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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:14.12.17)
第118巻 第12号/平成26年12月1日
Vol.118, No.12, December 2014
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日本小児神経学会推薦総説 |
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高橋 幸利,他 1695 |
第117回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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小林 一郎 1708 |
教育講演 |
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佐古 まゆみ 1719 |
症例報告 |
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大曽根 義輝,他 1726 |
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小松原 孝夫,他 1732 |
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平岩 明子,他 1738 |
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吉年 俊文,他 1742 |
論 策 |
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岩本 彰太郎,他 1747 |
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森 俊彦,他 1754 |
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1760 |
日本小児科学会企画戦略委員会災害対策ワーキンググループ報告 |
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東日本大震災が岩手,宮城,福島の三県の小児と小児医療に与えた被害の実態と,それに対する支援策の効果と問題点についての総括
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1767 |
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1823 |
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1824 |
【症例報告】
■題名
早発型GBS敗血症性ショックにPMXを用いた血液浄化法を施行した超早産児の1例
■著者
君津中央病院新生児科 大曽根 義輝 石田 智己 富田 美佳 佐々木 恒 吉田 未識 水落 弘美
■キーワード
ポリミキシンB固定化繊維充填カラム, B群溶血性連鎖球菌敗血症, 急性血液浄化法, 超低出生体重児
■要旨
在胎22週3日,出生体重495 gで出生,日齢1に敗血症による循環不全に対し血液浄化療法を施行し救命しえた女児例を経験した.児は生直後からGBS敗血症を発症し,抗菌薬,ガンマグロブリンの投与を行った.日齢1,昇圧剤などに抵抗する頻脈・血圧低下と代謝性アシドーシスなど敗血症に伴う循環不全の兆候があり,ご両親よりインフォームド・コンセントを得たうえで極少容量のポリミキシンB固定化繊維充填カラムを用いた血液浄化療法を行った.児の循環血液量などを考慮し可能な限り回路内容量を少なくするため,輸血用チューブ,小児用CHDFの一部と輸血用ポンプなどを活用し,全容量を約28 mlに抑えた.血液流量は概ね2 ml/minであり,施術約90分に入口圧が上昇しカラム内凝血と考え,その時点で終了した.施術開始後まもなく頻脈が改善した.施術前後で,血小板のさらなる減少はみられたが,低体温・脳室内出血の増悪などは見られなかった.引き続き内科的治療,呼吸循環管理を施行し,呼吸状態の改善は日齢3,感染症の鎮静化は日齢5に得られた.脳室内出血は進展しなかったが,後に出血後水頭症となり脳外科的処置を要した.
現在1歳1か月,理学療法を施行しながら外来フォローを継続している.今まで報告された体外循環施行例のうち最も低体重での施行例である.
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【症例報告】
■題名
橋本病からBasedow病を発症し治療に難渋した1例
■著者
新潟県立六日町病院小児科1),ゆきぐに大和病院小児科2),新潟大学医歯学総合病院小児科3) 小松原 孝夫1) 小澤 淳一1) 長崎 啓祐2)3)
■キーワード
橋本病, Basedow病, 自己免疫性甲状腺疾患, 甲状腺機能低下症, 甲状腺機能亢進症
■要旨
橋本病とBasedow病は,ともに自己免疫性甲状腺疾患であるが,両者の表現型は全く逆の甲状腺機能異常症を呈する.両者は,ともに合併することが知られているが,小児例で橋本病からBasedow病に移行した報告は稀である.橋本病として経過観察中に甲状腺中毒症を認め,精査でBasedow病と診断し,最終的には橋本病として加療中の1例を報告する.症例は6歳女児.低身長の精査目的に当科を受診した.診察上,甲状腺腫大を認め,軽度の甲状腺機能低下,抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体陽性であった.甲状腺エコーで甲状腺腫大,内部エコーレベルの低下および粗造化を認めたため,橋本病と診断した.無治療にて経過観察中に甲状腺中毒症を認め,TSH受容体抗体の上昇,甲状腺エコーと甲状腺シンチ(123I)グラフィーの所見からBasedow病と診断した.チアマゾール(MMI)0.5 mg/kg/日を開始後,速やかに甲状腺機能は正常化した.以後,少量のMMIおよびレボチロキシンNa(LT4)の併用を行ったが甲状腺機能が不安定であり,治療コントロールに難渋した.治療開始1年8か月でMMIを中止したが甲状腺機能低下となり,最終的には橋本病としてLT4で加療中である.橋本病を背景に発症したBasedow病では,MMI治療に関して少量でコントロールできる可能性や早期にMMIを中止できる可能性が示唆された.
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【症例報告】
■題名
簡易水道を介したYersinia enterocolitica感染症の集団発生
■著者
黒部市民病院小児科1),富山大学医学部小児科2) 平岩 明子1)2) 和田 拓也1) 中坪(榊) 久乃1) 篠崎 健太郎1) 足立 雄一2)
■キーワード
Yersinia enterocolitica, 簡易水道, 集団発生, 回腸末端炎
■要旨
富山県A町でYersinia enterocolitica O8による回腸末端炎を同時期に4例経験した.4例中3例は入院加療を要したが,全例後遺症なく軽快した.
Y. enterocoliticaの同じ血清型O8が検出されたため,集団発生を疑い詳細に問診を行った.2例は兄弟であったが,その他は同じB集落に居住している以外に共通点を認めなかった.A町では井戸水由来の簡易水道水が利用されており,水道水を含め厚生センターに調査を依頼した.衛生研究所での検査で,B集落の簡易水道水からY. enterocolitica O8が検出された.また,簡易水道水と4例の便から検出されたY. enterocolitica O8のPFGEパターンが一致し,簡易水道を介した集団感染と考えられた.
A町の大部分は数十世帯ごとに簡易水道が設置され,管理は使用者に任されている.速やかな行政の介入により,B集落の簡易水道の管理が不十分であることが判明し,直ちに対策が講じられた.
感染症の集団発生を疑った場合には,生活環境も含めた詳細な問診,行政との連携が重要である.
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【症例報告】
■題名
止血困難な大量下血に対してバソプレシン持続動注療法が有効であったCrohn病の1例
■著者
沖縄県立中部病院小児科 吉年 俊文 岩間 達 豊浦 麻記子 金城 さおり 小濱 守安
■キーワード
Crohn病, 大量消化管出血, バソプレシン
■要旨
複数回の経カテーテル動脈塞栓術(TAE)でも止血困難であった大量の下部消化管出血に対して,バソプレシン持続動注療法が有効であった小児Crohn病の1例を経験した.Paris分類A1b,L3,B2,G0,PCDAI(Pediatric Crohn's Disease Activity Index)47.5点,CDAI(Crohn's Disease Activity Index)251点であり,中等度のCrohn病として,絶食後に完全成分栄養療法を開始したが,その後から大量下血を認めるようになった.ステロイド,5-ASA,メトロニダゾールを開始したが止血せず,複数回のTAEやアダリムマブ投与でも止血しなかった.輸血が必要な下血を頻回に認めるため,外科的消化管切除術も考慮されたが,バソプレシン持続動注療法にて完全止血を得た.小児Crohn病における大量下部消化管出血に対するバソプレシン持続動注療法の報告例は少ないが,手術を選択する前に考慮しても良い治療法と思われる.
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【論策】
■題名
小児在宅医療を支える地域医療機関の現状と今後の連携
■著者
三重大学医学部附属病院小児トータルケアセンター1),三重県小児科医会会長2),三重大学医学部附属病院小児科3) 岩本 彰太郎1)3) 山城 武夫2) 駒田 美弘3)
■キーワード
小児在宅医療, 地域医療連携, レスパイト, 短期入所
■要旨
医療的ケアを要する子どもと家族を支える在宅医療体制には,介護保険制度下での在宅高齢者支援とは異なる課題が存在する.特に,医療依存度の高い超重症児では,診療所やレスパイト施設の受入体制の整備不足,家族負担の増大及び入院の長期化等の問題から,組織的体制構築が急務である.今回,三重県の小児在宅に関わる医療機関の現状を把握し,今後の連携を検討するために,NICUを含む小児拠点病院,診療所及びレスパイト・短期入所事業を実施する医療型障害児入所施設に対してアンケート調査を行った.医療的ケアを要する子どもを送り出す側である小児拠点病院では,在宅連携先や長期入院児に関して課題を抱える一方で,地域の受け皿となる診療所では,その多くが重症児診療への対応を困難と感じており,訪問診療できる施設は極めて限定的であることが分かった.また,在宅療養支援診療所の中には,小児在宅診療への条件として小児科専門医との連携をあげる施設が存在し,今後の地域連携整備を計画する上で重要な情報となった.次に,レスパイトを含む短期入所に関しては,各施設が独自の受入基準を設定しており,特に超重症児の受入れ可能な施設は県内1か所のみと地域偏在化が明確となった.
医療的ケアを要する子どもと家族を支援する在宅医療体制の構築には,更なる普及啓発活動を実施すべきであり,また従来の地域・診療科枠を超えた連携を推し進める取組が必要と思われた.
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【論策】
■題名
重症児の一般病院小児科における短期入所(入院)の実態と課題
■著者
NTT東日本札幌病院小児科1),森之宮病院小児神経科2),うめはらこどもクリニック3),広島国際大学医療経済学部4),エバラこどもクリニック5),神奈川県総合リハビリテーションセンター小児科6),北海道療育園7),神奈川県立こども医療センター新生児科8),土浦協同病院小児科9),大阪市立住吉市民病院小児科10) 日本小児科学会小児医療委員会・長期入院児の移行問題ワーキンググループ 森 俊彦1) 荒井 洋2) 梅原 実3) 江原 朗4) 江原 伯陽5) 栗原 まな6) 平元 東7) 星野 陸夫8) 渡辺 章充9) 舟本 仁一10)
■キーワード
重症心身障害児, 在宅医療, 短期入所, レスパイト
■要旨
重症心身障害児を含む重症児の在宅医療を行う上で短期入所の必要性が高いといわれている.重症心身障害児(者)施設(医療型障害児入所施設)では短期入所を積極的に受け入れるようになってきているが十分に対応できてはおらず,一般病院小児科での実施の必要性が考えられている.今回,全国の一般病院小児科での短期入所(入院)の実態と課題についてアンケート調査を行った.回収率は360/517(70%)で,急性期病床を使って重症児の短期入所(入院)を行っている施設は135施設(38%),専用病床のある施設は15施設(11%)で,特別な看護体制があるのは4施設(4%)であった.短期入所(入院)の実績では1〜5例/年が69施設(57%)と多く,50例以上/年は11施設(9%)のみであった.短期入所(入院)を行っていない223施設(62%)のうち62%は「看護師の数」,「制度としてのレスパイトの確立」などの条件がそろえば今後受け入れ可能としていた.小児科専門医の研修プログラムに重症児の研修を入れている施設は19施設(5%)で,プログラムにはないが研修させている施設は127施設(37%)であった.今後,一般病院小児科で重症児の短期入所(入院)が行われるようになるためには,レスパイトが制度として確立し,診療報酬上の加算があり,病院として収益がでるシステムの構築と重症児に関わる人材の育成が必要である.
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