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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:15.11.12)
第119巻 第11号/平成27年11月1日
Vol.119, No.11, November 2015
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日本小児循環器学会推薦総説 |
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Eisenmenger症候群の管理と肺動脈性肺高血圧治療の進歩
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犬塚 亮 1575 |
日本新生児成育医学会推薦総説 |
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小児科医としてHTLV-1母子感染にどのように対応すべきか
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板橋 家頭夫 1584 |
日本小児神経学会推薦総説 |
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小児期の不眠障害,概日リズム睡眠・覚醒相障害をとりまく睡眠関連病態の現状・問題点とその治療
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福水 道郎 1594 |
第118回日本小児科学会学術集会 |
会頭講演 |
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大薗 恵一 1604 |
教育講演 |
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市川 光太郎 1614 |
教育講演 |
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子どものこころの発達を見守る〜発達障害や愛着障害の脳科学研究〜
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友田 明美 1620 |
原 著 |
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堀 いくみ,他 1628 |
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田中 政幸,他 1633 |
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高橋 豊,他 1639 |
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岡田 賢司,他 1643 |
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井上 寿茂,他 1651 |
症例報告 |
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佐藤 啓,他 1659 |
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高橋 怜,他 1663 |
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國枝 佳祐,他 1669 |
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1675 |
男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合4 |
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1683 |
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「ワクチン接種と乳幼児の突然死に関する疫学調査事業」へのご協力のお願い
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1684 |
日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2015年57巻5号10月号目次
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1685 |
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1688 |
平成27年度公益財団法人小児医学研究振興財団 |
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1690 |
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市民公開講座 知っておきたい小児の感染症ABC!! ご報告
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1691 |
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1693 |
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1694 |
【原著】
■題名
胎児期脳室拡大児の診断・治療・予後
■著者
名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野 堀 いくみ 上田 博子 中島 葉子 伊藤 孝一 遠藤 剛 服部 文子 杉浦 時雄 長崎 理香 加藤 丈典 安藤 直樹 伊藤 哲哉 齋藤 伸治
■キーワード
胎児期脳室拡大, 出生前診断, 予後, 先天性サイトメガロウイルス感染症, 先天性代謝異常症
■要旨
胎児期脳室拡大は通常胎児超音波検査で発見されるが,様々な原因によって生じた臨床状態を表しており,原疾患により予後や治療方針が大きく異なる.本稿では名古屋市立大学病院において2004年から2013年までの10年間に胎児期に脳室拡大を指摘された40例の出生前検査・診断・出生後の管理・予後について検討した.内科的治療は先天性サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)感染症3例と有機酸代謝異常症(ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症)1例の合計4例(10%)で実施していた.外科的治療群,非介入群と比べ,内科的治療群では,出生時頭囲が小さかった.外科的治療としては,14例(35%)で脳室腹腔シャント術を実施し,内科的治療群,非介入群と比べて頭囲が大きかった.22例(55%)で原疾患の出生前診断または予測ができ,うち19例は胎児Magnetic resonance imaging(MRI)で診断した.予後としては8例(20%)が死亡しており,そのうち6例(15%)が1歳未満で死亡していた.有機酸代謝異常症や先天性CMV感染症は生後早期から治療を行うことで予後改善が期待できる.特に頭囲拡大が目立たない場合は,内科的治療が可能な疾患を考慮し,先天性CMV感染症の検索や詳細な家族歴を聴取することが重要である.
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【原著】
■題名
メチルフェニデート徐放剤治療中のてんかん発症例
■著者
東近江総合医療センター小児科 田中 政幸 木下 典子 吉田 大輔
■キーワード
メチルフェニデート徐放剤, てんかん, 注意欠陥多動性障害, 脳波, ローランド棘波
■要旨
メチルフェニデート徐放剤(OROS-MPH)治療前にてんかんのない注意欠陥多動性障害(ADHD)へのOROS-MPH治療中のてんかん発作発症率を調査することを目的として,診療録を後方視的に検討し,開始年齢,性別,処方日数,処方6か月未満での中止症例数,治療開始前脳波検査でのてんかん性異常波と治療期間中のてんかん発作について報告する.平成20年1月から平成27年3月にOROS-MPHを使用した男児127名,女児15名の計142名を対象とした.開始年齢は6〜14歳,処方日数は1〜69か月,処方6か月未満で中止が27名.治療前脳波検査を115名に行い,102名にはてんかん性異常波がなく,その全例にてんかん発作はなかった.13名にてんかん性異常波があり,ローランド棘波を呈する1名の内服17日目にてんかん発作があった.5年間OROS-MPH継続中の1名にもてんかん発作があったが,この症例には治療前脳波検査が行われていない.てんかん発作が出現した2名ともOROS-MPHを一旦中止後に抗てんかん薬併用下で再開し,治療期間中にてんかん発作はなかった.
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【原著】
■題名
小児喘息発作時におけるβ2刺激薬吸入前後の呼気NO値
■著者
KKR札幌医療センター小児科 高橋 豊 伊藤 舞 岩本 圭祐 大島 由季代 津曲 俊太郎 簗詰 紀子 縄手 満 吉岡 幹朗 鹿野 高明
■キーワード
小児喘息, 喘息発作, 気道炎症, 呼気NO値
■要旨
喘息発作で受診した小児喘息患者34例にβ2刺激薬を吸入し,前後で呼気NO値を測定した.34例中15例では肺機能を同時に測定した.呼気NO値は34例中26例(76.4%)で増加し,34例の平均値は吸入前値53.1±27.7 ppbから吸入後62.4±31.7 ppb(+9.3±13.7 ppb)と有意に変化した(p<0.0001).呼気NO値の変化率は最大呼気流量(PEF)の変化率との間には相関がなかったが(R=0.39, p=0.795),一秒率(FEV1%)の変化率とは有意な正の相関がみられた(R=0.765, p=0.002).呼気NO値は喘息発作時には末梢気道の閉塞機転により見かけ上低値を示す可能性があり,その評価には注意が必要である.
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【原著】
■題名
小児科医療従事者における百日咳血清疫学の前方視・縦断研究
■著者
福岡歯科大学総合医学講座小児科学分野1),田中こどもクリニック2),そお小児科クリニック3) 岡田 賢司1) 田中 正章2) 宗 稔3)
■キーワード
小児科医療従事者, 百日咳感染, 前方視・縦断研究
■要旨
背景:小児の百日咳の感染源として,小児科医療機関従事者の関与も推定されている.
目的:小児科医療機関従事者の血清学的な百日咳感染の実態を調査した.
方法:2008年11月から3年間,北九州市医師会で小児科を標榜する36医療機関の従事者をコホートとして前方視・縦断研究を行った.百日咳PT-IgG抗体価を3か月ごとに測定した.
結果:PT-IgG抗体価の評価は,初回の抗体価と北九州地区で百日咳流行が小さかった期間に採血した抗体価の差を算出し4分位での分散を分析した.低値群と高値群をPT-IgG抗体価5.2EU/mLで区分した.抗体価の有意上昇は,低値群4.25倍,高値群は9.72倍以上と定義した.初回採血時のPT-IgG抗体陽性率は,全体で28.3%であった.PT-IgG抗体価の有意上昇は,3年間12回の採血で7人8イベント(0.4%)であった.また,14日以上の咳症状を示した者のうち,PT-IgG抗体価の有意上昇を伴っている割合は2.6%(2/77),21日以上では5.4%(2/37)であった.
結論:小児科医療機関従事者におけるPT-IgG抗体価有意上昇による百日咳感染率は低かった.一方,抗体保有率は低く,百日咳感染を受ける可能性がある.小児科医療従事者は,とくに百日咳ワクチン未接種の生後3か月未満児への感染源とならないよう,諸外国同様,百日咳に対する免疫を付与することが望まれる.
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【原著】
■題名
小児科外来における咳嗽診療の実態調査
■著者
住友病院小児科1),国立病院機構下志津病院小児科2),東海大学小児科3) 井上 寿茂1) 佐藤 一樹2) 望月 博之3)
■キーワード
小児, 咳嗽, 疫学, アンケート調査, 外来診療
■要旨
咳嗽は外来診療において遭遇する機会の最も多い症状のひとつであり,近年小児の咳嗽診療への関心の高まりに対応してガイドラインが作成されている.しかし,わが国における小児の咳嗽についての疫学的検討や診療の実態を調査した報告は皆無に等しい.今回,咳嗽を訴え外来を受診した小児についての調査を2013年に4回(2月,5月,8月,11月)実施した.咳嗽を伴って受診する患者は,季節的変動を認めるが外来患者の約30%を占め,その約75%は6歳未満児であった.咳嗽の原因としては,重複はあるものの感冒(上気道炎)42.9%,気管支喘息27.4%,下気道炎26.6%,鼻・副鼻腔炎13.6%,クループ症候群1.7%でほとんどを占めた.咳嗽が出始めると2,3日のうちに受診する患者が多く,84.1%は1週以内に受診していた.咳嗽持続期間は,2週以内が63.1%と大半を占め,4週以上持続したのは4.1%に過ぎなかった.治療としては去痰薬が80%以上の患者に使用され,その他にβ2刺激薬,抗ヒスタミン薬,ロイコトリエン受容体拮抗薬,抗菌薬が診断名にかかわりなく頻用されていた.
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【症例報告】
■題名
孤立性動脈管瘤の新生児5例
■著者
富山県立中央病院小児科 佐藤 啓 藤田 修平 東山 弘幸 二谷 武 五十嵐 登 畑崎 喜芳
■キーワード
動脈管瘤, 新生児, 胎児, 手術, 経過観察
■要旨
動脈管瘤(Ductus arteriosus aneurysm:DAA)は,稀で重篤な病態を引き起こす疾患と考えられてきた.しかし近年,超音波検査の普及に伴い,偶然に発見されることも多くなり,無症状で自然消退する軽症例も多く存在することが分かってきた.今回我々は5例の新生児DAAを経験し,いずれも経過観察のみで自然軽快した.過去の文献と比較すると,最大径が大きいほど合併症を認める傾向がみられたが,最大径が10 mm程度の有症状例もあり,最大径のみではなく,結合組織疾患の家族歴の有無や瘤内血栓の伸展といったリスク因子も考慮する必要がある.今回の検討から手術を要するDAA症例は少なく,そのほとんどが無症状であることが予想されるが,有症状例では治療介入が必要な症例も存在し,閉鎖に至るまでは呼吸障害といった合併症の有無に注意して経過を見ることが望ましい.
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【症例報告】
■題名
感染性心内膜炎による大動脈弁閉鎖不全症に対するRoss手術例
■著者
東北大学医学部小児科 高橋 怜 木村 正人 川合 英一郎 大軒 健彦 呉 繁夫
■キーワード
感染性心内膜炎, 先天性大動脈二尖弁, Ross手術, Staphylococcus lugdunensis
■要旨
症例は16歳男性,検診で心雑音を指摘されたことはなかった.繰り返す発熱に対し近医で約2か月間にわたり抗菌薬を投与された.心雑音の精査のため施行された経胸壁心エコー検査で疣贅を伴った大動脈弁閉鎖不全症を指摘され,血液培養でStaphylococcus lugdunensisが分離されたことで感染性心内膜炎の診断に至った.ペニシリンとゲンタマイシンの投与により解熱が得られたが,大動脈弁閉鎖不全症による心不全の進行を認めRoss手術の適応を検討するため第50病日に当院へ転院となった.大動脈弁閉鎖不全症の進行に加え大動脈弁輪部周囲の破壊による心室中隔穿孔や完全房室ブロックの発症が危惧され第55病日にRoss手術が施行された.大動脈弁の組織像では菌体や炎症性細胞は検出されなかったが,同部位の16SrRNAシークエンスによりS. lugdunensisの存在が強く示唆された.術後は良好に経過し血液培養で陰性が確認されてから6週間の抗菌薬の経静脈投与を行い退院となった.
先天性大動脈二尖弁は比較的多い先天性心疾患であり,感染性心内膜炎のリスク因子である.若年者においても不明熱の鑑別に感染性心内膜炎を考えることは重要であり,血液培養を採取することの重要性を再認識するとともにその背後に無症候性の先天性心疾患が存在している可能性があることに気づかされた.
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【症例報告】
■題名
10q23欠失による若年性ポリポーシス例
■著者
松下記念病院小児科1),同 消化器内科2),大阪府立母子保健総合医療センター消化器・内分泌科3) 國枝 佳祐1)2) 内藤 岳史1) 森 潤1) 内藤 拓人1) 藤木 敦1) 中谷 拓也1) 森本 泰隆2) 酉家 章弘2) 惠谷 ゆり3) 石田 宏之1)
■キーワード
Chromosome 10q23 deletion syndrome, 若年性ポリポーシス, BMPR1A, PTEN
■要旨
Chromosome 10q23 Deletion Syndrome(OMIM #612242)は,精神発達遅滞,大頭症・特異な顔貌・心奇形などの多臓器奇形に加え,BMPR1AやPTENなどの若年性ポリポーシスの原因遺伝子を含む領域の欠失により,乳幼児期に若年性ポリポーシスを発症する症候群である.今回我々は,心室中隔欠損症,大頭症,発達遅滞を認め,1歳で若年性ポリポーシスを発症したChromosome 10q23 Deletion Syndromeの1男児例を経験した.生後1歳8か月頃から血便が出現し軽度の貧血も認めたため,上部・下部消化管内視鏡検査を実施し大腸に多数のポリープを確認した.ポリープの病理学的特徴と染色体Gバンドおよび高精度分染法で,10番染色体長腕にq23.2およびq23.32を切断点とする中間部欠失を認めたことから,若年性ポリポーシスを伴ったChromosome 10q23 Deletion Syndromeと診断した.Chromosome 10q23 Deletion Syndromeは,症例数が少なく,遺伝子型と臨床症状との関連も不明な点が多いため,今後の更なる症例の蓄積が望まれる.
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