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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:16.1.18)
第120巻 第1号/平成28年1月1日
Vol.120, No.1, January 2016
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国際小児保健研究会推薦総説 |
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ミレニアム開発目標(MDGs)から我々が学んだこと〜母子保健課題から開発課題へ〜
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高橋 謙造,他 1 |
日本小児感染症学会推薦総説 |
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布井 博幸 8 |
原 著 |
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渡辺 正博 20 |
症例報告 |
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前田 靖人,他 26 |
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田部 有香,他 31 |
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宮垣 知史,他 37 |
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河田 宗一郎,他 43 |
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日馬 由貴,他 49 |
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濱田 匡章,他 55 |
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大平 智子,他 61 |
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今給黎 亮,他 66 |
論 策 |
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森脇 浩一,他 72 |
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地方会抄録(兵庫・東京・山形・長野・鳥取・山口・佐賀・長崎・石川)
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77 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合5 |
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2015年57巻6号12月号目次
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【原著】
■題名
小学校における水痘ワクチン1回接種の有効性とブレイクスルー水痘
■著者
すずかこどもクリニック 渡辺 正博
■キーワード
水痘, アウトブレイク, 水痘ワクチン, Breakthrough Varicella
■要旨
2013年12月から2014年1月にS小学校(児童数215人)で発生した水痘のアウトブレイクに対し発生状況とワクチン有効性について後方視的コホート調査を行った.アウトブレイク直前,既感染113人(52.6%),1回ワクチン歴のみ82人(38.1%),感受性者20人(9.3%)の状況であった.第一次流行では感染経路不明の5人が発症し,第二次流行で7人,第三次流行で2人発症しアウトブレイクは終息した.発症した14人中13人はBreakthrough Varicellaと,ワクチン未接種例の発症率が低いためワクチン有効率を求められなかった.アウトブレイク以前の発症も含めたワクチン有効率は48.5%(95%CI;33.8〜59.9)と低く,ワクチン接種後中央値3.4年(95%CI:2.9〜4.7)で発症していた.1回接種ではBV発症率は高く,BVの感染力も高いと考えられた.日本では2014年10月から3歳未満において水痘ワクチン2回定期接種が始まり水痘患者の減少が期待されるが,キャッチアップワクチン対策は行われないため小学校でのアウトブレイクが危惧される.また,今後BVの診断基準を確立し正確な発生動向調査が必要である.
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【症例報告】
■題名
症候性後天性サイトメガロウイルス感染症に高サイトカイン血症を併発した早産児例
■著者
聖マリア病院新生児科1),久留米大学小児科2),同 感染制御科3),長崎大学小児科4) 前田 靖人1) 岡田 純一郎1) 才津 宏樹1) 田中 悠平2) 柳 忠宏2) 升永 憲治3) 岩田 欧介2) 森内 浩幸4) 久野 正1)
■キーワード
後天性サイトメガロウイルス感染症, ガンシクロビル, ステロイド, 早産児, 高サイトカイン血症
■要旨
後天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症に高サイトカイン血症を伴った早産児に対して,ステロイドを含む免疫抑制・調整療法が有効であった症例を経験した.在胎28週,出生体重990 gの男児が日齢19にK. pneumoniaeによる敗血症性ショックを発症し,抗菌薬とハイドロコルチゾンの投与を行った.その後,難治性血小板減少と胆汁鬱滞型肝障害を認め,日齢30にreal-time PCR検査で末梢血全血中CMV DNAコピー数の増加(8.0×104 copies/mL)を認めたため,活動性後天性CMV感染と診断した.ガンシクロビル投与によりCMVの活動性はコントロール下にあったが,臨床兆候に改善がないことから,高サイトカイン血症による病態を疑い,日齢42にデキサメサゾンと免疫グロブリン大量静注療法を行い臨床徴候は改善した.後日,デキサメサゾン投与前の検体から,cytometric bead array法にてIL-6とIL-10の上昇を確認した.小児・成人領域ではCMV感染に伴う過剰な免疫応答の結果,高サイトカイン血症を併発することは広く認識されているが,新生児期にCMVを起因とする高サイトカイン血症を呈した症例は少ない.よって,我々の経験は,症候性後天性CMV感染の病態の一部にこのような免疫病理学的側面があることを示唆しており,今後治療戦略を立てる上で重要な知見になり得ると考えた.
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【症例報告】
■題名
Sjögren症候群合併妊娠での先天性完全房室ブロックと心房粗動の合併例
■著者
島根大学医学部小児科1),静岡こども病院循環器科2),同 新生児未熟児科3) 田部 有香1) 新居 正基2) 芳本 潤2) 藤岡 泰生2) 松尾 久実代2) 長澤 真由美3) 満下 紀恵2) 金 成海2) 田中 靖彦3) 小野 安生2)
■キーワード
先天性房室ブロック, 胎児心房粗動, Sjögren症候群, ペースメーカー
■要旨
Sjögren症候群や全身性エリテマトーデスの際に出現する自己抗体である抗SS-A/SS-B抗体は,胎盤を通過することにより0.2〜1.0%の胎児に先天性房室ブロックを引き起こすことが知られている.これらの自己抗体は無症状の女性にも存在し,一般女性における抗体保有率は1.0〜2.5%と報告されている.今回我々は,抗SS-A52-kDa抗体が陽性であったSjögren症候群合併母体において,在胎26週より胎児完全房室ブロックを発症し,28週より胎児心房粗動を合併した症例を経験した.心房筋への炎症を懸念し,デキサメタゾンの経母体投与を行い,在胎36週4日に娩出した.出生後も心房粗動が持続しており,cardioversionにより心房粗動は停止し,完全房室ブロックかつ接合部補充調律となった.心房粗動停止後の心拍数は90拍/分前後で,安定して経過したことから一旦退院とした.その後経時的に心拍数の低下と,心不全による体重増加不良を認めたことから,生後3か月でペースメーカー植え込み術(DDDモード)を施行した.しかし生後6か月時に心房粗動の再発を認めたため,ソタロール塩酸塩の内服を併用し,VVIモードにて管理を行っている.先天性房室ブロックに心房粗動を合併することは稀であり,これまで文献的に1例の報告があるのみである.
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【症例報告】
■題名
気道閉塞をきたしプロプラノロール療法が著効した声門下血管腫の乳児例
■著者
京都府立医科大学医学部小児科学教室1),国立病院機構京都医療センター小児科2) 宮垣 知史1) 家原 知子1) 宮地 充1) 桑原 康通1) 北 誠2) 細井 創1)
■キーワード
乳児血管腫, 声門下血管腫, プロプラノロール
■要旨
乳児声門下血管腫は,頻度は少ないが気道閉塞リスクが高く,迅速な診断および治療を要する.乳児血管腫の治療法として,プロプラノロール内服療法が第一選択となりつつある.我々は,プロプラノロール内服療法により気道閉塞を解除した乳児声門下血管腫の1例を経験したので報告する.症例は4か月男児.生後3か月より吸気性喘鳴,陥没呼吸を反復し,仮性クループと診断されデキサメタゾン内服で寛解再燃を繰り返していた.喉頭ファイバーで声門下に腫瘤性病変を認め,頸部造影CTで淡い造影効果を伴い,MRIではT2強調画像およびSTIR法で高信号となる腫瘤性病変を認めた.臨床経過および画像所見より乳児声門下血管腫と診断した.著明な低酸素血症を認めたため人工呼吸器管理を要し,デキサメタゾン継続の上プロプラノロール内服療法を開始した.プロプラノロール導入後6日目に抜管し,定期的な喉頭ファイバーで腫瘤の再増大がないことを確認した.退院後,生後18か月でプロプラノロール内服を終了とし,上気道狭窄症状の再燃や血管腫の再増大は認めていない.ステロイドや外科的切除など,その他の治療法に比べ,プロプラノロールは乳児血管腫の十分な縮小効果が期待でき,かつ副作用が少ない.しかし内服終了後に血管腫が再増大した症例の報告もあり,適切な投与期間は定まっていない.乳児血管腫の自然史に合わせ,生後18か月頃まで継続することが望ましい.
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【症例報告】
■題名
画像診断で脳腫瘍との鑑別に苦慮した多発性脳膿瘍
■著者
長崎大学病院小児科1),長崎大学原爆後障害医療研究所アイソトープ診断治療学研究分野2) 河田 宗一郎1) 伊藤 暢宏1) 北島 翼1) 舩越 康智1) 岡田 雅彦1) 井手口 怜子2) 森内 浩幸1)
■キーワード
脳膿瘍, 脳腫瘍, 拡散強調画像, リング状増強効果
■要旨
脳膿瘍の診断において頭部造影MRIは有用であり,典型例ではリング状増強効果を伴い,拡散強調画像で内部高信号を呈することが特徴である.しかし,稀ではあるが非典型的な画像所見を呈し診断に苦慮する場合がある.我々は意識障害で搬送され,頭部造影MRIを施行し拡散強調画像で内部低信号を呈した脳膿瘍の男児例を経験したので報告する.症例は生来健康な5歳男児.約6週前に他院にて複雑型熱性けいれんと診断されていた.当院初診2日前より徐々に嘔吐などの症状が出現し,意識障害が増悪し受診時はJCS I-2であった.頭部CTで左大脳半球に広範な低吸収域を認めたため,脳腫瘍疑いで当院に転院した.血液検査では炎症反応の上昇は軽度で,頭部造影MRIの拡散強調画像で内部低信号を呈する病変が両側大脳半球に多発し,一部にリング状増強効果を伴っていた.脳腫瘍を疑い放射線療法を施行する方針も検討したが,開頭生検術を行い脳膿瘍の診断に至った.各種培養検査では有意な所見はなく,各種精査でも明らかな基礎疾患の存在を認めなかった.メロペネムを約6週間投与し,独歩退院した.脳膿瘍は基礎疾患を有さない場合でも発症しうるため,頭部造影MRIでリング状増強効果を呈し急速に増大する頭蓋内腫瘤であれば脳膿瘍を鑑別診断に挙げる必要があり,診断に確信が持てない場合は生検を行うべきである.
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【症例報告】
■題名
著明な血小板減少を呈した三日熱マラリアの家族内発症例
■著者
富士市立中央病院小児科1),東京慈恵会医科大学小児科学講座2),東京医科大学病院感染制御部・感染症科3) 日馬 由貴1)2) 小沢 綾子1) 若林 太一1) 秋山 直枝1) 瀬川 孝昭1) 井田 博幸2) 水野 泰孝3)
■キーワード
三日熱マラリア, 小児, 血小板減少, 血液凝固異常, 渡航関連感染症
■要旨
インドから帰国後に,小児2症例を含む家族内発症した三日熱マラリアの3症例を経験した.日本においてマラリアの小児例は年間1〜2例程度の稀であるが,小児のマラリアは重症化の可能性があるため早期診断治療が極めて重要である.国際交流の増加や多様化に伴い輸入感染症増加が予想されるため,海外渡航歴のある小児の発熱に遭遇した場合,マラリアを鑑別に挙げることの重要性を再認識しなくてはならない.また,本症例は三日熱マラリアであるにも関わらず,全例に高度の血小板減少を認めた.近年,三日熱マラリアの重症化の報告が散見され,死亡例もみられるようになってきている.従来,良性の経過を辿るといわれていた三日熱マラリアにおいても,経過に注意が必要である.
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【症例報告】
■題名
反応性関節炎の経過中に若年性皮膚筋炎を発症した4歳男児
■著者
八尾市立病院小児科 濱田 匡章 橋本 直樹 内田 賀子 井崎 和史 道之前 八重 上田 卓 田中 一郎
■キーワード
反応性関節炎, 若年性皮膚筋炎, サルモネラ
■要旨
4歳男児.サルモネラ腸炎に罹患し,軽快後に四肢末端痛が出現し受診した.疼痛は自制内で持続し,さらに両手指関節腫脹を伴った屈曲制限が出現し,反応性関節炎と思われた.その後,ヘリオトロープ疹とGottron徴候が出現し,筋力低下症状も伴った.反応性関節炎に続発した若年性皮膚筋炎と診断し,ステロイドパルス療法を行い軽快した.サルモネラ感染後の反応性関節炎の経過中に若年性皮膚筋炎を発症した報告は皆無であるが,若年性皮膚筋炎では先行感染の関与が指摘されており,病因を考える上で興味深い症例であると考えられた.
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【症例報告】
■題名
シートベルト非装着やチャイルドシート不適正使用による小児頸髄損傷3例
■著者
熊本赤十字病院小児科 大平 智子 小原 隆史 武藤 雄一郎 平井 克樹 西原 卓宏 小松 なぎさ 右田 昌宏
■キーワード
後部座席シートベルト, チャイルドシート, 頸髄損傷
■要旨
小児脊椎・脊髄損傷は入院した小児外傷の1%といわれており,小児頸髄損傷は稀である1).頸髄損傷患者は気道確保・呼吸循環などの管理に難渋したり,重度の後遺症をきたすことも多い.今回我々は,シートベルト関連(後部座席シートベルト非装着2例,チャイルドシート肩ベルト外れ1例)自動車事故による小児頸髄損傷3例を経験した.1例が死亡,残り2人は人工呼吸器離脱,うち1例は右上肢の不全麻痺,もう1例は下肢の完全麻痺が残存している.全座席での適切なシートベルト着用(チャイルドシートも含む)が何より重要である.
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【症例報告】
■題名
異物の長期停留に伴う呼吸不全を契機に診断された先天性食道憩室
■著者
鹿児島大学病院小児科1),鹿児島県立北薩病院小児科2) 今給黎 亮1) 池田 尚弘1) 中野 緩奈1) 二宮 由美子1) 丸山 慎介1) 田邊 貴幸1) 橋口 祥2) 塗木 雄一朗2) 福重 寿郎2) 河野 嘉文1)
■キーワード
先天性食道憩室, 食道異物, 窒息, 呼吸不全
■要旨
【症例】症例は1歳2か月の女児.数か月前から食事摂取後に喘鳴を訴えていた.呼吸困難が悪化し気管内挿管され,CTで上縦隔に気管を圧排する腫瘤を認め当院へ紹介された.食道内視鏡検査を行い,食道入口部から下方2 cmの部位に食道憩室を認め,そこに一部嵌頓する異物を確認した.異物は玩具の一部であり,一方の先端が円盤状になった長さ3 cmのプラスチックで,4か月前に本児が遊んでいたことが確認された.異物除去後の食道には狭窄・拡張・粘膜欠損は認めず,食事摂取後の喘鳴も見られなくなった.除去後1か月時の上部消化管内視鏡検査とCTで食道憩室には変化がなかったが,気管の圧排は改善していた.【考案】本例は手術既往もなく,異物の停留位置が生理的狭窄部位と異なることから先天性の食道憩室と判断した.食道憩室に異物が停留し食道が拡張することで気管を圧迫し,食事によりそれが更に増強することで呼吸障害をきたしたと考えられた.基礎疾患のない先天性食道憩室は非常に稀である.慢性的な食道異物は呼吸器症状を主症状とすることが多く,難治性または反復性の呼吸器症状を有する場合は鑑別が必要である.【結語】小児の食道憩室は食道異物の長期停留に関連する場合がある.長期停留した異物の症例では食道憩室等の異常がないか食道の観察を行うことは重要である.
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【論策】
■題名
NICU長期入院児在宅医療移行の受入れに関する地域中核病院アンケート調査
■著者
埼玉医科大学総合医療センター小児科1),同 総合医療センター総合周産期母子医療センター2) 森脇 浩一1) 内田 美恵子2) 田村 正徳1)2)
■キーワード
新生児集中治療室, 在宅医療, 長期入院
■要旨
2013年の新生児医療連絡会施設調査ではNICUで呼吸管理を始め人工呼吸器のまま在宅医療に移行する乳幼児の増加が明らかになったが,その安全な移行のため地域中核病院小児科の協力の現状について日本小児科学会専門医研修施設525施設を対象にアンケートを施行した.結果は回答した420施設(回答率80%)のうち,「NICU長期入院児の在宅医療への移行のための受け入れ」が可能は86(回答施設の20%),条件付可は248(同59%),不可が84(同20%)であった.また「NICUで長期に呼吸管理されていた児が退院した後,当該施設が中心となってフォローアップして在宅医療支援する」ことが可能は125(同30%),条件付可は212(同50%),不可が77(同18%)であった.実際に長期入院児を小児病棟転棟後に在宅移行させた経験は182施設(同43%)にあった.多職種参加の退院調整会議は87%で実施されていた.各施設が困難を感じる点は,「財政的な裏付けが無い」「多忙で時間が取れない」「在宅移行の調整を行う職種が決まってない」等が挙げられた.以上の結果,NICU長期入院児の小児在宅医療への移行支援を積極的に行う施設は2000年の調査時より1.6倍に増加していたが,現場スタッフのボランテイア精神に支えられている面が大きく,更に充実させるには福祉,母子保健も含めて公的な経済的・人的支援が必要と考えられた.
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