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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:15.9.15)
第119巻 第9号/平成27年9月1日
Vol.119, No.9, September 2015
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日本小児救急医学会推薦総説 |
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保護者との協働による「小児初期救急医療」の質の向上を目指して
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市川 光太郎 1341 |
総 説 |
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辻 聡,他 1347 |
第118回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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水野 克己 1352 |
原 著 |
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藤原 信,他 1358 |
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名和 智裕,他 1366 |
症例報告 |
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久保川 育子,他 1374 |
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米倉 圭二,他 1380 |
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大澤 好充,他 1386 |
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加藤 昭生,他 1391 |
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地方会抄録(島根・栃木・山陰・山梨・東海・愛媛・福島・熊本・静岡・福岡・北陸・福井・鹿児島)
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1397 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 56 ミニカップゼリーのプラスチック容器の誤嚥による窒息疑い
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1436 |
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1439 |
日本小児連絡協議会重症心身障害児(者)・在宅医療委員会報告 |
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NICU・PICUから在宅に移行する過程の中間施設について(米国施設長Dr. W. James Silvaからの考察)
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1442 |
小児救急委員会(旧小児医療委員会)報告 |
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1446 |
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1451 |
第1回乳幼児健診を中心とする小児科医のための研修会Part II報告
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1452 |
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1453 |
男女共同参画推進委員会報告 |
子育てリレーコラム3 |
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1454 |
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2015年57巻4号8月号目次
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1455 |
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1458 |
【総説】
■題名
小児の転倒転落事故による口腔咽頭損傷のリスク因子
■著者
国立成育医療研究センター救急診療科1),同 集中治療科2),同 社会医学研究部3) 辻 聡1) 野澤 正寛1) 西村 奈穂2) 藤原 武男3)
■キーワード
事故予防, 歯ブラシ, 口腔咽頭損傷, 内頸動脈領域の穿通性損傷(CAI)
■要旨
【背景】小児の事故に関して,症例を集積しリスク因子を検討した報告は本邦では少ない.転倒転落事故による口腔咽頭損傷のリスク因子を検討した.
【対象と方法】2012年に当院救急センターを受診した,転倒転落事故による16歳未満の口腔咽頭周囲の損傷例.1 m以上の墜落や自転車転倒,交通外傷及び体育や部活動など運動時の受傷は除外した.診療録を用いた後方視的検討により月齢,性別,受傷時刻及び受傷機転,受傷部位,加療内容,転帰に関して検討した.検討に際して,受傷機転より口唇下顎周囲の直接受傷(単純挫創群)と異物による口腔咽頭の受傷(異物挫創群)の2群に分類した.
【結果】期間中に171例が対象となった(男児109例,女児62例,年齢中央値2歳2か月).単純挫創群は全例で最大10日間の外来治療にて治癒した.異物挫創群は頭部CTが13例に,全身麻酔下縫合処置が2例に,集中治療管理が3例に施行され,11例で最長20日間の入院加療を要した.受傷時刻に関して,異物挫創群では単純挫創群に比して午後7時〜9時台での受傷が有意に多く(p<0.05),特に歯ブラシによる受傷の約75%が同時間帯に発症していた.
【考察】入院症例の3/4は歯ブラシによる受傷であり,就寝前の事故に対して予防介入すべきと考えられた.
【結語】転倒転落による小児の口腔咽頭損傷では,就寝前の歯ブラシ事故を予防すべきである.
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【原著】
■題名
極低出生体重児退院時頭部MRIの側脳室面積と3歳時精神運動発達
■著者
県立広島病院新生児科 藤原 信 福原 里恵 羽田 聡 木原 裕貴 古川 亮 今井 清香 片岡 久子
■キーワード
新版K式検査, Magnetic Resonance Imaging, 脳室拡大, 精神運動発達, 極低出生体重児
■要旨
[目的]NICU退院時頭部MRIの側脳室面積と3歳時精神運動発達の関係を検討する.
[対象,方法]2006年1月から2010年3月までに本院NICUで出生当日より管理した出生体重1,500 g未満の児82例を対象とした.NICU退院時の頭部MRI T2強調画像冠状断の3断面において側脳室面積と脳実質最大横径を測定した.これらの測定値のうち断面が腹側側の測定値を前方,背側側の測定値を後方とした.これらの測定値と3歳時新版K式検査の3領域の発達指数(DQ)との関係を検討した.
[結果]側脳室面積は,脳実質最大横径,頭部MRI撮影時修正週数,頭囲とは相関関係を認めなかった.予後に影響を与える因子を調整因子として行った多変量解析において後方側脳室面積が広い方が,3歳時新版K式検査の姿勢―運動領域DQが85未満になる可能性が有意に高くなった.その他の測定値は,3歳時新版K式検査と関連性は認めなかった.後方側脳室面積が250 mm2以上の場合,姿勢―運動DQが85未満である感度は50%で,特異度は86%であった.
[結論]出生体重1,500 g未満の児においてNICU退院時頭部MRIにおける後方側脳室面積は,3歳時の運動機能を予測する有用なツールである.
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【原著】
■題名
手術を施行した血管輪・肺動脈スリングの8例
■著者
北海道立子ども総合医療・療育センター循環器科1),札幌医科大学小児科学講座2) 名和 智裕1) 横澤 正人1) 和田 励1) 長谷山 圭司1) 高室 基樹1) 春日 亜衣2) 堀田 智仙2) 畠山 欣也2) 堤 裕幸2)
■キーワード
血管輪, 肺動脈スリング, Multi-detector row computed tomography(MDCT), Kommerell憩室, 食道後部大動脈弓
■要旨
血管輪・肺動脈スリングは大動脈弓・肺動脈の形成異常であり,気管と食道が血管または索状物の輪の中に取り囲まれ圧迫症状をきたす.当センターで手術を施行した血管輪・肺動脈スリング8例を検討した.有症状例は,新生児期,乳児期の喘鳴の持続や繰り返す気管支炎,嚥下障害を契機に診断された.無症状例は,胎児診断や合併した先天性心疾患の精査の際に診断された.診断にはMulti-detector row computed tomography(MDCT)が有用であった.有症状例の大部分は術後速やかに症状が改善したが,気管軟化や気道狭窄の合併例は症状が遷延した.右側大動脈弓,左鎖骨下動脈起始異常合併例の場合は,一般に血管輪の症状や所見は出現しないとされているが,Kommerell憩室や食道後部大動脈弓を伴った場合には,圧迫症状や所見が出現する場合があるので注意が必要である.MDCT撮影時にはdimpleやそれに連続する索状物の存在,下行大動脈の走行にも注意すべきである.気管軟化や気管狭窄の合併は術後経過に大きく影響するため,気管支ファイバーでの評価が必要である.
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【症例報告】
■題名
海綿状血管腫と鑑別を要した右下腿原発乳児線維肉腫
■著者
神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野1),豊岡病院小児科・新生児科2) 久保川 育子1) 早川 晶1) 西田 浩輔1) 平瀬 敏志1) 山本 暢之1) 森 健1) 徳田 央士2) 上田 雅章2) 飯島 一誠1)
■キーワード
乳児線維肉腫, 新生児, 海綿状血管腫, 血管腫, 血管奇形
■要旨
症例は日齢11の男児.出生時に右下腿に鶏卵大の腫瘤を認めた.日齢1のMRIで海綿状血管腫が疑われたが,次第に増大したため,β遮断薬の治療目的に当科入院となった.入院時,右下腿に手拳大の赤紫色を呈する腫瘤を認めたが,弾性硬で可動性が不良であり,腫瘤の増大が急速なため,血管腫や血管奇形として非典型的と考え翌日に生検を施行した.その後,診断的治療としてβ遮断薬を開始したが無効であり,腫瘤は頭尾側方向へ進展し,日齢17には10 cm大に増大し股関節近傍まで及んだ.生検結果から肉腫と判明し,著明な高Ca血症を併発したため,緊急右股関節離断術を施行した.術後の病理組織では紡錘形細胞の増殖を認め,RT-PCRにてETV6-NTRK3融合遺伝子が陽性であり,乳児線維肉腫と診断した.術後は無治療だが,1歳5か月の現在も無再発生存中であり,発達に応じた理学療法を行っている.乳児線維肉腫は,外科的に切除できれば予後良好だが,腫瘍の急速な増大,出血及び高Ca血症を合併し時に致死的となる.また,診察・画像所見が血管腫や血管奇形に類似していること,これらは易出血性のため生検が躊躇される傾向にあり,早期の診断が困難な場合がある.血管腫や血管奇形の診察所見や臨床経過として非典型的な場合は,悪性腫瘍を疑い積極的に生検を行うことが重要と考えられた.
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【症例報告】
■題名
エンテロウイルスD68型が検出された急性呼吸不全と急性弛緩性麻痺を来した1例
■著者
独立行政法人国立病院機構呉医療センター小児科1),広島市立舟入市民病院小児科2) 米倉 圭二1) 白石 泰尚2) 津田 玲子1) 岡島 枝里子1) 児島 正樹1) 原 圭一1) 世羅 康彦1) 金子 陽一郎1) 宮河 真一郎1)
■キーワード
エンテロウイルスD68型(EV-D68), 急性呼吸不全, 急性弛緩性麻痺, Hopkins症候群
■要旨
北米では,2014年8月〜9月の期間に,過去に例のないエンテロウイルスD68型(EV-D68)の流行が確認された.重症呼吸器症状や急性弛緩性麻痺などの重篤な症状を呈した症例も報告されている.
今回我々は,急性呼吸不全で発症し,両下肢の急性弛緩性麻痺を呈した5歳女児例を経験した.急激な経過で呼吸不全に陥り人工呼吸管理を要した.気管内分泌物よりEV-D68が検出された.呼吸器症状の落ち着いた頃より,突然両下肢の弛緩性麻痺を呈し,免疫グロブリン大量療法,ステロイドパルス療法を施行したが麻痺の改善は得られなかった.
急性で原因不明の重症呼吸器疾患や弛緩性麻痺の鑑別疾患として,EV-D68感染症は重要と考えられる.今後,本邦においてもEV-D68感染症の動向に注目していく必要がある.
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【症例報告】
■題名
縦隔気腫を合併した反復性耳下腺気腫
■著者
伊勢崎市民病院小児科 大澤 好充 金子 真理 高野 洋子 前田 昇三
■キーワード
耳下腺気腫, 縦隔気腫, 嘔吐症
■要旨
症例は11歳の男児.周期性嘔吐症と片頭痛の既往あり.せき込み,嘔吐をこらえる動作を繰り返した後,左下顎部から頸部の腫脹,疼痛が出現し,近医耳鼻科より当院紹介となった.来院時の頸部および胸部単純X線で頸部の皮下気腫と縦隔気腫を認め入院となった.頸部から胸部のCTを施行したところ,両側の耳下腺気腫を認め,縦隔気腫と耳下腺気腫の合併と診断した.安静と抗菌薬投与で軽快し第9病日退院となった.その約一年後,嘔吐を契機に再び左耳下部から頸部の腫脹,疼痛が出現し当院を受診,単純X線で頬部から頸部の皮下気腫が疑われたため入院となった.頸部CT上,両側耳下腺内に気腫を認め耳下腺気腫の再発と診断した.なお,再発時には縦隔気腫はみられなかった.安静,補液,抗菌薬にて軽快し,第6病日に退院となった.
本例は気管支喘息等の基礎疾患や外傷歴がないため,嘔吐による瞬間的な口腔内圧の上昇が契機となり耳下腺気腫が発症し,皮下気腫から縦隔気腫へ進展したものと考えられた.
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【症例報告】
■題名
横紋筋融解症を来したToxic shock syndrome
■著者
公立昭和病院小児科1),国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター2),東京大学大学院医学系研究科発達医科学3),国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部免疫医療研究室4) 加藤 昭生1) 野田 雅裕1) 小林 匠1) 大場 邦弘1) 小鍛治 雅之1) 黒田 誠2) 齋藤 真木子3) 水口 雅3) 阿部 淳4)
■キーワード
toxic shock syndrome(TSS), 川崎病, 免疫グロブリン, CPT2(carnitine palmitoyltransferase 2)遺伝子多型
■要旨
Toxic shock syndrome(TSS)では川崎病様症状を呈する症例が散見される.今回我々は,川崎病様症状から急速にショック,多臓器不全を来したTSSの13歳男児例を経験した.来院前日からの発熱,眼球結膜充血,手足の紅斑で受診し,大量の下痢が出現した後,数時間の経過で血圧低下と意識障害,腎機能低下,DICなど多臓器障害をきたし集中治療を要した.γグロブリン投与,ステロイドパルス療法,低体温療法,血液濾過透析およびサイトカイン除去療法を開始したが,第2病日には血清CK 58.3万 IU/lと重篤な横紋筋融解症による両側下腿コンパートメント症候群を発症し,両側下腿減張切開術を施行した.支持療法が奏功し,最終的には前脛骨筋の萎縮を来したが,神経学的後遺症を残さず第51病日に独歩退院となった.
本症例は当初,川崎病様症状を呈しておりTSSと川崎病の鑑別は非常に困難であったが,便培養からTSST-1産生株のブドウ球菌を同定し,発症年齢や臨床経過からTSSと診断した.
また,本症例では熱感受性CPT2遺伝子多型を認め,重症度の増悪因子としての可能性が考えられた.
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