 |
日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:15.1.20)
第119巻 第1号/平成27年1月1日
Vol.119, No.1, January 2015
バックナンバーはこちら
|
 |
|
子どもとICT(スマートフォン・タブレット端末など)の問題についての提言
|
|
1 |
日本小児腎臓病学会推薦総説 |
|
小児腎臓領域におけるネフローゼ症候群を対象とした臨床試験
|
|
佐古 まゆみ,他 5 |
第117回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
|
West症候群と結節性硬化症:研究と治療の歴史と進歩
|
|
泉 達郎 14 |
教育講演 |
|
新井 勝大 21 |
教育講演 |
|
余田 篤 25 |
教育講演 |
|
小沢 浩 33 |
原 著 |
|
出来 沙織,他 38 |
症例報告 |
|
蓮見 純平,他 44 |
|
清水 淳次,他 49 |
|
上島 洋二,他 54 |
|
福家 辰樹,他 60 |
|
野崎 章仁,他 67 |
論 策 |
|
森川 嘉郎 72 |
|
|
76 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
|
106 |
|
109 |
情報管理委員会報告 |
|
114 |
|
2.病院調査からみた小児科常勤医師数の動向に関する報告書
|
|
123 |
|
|
130 |
|
135 |
|
136 |
日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2014年56巻6号12月号目次
|
|
137 |
|
139 |
【原著】
■題名
発症時期からみた小児侵襲性B群溶血性レンサ球菌感染症の検討
■著者
国立成育医療研究センター総合診療部1),同 生体防御系内科部感染症科2) 出来 沙織1) 庄司 健介2) 船木 孝則2) 阪井 裕一1) 宮入 烈2)
■キーワード
侵襲性B群溶血性レンサ球菌感染症, 超遅発型, 低ガンマグロブリン血症
■要旨
侵襲性B群溶血性レンサ球菌(GBS)感染症は発症時期により早発型(日齢0〜6),遅発型(7〜89),超遅発型(月齢3か月以降)に分類されるが,超遅発型の臨床的特徴に関する検討は少ない.今回,電子診療録と細菌培養検査データベースを用いて,侵襲性GBS感染症の後方視的検討を行った.血液培養あるいは髄液培養からGBSが検出された症例を侵襲性GBS感染症と定義し,発症時期別の臨床的特徴を検討し,特に超遅発型とその他の型の違いに着目した.2002年4月〜2013年3月の期間中に侵襲性GBS感染症は28例認められた.その内訳は,早発型9例(32%),遅発型11例(39%),超遅発型が8例(29%)であった.これまでの報告と同様に,早発型では髄膜炎は12%と少なく,肺炎,感染巣不明の菌血症をそれぞれ44%と多く認めたのに対し,遅発型では髄膜炎を36%と比較的多く認めた.それに対して超遅発型では,感染巣不明の菌血症が5例(63%)と最も多くの症例を占めており,その他,髄膜炎2例(25%),蜂窩織炎1例(13%)という分布であった.また,超遅発型では他の型に比べ基礎疾患を有する割合が高く,特徴的な所見として免疫グロブリン測定が行われた7例中5例に低ガンマグロブリン血症を認めた.侵襲性GBS感染症は発症時期ごとに臨床像が異なり,超遅発型は基礎疾患のある患者における菌血症として発症する傾向がみられた.
|
|
【症例報告】
■題名
鉄欠乏性貧血と診断されていた軽症型βサラセミアの母子例
■著者
佐久総合病院小児科 蓮見 純平 牛久 英雄
■キーワード
小球性貧血, 鉄欠乏性貧血, サラセミア
■要旨
症例は15歳男児.学校検診で平均赤血球容積(MCV)60.2 fLと低値であったため受診した.男児には10歳時に貧血での受診歴があり,鉄欠乏性貧血の診断の下,鉄剤を投与されたが改善に乏しい病歴があった.加えて,検診記録から母親にもMCV 60.9 fLの小球性貧血があることが分かり,ヘモグロビンの遺伝的異常を疑って精査した結果,母子ともにβグロビン鎖をコードする遺伝子に異常を認め(コドン41/42 TTCTTT→TT),軽症型βサラセミアと診断した.βサラセミアには軽症型,中間型,重症型があり,軽症型は比較的症状が軽いのに対し,重症型は定期的な輸血や鉄キレート薬の投与を必要とし,根治を目指す場合には骨髄移植の適応にもなるなど,日常生活が多大な影響を受ける重症疾患である.軽症型の中には本症例のように鉄欠乏性貧血と診断されている例があると思われるが,軽症型どうしの婚姻で重症型が出生する可能性があるため,正しい診断と説明を通じて,患者が自身の疾患を正確に認識しておくことが重要である.
|
|
【症例報告】
■題名
横紋筋融解症を合併し長期透析を要した熱中症の学童例
■著者
国立成育医療研究センター集中治療科 清水 淳次 西村 奈穂 六車 崇
■キーワード
横紋筋融解症, 熱中症, 腎不全, 小児, 集約化
■要旨
症例は13歳男児.8月下旬,屋外でサッカーの練習中に意識消失,全身強直性痙攣が生じたため救急要請した.ショック,意識障害を認め,腋下体温42℃であった.III度熱中症と判断し,体表からの冷却および輸液負荷を行った.急性腎不全に対する腎代替および体温コントロールを目的として持続血液透析を開始した.第2病日に横紋筋融解症を発症したため持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration;CHDF)を導入した.乏尿が持続しCHDFの継続を要した.第36病日より間欠的血液透析に移行し第38病日に透析を離脱,第53病日に神経学的後遺症なく退院となった.
今回の症例は中枢神経障害,急性腎不全,横紋筋融解症をきたしたIII度熱中症であった.III度熱中症においては呼吸,循環を含む全身管理および集学的治療を行うことが重要である.早期から治療可能な施設への転送を念頭におき,発症頻度の低い小児のIII度熱中症症例を集約化することが必要である.
|
|
【症例報告】
■題名
結核性胸膜炎の治療中に胸膜結核腫を呈した1例
■著者
埼玉県立小児医療センター感染免疫科1),東京都立小児総合医療センター呼吸器科2) 上島 洋二1) 田中 理砂1) 赤峰 敬治1) 高野 忠将1) 佐伯 敏亮1) 宮川 知士2) 大石 勉1) 川野 豊1)
■キーワード
結核性胸膜炎, 胸膜結核腫, 結核, 胸水結核菌培養, Interferon-Gamma Release Assay
■要旨
生来健康な12歳女児.発熱,呼吸苦にて左側胸水貯留を発見された.胸水は当初2回の抗酸菌塗抹,培養で陰性であり,リンパ球優位の滲出性でADA 78.9 IU/Lと高値を示した.初回のQFT-3Gは判定保留であったが,後日再度施行したQFT-3G,T-SPOTが共に陽性を示したことから結核性胸膜炎と暫定診断した.胸腔ドレナージ後,抗結核薬(INH,RFP,PZA)による治療を開始し,抗結核薬治療開始後の第3回目の胸水結核菌培養で結核菌陽性(全剤感受性菌)と判明し確定診断した.胸水貯留の増加を認めたが治療継続により改善し初期悪化と考えられた.抗結核薬開始4か月後の胸部CTで同側に胸膜腫瘤が認められたが,胸膜結核腫と判断し,治療継続とした.その後も経過良好である.
|
|
【症例報告】
■題名
オマリズマブが奏功したびまん性誤嚥性細気管支炎合併の難治性喘息
■著者
浜松医科大学小児科 福家 辰樹 中西 俊樹 安岡 竜平 田口 智英
■キーワード
びまん性誤嚥性細気管支炎, 難治性喘息, オマリズマブ, 喉頭アレルギー
■要旨
びまん性誤嚥性細気管支炎(DAB)は誤嚥性肺炎の一病型で,びまん性汎細気管支炎との対比で提唱された疾患であり認知症等に伴う不顕性誤嚥を有する高齢者に多いが,若年者でも慢性誤嚥の機会があれば発症することが報告されている.今回我々は通常の治療にも関わらず難治性の咳嗽と喘鳴を主訴に来院し,肥満に睡眠時無呼吸症候群と胃食道逆流症を合併し喉頭アレルギーによる慢性不顕性誤嚥からDABを併発した気管支喘息の1例を経験した.症例は11歳男児で,5歳より肥満と重度の睡眠時無呼吸症候群と診断され耳鼻咽喉科通院中,難治性喘息および肥満コントロール目的で当科を紹介され受診した.喘息診断は幼児期になされ,重症持続型に準じた管理を行うも毎日喘鳴と夜間咳込みを認めた.総IgE 77 IU/ml,ダニ特異的IgE陽性,呼気NO濃度17 ppb.食道嚥下造影で不顕性誤嚥,胸部単純CTで細気管支炎像を認めDABの合併による難治症例と診断.複数科の治療介入を行うも改善せず経管栄養を考慮したが本人家族が拒否,そこでオマリズマブを導入したところ開始1か月後より症状や呼吸機能の著明な改善を認め,造影再検で誤嚥の消失を確認した.標準的な喘息治療を行っても管理困難な症例には悪化因子や併存疾患への十分な鑑別と,オマリズマブ使用を考慮することが重要と考えられた.
|
|
【症例報告】
■題名
ケトンフォーミュラ®の長期使用によるビオチン欠乏症の2例
■著者
滋賀県立小児保健医療センター小児科 野崎 章仁 熊田 知浩 楠 隆 林 安里 日衛嶋 郁子 舞鶴 賀奈子 横山 淳史 柴田 実 藤井 達哉
■キーワード
ケトンフォーミュラ, ビオチン, ビオチン欠乏症, 脱毛, てんかん
■要旨
抗てんかん薬が無効な難治性てんかん患者にとってケトン食療法は発作抑制を期待できる治療法であり,てんかん治療の早期選択肢の一つである.ケトンフォーミュラ®(明治乳業:817-B)はケトン食療法を行う際に利用できるケトン食用ミルクである.817-Bのビオチン含有量は0.1 μg/100 Kcalのみであり,世界保健機関が推奨する1.5 μg/100 Kcalを満たしていない.817-Bの長期使用によるビオチン欠乏症を2例経験したため報告する.症例1は5歳男児.重症新生児仮死による大島分類1の重症心身障害児.ウエスト症候群を発症し,各種抗てんかん薬使用も無効.2歳8か月時より817-Bを用いたケトン食療法を開始.開始2年5か月目に両側頭部に脱毛を認めた.症例2は4歳女児.II型Gaucher病による大島分類1の重症心身障害児.2歳8か月時に難治性てんかんに対して,817-Bを用いたケトン食療法を開始.開始1年4か月目に前頭部に脱毛を認めた.両症例とも尿中ビオチン濃度低下及び尿中3-ヒドロキシイソ吉草酸濃度上昇がありビオチン欠乏症と診断.ビオチン1 mg/日の補充にて3か月後に脱毛は改善し,検査所見も改善した.817-Bのビオチンは適正量でないためビオチン欠乏症が生じうる.817-Bを用いたケトン食療法を行う際はビオチンを補充すべきである.817-Bに対して適正量のビオチン添加が望まれる.
|
|
【論策】
■題名
わが国の乳児ボツリヌス症の実状
■著者
森川こどもクリニック 森川 嘉郎
■キーワード
乳児ボツリヌス症, 乳幼児突然死症候群, 感染症法, ボツリヌス症発生届
■要旨
乳児ボツリヌス症は,米国で1976年に「乳児の消化管内で菌の増殖に伴う毒素発生によって発症する独立疾患」として報告され,その後毎年約100例報告されている.一方,わが国では2011年までの過去25年間に31例に過ぎずその症例数に大きな隔たりがある.本症と乳児突然死との関係は当初から注目され,諸外国では突然死例の10〜20%がボツリヌス菌と関連していると言われているが,わが国ではボツリヌス菌に起因する突然死報告例はみられない.この症例数の少なさ,特にボツリヌス菌関連死亡例が存在しないことは医師の関心,臨床経験の乏しい事,ボツリヌス菌検査の法的手続きの煩雑さ,更には乳幼児突然死症候群(SIDS)診断ガイドライン(改訂第2版)が乳児ボツリヌス症を想定していない事,などが原因になっていると推察される.
わが国では乳幼児突然死症候群として報告される症例は150例/年程度で,この中には何例かのボツリヌス菌関連死が含まれていると推測される.ボツリヌス菌関連死が医師の興味を引くようになれば,死に至る前に乳児ボツリヌス症の診断がなされ突然死を少なくすることも可能になるであろう.
|
|
|
バックナンバーに戻る |
|