果,学級等閉鎖中の外出の実態を明らかにすることである.2009/10,2011/12の各インフルエンザシーズン終了後に佐渡市内の全園児・学童を対象として発症状況,予防行動の実施状況等に関する調査を実施した.回収率は91%(2009/10),94%(2011/12)であった.多変量解析では2シーズンともに『ワクチン接種』(オッズ比[95%信頼区間]:0.27[0.23〜0.31](2009/10),0.77[0.67〜0.89](2011/12)),『こまめな手洗い』(0.67[0.56〜0.81],0.71[0.59〜0.86])が有意な発症リスク低下を示した.一方『マスク着用』(1.41[1.14〜1.75],1.35[1.01〜1.80]),『うがい』(1.24[1.03〜1.50],1.21[1.00〜1.45])は発症リスクを増加させることが示唆された.有効性が明らかとなった『こまめな手洗い』の「実践(ほぼ毎回やった)」率は2009/10で23%,2011/12はさらに低下し19%であった.両シーズンとも学級等閉鎖中に児の約3割がショッピングセンターや塾など人の集まる場所に外出しており,予防行動の実践や閉鎖時の過ごし方に関する普及啓発が今後の地域の流行拡大防止対策として重要である.
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【症例報告】
■題名
自動体外式除細動器で救命しえたQT延長症候群の1歳児例
■著者
姫路赤十字病院小児科1),倉敷中央病院小児科2) 堀之内 智子1) 濱平 陽史1) 上村 裕保1) 高見 勇一1) 柄川 剛1) 高橋 宏暢1) 五百蔵 智明1) 久呉 真章1) 脇 研自2)
■キーワード
QT延長症候群, 自動体外式除細動器, 心室細動, 心臓突然死, 植込み型除細動器
■要旨
我々は心室細動発作で発症し自動体外式除細動器(以下AED)で救命しえたQT延長症候群の1例を経験した.
症例は1歳11か月の女児,意識消失・心肺停止を主訴に救急車で来院となった.救急隊接触時モニター上,心室細動でありAEDが2回作動,洞調律に復調した.脳虚血時間は20分程度と推察された.当院入院後,人工呼吸管理下,脳低温療法を施行した.低温療法終了・人工呼吸管理終了後の第4病日にも心電図上,QTc:Bazett補正537 msec,Fredericia補正487 msecとQT延長を認め,QT延長症候群と診断した.第5病日よりβ遮断薬の内服を開始した.以降β遮断薬の増量・家族への一次救命処置指導を行いAED持ち帰りの上,第30病日に退院となった.現在のところ神経学的後遺症は認めていない.
本症例はAEDの普及と年少児への適応拡大により後遺症なく救命しえた症例と考えた.年少児に対するAEDの普及により,これまでは突然死しており原因が不明であった致死性不整脈疾患の救命例が増える可能性が考えられ,症例の蓄積が望まれる.
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【症例報告】
■題名
両側顔面神経麻痺を呈したGD1b抗体陽性の小児Guillain-Barré症候群
■著者
大和高田市立病院小児科 竹下 佳弘 池田 聡子 植西 智雄 清益 功浩 砂川 晶生
■キーワード
両側顔面神経麻痺, Guillain-Barré症候群, facial diplegia with paresthesia, 抗糖脂質抗体, 小児
■要旨
GD1b IgG陽性の小児Guillain-Barré症候群の亜型facial diplegia with paresthesiaの1例を経験したので報告する.症例は5歳男児,先行感染の後,左側の顔面神経麻痺が出現し,その翌日には右側の顔面神経麻痺も出現したため当院小児科を紹介受診した.受診時は両側同時性顔面神経麻痺を認めた.下肢筋力低下と深部腱反射低下も認め,末梢神経伝導検査や髄液検査などの結果からGuillain-Barré症候群と診断し,免疫グロブリン大量静注療法を行った.顔面神経麻痺はゆっくり改善し,第59病日に消失した.両側同時性顔面神経麻痺は極めて稀な病態であるため,原疾患としてGuillain-Barré症候群の亜型であるfacial diplegia with paresthesiaを考慮し,抗糖脂質抗体などの検索が必要と考えられた.
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【症例報告】
■題名
β遮断薬内服で良好に経過したPHACE症候群
■著者
公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院小児科 中田 昌利 塩田 光隆 田中 邦昭 壹岐 陽一 熊倉 啓 水本 洋 吉岡 孝和 羽田 敦子 渡辺 健 秦 大資
■キーワード
PHACE症候群, 乳児血管腫, β遮断薬, 一過性脳虚血発作, 超音波検査
■要旨
乳児血管腫に対するβ遮断薬療法の有効性は確立している.血管腫に加え脳血管病変を合併するPHACE症候群に対してもβ遮断薬療法の報告がみられるようになっているが,脳循環障害の可能性を考慮して治療する必要がある.症例は3か月女児.急速な増大傾向と潰瘍形成を認める頸部血管腫を主訴に受診した.胸腹部MRIで後頸部・食道周囲・胸椎脊柱管内・胃背側・肝臓に多発性の血管腫様腫瘤を認め,後頸部腫瘤生検にてGLUT-1陽性の乳児血管腫と診断した.頭頸部MRIで右椎骨動脈低形成・右鎖骨下動脈起始異常・軽度大動脈縮窄・両側内頸動脈低形成を認め,PHACE症候群と診断した.気道狭窄症状はないものの食道周囲の血管腫による気管偏位を認めており,プロプラノロール内服を0.5 mg/kg/dayより開始した.Day4に1.5 mg/kg/dayに増量したところ,超音波検査で左総頸動脈・左中大脳動脈の血流低下を認め,増量3時間後に無呼吸発作が出現した.頭部MRIで異常所見を認めなかったが,一過性脳虚血発作の可能性を考慮し内服中止とした.Day12に内服再開し,以降1 mg/kg/dayまで漸増した.生後8か月時点で血管腫は退縮傾向で合併症なく経過している.脳血管奇形を合併するPHACE症候群は血管イベントのリスクをもつため,β遮断薬は少量からの漸増投与が望ましいと考えられた.
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【症例報告】
■題名
遅発性先天性横隔膜ヘルニアの臨床的検討
■著者
東北大学病院小児科1),独立行政法人国立病院機構仙台医療センター小児科2) 星 雄介1) 木村 正人1) 川合 英一郎1) 大軒 健彦1) 渋谷 守栄2) 渡邊 庸平2) 久間木 悟2) 貴田岡 節子2) 呉 繁夫1)
■キーワード
遅発性横隔膜ヘルニア, 先天性横隔膜ヘルニア, Bochdalek孔ヘルニア, 胸腔鏡下手術
■要旨
先天性横隔膜ヘルニア(Congenital diaphragmatic hernia;CDH)の多くは新生児期に重篤な呼吸障害で発症するが,新生児期以降に発症する場合には遅発性CDHと呼ばれる.当院では最近15年間に6例の遅発性CDHを経験した.診断時年齢は3か月から4歳の間と全例乳幼児期に発症を診断されていた.6例の男女比は5対1でほとんどが男児であり,発症様式は呼吸器症状が1例,消化器症状は2例のみで1例は無症状のまま経過し耳鼻科疾患の術前に撮影した胸部レントゲン写真で偶然異常陰影を指摘され診断に至った.また,Bochdalek孔ヘルニアが5例,Morgagni孔ヘルニアは1例であり大部分は左側のCDHであった.さらに,最近経験した4例のうち3例は胸腔鏡または腹腔鏡下手術を行うことができたが,残り1例は造影CT検査で脱出部の腸管虚血が疑われたため開腹手術を選択した.6例とも術後の合併症や再発なく経過は良好である.
CDHは新生児期のみならず,まれではあるが乳児期にも発症する.遅発性CDHの症状は非特異的な場合があり診断の遅れは時に致命的となり得るため注意が必要である.呼吸器症状または消化器症状だけでなく,原因不明の体重増加不良や哺乳不良など非特異的な症状を呈する遅発性CDHの存在を念頭におき日常診療を行うことが早期の診断や良好な予後につながると考えられる.
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