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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:14.6.18)
第118巻 第6号/平成26年6月1日
Vol.118, No.6, June 2014
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総 説 |
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田中 裕子,他 899 |
原 著 |
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伊藤 正寛,他 904 |
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近藤 梨恵子,他 910 |
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田辺 卓也,他 917 |
症例報告 |
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小杉 陽祐,他 923 |
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塩田 勉,他 930 |
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渡部 達,他 937 |
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清水 正樹,他 942 |
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石垣 瑞彦,他 946 |
論 策 |
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三浦 清邦,他 952 |
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地方会抄録(兵庫・京都・群馬・甲信越・福井・栃木・愛媛・青森・北陸・
富山・石川・佐賀・山口・山形・福岡・沖縄)
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958 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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1033 |
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【総説】
■題名
新生児聴覚スクリーニング実施状況と先天性難聴の原因調査
■著者
国立病院機構別府医療センター小児科 田中 裕子 後藤 真希子 古賀 寛史
■キーワード
新生児, 聴覚スクリーニング, 先天性難聴, 遺伝性難聴
■要旨
2009年から2013年までの4年間で大分県東部地域における先天性難聴の発生数と原因に関する調査を行った.対象地域の分娩施設において聴覚スクリーニング検査はほぼ全例で実施されていた.4年間のスクリーニング実施者数8,392例中,25例(0.3%)が先天性難聴であった.先天性難聴と診断された25例のうち,症候性難聴が10例(40%)であった.非症候性難聴15例のうち,10例に難聴関連遺伝子解析を行い,2例(20%)にGJB2遺伝子変異を同定した.今回の調査によって,国内の特定地域においても過去の疫学調査とほぼ同等の頻度で先天性難聴およびGJB2遺伝子変異が発生していることを確認できた.症候性難聴の原因は多岐にわたっていた.先天性難聴児の診療に携わる小児科医は,難聴関連遺伝子および症候性難聴に関連した先天異常について理解しておくことが重要である.
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【原著】
■題名
第3期MRワクチン接種の取り組み
■著者
京都市保健所1),京都市市医会2) 伊藤 正寛1) 竹内 宏一2)
■キーワード
麻疹, MRワクチン, 予防接種, 集団接種
■要旨
麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)は平成20年4月1日から25年3月31日までの5年間の時限措置として第3期(中学1年生相当)および第4期(高校3年生相当)に定期接種が行われた.京都市は平成20年度の接種に対して広報活動や個別接種勧奨を行ったが第3期の接種率は86%であったので,第3期の接種率向上を目的に平成21年度から市立中学校における集団接種方式による接種を導入した.対象は平成21年度から24年度の市立中学校1年生の総在籍者41,381人である.在籍者のうち40,900名(98.8%)から予診票を回収した.回収した者のうち32,657名(79.8%)が接種を希望した.接種希望者のうち30,946名(94.8%)に接種を実施し,86名(0.3%)が体調の変化を訴えたが,重篤な副反応は認められなかった.集団接種を行った30,946名は第3期MRワクチン接種対象者総計48,168人の64.2%であった.各年度末にMRワクチン未接種者に対して個別接種を勧奨した.集団予防接種により平成21年度以後の第3期麻しんワクチン接種率(MRワクチン接種対象者数における集団または個別によるMRワクチン接種者数および麻しん単抗原ワクチン接種者数の合計数の率)は95%以上であった.集団接種方式は個別接種と同様に健康状態を把握することを条件にすれば感染症の公衆衛生学的な対策として有効な手段である.
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【原著】
■題名
針リンパ節穿刺吸引細胞診の診断による小児期組織球性壊死性リンパ節炎
■著者
徳島赤十字病院小児科 近藤 梨恵子 渡邉 力 久保田 真理 富本 亜由美 谷口 多嘉子 七條 光市 高橋 昭良 中津 忠則
■キーワード
組織球性壊死性リンパ節炎, 小児期, 臨床所見, 針リンパ節穿刺吸引細胞診
■要旨
2007年4月より2012年9月までに,当院で経験した組織球性壊死性リンパ節炎15例について検討した.14例において,急性期に針リンパ節穿刺吸引細胞診を行い,12例で確定,2例は疑診とした.患者の年齢は4〜16歳(中央値11.0歳),男女比は9:6であった.全ての患者が発熱し,発熱期間は発症から解熱まで5〜27日(中央値12.0日)であった.全ての患者に頸部リンパ節腫脹が認められ,腫脹したリンパ節の大きさは最大径が3 cm未満であった.診断時の白血球数は1,450〜3,510 /μL(中央値2,180 /μL),血清LDHは212〜1,448 IU/L(中央値426 IU/L),血清フェリチンは27〜3,035 ng/mL(中央値231/mL)で,血清可溶性IL-2受容体は230〜1,246 U/mL(中央値756 U/mL)であった.抗核抗体は検査した7例中で1例が320倍陽性であった.12例がプレドニゾロンで治療され,うち9例は1日以内,3例は2〜4日以内に解熱し,リンパ節腫脹も消退した.残り3例は自然経過で解熱した.1例のみ14か月後に再発したが,全身性エリテマトーデスなどの膠原病を合併するものはなかった.臨床所見と合わせて考えると針リンパ節穿刺吸引細胞診は組織球性壊死性リンパ節炎の診断に有用であると思われた.
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【原著】
■題名
熱性けいれん,てんかん,重症心身障害をもつ小児へのワクチン接種のアンケート調査
■著者
大阪小児科医会学術部会1),大阪小児科医会2),田辺こどもクリニック3),にしむら小児科4),くろせ小児科5),山崎こどもクリニック6),市立池田病院小児科7),浅香山病院小児科8),にしじまファミリークリニック9),松下こどもクリニック10),うにし小児科11),小川クリニック12) 田辺 卓也1)3) 西村 龍夫1)4) 黒瀬 裕史1)5) 山崎 剛1)6) 牧 一郎1)7) 今北 優子1)8) 西嶋 加壽代1)9) 松下 享1)10) 卯西 元1)11) 小川 實2)12)
■キーワード
熱性けいれん, てんかん, 重症心身障害児(者), 予防接種, ガイドライン
■要旨
熱性けいれん(Fs),てんかん(Epi),重症心身障害児への予防接種基準の一般小児科医における認知度と疑問点を調査した.対象は大阪小児科医会会員655人で,アンケート調査を行い,回答は219名(回収率33.4%)から得られた.Fsで193人,Epiで162人,重症心身障害児で140人が基準を「よく知っていた」,「大体知っていた」と回答した.Fs最終発作からの経過観察期間2〜3か月は「適切」143人,「より短く」38人,「いつでも可」32人であった.重積既往例は「禁忌」6人であった.Epiコントロール良好例では,最終発作からの経過観察期間2〜3か月が「適切」159人,「より短く」19人,「いつでも可」24人であった.難治例では「禁忌」10人,「経過観察期間の設定」15人,「主治医の意見」12人で,発熱で発作誘発されるEpiは「禁忌」13人,「主治医の意見」13人であった.重症心身障害児で,発育障害がある場合9人,接種対象年齢を超えた場合16人,てんかん発作のある場合11人,原疾患が特定されていない場合16人が「改訂が必要」と回答し,多くは主治医の許可や連携を求めた.Fsやコントロール良好Epiでは,接種医はその接種基準をよく理解しており,また,経過観察期間を短縮することが可能であると回答した.一方,難治例や重症心身障害児では接種医の不安があり,主治医との連携が重要である.
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【症例報告】
■題名
新生児期にけいれんが先行した乳児型低フォスファターゼ症の1例
■著者
北海道立子ども総合医療・療育センター新生児内科1),同 神経内科2),大阪府立母子保健総合医療センター環境影響部門3) 小杉 陽祐1) 浅沼 秀臣1) 星野 陽子1) 野口 聡子1) 石川 淑1) 新飯田 裕一1) 福村 忍2) 道上 敏美3)
■キーワード
低フォスファターゼ症, Hypophosphatasia, ビタミンB6反応性発作, 新生児発作
■要旨
新生児期に痙攣を認め,遺伝子検査にて診断に至った乳児型低フォスファターゼ症(Hypophosphatasia,以下HPP)の1例を経験した.症例は日齢7の男児で,日齢3より徐々に痙攣様運動の頻度が増加していた.入院時に呼吸障害は認めず,血清ALP 37 U/lと著明に低値であった.痙攣はミダゾラム,フェノバルビタールで完全には抑制できず,脳波異常が持続した.ビタミンB6製剤にて発作は抑制され,脳波も改善した.ビタミンB6反応性発作,長管骨のくる病様所見,高カルシウム血症および尿中PEA高値を認めた.遺伝子検査でALPL遺伝子においてF310del/c.1559delTの複合ヘテロ接合体であることが判明し,臨床症状と併せ乳児型HPPと確定した.ビタミンB6製剤にて痙攣はコントロールされ,低カルシウム乳にて高カルシウム血症も軽快したため,日齢37に自宅退院した.生後2か月より徐々に呼吸障害が出現したため,生後3か月より人工呼吸器管理となっている.
現在のところHPPの根本的治療は存在しないが,海外において酵素補充療法の治験が開始され,効果が期待されている.
本症例のように,新生児発作において抗痙攣薬に抵抗性の場合にはビタミンB6反応性発作の可能性を考慮することが重要である.また,新生児期には呼吸障害を認めない症例でもその後の経過で呼吸障害の増悪を認める症例があり,注意が必要である.
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【症例報告】
■題名
多量のイオン飲料摂取によりWernicke脳症を呈した乳児例
■著者
静岡県立こども病院救急総合診療科1),同 神経科2) 塩田 勉1) 渡邉 誠司2) 京極 敬典1) 加藤 寛幸1) 奥村 良法2) 愛波 秀男2)
■キーワード
Wernicke脳症, イオン飲料, ビタミンB1, 体重減少, 嘔吐
■要旨
我々は,イオン飲料の多量摂取により,ビタミンB1欠乏を発症した乳児例を経験した.
症例は10か月女児.補水目的で生後7か月頃から約4か月間,イオン飲料を1日1 L以上摂取する食生活を続け,嘔吐で発症した.健診で体重減少と退行に気づかれた.頭部MRIではT2強調像とFLAIR像で,両側の基底核と視床内側に高信号域を認め,ビタミンB1が低値であったためWernicke脳症と診断した.早やかにビタミンB1を経静脈的に補充し,症状は改善した.
Wernicke脳症は,小児では嘔吐などの非特異的な症状で発症することが多く,早期の診断が難しい.しかし,イオン飲料多飲などの病歴があった場合には積極的に疑い,神経学的後遺症を残さないために,早やかにビタミンB1の補充を開始し,画像検査を進めていくべきである.また,同様の症例の再発を防ぐために,イオン飲料多飲の弊害について,医療従事者及び保護者への啓発をしていかなければならない.
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【症例報告】
■題名
妊娠性血小板減少症母体から出生したHLA抗体陽性の新生児同種免疫性血小板減少症
■著者
磐田市立総合病院小児科 渡部 達 松田 智香 北形 綾一 田島 巌 小野 裕之 平野 恵子 白井 眞美 遠藤 彰 本郷 輝明
■キーワード
新生児血小板減少症, 新生児同種免疫性血小板減少症, 妊娠性血小板減少症, human leukocyte antigen, human platelet antigen
■要旨
今回我々は妊娠性血小板減少症母体から出生したhuman leukocyte antigen(HLA)抗体陽性の新生児同種免疫性血小板減少症例を経験したので報告する.症例は日齢0の男児.母に妊娠性血小板減少症があった.在胎38週1日に3,230 gで出生し,生後4時間で低体温を主訴にNICUに入院し加療した.低血糖,低体温についてはすみやかに改善したが,日齢1に血小板数10.2万/μLと減少し,日齢3に2.5万/μLまで低下した.血小板輸血やγグロブリン投与は行わずに血小板数は自然軽快し,紫斑や頭蓋内出血などの合併症なく日齢6で退院した.母親血清と父親血小板の交差試験が陽性となり,新生児同種免疫性血小板減少症と診断した.妊娠性血小板減少症母体出生児は血小板数に注意する必要がある.
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【症例報告】
■題名
Pathydermodactylyの1例
■著者
金沢大学医薬保健研究域医学系小児科1),富山県立中央病院小児科2) 清水 正樹1) 五十嵐 登2) 谷内江 昭宏1)
■キーワード
Pathydermodactyly, 若年性特発性関節炎
■要旨
Pathydermodactylyは,両手指の近位指節間(PIP)関節周囲の軟部組織の紡錘状の腫脹を特徴とする原因不明の稀な良性疾患である.本症では,複数の手指のPIP関節の腫脹を認めることから,多関節型若年性特発性関節炎との鑑別が重要となる.症例は14歳男児.6か月前から認める両手2,3,4指PIP関節の腫脹を主訴に受診.腫脹は2,3,4指の側面に認めたが,腫脹部位に熱感や圧痛はなく,関節可動域制限も認めなかった.血液検査では,炎症反応は陰性であった.手単純レントゲン検査,手MRI検査では骨や滑膜には異常を認めず,軟部組織の腫脹を認めた.腫脹部の皮膚生検で,表皮の角質増生と肥厚,真皮の膠原繊維の増加を認め,これらの所見から,Pathydermodactylyと診断した.両手指のPIP関節の腫脹を呈する小児において,腫脹部位に圧痛や熱感がなく,血液検査で炎症所見がない場合には,Pathydermodactylyを鑑別すべきである.
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【症例報告】
■題名
血管輪術後に遷延性呼吸障害をきたし診断に難渋した喉頭気管食道裂の1例
■著者
日本赤十字社医療センター小児科1),同 新生児科2) 石垣 瑞彦1)2) 兒玉 祥彦2) 土屋 恵司1) 川上 義2)
■キーワード
喉頭気管食道裂, 喉頭裂, 血管輪, 気管軟化症
■要旨
新生児期早期に血管輪解除術を行うも,呼吸障害が遷延し喉頭気管食道裂と診断した症例を経験した.血管輪および気管軟化の合併,喉頭気管食道裂への認識の低さ等の要因が重なり診断に,約6か月を要した.
喉頭食道気管裂は,先天的に喉頭・気管と背側の下咽頭・食道の隔壁が欠損する奇形で,気道系と消化器系の交通により様々な呼吸障害を呈する稀な疾患である.疾患概念浸透のため,病態および本邦の症例報告例をまとめ,その臨床像を検討した.本症は,裂の深さにより致死的経過をとる症例があり,早期診断のため新生児期の誤嚥に対して気道消化器系の交通の原因となる本症を考慮し,積極的に気管支鏡を行う必要がある.また,本症例は血管輪術後に遷延性の呼吸障害を呈し,喉頭気管食道裂の診断に難渋しており,一元的には考えられない病態を的確に評価する必要性が再認識された.
新生児期より誤嚥による呼吸障害をきたす疾患として,稀ではあるが,食道気管食道裂を鑑別疾患として考慮し,積極的な気管支鏡検査により早期診断することが大切である.
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【論策】
■題名
医学部学生に対する重症心身障害児(者)医療教育の現状
■著者
名古屋大学大学院医学系研究科障害児(者)医療学寄附講座1),熊本大学病院重症心身障がい学寄附講座2),愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所教育・福祉学部3),名古屋大学大学院医学系研究科小児科学4) 三浦 清邦1) 松葉佐 正2) 長谷川 桜子3) 小島 勢二4)
■キーワード
医学大学教育, 重症心身障害者, 重症心身障害児施設, 臨床実習, 障害者医療
■要旨
大学小児科における医学生に対する重症心身障害児(者)(以後重症児(者)と略す)医療教育に関するアンケート調査を行った.【結果】80大学中72大学から回答がえられ回収率は90%であった.重症児(者)医療教育は37大学(51%)で行われ,講義は28大学(39%),臨床実習は24大学(33%)で実施されていた.講義と臨床実習ともに実施されていたのは16大学(22%)であった.臨床実習を全学生に実施していたのは18大学(25%)であった.さらに,臨床実習を重症心身障害児施設で実施していたのは16大学(22%)であり,11大学(15%)が全学生に対して実施していた.全学生に対する重症心身障害児施設での臨床実習は,医学部5年生に対して1日間の実習の大学が多数であった.一方,重症児(者)医療教育は必要と考えながらも未実施の大学が20大学あり,理由は,カリキュラム上の問題・教育施設がない・適切な担当者がいない等であった.【考案および結論】臨床に従事する医師は,将来,重症児(者)に関わることになる.学生時代に,重症児(者)の特殊な病態,治療法,また,家族の思い,福祉制度等を学ぶことは,すべての医学生にとって必須だと思われる.さらに多くの大学において重症児(者)医療教育が実施されるように,大学への教官の配置,重症心身障害児施設等との協力体制の構築など,今後の検討が必要と思われる.
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