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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:15.3.19)
第119巻 第3号/平成27年3月1日
Vol.119, No.3, March 2015
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総 説 |
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井上 茉南,他 525 |
第117回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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新興ウイルス感染症:重症熱性血小板減少症候群,新規コロナウイルス,トリインフルエンザウイルス感染症
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西條 政幸 538 |
教育講演 |
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呼吸理学療法の重要性とその実際〜健常児における呼吸理学療法〜
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上田 康久 546 |
教育講演 |
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腎臓検診としての学校検尿及び3歳児検尿の新たな考え方
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本田 雅敬 555 |
原 著 |
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長谷川 真理,他 566 |
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深澤 満 573 |
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小野山 陽祐,他 581 |
症例報告 |
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林 泰平,他 589 |
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原口 康平,他 595 |
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野村 武雅,他 600 |
論 策 |
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江原 朗 605 |
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小西 恵理,他 610 |
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617 |
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655 |
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2015年57巻1号2月号目次
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【総説】
■題名
定期接種ワクチンとロタウイルスワクチン累積接種率の比較
■著者
東京大学大学院医学系研究科発達医科学教室1),日本大学医学部病理病態学系微生物分野2),崎山小児科3) 井上 茉南1) 高梨 さやか1) 牛島 廣治1)2) 沖津 祥子1)2) 崎山 弘3) 水口 雅1)
■キーワード
ロタウイルスワクチン, 累積接種率, 母子健康手帳, 乳幼児健康診査, 接種費用補助
■要旨
経口弱毒生ロタウイルスワクチン(ロタワクチン)としてRotarixTM, RotaTeqTMが導入されたが,任意接種のため自治体は接種率報告をしていない.本研究では2013年9,10月に東京都府中市内在住で誕生日順に1歳6か月児健康診査に呼び出された児の母子健康手帳から定期接種のBCG,三種混合(DPT),ポリオ,麻しん風しん混合ワクチン及び当時任意接種であったHeamophilus influenzae type b(Hib),小児用肺炎球菌,水痘,おたふくかぜ,B型肝炎,ロタワクチンの接種日,生年月日を横断的に調査し累積接種率を求めた.対象児は府中市内1歳児の無作為抽出標本とほぼ見做せるため,95%信頼区間(95%CI)を含めた母集団の接種率を推計した.各ワクチンの既接種児数の差はカイ二乗検定で分析した.18か月時ロタワクチン累積接種率は33.4%(95%CI:±4.6%)だった.定期接種は大半の児が接種推奨期間内に完了していた.任意接種で接種費助成があったHib,小児用肺炎球菌ワクチンの既接種児数はロタワクチンに比べ有意に多かった.費用助成はなかったが水痘,おたふくかぜワクチンの既接種児数も有意に多かった.ロタワクチンの接種率が低い要因に経済的負担,疾患認知度の低さが考えられた.接種率向上,発症数減少には公費での費用助成とロタウイルス感染症についての周知が有用と考えられた.
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【原著】
■題名
卵精巣性性分化疾患12例の臨床的検討
■著者
大阪府立母子保健総合医療センター消化器内分泌科1),同 泌尿器科2),同 子どものこころの診療科3) 長谷川 真理1) 位田 忍1) 島田 憲次2) 庄司 保子1) 又吉 慶1) 小西 暁子1) 山田 寛之1) 惠谷 ゆり1) 小杉 恵3)
■キーワード
卵精巣性性分化疾患, ambiguous genitalia, 二次性徴, 性決定, 心理的ケア
■要旨
1988年〜2012年の25年間に当院で経験した卵精巣性性分化疾患12例の臨床像について後方視的に検討を行った.現在の社会的性は男性6例・女性6例であり,うち1例は生後4か月時に男性から女性に戸籍変更を行った.性染色体は12例中10例が46, XX,性腺は7例が両側卵精巣と最も多く,子宮を確認し得た例は9例,外性器の形態は症例により様々であった.いずれの症例も性腺生検にて本症の診断に至り,診断後病態や性腺機能の予後等について両親に説明し,両親の意向を重視して性決定を行った.現在14歳以上の年長児は6例(男性2例・女性4例)であり,男性は2例ともに,女性は一側の性腺が卵巣であった2例に二次性徴の自然発来を認めた.年長児には医師や看護師,臨床心理士等が心理的ケアを行い,現時点で自らの性に違和感を持つ例はない.本症における男性化の程度は精巣組織からのアンドロゲン作用の強さに比例し,本検討においては社会的性の選択についてもこの点と関連があったが,外性器および内性器の形態や性腺の組織所見および位置などは症例毎に様々であり,性決定に関してはどちらを選択してもそれぞれのメリットおよびデメリットがある.それゆえに,医療者はできるだけ多くの医学的情報を集約し児の病態を十分検討した上で,両親の意向を考慮し決定する必要がある.
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【原著】
■題名
11年間の菌血症118例によるヒブワクチンと7価肺炎球菌ワクチンの有効性
■著者
ふかざわ小児科 深澤 満
■キーワード
インフルエンザ菌b型ワクチン, 7価結合型肺炎球菌ワクチン, 菌血症, 細菌性髄膜炎, 抗菌薬
■要旨
背景と目的:2010年末から公費助成が開始されたヒブワクチンと7価肺炎球菌ワクチン(PCV7)の臨床効果を開業小児科診療所で経験した菌血症例から検証した.
方法:2002年10月から2013年12月までの11年3か月の菌血症調査期間をHibワクチンとPCV7の公費助成導入前のI期(2002年10月〜2010年),導入移行期のII期(2011年),導入後のIII期(2012〜2013年)に別けて菌血症の頻度および肺炎球菌莢膜血清型の変化を検討した.
結果:全期間での118例の菌血症例中,Hib菌血症が17例で肺炎球菌菌血症が81例であった.Hib菌血症はI期の年平均2.1例からII期,III期で0例となり100%減少した(p<0.05).肺炎球菌菌血症はI期の年平均8.7例からII期で4.0例と54.2%減少し,III期で2.5例と71.4%減少した(p<0.01).肺炎球菌血清型はPCV7血清型がI期の83.3%(45例/54例)からII期で50.0%(2例/4例),III期で0.0%(0例/5例)と減少した.13価肺炎球菌ワクチン(PCV13)血清型はI期の92.6%(50例/54例)からII期で0.0%(0例/4例)と減少したが,III期では19Aの増加で60.0%(3例/5例)と再増した.
結語:HibワクチンとPCV7の公費助成開始直後からHibと肺炎球菌の菌血症は減少した.ただ肺炎球菌菌血症で血清型19Aの増加がみられ,2013年11月に定期接種化されたPCV13の効果が注目される.
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【原著】
■題名
小児急性骨髄炎における治療経過と抗菌薬内服移行
■著者
独立行政法人国立成育医療研究センター総合診療部1),同 生体防御系内科部感染症科2) 小野山 陽祐1) 庄司 健介2) 阪井 裕一1) 宮入 烈2)
■キーワード
急性骨髄炎, 経口抗菌薬, 副作用, 血液培養
■要旨
急性骨髄炎に対する治療が不十分な場合,慢性化し機能予後に影響を与える可能性がある.治療は比較的長期にわたるが抗菌薬の経静脈的投与から経口投与への移行の有用性の検討は本邦では少ない.2002年から2012年までの間に当院で治療を行った小児急性骨髄炎症例につき後方視的検討を行った.対象症例は28例で,内24例で経静脈的抗菌薬投与後に内服移行が行われ,多くはCephalexinの高用量投与が行われていた.内服移行は全例で解熱や局所症状の改善が得られ,CRPが1.0 mg/dl未満になった時点で行われていた.全例が治癒しており再燃を認めず,内服移行により総入院期間の短縮を認めた(16.5日対50.5日,P=0.001).
また,経静脈的抗菌薬投与開始前の経口抗菌薬投与の有無による血液培養結果に関しても検討を行った.先行抗菌薬の投与がなかった群では,18例中14例が陽性であったのに対し,先行抗菌薬があった群では10例中0例が陽性と,その陽性率は有意に低く(P<0.001),起因菌の同定が困難であった.先行抗菌薬投与があった群では経静脈的抗菌薬投与が開始されるまでの日数は有意に長く,安易な経口抗菌薬の投与が有効な治療開始を遅らすことが示唆された.
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【症例報告】
■題名
母親の慢性萎縮性胃炎が原因となったビタミンB12欠乏症の乳児例
■著者
福井県立病院小児科1),福井大学医学部看護学科2) 林 泰平1) 岩井 和之1) 津田 英夫1) 重松 陽介2)
■キーワード
ビタミンB12欠乏症, メチルマロン酸血症, 筋緊張低下, 発育発達障害
■要旨
症例は10か月男児.生後4か月ごろから哺乳障害,体重増加不良が出現した.人工乳や離乳食を受けつけず,受診時まで完全母乳栄養が継続されていた.筋緊張低下,発達遅滞,貧血が見られ,頭部MRIではびまん性の脳萎縮を認めた.血清・尿中メチルマロン酸の上昇,血漿メチオニンの低下,尿中ホモシスチンの上昇を認め,血中ビタミンB12は低下していた.ヒドロキソコバラミン投与により,児の症状や検査所見は速やかに改善した.母に慢性萎縮性胃炎とビタミンB12欠乏が確認され,児のビタミンB12欠乏は栄養性のものと考えられた.児の新生児期濾紙血でプロピオニルカルニチンはカットオフ値以下であったが,プロピオニルカルニチン/メチオニン比の上昇を認めたことから,母体が原因のビタミンB12欠乏の早期発見と予後改善には,この比が有用と考えられた.
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【症例報告】
■題名
急性期にアシルカルニチン分析で異常を示さなかったグルタル酸血症1型の1例
■著者
長崎大学病院小児科1),島根大学医学部小児科2) 原口 康平1) 里 龍晴1) 伊達木 澄人1) 時沢 亜佐子1) 白川 利彦1) 中富 明子1) 長谷川 有紀2) 山田 健冶2) 小林 弘典2) 山口 清次2) 森内 浩幸1)
■キーワード
グルタル酸血症1型, タンデムマス・スクリーニング, アシルカルニチン分析, カルニチン欠乏症
■要旨
生後5か月時に急性脳症様発作にて発症したグルタル酸血症1型の男児例を経験した.急性期のアシルカルニチン分析では異常を指摘されず,新生児期の濾紙血を用いた同分析と尿中有機酸分析から診断に至った.本症の急性期の診断においては,二次性カルニチン欠乏があると診断が困難になることに,留意すべきである.グルタル酸血症1型はタンデムマス法を用いた新生児スクリーニングの対象疾患であり,早期発見・治療的介入により良好な発達が期待できる.迅速で適確な診断・治療法を確立するために,全国にタンデムマス法を用いた新生児スクリーニングが普及して,対象疾患症例に関するさらなる情報の蓄積と共有が望まれる.
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【症例報告】
■題名
反復する喘鳴の精査で診断に至ったI型喉頭気管食道裂の2例
■著者
聖隷三方原病院小児科 野村 武雅 木部 哲也
■キーワード
I型喉頭気管食道裂(type I laryngotracheoesophageal cleft;type I LTEC), 乳児反復性喘鳴, 誤嚥, 硬性気管支鏡
■要旨
喉頭気管食道裂(Laryngotracheoesophageal cleft;LTEC)は,食道と気管の分離不全により咽頭食道と喉頭気管の間の共通開口部欠損を生じる稀な先天奇形である.最軽症のI型LTECは,症状が非特異的で喘息などの頻度の多い疾患と区別がつきにくく診断は難しい.今回我々はそれぞれ4歳及び11か月時にI型LTECと診断した2例を経験した.いずれも反復する喘鳴や嘔吐を伴う強い咳嗽により受診や入院を繰り返した.喉頭ファイバーを含む通常の検査では異常認めなかった.喘息としての治療に反応は乏しく胃食道逆流症(GERD)に対する治療効果は限定的であった.いずれも全身麻酔下の硬性気管支鏡により披裂軟骨間組織を触知し裂を確認した.4歳の例は経過観察期間後に気管支鏡下気管形成術施行し劇的に改善したが,摂食後嘔吐への予期不安が強く心理的問題を残した.他の1例は1年ほど保存的に経過観察し症状軽快した.
乳児期発症の反復する喘鳴を呈する例で,喘息やGERDに対する治療への反応が乏しく,特に哺乳や摂食時の咳き込み嘔吐を繰り返す例においてはI型LTECを考慮すべきである.
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【論策】
■題名
小児科標榜医不在町村を多数抱える地域の乳幼児健診および予防接種
■著者
広島国際大学医療経営学部 江原 朗
■キーワード
地域, 乳幼児健診, 予防接種, 小児医療サービス, 医師不足
■要旨
平成22年現在,全国235町村において小児科標榜医が存在しない.しかし,各市町村は母子保健法や予防接種法により乳幼児健診や予防接種を実施する義務を負う.小児科標榜医がいない町村において乳幼児健診や予防接種はどのように実施されているのか不明である.そこで,小児科標榜医がいない全国235町村のうち53町村が所在する北海道をモデルとして解析を行った.
1歳6か月児健診や3歳児健診の受診率は9割を超えており,小児科標榜医の有無で大きな差異を認めなかった.また,三種混合ワクチン1期追加接種,ポリオワクチン2回目,麻疹・風疹ワクチン2回目の接種率も,小児科標榜医の有無にかかわりなく大差はなかった.
一方,乳幼児健診で異常を指摘される割合は,小児科標榜医がいる市町村では23.7%(1歳6か月児)および25.9%(3歳児)であった.一方,小児科標榜医がいない町村では30.9%(1歳6か月児)および32.8%(3歳児)と高かった.小児科標榜医がいない町村でも,乳幼児健診において標榜医を有する市町村と同等以上に異常を検出していることが分かった.
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【論策】
■題名
小児科初期臨床研修におけるアウトカム基盤型カリキュラムの試み
■著者
松江赤十字病院小児科 小西 恵理 和田 啓介 小池 大輔 吾郷 真子 平出 智裕 樋口 強 遠藤 充 内田 由里 齋藤 恭子 瀬島 斉
■キーワード
小児科初期臨床研修, アウトカム基盤型教育
■要旨
目的:小児科初期臨床研修は3か月の研修が推奨されているが,その期間は研修施設によって多様である.松江赤十字病院では初期研修プログラムで全ての初期研修医に4週間の小児科研修が義務付けられている.当科で行ったアウトカム基盤型カリキュラムによる小児科初期研修の有効性と意義について検討した.対象および方法:平成22〜24年度にアウトカム基盤型の4週間カリキュラムを初期研修医に実施した.該当する期間に当科で研修を受けた医師を対象に,研修終了時アンケートと,追跡アンケートを行った.同時期に指導を行った小児科医にもアンケートを行い,研修の効果について検討した.カリキュラムは,アウトカムを「救急外来で小児を診ることができる」と設定し,「一次救急対応」「重症例への対応」「手技」「医療面接」を関連領域として設定した.結果:該当する初期研修を受けた研修医は30名,指導した医師は9名であった.初期研修医へのアンケートでは,担当症例数,手技の機会は標準的〜十分の回答が多く,現在行っている救急の場面では当科の研修が役立っていると全員が回答した.指導医へのアンケートでは,救急外来での初期研修医の診療が進歩していると評価された.結語:アウトカム基盤型カリキュラムを設定することは,到達目標を具体的に示すことができ,研修医・指導医とも共通の認識を得られやすく短期間の臨床研修において有用である.
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