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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:15.7.21)
第119巻 第7号/平成27年7月1日
Vol.119, No.7, July 2015
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原 著 |
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渕向 透,他 1087 |
症例報告 |
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平出 拓也,他 1095 |
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川島 英志,他 1102 |
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高橋 努,他 1106 |
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松野 良介,他 1112 |
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堀川 慎二郎,他 1118 |
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濱本 学,他 1124 |
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萩原 友紀,他 1130 |
論 策 |
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船戸 正久,他 1135 |
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福間 真実,他 1140 |
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1146 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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1155 |
日本小児科学会災害対策ワーキンググループ報告 |
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東日本大震災での経験をもとに検討した日本小児科学会の行うべき大災害に対する支援計画の総括
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1159 |
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1179 |
男女共同参画推進委員会報告 |
子育てリレーコラム2 |
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1186 |
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1187 |
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1188 |
公益社団法人日本小児科学会 平成27年度定時総会議事要録
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1192 |
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2015年57巻3号6月号目次
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1213 |
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1215 |
平成27年度公益財団法人小児医学研究振興財団 |
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1216 |
【原著】
■題名
東日本大震災(2011)の被災地におけるロタウイルスワクチン無料接種事業の効果
■著者
岩手県立大船渡病院小児科1),岩手県立高田病院小児科2),岩手医科大学小児科3),みうら小児科医院4),エバラこどもクリニック5),久留米大学小児科6),大阪大学小児科7),大阪大学大学院人間科学研究科8) 渕向 透1) 大木 智春2) 石川 健3) 千田 勝一3) 三浦 義孝4) 江原 伯陽5) 岩田 欧介6) 松石 豊次郎6) 和田 和子7) 中村 安秀8)
■キーワード
東日本大震災, ロタウイルスワクチン, 被災地支援, ワクチン接種助成, ロタウイルス胃腸炎
■要旨
背景:東日本大震災のため岩手県気仙地域の生活環境は悪化し医療機関数も減少した.小児医療体制を維持するには,大胆な介入が必要だった.目的:2012年1月1日〜2014年3月31日まで行われたロタウイルスワクチン無料接種事業の有効性を検討する.方法:有効性の指標は5歳未満人口10,000人当たりのロタウイルス胃腸炎(RVGE)による入院患者数と救急外来を受診する胃腸炎(GE)患者数.RVGEによる入院患者数は事業のある気仙地域と事業のない3地域について比較した.救急外来を受診するGE患者数は気仙地域にある県立大船渡病院救急センター外来をRVGEが流行する1〜6月に受診した患者から調査した.調査期間は2009年1月1日〜2013年12月31日.結果:1)接種対象者数,ワクチン接種率は2012年367人,92.4%,2013年342人,95.6%.2)RVGEによる入院患者数は,気仙地域で震災前に比べて2012年41%,2013年84%減少した.2013年気仙地域のRVGEによる入院患者数は事業のない3地域に比べ有意に少なかった(P<0.001).3)救急患者数は震災前に比べ震災後に増加したが,GE患者は有意に減少した(2013年,P=0.008).結語:本事業は被災地支援策として有効だった.ロタウイルスワクチンの有用性が強く示唆され,今後わが国の母子保健事業への多大な貢献が期待される.
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【症例報告】
■題名
小児期発症の神経サルコイドーシスが疑われる2例
■著者
浜松医科大学小児科 平出 拓也 福田 冬季子 松林 朋子 石垣 英俊 朝比奈 美輝 田口 智英 宮本 健 緒方 勤
■キーワード
サルコイドーシス, 視神経脊髄炎, 肉芽腫性ぶどう膜炎脊髄炎, 免疫性多臓器炎症性疾患
■要旨
肉芽腫性ぶどう膜炎,視神経炎,脊髄炎を発症した2症例を経験した.症例1は6歳5か月時に歩行障害と直腸膀胱障害が出現,症例2は7歳11か月時にぶどう膜炎が先行した後,直腸膀胱障害が出現した.2症例ともに視神経炎を示し,角膜後面豚脂様沈着物と網膜周辺血管の白鞘化を呈する肉芽腫性ぶどう膜炎を伴っていた.脊髄MRIでは,脊髄のほぼ全長にわたるT2強調像で高信号,T1強調像で造影効果を伴う長大病変を認めた.2症例ともに神経サルコイドーシスを強く疑い,副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬投与により経過を観察している.サルコイドーシスは全身性肉芽腫性疾患であるが神経サルコイドーシスでは全身の所見が乏しく確定診断が困難である場合があり,重症度が高い場合には臨床症状や検査所見,画像所見から治療を進める必要がある.
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【症例報告】
■題名
臭化カリウム内服に伴う結節性臭素疹
■著者
国立病院機構西新潟中央病院小児神経科 川島 英志 小林 悠 眞柄 慎一 赤坂 紀幸 遠山 潤
■キーワード
臭化カリウム, 結節性臭素疹, 再発, 細菌感染, 難治性てんかん
■要旨
臭素疹は,臭化物の摂取により発症する稀な皮疹である.近年,臭化物の難治性てんかんに対する有効性が再注目されている.全前脳胞症に伴う難治性てんかん女児において多様な病態の臭素疹を来した1例を経験した.生後1か月時から難治性てんかんを発症し,4か月時から臭化カリウムの内服を開始した.2歳4か月時,右頬部に約2 cmの結節性臭素疹が出現した.6か月後,同部位に発赤・腫脹を認め,膿汁を排出する潰瘍を形成した.血液検査では,炎症反応がみられ,創部培養ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を認め,臭素疹部への細菌感染と診断した.臭化カリウムの内服の中止,抗生剤の内服・外用により速やかに皮疹は改善した.3歳1か月時,てんかん発作が難治であるため,臭化カリウムを同量で再開したが,その2か月後,対側の左側頬部に,発赤・腫脹を伴う膿疱が出現し,急速に拡大した.血液検査上,炎症反応は軽度であり,膿痂疹様臭素疹の急性増悪と診断した.臭化カリウムの内服中止後,1か月程度で,皮疹は治癒した.
臭化物を使用しているてんかん患者にみられた皮疹に対しては,臭化物の投与量,投与期間に関わらず臭素疹の発現に留意すべきである.また,臭素疹の再発では,初発時に比し急速な増悪を来すことがあり臭化物の再投与については注意を要する.
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【症例報告】
■題名
二相性けいれんを呈する急性脳症において遅発性拡散能低下が現れる時期
■著者
済生会宇都宮病院小児科 高橋 努 井原 正博
■キーワード
急性脳症, Hemiconvulsion-Hemiplegia症候群, 二相性けいれん, 遅発性拡散能低下
■要旨
近年,感染が原因となる急性脳症を臨床画像的に分類する試みがされている.二相性けいれんと遅発性拡散能低下を呈する急性脳症(acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion;AESD)はその一型である.症例は2歳女児.発熱を伴う左半身の強直間代性けいれんが重積し入院した.第4病日の頭部MRIで,右後頭葉に拡散強調画像(DWI)で高信号,apparent diffusion coefficient(ADC)画像で低信号の微細病変を認めた.第5病日に左半身の間代性けいれんが群発し,同日に再度行ったMRIで,右大脳半球全体,特に頭頂葉から後頭葉優位にDWIで皮質と皮質下白質に高信号を認めた.臨床像からAESDの経過を呈したHemiconvulsion-Hemiplegia(HH)症候群と診断した.けいれん再発前後でMRIの信号変化が急速に進展し,画像上で細胞性浮腫が現れる時期に再発時のけいれん群発が関与していることが示唆された.また,発熱を伴うけいれん重積においてAESDを念頭にMRIを行う場合は,発症3〜4日目に行うといった配慮が必要である.MRIで微細病変を見逃さず,AESDの主病態といわれる興奮毒性に対する治療を早期に導入できれば神経後遺症の軽減も期待できる.
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【症例報告】
■題名
悪性リンパ腫関連血球貪食症候群と鑑別を要した小児組織球性壊死性リンパ節炎
■著者
昭和大学藤が丘病院小児科 松野 良介 外山 大輔 藤田 祥央 花村 麻衣子 塚田 大樹 秋山 康介 池田 裕一 磯山 恵一
■キーワード
組織球性壊死性リンパ節炎, 悪性リンパ腫, 血球貪食症候群
■要旨
組織球性壊死性リンパ節炎(HNL)は,発熱,リンパ節腫脹,白血球減少などを主症状とし,病理組織学的にリンパ節の広範な壊死を特徴とする疾患である.今回,悪性リンパ腫に合併した血球貪食症候群(HPS)と鑑別が困難であったHNL症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は15歳男性.当院を受診する1か月前から持続する弛張熱を認め,6日前に前医に入院となった.血液検査で,汎血球減少およびLDHの上昇を認め,造影CT検査で深頸部から両側鎖骨上窩,および腋窩リンパ節の腫大,Positron emission tomography(PET)/CTで左顎下,両側頸部,右腋窩,および右下腹部リンパ節に異常集積像が認められた.悪性リンパ腫に合併したHPSが疑われ当科に紹介された.当院転院後も発熱は持続したが,全身状態が良好であったため,リンパ節生検の結果が判明するまで治療介入は行わなかった.入院7日目に右頸部リンパ節生検を施行しHNLと診断した.入院11日目に解熱し,入院17日目に退院となった.これまでにHNLとHPSとの合併例が稀に報告されており,HPS様の骨髄所見を呈したHNLの報告もある.HNLとHPSの臨床所見は類似しており鑑別することが困難な場合がある.HNLに合併するHPSの予後は良いとされており,正確な診断が確定するまでは治療介入をするべきでないと思われた.
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【症例報告】
■題名
腰肋脊椎症候群に伴った腰ヘルニア
■著者
富山大学附属病院周産母子センター新生児部門1),富山大学医学部小児科2) 堀川 慎二郎1) 宮尾 成明2) 川崎 裕香子1) 牧本 優美1) 吉田 丈俊1) 足立 雄一2)
■キーワード
腰肋脊椎症候群, 腰ヘルニア, 先天異常
■要旨
先天性腰ヘルニアは非常に稀な疾患で,これを呈する最も一般的な疾患概念として腰肋脊椎症候群(Lumbocostovertebral Syndrome)があるが,これまで国内での報告例はない.我々は,出生時に左上腰部の腫瘤性病変を認め,腰肋脊椎症候群の診断に至った女児例を経験した.文献的考察を加えて経過を報告する.
在胎40週2日で出生した女児.32週ごろから不均衡型胎児発育不全がみられ当院に紹介.胎児エコーで合併奇形はなく,母体プロテインS活性低値(33%)が原因と考えられ,低用量アスピリンを開始された.体格は小さめながら順調に発育したため妊娠継続とし,陣痛発来翌日に頭囲経腟分娩で出生.左上腰部の腫瘤性病変を認めたため当科紹介となった.左腰ヘルニア,肋骨および椎体の多発形成異常,側弯,脊髄髄膜瘤,脊髄空洞症を認め,腰肋脊椎症候群と診断した.呼吸障害や消化管通過障害を来さず順調に経過し,日齢18に退院.その後も側弯の増悪なく,体重と身長は小さめながらも順調に発育し,神経学的発達も問題なく経過し,12か月齢に髄膜瘤縫縮術,13か月齢に腹腔鏡下ヘルニア閉鎖術を実施した.
腰ヘルニアは閉鎖術が必要で,手術時期については一期的閉鎖を行うためには1歳齢前後の実施が推奨されている.腰肋脊椎症候群における腰ヘルニアの手術方法,時期については,合併疾患の状況を踏まえた総合的判断が必要である.
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【症例報告】
■題名
7価肺炎球菌結合型ワクチン3回接種後に発症した侵襲性肺炎球菌感染症の2例
■著者
防衛医科大学校小児科 濱本 学 川村 陽一 吉田 裕輔 常磐 彩 座波 清誉 本田 涼 榊原 菜々 野口 崇宏 本田 護 浅野 貴子 松本 浩 若松 太 川口 裕之 野々山 恵章
■キーワード
肺炎球菌感染症, 7価肺炎球菌結合型ワクチン, 非ワクチン株
■要旨
7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)を3回接種した後に肺炎球菌感染症に罹患した2例を経験した.症例は10か月と1歳のいずれも男児で,前者は敗血症をきたしたものの抗菌薬に反応し,後遺症なく退院した.後者は髄膜脳炎を発症し,人工呼吸管理をはじめとした集中治療を行ったものの,重篤な神経学的後遺症を認めた.菌株を用いた血清型診断の結果,2例ともPCV7に含まれない22Fと判明した.諸外国ではPCV7の接種開始後に,PCV7で免疫が獲得されない血清型による肺炎球菌感染症全体の中で,PCV7では免疫が獲得できない血清型による症例の占める割合が増加していることが問題となっている.このため,肺炎球菌ワクチンが定期接種化され,その後13価肺炎球菌ワクチン(PCV13)に移行した本邦においても,詳細な疫学的検討が必要と思われる.
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【症例報告】
■題名
膵炎後仮性膵嚢胞に対し内視鏡下経胃膵嚢胞ドレナージ術が有効であった白血病例
■著者
順天堂大学医学部小児科1),同 消化器内科2) 萩原 友紀1) 坂口 佐知1) 玉一 博之1) 山田 浩之1) 藤村 純也1) 崔 仁煥2) 清水 俊明1)
■キーワード
仮性膵嚢胞, ドレナージ術, アスパラギナーゼ, 急性膵炎, 白血病
■要旨
急性リンパ性白血病治療中の6歳男児.アスパラギナーゼを含む寛解導入療法終了直後に急性膵炎を発症し,その後仮性膵嚢胞の形成を認めた.保存的治療を行ったが膵嚢胞の増大が続いたためドレナージ術が必要と判断された.白血病の治療中であったことから,感染や化学療法の長期中断などのリスクを考慮し,低侵襲な治療方法として,内視鏡下経胃膵嚢胞ドレナージ術を選択した.膵炎発症後10週間目に内視鏡下経胃膵嚢胞ドレナージ術を施行し,両側Pig-tail型内瘻チューブの留置と経鼻膵嚢胞ドレナージチューブによる持続吸引を行った.ドレナージ術後速やかに膵嚢胞の縮小と全身状態の改善が得られ,ドレナージ中の化学療法の再開も可能であった.自然消退しない仮性膵嚢胞に対して,内視鏡下膵嚢胞ドレナージ術は,小児においても低侵襲かつ効果的な治療選択肢である.
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【論策】
■題名
医療型障害児入所施設における医学生の全人医療教育
■著者
大阪発達総合療育センター小児科1),関西医科大学医学教育センター2) 船戸 正久1) 竹本 潔1) 柏木 淳子1) 飯島 禎貴1) 木下 洋2)
■キーワード
重症心身障害児者, 医療型障害児入所施設, 医学教育, 早期臨床体験学習, 全人医療教育
■要旨
現在,医学教育の中で患者をトータルに診られる医師の育成が社会から求められている.今回,関西医科大学医学教育センターから医学部1年生の地域医療実習の依頼があり,当センターとして独自の実習カリキュラムを作成し実行した.
医学生は2年間で5名受け入れた.1週間のプログラムは,オリエンテーション,施設紹介から始まり,医師・看護師・リハスタッフ・介護スタッフなど多職種による集中講義と実習研修である.とくに食事・移動・入浴・トイレ介助など介護士の指導の下,生活介護実習を主として実施した.訪問看護・訪問診療にも同行,家庭での実習も行った.スタッフの評価も「色々興味を持って熱心に研修に取り組んだ」「あいさつもきちんとでき言葉使いもしっかりしていた」「新しいことに眼を輝かせながら研修を行った」など概ね好印象であった.
今回の地域医療実習は,当センターにとっても初めての経験であるが,5名の医学生は熱心に毎日実習に参加した.彼らの感想も「医療の専門的な知識がない時期に介護や看護の実習ができて本当に良かった」「すべてのスタッフが,とても優しく接してくれ嬉しかった」など好評であった.
医学生のEarly exposure(早期臨床体験学習)として,医療型障害児入所施設は利用者のニーズを中心に多職種専門職がどのように良いチームワークでかかわるかという全人医療教育の場として最適と思われる.
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【論策】
■題名
Turner症候群の内科移行実態調査
■著者
東京都立小児総合医療センター内分泌・代謝科1),同 遺伝子研究科2) 福間 真実1) 波多野 恵1) 八木 弘子1)2) 長島 由佳1) 武田 良淳1) 宮井 健太郎1) 高木 優樹1) 後藤 正博1) 長谷川 行洋1)2)
■キーワード
移行期医療, Turner症候群, 不妊
■要旨
【背景】Turner症候群(TS)に対する医療介入は成人後も必要であり,移行期医療を要する疾患の1つである.移行の必要性は提言されているが,具体的な移行方法は各施設に委ねられており,他施設の方法を知る機会は少ない.【方法】診療録からの後方視的検討ならびに問診により,当院開設後4年間で移行開始したTSにおける取組みの実態を調査した.【対象】20歳以上30症例【結果】診断後早期から年齢に応じてTSの体質の説明を繰り返し行っていた.診断時期は0か月〜15歳,移行開始年齢は中央値29歳(21〜47歳),移行に要した期間は平均11か月(0〜25か月)であった.移行前に本人の受容や理解度を確認し,不妊のことを含めて体質を理解できた段階で移行を始めた.1年程かけて小児科,成人診療科を交互に受診し,その間に医療者の情報交換を行うともに,移行の進渉を確認した.看護師による移行外来を立ち上げ,移行が困難と予測される症例に対し,本人の理解度や受容状況,不安事項などを再度確認した.移行先は80%が同一建物内の成人総合病院内分泌代謝内科であった.30症例中27症例は問題なく移行が進んでいた.【結論】移行前から体質,移行の必要性を説明し,時間をかけた段階的な移行の方法は一定の成果をあげている.
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