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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:14.8.21)
第118巻 第8号/平成26年8月1日
Vol.118, No.8, August 2014
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日本小児循環器学会推薦総説 |
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市田 蕗子 1181 |
日本小児神経学会推薦総説 |
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交通事故による小児の脳外傷:事故の実態から予防まで
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栗原 まな 1190 |
原 著 |
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西村 直子,他 1202 |
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竹田 洋子,他 1208 |
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上田 理誉,他 1213 |
症例報告 |
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壹岐 陽一,他 1219 |
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末松 正也,他 1224 |
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岡本 年男,他 1229 |
論 策 |
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中嶋 敏紀,他 1237 |
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地方会抄録(熊本・東京・東海・静岡・佐賀・山陰・福岡・北陸・福井)
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1241 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 50 新しいタイプの洗剤(1回分パックタイプ洗濯用液体洗剤)の誤飲
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1293 |
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【原著】
■題名
LAMP法により病原体診断された小児クラミジア肺炎の5例
■著者
江南厚生病院こども医療センター 西村 直子 尾崎 隆男 後藤 研誠 武内 俊 服部 文彦 堀場 千尋 伊佐治 麻衣 岡井 佑 細野 治樹 竹本 康二
■キーワード
クラミジア肺炎, loop-mediated isothermal amplification(LAMP), 抗クラミジアニューモニエ抗体
■要旨
Chlamydophila pneumoniae(C. pneumoniae)は小児市中肺炎の起因病原体として重要であるが,日常診療で急性期に診断可能な検査法は少なく,わが国における小児クラミジア肺炎の実態はよくわかっていない.今回,2009年4月から2011年8月の2年5か月間に,肺炎の診断で入院した小児1,134例を対象に,loop-mediated isothermal amplification(LAMP)法を用いてC. pneumoniae DNAの検出を試みた.5例(0.4%)がDNA陽性であり,クラミジア肺炎と病原体診断された.ペア血清(急性期と回復期)において,4例はC. pneumoniae IgM高値(index≥2.00)を示し,1例はIgM抗体の陽転を認めた.また,5例中2例はMycoplasma pneumoniaeとの重感染が確認された.患者の年齢は4〜13歳で,全例が38.5℃以上の発熱を伴い,3例でCRP≥2.0 mg/dl,1例でWBC≥10,000/μLを示した.クラミジア肺炎に特徴とされる遷延する咳嗽と喘息既往例での喘鳴を認めたのは各1例と少なく,臨床症状からクラミジア肺炎を疑うことは困難と思われた.全例がクラリスロマイシンの投与で治癒し,合併症を認めなかった.クラミジア肺炎の診療において,迅速に病原体診断が可能なLAMP法は有用と考えられる.
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【原著】
■題名
重症心身障害児・者へのレボカルニチン投与後のカルニチンおよび生化学的検査値の変化
■著者
東大寺福祉療育病院小児科1),奈良女子大学生活環境学部2) 竹田 洋子1) 富和 清隆1) 金 一1) 川口 千晴1) 東山 幸恵2) 永井 亜矢子2) 久保田 優2)
■キーワード
重症心身障害児・者, カルニチン欠乏症, レボカルニチン, 尿酸, 脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント
■要旨
【目的】重症心身障害児・者(重症児)ではカルニチン欠乏の頻度が高く,要因として経管栄養や抗てんかん薬のほかに,筋肉量が少ないためにカルニチンの貯蔵が少なく,栄養摂取や薬剤の影響を受けやすいことが示唆されている.今回我々は重症児にレボカルニチンを投与し,前後のカルニチンおよび種々の生化学的検査値を比較した.
【対象と方法】重症児26名を対象とし,レボカルニチン30 mg/kg/日を2週間投与(短期投与)前後の血清カルニチン,尿酸,アンモニア,ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-pro BNP)のほか種々の生化学的検査を行った.カルニチン投与を中止した場合低下を来たすリスクが高い20名にはさらに10か月継続(長期投与)し,同様の検査を実施した.
【結果】投与前の総・遊離・アシルカルニチン値は平均して基準値より低かったが,短期投与後いずれもほぼ全例で正常化した.尿酸・NT-pro BNPは投与後有意に改善した.アンモニアの低下は有意ではなかったが,投与前に高値であった9例のうち8例で低下がみられた.長期投与によりカルニチン値はよく維持された.また,尿酸・コリンエステラーゼは短期投与終了後に比べて有意に低下した.
【結論】低カルニチン血症の見られる重症児へのカルニチン投与は短期間で極めて有効であり,その結果,種々の生化学的検査改善の効果も見られた.
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【原著】
■題名
小児専門病院における乳幼児突発性危急事態112例
■著者
国立成育医療研究センター総合診療部1),同 手術集中治療部2) 上田 理誉1) 前川 貴伸1) 野村 理1) 石黒 精1) 阪井 裕一1) 中川 聡2)
■キーワード
ALTE, 乳幼児突発性危急事態, 乳児, 反復, 予後
■要旨
突発性危急事態(apparent life threatening events;ALTE)症例の臨床像を明らかにするために,国立成育医療研究センター救急センターで,2002年3月から2012年1月の期間にALTEと診断した112症例の乳児(すべて1歳未満)について,診療録を用いた後方視的検討を行った.男女比は,55:57,週齢は0から49(中央値7週)であった.在胎36週以前に出生した児は9例(8%),基礎疾患のあるものは16例(14%)であった.ALTE発症時の症状は,顔面蒼白79%,筋緊張低下43%,呼吸障害32%,全身チアノーゼが26%であった.ALTE原因精査のため,ほぼ全例に血液ガス分析,血算,生化学検査,血液培養検査,心電図,胸部X線写真を施行した.最終診断は胃食道逆流症が27%で最多であった.19症例は入院後にALTEを反復し,5例(4%)が初回ALTE発生から1か月以上経た遠隔期にALTEを反復した.半年の予後が追跡できた79例のうち1例が死亡した.ALTE症例では,死亡例や退院後の反復例があり,慎重な追跡が必要である.今回の検討では,神経学的予後についての調査ができていないので,今後の検討課題である.
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【症例報告】
■題名
低カリウム血症性周期性四肢麻痺症状を契機にBasedow病の診断に至った1例
■著者
公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院 壹岐 陽一 中村 由恵 中田 昌利 水本 洋 吉岡 孝和 塩田 光隆 羽田 敦子 渡辺 健 秦 大資
■キーワード
バセドウ病, 甲状腺中毒症, 周期性四肢麻痺, 筋力低下, 低カリウム血症
■要旨
周期性四肢麻痺症状を契機にバセドウ病の診断に至った小児例を経験した.症例は15歳男児.起床後の歩行困難を主訴に受診した.来院時下肢優位の四肢筋力低下,K 2.0 mEq/lと低K血症を認め低K血症性の周期性四肢麻痺と診断した.心電図上1度房室ブロックとQT延長を認めたため経静脈的なK補充を開始した.治療開始6時間後にはK 4.2 mEq/lまで上昇し,心電図変化,筋力低下は改善した.びまん性の甲状腺腫大に加え,血液検査上TSH 0.010 μIU/ml以下,fT3 30.0 pg/ml以上,fT4 4.27 ng/dlと甲状腺機能亢進症を認めた.超音波検査にてびまん性の甲状腺腫大と血流増加を認め,後日TSHレセプター抗体185 IU/lと上昇を認めたためバセドウ病の診断に至った.第2病日よりチアマゾール30 mg/日,K製剤,プロプラノロール30 mg/日内服を開始.第5病日,日中に過食した後に夜間に筋力低下の再発を認めたが,以後は症状の再発なく第9病日に退院となった.小児領域での低K血症性周期性四肢麻痺の原因としては,家族性周期性四肢麻痺の頻度が高く,甲状腺中毒性周期性四肢麻痺の報告は稀である.重篤な不整脈を合併する可能性があり,また発作の予防には甲状腺機能の正常化が必須であるため,筋力低下の症状を認める際には,甲状腺中毒性周期性四肢麻痺も原因として念頭に置くべきと考えられる.
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【症例報告】
■題名
菌血症を合併した化膿性閉鎖筋炎の1例
■著者
公立南丹病院小児科1),ふじわら小児科内科医院2) 末松 正也1) 山口 美穂子1) 阪上 智俊1) 勝見 良樹1) 小田部 修1) 伊藤 陽里1) 藤原 史博2)
■キーワード
化膿性筋炎, 股関節痛, 閉鎖筋, 菌血症, MRI
■要旨
化膿性筋炎は骨格筋の細菌感染症で稀な疾患であるが,治療が遅れると重篤な全身性の病変に進展しうるため,早期診断が重要となる.我々は,突然の発熱と股関節痛で発症した化膿性閉鎖筋炎の男児例を経験したので報告する.症例は9歳男児.2週間程前に転倒し左膝部に擦過傷を認めたが自然軽快した.その後,突然の高熱と左股関節痛を認め,第2病日に症状が増悪したため近医受診,当院紹介受診となった.疼痛強く歩行困難で,左鼠径部内側に強い圧痛を認めた.血液検査でWBC 11,810/μl,CRP 5.2 mg/dlと炎症反応の上昇あり,股関節MRI検査で左閉鎖筋にT2WI及びSTIRで高信号を認めた.化膿性閉鎖筋炎と診断しcefazolin点滴静注を開始した.血液培養から黄色ブドウ球菌を検出した.治療反応は良好で,第6病日に解熱し,第11病日には炎症反応は正常化,血液培養も陰性となった.左股関節の疼痛も消失し,第15病日にcefdinir内服に切り替え退院となった.感染経路として,自験例はフットサルクラブに所属しており,フットサルの練習により生じた軽微な筋組織の損傷部に,左膝部の擦過傷から血行性に感染が成立したものと考えた.今回,MRI検査により早期診断が可能となり,保存的治療のみで経過良好であった.発熱,股関節痛を主訴とする患児では化膿性筋炎も鑑別に挙げ,MRI検査による迅速な診断が重要であると考えられた.
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【症例報告】
■題名
「致死性」とされる骨系統疾患の5例
■著者
旭川医科大学病院周産母子センター新生児科1),旭川医科大学小児科2),網走厚生病院小児科3) 岡本 年男1) 川田 友美2) 浅井 洋子1) 土田 悦司1) 野原 史勝1) 北村 宏之3) 佐々木 吉明3) 長屋 建1) 東 寛2)
■キーワード
骨系統疾患, 致死性, 予後, 呼吸管理, 胎児診断
■要旨
成書には予後不良と記載されている,いわゆる「致死性」骨系統疾患の長期生存例の報告が散見されるようになってきている.当院でも重症骨系統疾患の様々な臨床経過を経験しており,その詳細を報告する.症例は屈曲肢異形成症,扁平椎異形成症,Torrance型,分節異常骨異型性症,Rolland-Desbuquois型,耳口蓋指症候群2型,短肋骨多指症候群3型各1例の計5例である.5例中3例で胎児骨CTが施行され,家族と出生前に対応が話し合われていた.全例で出生時に蘇生が行われ,肺低形成が高度であった1例を除く4例が長期生存していた.生存例全例で気管切開が行われ,2例は人工呼吸管理を継続しているが,そのうち1例を含む3例は退院可能であった.いわゆる「致死性」骨系統疾患では肺低形成の程度が生命予後を左右するが,必ずしも致死的な経過をたどる訳ではない.しかし救命可能でも原疾患を根治することはできないため,呼吸障害を始めとする様々な全身の合併症は児の生涯にわたる問題となる.また救命できない症例も存在するため,胎児診断を踏まえた症例毎の対応が必要である.
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【論策】
■題名
ビタミンK個別包装製剤の週1回投与に関する保護者アンケート調査
■著者
北九州市立医療センター小児科 中嶋 敏紀 江島 多奉 竹ノ下 由昌 小窪 啓之 宗 秀典 松本 直子 野口 貴之 日高 靖文
■キーワード
ビタミンK個別包装製剤, ビタミンK欠乏性出血症, アンケート調査, アドヒアランス
■要旨
2011年に「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版)」が策定され,生後3か月までのビタミンK製剤週1回投与が選択肢として付記された.しかし保護者が児へ週1回内服させることに関する問題点はあまり知られていない.対象は2011年10月〜2012年9月に当院総合周産期母子医療センターで出生した458名の児の保護者.小児科医がビタミンK製剤週1回投与法,アンケート調査について説明し,週1回内服を希望されアンケート調査に同意された保護者へ調査用紙(無記名)を配布した.内容は週1回内服が可能であったか,困ったことはあったか,および自由意見とした.アンケートは1か月,4か月健診時に回収した.458名のうち449名(98%)が週1回内服を希望した.1か月健診のアンケート回収率は97%,予定通り内服できたのは85%であった.92%が1か月以降も週1回内服を希望した.4か月健診のアンケート回収率は42%で,77%が予定通り内服できていた.内服できなかった理由は「忘れていた」が最も多く,困ったことは「哺乳瓶を嫌がって飲まなかった」,「飲ませにくかった」という意見が目立っていた.医療者側の適切な情報提供,飲ませ忘れの防止,飲ませ方の指導・工夫で,服薬アドヒアランスを更に向上できると思われた.
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