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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:14.3.28)
第118巻 第3号/平成26年3月1日
Vol.118, No.3, March 2014
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日本小児心身医学会推薦総説 |
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小柳 憲司 455 |
総 説 |
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伊藤 泰雄 462 |
原 著 |
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辻岡 孝郎,他 475 |
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細川 真一,他 481 |
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目澤 秀俊,他 487 |
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起塚 庸,他 494 |
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村上 知隆,他 500 |
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神谷 博,他 505 |
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伊地知 園子,他 510 |
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川本(及川) 愛里,他 518 |
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田上 幸治,他 523 |
短 報 |
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山下 哲史,他 527 |
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531 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert (傷害速報) |
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586 |
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588 |
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2014年56巻1号2月号目次
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【総説】
■題名
哺乳障害を伴う舌小帯短縮症患児に対する舌小帯切開の有用性
■著者
国際医療福祉大学熱海病院小児科・小児外科 伊藤 泰雄
■キーワード
舌小帯短縮症, 舌小帯切開術, 哺乳障害, GRADE, systematic review
■要旨
2001年,日本小児科学会倫理委員会舌小帯短縮症手術調査委員会は「舌小帯短縮症に対する手術的治療に関する現状調査とその結果」の報告で舌小帯短縮症のほとんどは切開する必要がないと結論した.以来,わが国では舌小帯を切開する小児科医はほぼ皆無となった.ところが最近,欧米を中心に哺乳障害を伴う舌小帯短縮症に対して舌小帯切開が有効であるとするRCTや観察研究が数多く報告されている.そこで著者は最近,EBMに基づくガイドライン作成の主流であるGRADEシステムに則り,「哺乳障害を伴う舌小帯短縮症患児に対して,舌小帯切開は,哺乳指導のみに比べて,哺乳を改善するか?」というクリニカルクエスチョンを設定して,哺乳・吸啜,乳頭痛の2つの最重要アウトカムと,哺乳量,母乳継続,体重,有害事象,母子のストレスの5つの重要アウトカムについてエビデンスの強さを検討した.レビューの対象となった論文は,組み入れ基準に従って絞り込んだRCT4件と観察研究12件である.アウトカム毎に論文のバイアス(グレードダウン因子)と大きい効果などのグレードアップ因子を検討し,エビデンス総体としての強さを評価した.その結果,全てのアウトカムにおいて舌小帯切開術の有用性が認められ,かつ問題とするような有害事象がみられないことから,「哺乳障害を伴う舌小帯短縮症患児に対して,舌小帯切開は有用である」(中等度のエビデンスの強さ)と結論した.
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【原著】
■題名
入院症例における急性巣状細菌性腎炎と急性腎盂腎炎の臨床像の比較
■著者
KKR札幌医療センター小児科 辻岡 孝郎 大島 由季代 津曲 俊太郎 縄手 満 簗詰 紀子 吉岡 幹朗 鹿野 高明 高橋 豊
■キーワード
急性巣状細菌性腎炎, 腎盂腎炎
■要旨
平成18年4月1日から平成24年3月31日に当科にて入院加療された急性巣状細菌性腎炎9例と急性腎盂腎炎91例を比較検討した.前者では,解熱までに要した日数や入院期間が有意に長く,嘔吐・腹痛などの随伴症状を伴なう例が有意に多く,年齢が有意に高かった.CRP・尿中β2ミクログロブリンが有意に高値であった一方,尿沈渣で膿尿を認めない例が有意に多かった.起炎菌は全例で大腸菌以外であり,治療開始後に抗菌薬を変更した症例も有意に多かった.画像検査では,エコー検査で尿管拡張,腎腫大,腎実質内の腫瘤性病変を認める症例が有意に多く,膀胱尿管逆流の合併率や,回復期に腎瘢痕を形成していた症例の割合も有意に多かった.
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【原著】
■題名
HIV母子感染予防対策実施42症例
■著者
国立国際医療研究センター小児科1),埼玉医科大学病院小児科2),大野台クリニック3) 細川 真一1) 赤平 百絵1) 國方 徹也1)2) 宮澤 廣文1)3) 松下 竹次1)
■キーワード
Human Immunodeficiency Virus(HIV), 母子感染, 新生児
■要旨
国立国際医療研究センター小児科において,1999年から2010年までの11年間にHIV母子感染予防対策を実施した42例に関して,その臨床像を検討したので報告する.内訳は,男児21例/女児21例で性別差なく,母の国籍も日本21例/外国21例と半数ずつであった.在胎週数の中央値が36週3日,出生体重の中央値が2,552.5 gで,全体に早産,低出生時体重の傾向が認められた.全例にアジドチミジン(azidothymidine,以下AZT)を基本とした予防内服を実施し,全例にHb 12.0 g/dl未満に低下する貧血を認めた.先天感染1例を除き,1歳半時点でのHIV-RNAは全例陰性であって,神経学的予後については,痙攣を呈した児が4例で,うち1例がてんかんと診断された.頭部MRIを24例に施行し,脳室脳溝の軽度拡大が認められた症例が2例,側脳室周囲白質軟化症症例が1例であった.自閉症が1例,境界域例が1例であった.外国籍の妊婦では言語的,社会的ハンディキャップにより妊婦受診およびHIVチェックが遅れていた.AZTによる6週間の予防内服終了後の発育,発達に関するフォローアップのプロトコールが必要である.
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【原著】
■題名
新版K式発達検査とDenver発達スクリーニング検査IIの比較
■著者
東京慈恵会医科大学小児科学講座1),同 分子疫学研究室2),国立成育医療研究センターエコチル調査メディカルサポートセンター3),同 発達評価センター4),同 発達心理科5),同 アレルギー科6) 目澤 秀俊1)2)3)4) 橋本 圭司3)4) 宮尾 益知3)5) 大矢 幸弘3)6) 井田 博幸1)
■キーワード
新版K式発達検査, Denver発達スクリーニング検査II, 発達遅滞, 早産児
■要旨
背景:発達評価スケールは多数存在するが,その相対的評価は不明であった.今回Denver発達スクリーニング検査II(DENVERII)と,新版K式発達検査2001(新版K式)を比較した.
方法:2011年5月〜2012年12月に当院発達評価外来受診した6歳以下の児を対象とし,DENVERII,新版K式を行った.エンドポイントを新版K式発達指数(DQ)70未満,80未満とし,DENVERII結果群で比較した.DENVERII評価の遅れを1,要注意を0.5,正常を0点とした重み付け変数を作成,area under the curve(AUC),感度,特異度を検討した.
結果:159例が対象となった.DENVERII「正常」群で,DQ70未満の児は認めず,DQ80未満であった児は,出生週数で補正すると全ての児がDQ80以上となった.重み付け変数のAUCは,DQ70未満が0.91(95% confidential interval(CI):0.85〜0.95),DQ80未満が0.92(95%CI:0.86〜0.96)と高い精度を示した.カットオフ値をDQ70未満で9点以上,DQ80未満で6点以上とすると特異度95%で判断された.
結論:新版K式とDENVERIIの比較から,4歳未満の発達遅延領域において,DENVERIIの結果から新版K式DQの予測可能性が示唆された.
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【原著】
■題名
MRI拡散強調像にてbright tree appearance様の皮質下白質病変を認めた乳児虐待の1例
■著者
静岡県立こども病院小児集中治療科1),同 神経科2) 起塚 庸1) 川崎 達也1) 奥村 良法2) 伊藤 雄介1) 南野 初香1) 小泉 沢1) 金沢 貴保1) 福島 亮介1) 愛波 秀男2) 植田 育也1)
■キーワード
虐待, abusive head trauma, bright tree appearance, 急性脳炎/脳症
■要旨
症例は4か月女児.発熱と活気低下を主訴に近医を受診した.多核球優位の髄液細胞数の上昇から細菌性髄膜炎を疑い加療された.しかし,2日後にけいれん重積,遷延する意識障害を合併したため急性脳炎/脳症の可能性を考慮し当科に紹介入院となった.臨床所見に加えて,髄液細胞数の軽度上昇,頭部MRI拡散強調像におけるbright tree appearance様の皮質下白質病変,背景脳波の活動性の低下および徐波化を認めたため当科では急性脳炎/脳症と診断した.ところが,入院7日目に施行した頭部画像検査において明らかな急性硬膜下血腫を認め,改めて評価したところ両側眼底に多発する出血,右前頭骨骨折の合併を認めた.以上のことから本症例は虐待による頭部外傷と確定した.
bright tree appearance様所見を含め急性脳炎/脳症と診断する所見はすべて非特異的であり,本症例では身体所見と受診時の画像検査のみでは急性脳炎/脳症との鑑別が困難であった.虐待による頭部外傷を鑑別診断と考え,眼底検査および経時的な頭部画像検査が診断に有用であった.小児科領域における急性脳炎/脳症では,診断の根拠となる特異的な所見がないため,鑑別診断として虐待等の外因性疾患を含めて診療にあたることが重要である.
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【原著】
■題名
SLC2A1遺伝子に新規ミスセンス変異p.G75Rを認めたグルコーストランスポーター1異常症の1例
■著者
聖隷三方原病院小児科1),旭川医科大学小児科2),静岡てんかん・神経医療センター小児科3) 村上 知隆1) 木部 哲也1) 横地 健治1) 松本 直也2) 高橋 悟2) 今井 克美3)
■キーワード
グルコーストランスポーター1(GLUT1)異常症, SLC2A1遺伝子, 新規遺伝子変異, 失調歩行, 炭水化物反応型
■要旨
グルコーストランスポーター1(GLUT1)異常症は血液脳関門を通してグルコースを脳内に取り込むための膜タンパクであるGLUT1の機能低下により,脳組織が慢性的にグルコース不足になることで様々な神経症状を呈する疾患である.責任遺伝子はSLC2A1遺伝子で,古典型,発作性努力運動誘発運動異常症型,欠神てんかんなど幅広い臨床像を呈する.今回我々は,精神運動発達遅滞を伴う新生児期発症のてんかんとして治療中に,運動失調が空腹時に増悪し食事摂取で速やかに改善することから,GLUT1異常症を疑い,髄液糖/血糖比が0.32(正常≧0.45)と低値で,SLC2A1遺伝子に新規ミスセンス変異(c.223G>A,p.G75R)を認め診断を確定した4歳9か月男児例を経験した.本例は修正アトキンス療法にて空腹時の運動失調の改善,脳波所見の改善,気分の安定化などの効果を認めた.乳児期発症のてんかん,発達遅滞,運動障害を呈する例で空腹時の症状増悪を認める場合はGLUT1異常症を考慮すべきである.
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【原著】
■題名
出生時に横紋筋融解を発症した福山型先天性筋ジストロフィーの1例
■著者
彦根市立病院小児科1),京都大学大学院医学研究科発達小児科学2) 神谷 博1) 田中 篤志2) 梅原 弘1) 安部 大輔1) 神田 健志1) 西島 節子1) 石上 毅1)
■キーワード
福山型先天性筋ジストロフィー, 横紋筋融解, 複合ヘテロ接合体, 厚脳回, 巨大児
■要旨
今回我々は出生時に横紋筋融解を発症し,新生児期に臨床診断が可能であった複合ヘテロ接合体のFCMDの1例を経験した.症例は日齢0の男児.在胎41週0日,分娩進行中に胎児ジストレス認めず経腟分娩で出生し,巨大児・低血糖を主訴に当院へ搬送された.低血糖は改善していたが,著明な血清CKの上昇と左鎖骨骨折と上衣下出血を認めた.翌日より全身に硬性浮腫が出現し,全身のMRIを行い横紋筋融解と診断した.日齢10には全身の硬性浮腫は改善したが,全身の筋緊張の低下を認めた.CK値は日齢1の78,195 IU/lをピークに減少はしたが,5,000 IU/l前後の高値が持続した.上衣下出血のフォローのために行った頭部MRIで厚脳回を認めた.横紋筋融解後の全身の筋緊張低下と持続する血清CKの異常高値,および頭部MRIの特徴的な所見からFCMDと臨床診断した.その後遺伝子解析を行い,fukutinをコードするFKTNに複合ヘテロ接合体を明らかにした.出生時に発症した横紋筋融解は,FCMDによる筋細胞の脆弱性という遺伝的要因に,分娩時の物理的ストレスが加わり発症したものと考えられる.
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【原著】
■題名
原発性硬化性胆管炎との鑑別に難渋した先天性肝線維症の1例
■著者
済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科1),香川大学医学部総合周産期母子医療センター2),香川大学医学部小児科3),国立成育医療研究センター病理部4) 伊地知 園子1)3) 乾 あやの1) 角田 知之1) 川本 愛里1) 十河 剛1) 日下 隆2) 伊藤 進3) 中澤 温子4) 藤澤 知雄1)
■キーワード
Ductal plate malformation, 先天性肝線維症, Caroli病, 原発性硬化性胆管炎, 自己抗体
■要旨
症例は2歳女児.急性胃腸炎罹患時に肝腫大,肝胆道系逸脱酵素の上昇を認め,血清IgG高値,自己抗体陽性などから原発性硬化性胆管炎を疑ったが,核磁気共鳴胆管膵管撮影で胆管病変を認めず,肝生検による肝組織所見により先天性肝線維症と診断した.門脈圧亢進症状による食道静脈瘤に対し内視鏡的食道静脈瘤結紮術などの対症療法を行いながら経過を観察したが,血便を伴う大腸炎の合併,IgG上昇,自己抗体陽性などから原発性硬化性胆管炎を否定できず,5歳時に内視鏡的逆行性胆管膵管造影を施行したところ,肝内外胆管の多発性拡張・狭窄像を認めた.Salazosulfapyridine,Ursodeoxycholic acid内服を開始し肝胆道系逸脱酵素は改善したが,6歳3か月時に腹水の貯留を契機として肝機能の増悪を認め,内科的治療は限界と判断し,6歳6か月時,父親をドナーとして生体部分肝移植を行った.摘出肝の組織では高度な線維化と,門脈域における著しい細胆管の増生を認め,先天性肝線維症と考えた.
本症例では臨床的には原発性硬化性胆管炎に極めて類似していたが,肝組織により最終的に先天性肝線維症と診断し,鑑別を要した.
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【原著】
■題名
伏針により心タンポナーデをきたした1例
■著者
昭和大学横浜市北部病院こどもセンター1),同 循環器センター2),同 呼吸器センター3),同 放射線科4) 川本(及川) 愛里1) 岡本 義久1) 本多 貴実子1) 澤田 まどか1) 松岡 孝1) 曽我 恭司1) 富田 英2) 上村 茂2) 北見 明彦3) 浮洲 龍太郎4) 武中 泰樹4) 梅田 陽1)
■キーワード
心膜内伏針, 心タンポナーデ, 胸痛, 異物
■要旨
症例は13歳男児,胸痛を主訴に来院した.心電図でST上昇,心臓超音波検査で心臓周囲にecho free spaceを認め,心外膜炎を疑った.しかし,胸部X線写真と胸部CT画像にて心膜内に線状の高輝度陰影と血性心膜液を認め,心膜内伏針と判明した.心タンポナーデにまで進行したが,心膜ドレナージ後,開胸下胸腔内異物除去術を施行し救命した.舌区の腹側,背側に挫傷変化があり,約4 cmの縫い針が摘出された.術後経過は良好で14日目に退院となった.伏針は稀な病態であるが,胸痛の原因として鑑別の1つにあげる必要があり,疑った際は胸部X線の注意深い読影の重要性とCT画像の有用性を認識した.
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【原著】
■題名
異食行動をもつ自閉症児に認めた鉛中毒の1例
■著者
神奈川県立こども医療センター総合診療科1),済生会横浜市南部病院小児科2) 田上 幸治1) 松井 潔1) 加藤 匡人1) 片岡 愛1) 林 裕介2) 和田 芳雅2)
■キーワード
鉛中毒, 自閉症, 異食症, 貧血
■要旨
鉛は日常生活に結び付きの強い金属であるが,人体には有害で中毒の原因となる.我々は異食による鉛中毒の自閉症児を経験した.注意を喚起するとともに症例を報告する.症例は12歳自閉症の男児で,4か月前から嘔吐があった.腹部レントゲンで胃内に異物が認められ,内視鏡下に3×7×60 mmの鉛板が10枚摘出された.治療後も嘔吐は続き入院となった.脱水,正球性正色素性貧血,ヘモグロビン8.1 g/dl,平均赤血球容積85.5 fl,平均赤血球ヘモグロビン量28.6 Pg,高ビリルビン血症,総ビリルビン2.6 mg/dl,高ケトン血症を認めた.血中鉛濃度は79 μg/dlと高値を示した.エデト酸カルシウム二ナトリウムとジメルカプロールで治療し,症状は改善し,血中鉛濃度は36 μg/dlとなった.手の届くところに鉛製品が無いことを確認し,鉛中毒について指導した.本症例は小児の鉛中毒についての継続的な注意と教育の必要性を示した.乳幼児期の手にしたものを口にする行為,鉄欠乏に伴う腸管での鉛吸収増加,異食症などは,小児期における鉛中毒のリスクとなる.鉛中毒のリスクを認識し,鉛暴露の予防が重要である.
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【短報】
■題名
新生児期に発症した原因不明の肺胞蛋白症の1例
■著者
京都府立医科大学小児科 山下 哲史 徳田 幸子 諸戸 雅治 佐々木 真之 鍋島 加名栄 細井 創
■キーワード
肺胞蛋白症, 気管支肺胞洗浄, サーファクタント, 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
■要旨
新生児期に発症した原因不明の肺胞蛋白症の1例を経験した.出生直後からの呻吟と多呼吸で発症し,胸部CTではびまん性の間質性陰影を認めた.原因不明であり診断に難渋していたが,1歳2か月時に気管支肺胞洗浄液所見で肺胞蛋白症と診断した.その後症状は進行性に悪化し,1歳5か月時に死亡した.新生児期発症の肺胞蛋白症の原因はサーファクタント遺伝子異常などが知られているが原因不明な症例も多く,本症例でも原因は同定できなかった.新生児期発症の肺胞蛋白症は極めて稀であり,その臨床経過は早期診断と治療改善に重要と考えられるので報告する.
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