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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:13.11.25)

第117巻 第11号/平成25年11月1日
Vol.117, No.11, November 2013

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日本小児循環器学会推薦総説

先天性心疾患に対するカテーテル治療

富田 英  1673
日本小児神経学会推薦総説

結節性硬化症にともなう自閉症の薬物治療

水口 雅  1686

小児のてんかん重積状態(status epilepticus)―病因と予後

前垣 義弘,他  1694
総  説
1.

全国市区町村における麻疹対策と予防接種率の関連性

三崎 貴子,他  1702
第116回日本小児科学会学術集会
  教育講演

英語論文の書き方

真部 淳  1709
  教育講演

ウイルス感染症と血液障害―血球貪食性リンパ組織球症を中心に―

脇口 宏  1713
  教育講演

性分化疾患の新たな知見と臨床現場での対応

大山 建司  1722
  教育講演

新生児タンデムマス・スクリーニングの全国的導入の意義

重松 陽介  1728
  教育講演

学校心臓検診

高橋 良明  1737
  教育講演

食物アレルギーへの対応 Up to date

伊藤 浩明  1739
  教育講演

発達障害医療の将来展望

小枝 達也  1746
  教育講演

小児てんかんの包括的医療―病診連携・診療科の連携を中心に

吉永 治美  1752
原  著
1.

7価肺炎球菌結合型ワクチンが導入された2010年における乳幼児下気道感染症例の上咽頭から検出された肺炎球菌の疫学

成相 昭吉,他  1759
2.

細菌性髄膜炎患者のヒブワクチン,小児用肺炎球菌ワクチン普及前後の比較

富樫 武弘,他  1767
3.

複雑型熱性けいれんにおける中枢神経感染症危険因子

澤井 潤,他  1775
4.

均衡型染色体構造異常の保因者診断および遺伝カウンセリング

金子 実基子,他  1781
5.

虫垂炎様症状が先行した川崎病の1例

川谷 恵里,他  1788
6.

重度の閉塞性肥大型心筋症と冠動脈拡張を伴うLEOPARD症候群の1例

桜井 研三,他  1792
7.

石灰乳胆汁の成分分析を行った小児胆石症の1例

河内 要,他  1797
論  策
1.

注意欠陥多動性障害児に対する薬剤の選択と使用に関する実態調査

宮地 泰士,他  1804
2.

小児科診療参加型臨床実習の現状

野村 裕一,他  1811

地方会抄録(山陰・岩手)

  1816
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会
  Injury Alert(傷害速報)

No. 42 ヘアアイロンによる口腔内電撃症(熱傷)

  1824

No. 43 自動車内への閉じ込めによる傷害

  1826

編集委員会への手紙

  1829

日本小児科学会理事会議事要録

  1830

日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2013年55巻5号10月号目次

  1836


【総説】
■題名
全国市区町村における麻疹対策と予防接種率の関連性
■著者
国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)1),国立感染症研究所感染症情報センター2)
三崎 貴子1)  佐藤 弘2)  大石 和徳2)  多屋 馨子2)

■キーワード
麻疹含有ワクチン, ワクチン接種率, 麻疹対策
■要旨
 2008年度〜2011年度の麻疹対策の変化について全国1,742市区町村に対するアンケート調査を行い,麻疹含有ワクチン接種率の変化と合わせて第1〜4期の各接種時期別,自治体の種類・人口別に比較検討した.予防接種台帳の電子化は,4年間で84.7%から88.0%に上昇し,接種率の速やかな把握は96.6%〜97.2%,接種対象者への個別通知は95.1%〜95.5%,乳幼児健診時の接種勧奨は93.7%〜93.9%と高い割合で維持されていたが,学校における接種率の速やかな把握は45.3〜45.7%,集団の場を用いた接種の実施は第3期が23.9〜25.3%,第4期が9.5〜10.6%と低かった.接種率が特に低い地域をもつ自治体が2%あった.ワクチン接種を広域に委託している市区町村もあった.
 2008年度と2011年度で接種率を比較すると,第1期は市区町村間の差が大きく,第2期は両年度とも高かった.第3,4期は接種率の低い自治体は4年後も低く,高い自治体は継続して高かった.第3,4期の接種率には,台帳の電子化,個別および未接種者への接種勧奨,学校における接種状況の把握,「集団の場」を用いた接種や別の市区町村における麻疹発生状況の速やかな把握が影響していた.
 第1期接種率の10ポイント以上の上昇には,台帳の電子化や個別通知,未接種者への接種勧奨,学校における接種率の速やかな把握が関連していた.


【原著】
■題名
7価肺炎球菌結合型ワクチンが導入された2010年における乳幼児下気道感染症例の上咽頭から検出された肺炎球菌の疫学
■著者
横浜南共済病院小児科
成相 昭吉  内村 暢  金高 太一  平田 理智  川本 愛里  安部 咲帆

■キーワード
肺炎球菌, 7価肺炎球菌結合型ワクチン, 血清型, 遺伝子型, 薬剤感受性
■要旨
 7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)が導入された2010年1年間に,経鼻腔上咽頭を施行した乳幼児下気道感染症131例から検出された肺炎球菌132株について,血清型,遺伝子型(ST),ペニシリン(PCG)耐性率およびマクロライド(エリスロマイシン,EM)耐性率・高度マクロライド耐性(EMとともにクリンダマイシンにも耐性)率を調べ,PCV7が普及する前の乳幼児に浸淫する肺炎球菌の疫学について検討した.
 肺炎球菌が検出された症例は,全例PCV7は未接種であった.血清型は20種類確認され,6Bが24.2%,19Fが16.7%と上位を占め,血清型4は検出されなかったがPCV7血清型株は81株,61.4%であった.
 STは39種類確認された.血清型によりSTの多様性に差を認め,6Bでは7種類のSTが認められたが,19Fでは3種類であった.
 また,PCG耐性率とEM耐性率・高度マクロライド耐性率は,PCV7血清型株ではそれぞれ81.5%と97.5%・60.8%,一方,非PCV7血清型株ではそれぞれ52.9%と96.1%・73.5%であった.
 今後,乳幼児へのPCV7接種は普及すると予測され,血清型・ST・薬剤耐性率などの疫学における変化を監視していく必要がある.


【原著】
■題名
細菌性髄膜炎患者のヒブワクチン,小児用肺炎球菌ワクチン普及前後の比較
■著者
札幌市立大学看護学部1),旭川厚生病院小児科2),札幌医科大学小児科3),北里大学北里生命科学研究所4)
富樫 武弘1)  坂田 宏2)  堤 裕幸3)  生方 公子4)

■キーワード
細菌性髄膜炎, インフルエンザ菌b型, 肺炎球菌, ヒブワクチン, 小児用肺炎球菌ワクチン
■要旨
 北海道で小児期(0〜15歳)に発症した細菌性髄膜炎の発症数を,ヒブワクチン,小児用肺炎球菌ワクチンの接種率の低かった2007〜2011年の5年間(前期5年間)と,接種率が向上した2012年と比較した.
 前期5年間の細菌性髄膜炎の発症は94例(男48例,女46例,年平均18.8例)で起因菌はインフルエンザ菌60例,肺炎球菌20例,B群溶連菌6例,大腸菌6例,その他2例(リステリア菌1例,髄膜炎菌1例)であった.2012年の細菌性髄膜炎の発症は2例(男1例,女1例)でその起因菌は肺炎球菌1例,B群溶連菌1例でありインフルエンザ菌はゼロであった.
 全6年間に分離された肺炎球菌は18株が同定され2007年血清型23F,19F,6A,34がそれぞれ1株,2008年6B 1株,2009年6B 2株,19F 1株,2010年14型2株,19A 2株,2011年6B 1株,23F 2株,6C 2株,2012年6B 1株であった.市販されている7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)に含まれる血清型は12株(カバー率66.7%),今後市販予定の13価ワクチン(PCV13)は15株(カバー率83.3%)であった.
 ヒブワクチン,小児用肺炎球菌ワクチンは2013年4月から定期接種ワクチンに採用されたが,今後ワクチン非接種者および被接種者における対象疾患罹患状況をきめ細かく検索する必要がある.


【原著】
■題名
複雑型熱性けいれんにおける中枢神経感染症危険因子
■著者
安城更生病院小児科
澤井 潤  久保田 哲夫  深沢 達也  北村 英里奈  坂口 陽子  羽田野 ちひろ  宮崎 史子  伊藤 祥絵  加藤 有一  宮島 雄二  小川 昭正  久野 邦義

■キーワード
複雑型熱性けいれん, 化膿性髄膜炎, 脳炎脳症, 髄液検査
■要旨
 【緒言】複雑型熱性けいれんは,化膿性髄膜炎,脳炎脳症といった中枢神経感染症との鑑別が必要であるが,その取り扱いについて,国内で十分に議論された報告はない.当院で経験した複雑型熱性けいれん例から中枢神経感染症危険因子を後方視的に検討した.【対象・方法】対象は2005年4月から2010年3月に有熱時に痙攣群発,あるいは痙攣重積を認めた214例である.痙攣群発例,痙攣重積例に大別し,各々で複雑型熱性けいれんと化膿性髄膜炎,脳炎脳症について患者特性,臨床症状,検査所見を比較検討した.【結果】痙攣群発を認めた191例中,複雑型熱性けいれんは178例,中枢神経感染症は13例であった.3回以上の痙攣,痙攣重積の合併,意識障害の遷延が中枢神経感染症危険因子と考えられた.痙攣重積を認めた32例中,複雑型熱性けいれんは24例,中枢神経感染症は8例であった.痙攣群発の合併,痙攣時間が40分以上,意識障害の遷延が中枢神経感染症危険因子と考えられた.痙攣回数が2回のみで,髄膜刺激症状を認めず,意識回復が良好な症例では中枢神経感染症を認めなかった.【結語】複雑型熱性けいれんということだけではなく,上記の中枢神経危険因子のいずれかを満たす症例において髄液検査など各種検査を施行するべきであると考えられた.


【原著】
■題名
均衡型染色体構造異常の保因者診断および遺伝カウンセリング
■著者
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻遺伝カウンセリング領域1),埼玉県立小児医療センター遺伝科2),お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科人間発達科学専攻発達臨床心理学領域3)
金子 実基子1)  大橋 博文2)  篁 倫子3)  川目 裕1)

■キーワード
均衡型相互転座, 保因者診断, 遺伝カウンセリング
■要旨
 均衡型染色体構造異常の保因者診断を施行する際の医療者の説明状況,保因者診断後の家系内での情報開示に関する状況,次の妊娠に関する状況について報告する.本研究では,埼玉県立小児医療センター遺伝科を受診し,均衡型相互転座であると告知され,研究へ協力が得られた11名に対し,半構造化面接によるインタビューを行った.対象者の80%以上が染色体や保因者とは何か,検査の意義や目的について記憶していた.全ての対象者が血縁者に情報開示を行い,その情報を次の妊娠に役立てていた.また,不均衡型転座を有する児の同胞に対しては,7名中1名に情報開示されていた.未成年の同胞にたいする情報開示について配偶者と話し合いが行われていたものの,開示のタイミングや情報の伝え方について,医療者との相談を望んでいた.均衡型相互転座の患児を中心とした関わりとともに,親が患児の同胞に開示する時の相談の場ともなれるような,情報のリマインドや整理をするための継続的な遺伝カウンセリングが必要である.


【原著】
■題名
虫垂炎様症状が先行した川崎病の1例
■著者
福岡大学筑紫病院小児科
川谷 恵里  花宮 理比等  橋本 淳一  佐々木 聡子  林 仁美  鶴澤 礼実  吉兼 由佳子  小川 厚

■キーワード
急性虫垂炎, 川崎病, 病理所見
■要旨
 急性虫垂炎と診断し,虫垂切除術後に川崎病の主要症状が出現した女児例を経験した.川崎病で急性虫垂炎が先行して発症する事はまれであるが,数例の報告がある.過去に報告された切除虫垂の病理所見は,正常虫垂,粘膜層に炎症細胞の浸潤,血管炎の所見があった.今回の症例は,虫垂炎の所見はなかったが,漿膜下脂肪織に血管炎の所見があり,虫垂炎様症状が川崎病による血管炎の先行症状であったと考察した.


【原著】
■題名
重度の閉塞性肥大型心筋症と冠動脈拡張を伴うLEOPARD症候群の1例
■著者
聖マリアンナ医科大学小児科
桜井 研三  曽根田 瞬  栗原 八千代  後藤 建次郎  有馬 正貴  都築 慶光  攪上 詩織  長田 洋資  麻生 健太郎

■キーワード
LEOPARED症候群, 冠動脈拡張, 肥大型心筋症, RAS/MAPK症候群
■要旨
 閉塞性肥大型心筋症(Hypertrophic obstructive cardiomyopathy:HOCM)に冠動脈拡張を合併したLEOPARD症候群(LS)の男児例を経験した.幼少時はHOCMを含めた表現型よりNoonan症候群(NS)と診断されていたが,学童期より多発性黒子が顕著となり,遺伝子解析結果からLSと診断した.内服治療に対する反応は乏しく,13歳のときに行われた心臓カテーテル検査では高度の左室流出路障害と両側の冠動脈拡張を確認した.同時に行われた心筋生検では錯綜配列や線維化はほとんど認められず,典型的な特発性肥大型心筋症の病理組織所見とは異なっていた.また心臓MRI検査では著しい左室壁の肥厚を認めるものの心筋造影では斑状の遅延造影をわずかに認めるのみで,心筋生検と同様に特発性肥大型心筋症の遅延造影所見とは異なっていた.近年LS,NS,Costello症候群,Cardio-facio-cutaneus症候群などRAS/MAPKシグナル伝達経路に異常を持つ疾患をまとめてRAS/MAPK症候群とする疾患概念が定着しつつある.RAS/MAPK症候群における肥大型心筋症では心肥大の発生機序や合併症は特発性肥大型心筋症と異なるため治療戦略やフォローのプランにも特別な配慮を要すると考えられた.また冠動脈拡張はRAS/MAPK症候群に共通した症状の可能性がある.


【原著】
■題名
石灰乳胆汁の成分分析を行った小児胆石症の1例
■著者
大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学1),大阪市立大学医学部附属病院小児外科2),同 肝胆膵外科3),医療法人宝生会PL病院4)
河内 要1)  趙 有季1)  山本 美紀2)  諸冨 嘉樹2)  坂田 親治3)  保科 隆男4)  西村 章4)  新宅 治夫1)  徳原 大介1)

■キーワード
石灰乳胆汁, 胆石, 炭酸カルシウム結石, 総胆管結石
■要旨
 石灰乳胆汁は炭酸カルシウムが析出した白色胆汁であり,本邦の小児例は過去30年間に10例にすぎず,同胆汁の成分分析ならびに画像所見を示した報告はない.今回我々は基礎疾患がなく石灰乳胆汁を伴う胆嚢・総胆管結石を呈した11歳の女児例を経験し,胆汁成分の分析を行ったので報告する.患児は心窩部痛を主訴とし,腹部単純X線・超音波検査から胆嚢結石と診断され,腹腔鏡下に胆嚢および総胆管結石の摘出術を施行された.胆嚢内容液は石灰乳色であり,黒色石を中心に大量の石灰様胆砂を認め,胆嚢頸部には黒色石が嵌頓していた.胆嚢は組織学的に線維性の壁肥厚と炎症細胞の浸潤を伴い,慢性胆嚢炎の所見を示した.石灰様胆砂は97%が炭酸カルシウムであった.総胆管胆汁は正常な胆汁酸組成を示したが,胆嚢内溶液には胆汁酸は全く検出されなかった.また,胆嚢内容液はアルカリ化(pH7.4)を示し,カルシウム濃度は13.4 mg/dL(3.3 mmol/L)と高値であり,全てがイオン化カルシウムであった.以上から本症例の石灰乳胆汁形成機序として,(1)結石の胆嚢頸部嵌頓による胆嚢内外への胆汁の交通阻害,(2)胆嚢粘膜の胆汁酸再吸収による胆嚢内の胆汁酸減少,(3)胆嚢壁の炎症による胆嚢粘膜のカルシウム分泌亢進,(4)胆嚢内胆汁酸減少による胆汁アルカリ化とカルシウムイオンの析出化,が重要な役割を果たしていると考えられた.


【論策】
■題名
注意欠陥多動性障害児に対する薬剤の選択と使用に関する実態調査
■著者
名古屋市あけぼの学園小児科1),東京医科大学小児科2),関西医科大学小児科3),岡山大学大学院発達神経病態学4),東京都立小児総合医療センター心療小児科5),国立成育医療研究センター6),東京女子医科大学八千代医療センター発達小児科7),発達協会王子クリニック8),北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター小児科9)
宮地 泰士1)  宮島 祐2)  石崎 優子3)  大塚 頌子4)  深井 善光5)  永井 章6)  林 北見7)  石崎 朝世8)  田中 肇9)

■キーワード
注意欠陥多動性障害, 薬物療法, メチルフェニデート, アトモキセチン, 薬剤選択
■要旨
 注意欠陥多動性障害(ADHD)児に対するメチルフェニデートOROS錠(OROS-MPH)およびアトモキセチン(ATX)の使用状況,それぞれの効果や有害事象,両者の使い分けについての実態を調査した.日本小児精神神経学会の医師会員で最近1年間にADHD児の診療経験がある139名の回答をもとに検討を行った.ADHD児への第一選択薬としてはOROS-MPHが,第二選択薬としてはATXが主に用いられていた.OROS-MPHについては有効評価が98.5%に見られ,有害事象は食欲不振,胃腸症状,頭痛等が挙げられた.一方,ATXについては有効評価が83.4%に見られ,有害事象としては食欲不振,頭痛,胃腸症状等が挙げられた.OROS-MPHとATXの併用については44.7%が有効と評価し,両薬剤の使い分けについては行動上の問題が大きい程OROS-MPHを,夕方から夜間の問題改善を目指す場合と精神障害やてんかんなどの併存がある例ではATXを選ぶ傾向が見られた.今後はこのような薬剤選択の科学的なエビデンスについても検討し,ガイドラインを明確にしていくことが必要であると思われた.また,医療制度上の改革や,心理社会的支援体制の充実や社会への啓発を求める声が多く寄せられ,幅広い視野で支援体制の充実を検討する必要性が示唆された.


【論策】
■題名
小児科診療参加型臨床実習の現状
■著者
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野1),日本外来小児科学会教育検討委員会2)
野村 裕一1)2)  横井 茂夫2)  河野 嘉文1)

■キーワード
小児科臨床実習, 診療参加型実習, クリニカルクラークシップ, 選択実習, 実習期間
■要旨
 全国の小児科臨床実習における診療参加の状況を調査した.【対象と方法】74大学の小児科教育担当者からの臨床実習についてのアンケートの回答を解析した.【結果】臨床実習は2週間実習の大学が70%で3〜4週間が22%だった.実習で患児を担当させる大学は69大学(93%)であり,その内容は患児診察90%,カルテ記載79%,回診時のプレゼンテーション(プレゼン)77%,レポート82%と多かったが担当患児の日々のプレゼンを行う大学は22%と少なかった.教育担当者の意識としての臨床実習に占める各実習の比率は,診療参加が30±23%であり見学実習と講義の合計は54%だった.診療参加の意識が30%以上の34大学の実習週数は30%未満の38大学と較べて有意に長期間だったが(P=0.012),病床数や教員数には差がなかった.日々のプレゼンを行う大学とそれ以外の大学では実習週数に差はなく,病床数,教員数でも差がなかった.【考案および結語】診療参加は多くの大学の臨床実習で行われていたが,診療参加として重要な日々のプレゼンが少ないことも考慮すると更なる充実は必要である.そのためには実習期間延長も必要であるが容易ではなく,選択実習での充実が現実的な対応と考えられる.ただ,日々のプレゼンの有無で教員数等で差がないことから,臨床実習での指導に関する意識を高める取り組みを行うことによる充実も重要と考えられた.

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