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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:15.12.15)
第119巻 第12号/平成27年12月1日
Vol.119, No.12, December 2015
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日本小児循環器学会推薦総説 |
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稲村 昇 1695 |
国際小児保健研究会推薦総説 |
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神谷 保彦 1709 |
日本小児精神神経学会推薦総説 |
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小児医療における心理・社会的サービスの充実にむけて
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松嵜 くみ子 1719 |
第118回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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真部 淳 1728 |
原 著 |
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伊藤 康,他 1733 |
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小川 英輝,他 1742 |
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岩間 達,他 1746 |
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天笠 俊介,他 1753 |
症例報告 |
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明石 暁子,他 1758 |
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林 真由美,他 1765 |
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佐藤 祐子,他 1772 |
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1777 |
専門医にゅーす No. 13 |
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1786 |
専門医にゅーす No. 14 |
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1788 |
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1789 |
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1810 |
第2回入門セミナー「あなたの貴重な症例を英文で発信するために」報告
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1811 |
第2回乳幼児健診を中心とする小児科医のための研修会PartII報告
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1812 |
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1813 |
【原著】
■題名
Fabry病における疼痛発作の実態調査
■著者
東京女子医科大学医学部小児科 伊藤 康 小国 弘量 大澤 眞木子
■キーワード
Fabry病, 疼痛, 四肢末端痛, 小児期, 診断
■要旨
目的:Fabry病の発症は小児期でありながら,診断は病状が進行した思春期以降になることが多い.四肢末端の発作性疼痛は,小児期のFabry病患者の生活の質を著しく損なっている.我々は早期診断の手がかりとなる小児期の疼痛発作について調査した.方法:患者と家族の会の協力のもと,小児期の疼痛体験を調査票形式で調査し,疼痛発作の臨床的特徴をまとめた.結果:回答率は53%で,37名(男31,女6)より結果を得た.年齢分布は13〜65歳(平均37.4歳)で,手足の疼痛の発症年齢は,幼児期後半から学童期後半で全体の約90%を占めた.一方,診断時年齢は,学童期後半をピークとする10歳代が全体の約40%,成人後が約60%であった.疼痛の自覚的表現は,焼ける,刺す,鋭い,脈打つ様など様々であり,耐えがたいものであった.疼痛の主な部位は足部であった.主に,発熱,気温上昇,激しい運動,感染症,入浴などに伴う体温上昇が,さらに体温低下,天候の変化,疲労,精神的ストレスなどが疼痛の誘因に挙げられた.手足の疼痛発作に対して,感冒に伴う関節・筋肉痛,成長痛,リウマチ熱,若年性特発性関節炎,関節リウマチ,心因反応,詐病などと診断されていた.結論:小児の四肢痛において,体温上昇が誘因となり,焼ける・刺すような痛みを足趾や手指に認めた場合,男女を問わず,まずはFabry病を疑うことが重要である.
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【原著】
■題名
乳児期の乳腺炎5例
■著者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター総合診療部1),同 感染症科2),同 教育研修部3) 小川 英輝1) 余谷 暢之1)3) 船木 孝則2) 宮入 烈2) 石黒 精1)3) 阪井 裕一1)
■キーワード
乳腺炎, 乳腺過形成, 乳児, 膿瘍
■要旨
乳幼児期の乳腺炎は稀な疾患であり,生後2か月未満に多いとされるが,国内ではまとまった報告はない.2002年4月から2013年3月までに当センターを受診し乳腺炎と診断された乳児について,電子診療録を用いて後方視的に検討した.結果,該当症例は5例(男児2例)で,4例は生後2か月以上の乳児であった.体温が測定された4例中1例で38.0℃以上の発熱を認め,全例が乳頭周囲の発赤,熱感,腫脹,硬結を示した.3例は乳頭下に膿瘍形成を伴い,穿刺排膿を受け,全例から黄色ブドウ球菌が検出された.抗菌薬は4例に経口的に投与され,1例は入院して経静脈的に投与された.全例で後遺症なく治癒した.過去の報告と比べて,生後2か月以上の乳児が4例と多くみられたが,臨床経過は大きな相違を認めなかった.生後2か月以上の乳児でも乳腺炎を鑑別し,膿瘍形成の有無を検索する必要がある.
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【原著】
■題名
食道に好酸球浸潤を認めた小児好酸球性消化管疾患の臨床像
■著者
沖縄県立中部病院小児科 岩間 達 小濱 守安
■キーワード
好酸球性消化管疾患, 好酸球性食道炎, 食道好酸球増多症, PPI反応性食道好酸球増多症
■要旨
食道に好酸球浸潤を認めた小児好酸球性消化管疾患(Eosinophilic Gastrointestinal Disorders:EGID)6例の臨床像をまとめた.男児4例,女児2例で年齢は1歳児2例,年長児4例であった.反復性嘔吐は全年齢に共通して認めた.年齢別の特徴的な症状として幼児では成長障害,年長児では慢性腹痛を認めたが,嚥下障害,食物嵌頓といった症状は認めなかった.血液検査では末梢血好酸球増多や総IgE値高値を高い頻度で認めた.食道内視鏡所見は6例中5例で白斑や縦走溝といった所見を認めたが,所見に異常を認めなかった症例も存在した.診断名は好酸球性食道炎が4例,他のEGIDに合併した食道好酸球増多症が2例であった.治療への反応は概ね良好であった.小児EGIDは遷延する消化器症状の原因として重要な疾患であるが,その診断のためには組織検査を含めた消化管内視鏡検査が必須である.
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【原著】
■題名
小児頭部外傷における硬膜下血腫と頭蓋骨骨折の危険性
■著者
国立成育医療研究センター救急診療科1),同 放射線診療部2) 天笠 俊介1) 辻 聡1) 宮坂 実木子2) 野坂 俊介2)
■キーワード
小児頭部外傷, 硬膜下血腫, 頭蓋骨骨折
■要旨
小児外傷診療では,聴取された受傷機転とCT所見,重症度の乖離が経験される.小児頭部外傷におけるCT所見と,重症度・転帰,受傷機転の関係の検証を行った.
2009年4月〜2012年12月の間に当センターを受診した6歳未満児で,頭部CT所見に出血・骨折を認めた症例を後方視的に検討した.90 cm以下からの墜落/転落・転倒など軽度の受傷機転を低リスク,それ以外を非低リスクとした.出血/骨折所見のあった115例(月齢中央値7か月)を対象とし,硬膜下血腫(SDH)と骨折の有無で,骨折を伴わないSDH 20例,骨折を伴うSDH 18例,骨折を伴わないその他の出血所見7例,骨折を伴うその他の出血所見19例,骨折のみ51例の5群に分類した.骨折を伴わないSDHでその他の所見と比較し有意に重症度が高く,転帰が悪く,眼底出血も多かった(p<0.05).
骨折を伴わないSDHでは,重症度が高いが,聴取された受傷機転は軽度の例が多く,より高いエネルギーの受傷機転が示唆された.眼底出血も多く,虐待との関連もあると考えられ,今後,骨折のないSDHのメカニズムについてさらなる検証が必要と考えられた.
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【症例報告】
■題名
緊急修復術により救命した乳児特発性僧帽弁腱索断裂例
■著者
独立行政法人地域医療機能推進機構徳山中央病院小児科1),国立循環器病研究センター小児循環器科2) 明石 暁子1) 伊藤 智子1) 北野 正尚2) 小林 聡子1) 堀田 紀子1) 立石 浩1) 藤田 京子1) 阿部 忠朗2) 黒嵜 健一2) 内田 正志1)
■キーワード
乳児特発性僧帽弁腱索断裂, 急性左心不全, 僧帽弁閉鎖不全, 緊急手術
■要旨
症例は生来健康であった4か月の女児.微熱と軽い咳嗽,多呼吸を主訴に前医を受診した.血液検査で炎症反応の上昇を認めたため,原因精査目的で当院へ紹介され,第4病日に入院した.入院時は尿路感染症として加療されたが,哺乳不良,多呼吸が増悪した.第4病日に軽微な心雑音が聴取されたがその後第7病日まで心雑音は指摘されなかった.第8病日に著明な収縮期雑音が聴取され,顔色は蒼白で,冷汗を認めた.心臓超音波検査で左室の拡大は認められなかったが,僧帽弁後尖の逸脱を伴うIV/IV度の僧帽弁逆流および肺高血圧所見を認め,僧帽弁腱索断裂による急性左心不全と診断した.直ちに緊急外科治療が可能な施設へ搬送した.緊急で人工腱索を用いた僧帽弁腱索形成術が施行され,救命された.乳児特発性僧帽弁腱索断裂は,生来健康な乳児が突然に呼吸困難やショック状態などの急性左心不全を発症する疾患である.外科的治療が施行されない場合の生命予後は不良であることが多く,外科治療が可能な施設に速やかに搬送して治療されることが重要である.
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【症例報告】
■題名
冠動脈瘤を合併した若年性骨髄単球性白血病例
■著者
埼玉県立小児医療センター血液・腫瘍科1),同 感染免疫科2),同 循環器科3) 林 真由美1) 康 勝好1) 加藤 元博1) 荒川 ゆうき1) 森 麻希子1) 大山 亮1) 青木 孝浩1) 田中 理砂2) 菅本 健司3) 花田 良二1)
■キーワード
若年性骨髄単球性白血病, 冠動脈瘤, NRAS変異
■要旨
小児において,川崎病以外で冠動脈瘤を観察することは稀であるが,今回,若年性骨髄単球性白血病(juvenile myelomonocytic leukemia;JMML)に冠動脈瘤を合併した症例を経験した.
症例は1歳男児.発熱,皮疹とリンパ節腫脹を認め,心臓超音波検査で冠動脈瘤を認めたが,血液検査と臨床所見は川崎病としては非典型的であった.その後の経過で脳症,血球貪食症候群を呈した.単球増加にあわせて,自発的コロニー形成,GM-CSFに対する高感受性がみられ,末梢血にNRAS遺伝子変異が検出されたことから最終的にはJMMLに冠動脈瘤を合併したと診断した.
本症例では免疫応答異常が生じた結果,高サイトカイン血症が起こり,冠動脈瘤が形成され,その後の経過も高サイトカイン血症が関与したと推測された.
RAS変異を有し,免疫応答異常を伴ったJMMLでは,高サイトカイン血症により,冠動脈瘤を形成する可能性があるため心臓超音波検査を行う必要があると考える.また,血球貪食症候群や脳症など様々な症状が続発する可能性を想定する必要がある.
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【症例報告】
■題名
A群β溶血性連鎖球菌による骨盤周囲筋膿瘍例
■著者
旭川厚生病院小児科1),旭川医科大学小児科2),網走厚生病院小児科3),神奈川県立保健福祉大学4) 佐藤 祐子1)3) 坂田 宏1) 沖 潤一1) 高橋 弘典2) 長森 恒久2) 古谷野 伸2)4) 東 寛2)
■キーワード
腸腰筋膿瘍, A群β溶血性連鎖球菌, emm型別
■要旨
骨盤周囲筋膿瘍は幼児期以降の小児に多くみられ,一般に免疫不全を呈する基礎疾患や外傷を背景に発症することが多い.またA群β溶血性連鎖球菌(Group A Streptococcus:以下GAS)は咽頭炎から劇症型溶血性連鎖球菌感染症まで多彩な感染症の起因菌となる.我々は,GASによる骨盤膿瘍を呈した1女児例を経験したので報告する.
患者は1歳女児.発熱し近医でウイルス性感染症と診断されていたが解熱せず,発熱10日目に当科を受診し入院した.入院時の身体診察では特記すべき所見は認めないと思われたが,血液検査上強い炎症反応を認め,精査目的に施行した造影CTで骨盤内腔から仙腸関節,骨盤外の中臀筋にわたる巨大な膿瘍を認めた.この検査の後に発熱してから下肢を動かさなくなったという事実が判明した.翌日切開排膿術を施行し膿からGASが検出された.菌株はemm89型,発熱毒素遺伝子speB,C,Fが陽性であった.抗菌薬はmeropenemで開始し,GAS検出後ampicillinに変更した.薬疹が出現したため更にcefazolinへ変更して計4週間治療を行い,症状の再燃は無く機能的回復も良好である.
乳幼児における骨盤周囲筋膿瘍では症状の訴えが乏しい場合が多く,乳幼児における詳細な診察の重要性が示唆された.またGASの侵襲性が膿瘍形成に寄与していた可能性が考えられた.
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