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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:13.6.18)
第117巻 第6号/平成25年6月1日
Vol.117, No.6, June 2013
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日本小児腎臓病学会推薦総説 |
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ネフローゼ症候群の関連分子とpodocyte細胞骨格―Epstein症候群から学ぶ
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関根 孝司 959 |
第116回日本小児科学会学術集会 |
日本小児科学会賞受賞記念講演 |
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原発性免疫不全症(Experiments of Nature)から学ぶヒトの免疫機構
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矢田 純一 970 |
第115回日本小児科学会 医師・看護師を含む医療専門職セッション |
子どもと家族のレジリエンスを高める多職種の支援 ワークショップ1 |
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976 |
原 著 |
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藤田 杏子,他 986 |
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山本 しほ,他 992 |
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岸本 健治,他 996 |
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山内 裕子,他 1002 |
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勝部 奈都子,他 1008 |
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才田 謙,他 1014 |
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公家 里依,他 1020 |
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玉木 久光,他 1024 |
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羽深 理恵,他 1031 |
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向井 純平,他 1037 |
短 報 |
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野口 聡子,他 1042 |
論 策 |
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浅沼 秀臣,他 1045 |
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1048 |
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1075 |
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1077 |
【原著】
■題名
インフルエンザA(H1N1)pdm09感染に伴う意識障害に認める非けいれん性発作
■著者
兵庫県立こども病院脳神経内科1),同 総合診療科2),同 救急集中治療科3) 藤田 杏子1) 永瀬 裕朗1) 中川 拓2) 佐治 洋介3) 丸山 あずさ1) 上谷 良行2)
■キーワード
非けいれん性発作, インフルエンザA(H1N1)pdm09感染, 意識障害
■要旨
【背景】連続脳波モニタリング(以下cEEG)を施行した意識障害の患者では非けいれん性発作(以下NCS)を認めると報告されている.インフルエンザ感染においても意識障害を合併することがあるが,インフルエンザ感染に伴う意識障害を認める小児例のNCSの頻度は不明である.【目的】インフルエンザA(H1N1)pdm09感染に伴う意識障害を認めた小児における,NCSの頻度を明らかにする.【方法】2009年9月から2010年2月の期間に兵庫県立こども病院小児集中治療室に入院した小児患者のうち,インフルエンザA(H1N1)pdm09感染に伴う意識障害を認め,連続脳波モニタリングを施行した症例のNCSの有無を後方視的に検討する.【結果】対象症例は15例(男児8例),月齢は41か月〜159か月(中央値96か月)であった.このうち5例(33%)で連続脳波モニタリング上NCSを確認した.【結論】インフルエンザA(H1N1)pdm09感染に伴う意識障害を認めた小児でcEEGを施行した症例のうち,33%でNCSを認めた.NCSの診断と治療が予後を改善するかどうかは現時点で不明であり,これを明らかにすることは今後の課題である.
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【原著】
■題名
けいれんを伴うHHV-7感染症の臨床像
■著者
東京女子医科大学八千代医療センター小児科 山本 しほ 徳武 翔子 本田 隆文 武藤 順子 浜田 洋通 林 北見 寺井 勝
■キーワード
けいれん発作, 急性脳症, Human herpesvirus-7関連脳症, Human herpesvirus-6関連脳症
■要旨
けいれん発作,けいれん重積で来院し入院した症例のうち,解熱発疹などの典型的な臨床症状を呈し,PCRでHuman herpesvirus(HHV)-7感染症と確定診断した6例の臨床像を検討した.年齢の平均値は15か月,中央値は15.5か月であった.5例はけいれん重積発作で,残りの1例はけいれん重積や群発に至らず意識障害が遷延した.発熱からけいれん発作までの時間は平均8時間,中央値6.5時間であった.6例の予後はいずれも良好であった.次に,これらHHV-7感染症6例中,脳症を呈した4例と同時期に発症したHHV-6関連脳症12例の臨床像を比較した.発症年齢はHHV-6関連脳症が低く,発症時のPediatric Index of MortalityはHHV-6が平均4.6%,HHV-7が平均3.6%で,予測死亡率に差はなかった.頭部MRI所見はHHV-6で6例(50%)に異常を認めたがHHV-7例では全て正常であった.解熱発疹期のけいれんはHHV-6で7例(58%)に認めたが,HHV-7では全例認めなかった.Pediatric Cerebral Performance Categoryによる半年後の予後はHHV-7関連脳症が良好であった.HHV-7はHHV-6に比較して,比較的予後良好な疾患と考えられるが,確定診断例が少なく,今後も症例蓄積が必要と考える.
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【原著】
■題名
小児における眼窩周囲蜂窩織炎と眼窩蜂窩織炎の比較検討
■著者
神戸市立医療センター中央市民病院小児科 岸本 健治 田村 卓也 春田 恒和
■キーワード
眼窩周囲蜂窩織炎, 眼窩蜂窩織炎, 骨膜下膿瘍, 副鼻腔炎, 菌血症
■要旨
【目的】小児の眼窩周囲蜂窩織炎と眼窩蜂窩織炎について臨床像の差異を明らかにすること.【対象と方法】当院で経験した32症例(眼窩周囲蜂窩織炎25例,眼窩蜂窩織炎7例)を対象とした後方視的検討を行い,眼窩周囲蜂窩織炎群と眼窩蜂窩織炎群を比較検討した.【結果】患者年齢は眼窩周囲蜂窩織炎群で有意に低かった.高熱(体温39℃以上)を来した頻度に有意差はなかった.眼球突出,眼球運動障害は眼窩周囲蜂窩織炎群では見られず,眼窩蜂窩織炎群ではそれぞれ3例(43%),6例(86%)に認めた.合併疾患は副鼻腔炎,上気道炎,菌血症,中耳炎,顔面膿痂疹,眼周囲外傷が認められた.副鼻腔炎の合併は眼窩蜂窩織炎群で有意に多かった.眼窩周囲蜂窩織炎群3例でH. influenzae type b菌血症を合併した.初診時白血球数,CRP頂値は2群間で有意差がなかった.全例で速やかに経静脈的抗菌薬投与が開始された.眼窩蜂窩織炎群のうち1例(14%)のみが外科的介入を要した.再発,後遺症を来した症例はなかった.【結論】眼窩周囲蜂窩織炎と眼窩蜂窩織炎は異なる臨床像を持つが,身体所見のみに基づく両者の鑑別は困難であり積極的な画像検査が望ましい.眼窩蜂窩織炎に対する早期診断と早期治療が,外科的治療を要する頻度を低減し得る.
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【原著】
■題名
Children's Global Assessment Scaleを基に開発した生活困難度尺度の妥当性
■著者
独立行政法人国立成育医療研究センターこころの診療部1),東京慈恵会医科大学小児科2),独立行政法人国立成育医療研究センター研究所成育社会医学研究部3) 山内 裕子1)2) 藤原 武男3) 奥山 眞紀子1)2) 井田 博幸2)
■キーワード
小児の精神疾患, Children's Global Assessment Scale(CGAS), 広汎性発達障害, 社会適応
■要旨
受診患者数の増加が著しい精神疾患をもつ子どもの社会適応能力を迅速に評価するため,非常に簡便に評価できる生活困難度尺度を開発し,これまでに確立された尺度であるChildren's Global Assessment Scale(:以下CGAS)との相関をみることによりその妥当性を検証した.
方法は平成20年9月から平成21年2月までに,子どもの心の診療に関して専門的治療を提供できる病院を受診した患者を対象に,受療行動調査で回収できた医師が記載した,患者の属性,生活困難度尺度,CGASスコア,患者の診断名と,患者の保護者が記載した生活困難度尺度を分析した.統計的解析は,(1)医師によるCGASスコアと生活困難度尺度との関連,(2)医師による生活困難尺度と患者の保護者による生活困難尺度との相関について,全体および疾患ごとに分析した.医師によるCGASと医師による生活困難尺度については0.74(p<0.001)の高い相関があり,医師においては生活困難度尺度を高い妥当性で使用することができると考えられた.一方,患者の保護者による生活困難度尺度の評価は,医師による評価とは,相関係数0.4と中等度の関連が認められ,患者の保護者は過少評価する傾向にあった.
治療の結果を評価するには,症状の変化のみならず,子どもの社会的機能の改善を評価することが重要であり,この生活困難度尺度を医師,保護者,第三者でそれぞれ評価することにより,本人の状態を的確に把握することが可能であり,臨床上有用性が高いと考えられた.
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【原著】
■題名
インフルエンザ菌髄膜炎の治療効果
■著者
自治医科大学小児科 勝部 奈都子 長嶋 雅子 門田 行史 福田 冬季子 野崎 靖之 森 雅人 杉江 秀夫 山形 崇倫 桃井 真里子
■キーワード
インフルエンザ菌, 髄膜炎, 硬膜下膿瘍, クロラムフェニコール
■要旨
2000年4月以降の10年間のインフルエンザ菌髄膜炎22例について,BLPAR(β-lactamase producing ampicillin resistant H. influenzae)とBLNAR(β-lactamase non-producing ampicillin resistant H. influenzae)の「耐性菌群」とBLNAS(β-lactamase non-producing ampicillin sensitive H. influenzae)の「非耐性菌群」に分け,治療経過を後方視的に検討した.有熱期間7日以内で,再発熱や外科的治療を要しなかった例を「経過良好群」,有熱期間8日以上,再発熱,炎症反応再上昇,外科的治療のいずれかがあった例を「難治群」とした.耐性菌群10例中4例(40%),非耐性菌群12例中5例(42%)が難治群だった.非耐性菌群では月齢が低いほど難治で(P=0.012),1歳未満は全例難治だった.診断時髄液糖値は,耐性菌難治群で血糖値の16%以下で,経過良好群より低値だった(P=0.021).単剤で治療開始した2例を含む,治療開始7日以内にセフォタキシム(CTX)またはメロペネム(MEPM)単剤治療にした14例中,6例(42.9%)で後遺症を残し,2剤併用継続例の後遺症は8例中1例(12.5%)だった(P=0.14).合併症に関しては,難聴例で発症時髄液細胞数が有意に多く(P=0.031),知的障害例で月齢が有意に低かった(P=0.029).初期治療への反応性と後遺症との相関はなかった.耐性菌の硬膜下膿瘍1例でクロラムフェニコール(CP)が著効した.インフルエンザ菌髄膜炎の予後予測は困難で,ガイドラインに沿った治療を行っても予後不良であることが多く,難治例ではCPの早期使用も選択肢になり得る.
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【原著】
■題名
MRIが有用であった劇症ざ瘡の1例
■著者
篠ノ井総合病院小児科1),信州大学医学部小児医学講座2),長野県立こども病院総合診療部3) 才田 謙1) 小林 法元2) 島 庸介1) 吉川 健太郎3) 西村 貴文3) 隅 達則3) 諸橋 文雄1) 石井 栄三郎3) 川合 博3) 小池 健一2)
■キーワード
劇症ざ瘡, SAPHO症候群, 脊椎炎, 腰痛, ステロイド
■要旨
症例は14歳の男児.約1年前から顔面に軽度の尋常性ざ瘡を認めていたが,突然紅色丘疹が多発し,膿疱,痂疲付着と疼痛を伴うようになった.抗生物質内服や外用剤などで治療されたが明らかな改善はなく,1か月後に,発熱,腰痛,膝関節痛などを認めたため,整形外科を受診した.関節炎などが疑われ,当科に入院となった.抗生物質の静注では改善を認めず,入院2日後には腰痛が悪化し,激痛のために体を動かすことができなくなった.腰椎MRIにより棘突起とその周囲に造影増強効果が認められたことから脊椎炎の合併が証明され,劇症ざ瘡(acne fulminans:AF)と診断した.ナプロキセンの効果は乏しかったが,プレドニゾロンが著効し,その後の経過は良好である.AFは,皮膚病変に骨関節病変を伴う病態を呈するSAPHO症候群に含まれる.しかし,SAPHO症候群例と本例の脊椎のMRI所見は異なっていた.MRI所見と治療に対する反応性から,AFとSAPHO症候群とは異なる病態である可能性が考えられた.
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【原著】
■題名
臍炎から壊死性筋膜炎に至った1新生児例
■著者
東京都立小児総合医療センター総合診療科1),同 救命・集中治療部2),同 感染症科3) 公家 里依1) 井上 信明2) 清水 直樹2) 堀越 裕歩3)
■キーワード
臍炎, 壊死性筋膜炎, 嫌気性菌, 敗血症性ショック, 新生児
■要旨
周産期異常のない日齢9男児.腹部膨満,臍周囲の発赤,頻脈と末梢循環不全を認め,敗血症性ショックの疑いで当院に転院搬送された.搬送後,高K血症による心室頻拍,心室細動が出現したが,蘇生された.腹腔内感染症による敗血症性ショックが疑われ,緊急開腹したが腸管は軽度の炎症を認めるのみであった.その後もショックは進行し,体外式膜型人工肺を導入した.臍周囲の皮膚色調の増悪を認め,壊死性筋膜炎を疑い,臍周囲組織の外科的切除を行うも,来院17時間の経過で死亡した.筋膜組織培養からEscherichia coli,Clostridium sordellii,Clostridium ramosumが分離された.筋膜の病理検査所見は壊死性筋膜炎の所見と合致した.臍炎は新生児において比較的多い疾患であるが,合併症の壊死性筋膜炎は致死的であり,救命のために早期診断,外科的処置を含む早期治療が重要である.
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【原著】
■題名
箸による咽頭外傷後に発症した肺炎球菌性髄膜炎の1例
■著者
東京都立墨東病院小児科 玉木 久光 大塚 正弘 伊藤 昌弘 大森 多恵 西口 康介 三沢 正弘
■キーワード
咽頭外傷, 箸, 細菌性髄膜炎, 肺炎球菌, 口腔内常在菌
■要旨
箸による口腔内外傷後に発症した肺炎球菌性髄膜炎の1例を経験した.症例は2歳女児,箸を手に把持したまま転倒し,咽頭後壁を刺傷した.家人により直ちに抜去され,当院救急外来に搬送された.箸の折損はなく迷入異物は否定されたが,受診後まもなく複数回嘔吐し,その後発熱,意識障害を来した.髄液検査で細胞数増多を認め,細菌性髄膜炎合併と診断した.髄液塗抹検査でグラム陽性球菌を認めた.セフトリアキソン,アンピシリン,バンコマイシンの併用による初期抗菌療法を開始した.髄液および血液より肺炎球菌が単離された.髄膜炎の発症機序として頭蓋内や脊柱管内の穿通性損傷か,粘膜損傷による血行性播種が推定された.頭頸部CT/MRIでは咽頭後壁の炎症性変化を認めたが,あきらかな頭蓋内,脊柱管内損傷を認めなかった.血液培養陽性より血行性播種が推定されたものの,嘔吐などの中枢神経症状が早期に出現している点で微細な穿通性損傷も否定できなかった.本症例のような口腔内外傷由来の細菌性髄膜炎では,原因菌不明段階の初期抗菌療法として嫌気性菌を含む口腔内常在菌もカバーし得る抗菌薬の選択が必要である.小児口腔内外傷は比較的多く見られ,軽症で経過することが多いものの,重度の合併症をもたらすこともあり,小児救急医療および小児感染症の現場では慎重な対応が求められると考えられた.
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【原著】
■題名
劇症肝不全を発症した脊髄性筋萎縮症の1例
■著者
新潟大学医歯学総合病院小児科1),国立病院機構西新潟中央病院小児科2),神戸大学大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座疫学分野3) 羽深 理恵1) 鈴木 俊明1) 長谷川 博也1) 唐澤 環1) 金子 詩子1) 池住 洋平1) 大橋 伯2) 赤坂 紀幸2) 遠山 潤2) 西尾 久英3) 齋藤 昭彦1)
■キーワード
脊髄性筋萎縮症, 劇症肝不全, 脂肪酸代謝異常, Reye症候群
■要旨
小児の劇症肝不全の原因は「不明」が最も多く,他には代謝性,ウイルス性,薬剤性,血球貪食症候群などが知られている.今回我々は,基礎疾患として脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy, SMA)I型を有し,高熱を契機に劇症肝不全へ進行した例を経験したので報告する.
症例は3歳の男児.入院5か月前から誤嚥性肺炎を繰り返しており,今回も同様に高熱を認め前医に入院した.その3日後に呼吸・循環動態が悪化し,血液検査で肝逸脱酵素の異常高値とプロトロンビン時間の延長を認め,急性肝不全の診断で当科に転院した.腹部CTでは肝の腫大と脂肪変性を認め,翌日には肝性昏睡3度となった.劇症肝不全と診断し,血漿交換および持続血液濾過透析を含む集学的治療を開始したところ,全身状態・肝機能は徐々に回復し,肝移植なしに救命することができた.
過去の報告では乳児期発症のSMAにおける脂肪酸代謝異常の存在が示唆されている.一方で,脂肪酸代謝異常を基礎疾患として肝不全が生じることが知られており,本症例の病態として,潜在的な脂肪酸代謝異常から,感染・飢餓を契機にミトコンドリア機能障害に至り,Reye症候群および劇症肝不全へと進行したと推察した.SMAでは脂肪酸代謝異常を有する可能性を考慮し,異化亢進時のエネルギー不足に十分な注意が必要と考えられた.
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【原著】
■題名
食道異物により気管支食道瘻をきたした重症心身障がい児の1例
■著者
川口市立医療センター小児科 向井 純平 下平 雅之 西岡 正人 野村 莉紗 里見 瑠璃
■キーワード
異物誤飲, 食道異物, 気管支食道瘻, 気管食道瘻, 気管支狭窄
■要旨
後天性の気管食道瘻はまれな疾患とされているが,原因のひとつとして食道異物がある.
今回,私達は食道異物により左気管支狭窄および気管支食道瘻をきたした1例を経験したので報告する.症例は11歳の女児.生後3か月に乳幼児揺さぶられ症候群を受傷し,大島分類1度の重症心身障害児となり,気管切開,胃瘻造設を行い,在宅療養されていた.
左胸部の呼吸音減弱を契機に胸部CTで食道異物及び左気管支の狭窄が見つかり,食道造影検査で気管支食道瘻と診断された.内視鏡にて食道異物を摘出したところ,異物は口腔内用の低圧持続吸引器の先端が脱落したものであった.
まずは保存的治療を行ったが,気管分泌物が多く,その管理に難渋した.異物摘出から2か月経過後も瘻孔は閉鎖しなかった.手術による瘻孔閉鎖も検討したが,協議の結果,児の全身状態から困難と判断した.食道内の粘液の垂れ込みを防ぐため,姑息的に頸部食道瘻を造設したところ,気管分泌物は著明に減少した.今後は胃食道逆流防止術を行う予定である.
まれな疾患であるが,異物誤飲は重篤な合併症を引き起こす可能性があるので,注意が必要である.
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【短報】
■題名
「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対する改訂ガイドライン(修正版)」発表後の北海道におけるビタミンK製剤投与状況
■著者
北海道立子ども総合医療・療育センター新生児内科 野口 聡子 浅沼 秀臣 石川 淑 飯田 純哉 新飯田 裕一
■キーワード
乳児ビタミンK欠乏性出血症, ビタミンK製剤
■要旨
2011年3月に小児科学会新生児委員会から「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対する改訂ガイドライン(修正版)」が発表された.ガイドライン(修正版)発表後の北海道内分娩可能施設におけるビタミンK製剤投与状況を把握するため,2012年1月にアンケート調査を行った.計71施設から回答があり,合併症のない正期産児に対し,ガイドラインで紹介された「生後3か月までビタミンK2シロップ(2 mg)を週1回投与する方法」を行っていたのは常勤小児科医のいる49施設のうち9施設,小児科医不在の22施設のうち2施設であり計11施設(16%)であった.
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【論策】
■題名
居住地以外での定期予防接種に対する公費助成に関する調査
■著者
北海道立子ども総合医療・療育センター新生児内科 浅沼 秀臣 新飯田 裕一
■キーワード
北海道, 定期予防接種, 公費助成, アンケート調査
■要旨
病気等の理由で居住地以外の市町村で定期予防接種を受けざるを得ない児は少なからず存在する.北海道内の全市町村に対しこのような児への公費助成などの対応についてアンケート調査を実施した(回答率97.8%).居住地以外もしくは契約医療機関以外で定期予防接種を行った場合,公費助成にしない市町村は37%であった.公費助成の対応に関し地域性があるかどうか検討したところ,2次医療圏の中核都市に限ってみると公費助成の対応のない市町は81%に上った.また,財政健全化指標の悪い市町村が多い地域では,公費助成の対応がなされていない自治体が比較的多い傾向であった.やむを得ず,他市町村での予防接種を余儀なくされている児の存在を自治体が認知していない可能性,また,財政面の問題のために適応できていない可能性が考えられた.自治体の対応により不利益を被る児が出ないことを切に願う次第である.
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