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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:13.5.23)
第117巻 第5号/平成25年5月1日
Vol.117, No.5, May 2013
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総 説 |
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重症心身障害児(者)気管支喘息診療ガイドライン2012の紹介と解説
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宇理須 厚雄,他 843 |
原 著 |
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福田 ゆう子 852 |
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加藤 竹雄,他 861 |
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五十嵐 愛子,他 868 |
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村田 真野,他 872 |
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佐藤 智,他 877 |
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柘植 智史,他 882 |
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高橋 信,他 887 |
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寺西 英人,他 892 |
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荒川 ゆうき,他 897 |
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上村 友二,他 901 |
論 策 |
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安井 耕三 906 |
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910 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No.40 ウイルス除去と称されている製品による中毒
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938 |
日本小児科連絡協議会栄養委員会治療用ミルク安定供給ワーキンググループ委員会報告 |
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941 |
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2013年55巻2号4月号目次
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953 |
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955 |
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958 |
【原著】
■題名
ワークシートを用いた摂食障害心理教育カウンセリング
■著者
総合犬山中央病院小児科 福田 ゆう子
■キーワード
摂食障害の成因, 小児科医, ワークシート, 心理教育カウンセリング, 多面的介入
■要旨
摂食障害患者の精神心理治療は児童精神科医や臨床心理士,「子どもの心の診療医」などにより行われているが,特に地方都市においてその数はまだ十分でなく,順番を待つ間小児科医が一人で取り組まねばならないことも多い.著者は,摂食障害の成因を,遺伝要因,家族要因,個人要因,社会文化要因,メディア要因,思春期・友達要因に分け,それらに基づいたワークシートを作成した.それらを用い,疾病教育,心理教育および栄養教育を含む摂食障害心理教育カウンセリングを3名の摂食障害の患者に行い,症例はいずれも良好な経過をたどった.
ワークシートを用いたカウンセリングは,一般小児科医でも可能な,認知行動療法を中心とした心理教育およびガイド付き自助に基づく多面的介入・アプローチである.症例によって使い分けることによって,時間を有効に使いながら患児との関係を深め,疾病教育,行動・思考の変容,家族関係の是正,患児の自尊心・レジリエンス(精神的回復力)を養う手段として有用であり,また栄養士との栄養教育指導の連携にも役立つと考えられる.
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【原著】
■題名
小児大脳型副腎白質ジストロフィーに対する骨髄非破壊的前処置による造血幹細胞移植の長期予後の検討
■著者
京都大学医学部発達小児科学教室1),同 人間健康科学科2),秋田大学医学部小児科学教室3),大阪赤十字病院小児科4) 加藤 竹雄1) 吉田 健司1) 粟屋 智就1) 柴田 実1) 矢野 道広3) 高橋 郁子3) 才田 聡1) 加藤 格1) 藤野 寿典4) 梅田 雄嗣1) 平松 英文1) 渡邊 健一郎1) 足立 壯一2) 平家 俊男1)
■キーワード
小児大脳型副腎白質ジストロフィー, 造血幹細胞移植, 骨髄非破壊的前処置
■要旨
副腎白質ジストロフィー(ALD)は副腎不全,中枢神経系の脱髄を主体とするX連鎖性変性疾患で,特に小児期に発症する小児大脳型(CCALD)は発症後,急激に進行する予後不良の病型である.現時点では造血幹細胞移植が唯一の治療法とされているが,移植合併症の頻度が多く,治療成績が不良なためにCCALDの進行例においてはその適応について議論がある.今回,我々は進行型CCALDの4症例に対して骨髄非破壊的前処置を用いた造血幹細胞移植を施行し,その長期経過および神経学的予後について経時的に検討した.骨髄非破壊的前処置を用いる事によって比較的安全に移植治療を行うことができ,移植治療に伴う現疾患の明らかな増悪も認めなかった.また,適切な骨髄ドナーが得られない場合でも,臍帯血を用いることにより,診断後早期の造血幹細胞移植が可能となった.本研究より,診断後早期に骨髄非破壊的前処置を用いた造血幹細胞移植を施行する事により従来,移植適応として疑問視されていた症例においても有効な治療となりえると考えられた.
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【原著】
■題名
多彩な血管病変を呈したBannayan-Riley-Ruvalcaba症候群の1例
■著者
福井大学医学部小児科1),福井大学2),徳島大学皮膚科3) 五十嵐 愛子1) 畑 郁江1) 林 泰平1) 川谷 正男1) 大嶋 勇成1) 眞弓 光文2) 久保 宜明3)
■キーワード
Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群, 門脈肝静脈シャント, 門脈瘤, 肝動脈瘤, PTEN遺伝子
■要旨
多彩な血管病変を呈し,Phosphatase and tensin homologue deleted on chromosome 10(PTEN)遺伝子のexon8に変異を持つBannayan-Riley-Ruvalcaba症候群(BRRS)の女児例を経験した.症例は生下時より皮脂腺母斑,大頭症を認め,その後,てんかん,精神運動発達遅滞,視神経膠腫,消化管ポリポーシス,下腿の血管脂肪腫,腸間膜脂肪腫を認めた.17歳時に経口摂取不良の原因精査の際に門脈肝静脈シャント,門脈・肝動脈瘤が明らかとなった.PTENは血管形成や腫瘍血管新生に関わるphosphatidylinositol-3-kinase(PI3K)経路の抑制作用を持つことから,本症例の血管病変はPTEN遺伝子の変異によるものと考えられた.PTEN遺伝子変異によるBRRS患者では,血管病変の全身スクリーニングを行い,病態や予後を考慮した対応が必要であると考えられた.
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【原著】
■題名
胸膜炎を合併した川崎病の1再発例
■著者
市立枚方市民病院小児科1),大阪医科大学小児科学教室2) 村田 真野1) 奥村 謙一1) 謝花 幸祐1) 篠原 潤1) 松村 英樹1) 柏木 充1) 洪 真紀1) 岡空 圭輔1) 玉井 浩2)
■キーワード
川崎病, 胸膜炎, 呼吸器合併症
■要旨
川崎病再発例で胸膜炎を合併した7歳女児を経験した.第4病日に川崎病診断基準の主要徴候のうち5項目を満たしたため,川崎病と診断した.第4病日に免疫グロブリン超大量療法(2 g/kg)を行ったが解熱せず,第6病日及び第9病日にステロイドパルス療法(30 mg/kg×3日間)を追加した.炎症の極期にあった第9病日に激しい咳嗽を認めたため,呼吸器疾患合併を疑い胸部レントゲン及び胸部CT検査を施行し,左下肺の胸水貯留及び胸膜肥厚像を認め,胸膜炎と診断した.川崎病の呼吸器合併症に関する報告の多くはマイコプラズマ感染が先行しており,発熱期間中にマイコプラズマ抗体価の上昇が持続することが臨床的特徴とされている.臨床経過及び各種検査所見から,本症例の胸膜炎は,マイコプラズマ感染に起因するのではなく,川崎病自体の炎症が原因で発症したものと考えられた.本症例のように胸膜炎を合併した川崎病の報告は稀少である.川崎病の胸膜炎罹患後の後遺症を検討した報告はなく,今後,本症例の慎重な経過観察が必要と考えられる.
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【原著】
■題名
A群レンサ球菌感染関連関節炎の3例
■著者
東京医科大学小児科 佐藤 智 千代反田 雅子 堤 範音 土方 妙江 森地 振一郎 石田 悠 小穴 信吾 山中 岳 河島 尚志 星加 明徳
■キーワード
リウマチ熱, 反応性関節炎, A群レンサ球菌, 溶連菌, 関節炎
■要旨
近年,リウマチ熱(Rheumatic fever)は減少しており,われわれが日常診療で経験する機会はまれである.しかし,いまだに散発的な報告はある.また,リウマチ熱のJones基準を満たさないA群レンサ球菌感染後反応性関節炎(Post-Streptococcal Reactive Arthritis:PSRA)の報告もある.今回,われわれは比較的同時期・同地域でリウマチ熱とPSRAと診断したA群レンサ球菌感染関連関節炎を3例経験した.3症例中2例は関節炎発症以前に発熱や咽頭痛・発疹を症状として複数回医療機関に受診したが,A群レンサ球菌感染と診断されずに未治療もしくは治療効果不充分であった.1例は心炎と関節炎・筋膜炎を合併したためリウマチ熱,他の2例は関節炎のみであったためPSRAと診断した.今後,日本でこれらの疾患が再流行する可能性もある.A群レンサ球菌感染に対する適切な早期診断・治療とリウマチ熱やPSRAの重要性を再認識することが必要と考えられる.
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【原著】
■題名
ネコ咬傷によるPasteurella multocida髄膜炎を発症した新生児例
■著者
岐阜県立多治見病院小児科 柘植 智史 立木 秀樹 中野 慕子 根岸 豊 向井 愛子 谷口 弘晃 濱口 貴代 荒川 武 中野 正大
■キーワード
化膿性髄膜炎, 新生児, Pasteurella multocida, 硬膜下膿瘍
■要旨
ネコ咬傷によりPasteurella multocida髄膜炎を発症し,経過中に硬膜下膿瘍を併発した新生児の1例を経験したので報告する.
症例は日齢21,男児.前日からの発熱と,同日からの活気不良のため,当院に紹介となった.来院時血液検査ではWBC 7.6×103/μL,CRP 0.92 mg/dLと炎症反応は軽微であったが,髄液検査で,多核細胞と蛋白の増加,および糖の低下が認められたため,細菌性髄膜炎と診断した.各種培養検査施行後に,Cefotaxime(CTX)200 mg/kg/d+Meropenem 120 mg/kg/dの投与を開始した.後日,原因菌がP. multocidaであり,入念な病歴聴取により日齢12に飼いネコに咬まれた傷が感染源であることを突き止めた.第9病日にWBC,CRPの再上昇を認め,画像検査で硬膜下膿瘍の併発を確認した.薬剤感受性・髄液移行性を考慮しCTX単剤とし投与量を300 mg/kg/dに増量した上で慎重に経過観察を続けた.画像検査上,徐々に膿瘍は消退し,第44病日にCTXの投与を終了し,第61病日に軽快退院となった.P. multocidaによる髄膜炎はまれであるが,近年のペットブームを考慮すると鑑別に挙げておく必要があろう.また,このような感染症を予防するためにも,小児とペットの生活環境について指導していくことも,小児科医の大きな使命であると考える.
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【原著】
■題名
左冠動脈開口部狭窄による運動時失神の2例
■著者
岩手医科大学循環器小児科1),同 小児科2) 高橋 信1) 佐藤 陽子1) 中野 智2) 早田 航1) 小山 耕太郎1) 千田 勝一2)
■キーワード
運動時失神, 左冠動脈開口部狭窄, 心臓超音波検査, 冠動脈バイパス手術
■要旨
左冠動脈開口部狭窄により運動時失神をきたした2例を報告する.症例1は13歳の女子.症例2は6歳の男子.どちらも激しい運動中に失神した.24時間心電図で症例1は運動時のみに,症例2は安静時にST低下がみられ,心臓超音波検査で左冠動脈開口部の血流異常を認めた.両症例の虚血性変化と狭窄所見は,それぞれ心筋血流シンチグラフィと冠動脈CTによって確認された.これに対して内胸動脈を用いた冠動脈バイパス術を施行し,再発をみていない.また,全身性炎症性疾患の病歴や他の心疾患は認められなかった.このため2症例の失神は先天性左冠動脈開口部狭窄に起因した心臓性と診断した.運動時の心臓性失神は突然死の危険性があり,失神症例には心臓超音波検査による冠動脈起始部の血流検索を行う必要があると考えられた.
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【原著】
■題名
ビンクリスチンが奏効したMultifocal Lymphangioendotheliomatosis With Thrombocytepeniaの1新生児例
■著者
川崎医科大学小児科1),同 新生児科2) 寺西 英人1) 川崎 浩三1) 近藤 英輔1) 齋藤 亜紀1) 藤本 洋樹1) 井上 美佳1) 若林 時生1) 赤池 洋人1) 山口 徹也1) 荻田 聡子1) 寺田 喜平1) 中野 貴司1) 尾内 一信1) 川本 豊2)
■キーワード
Multifocal Lymphangioendotheliomatosis with Thrombocytepenia, PSL, VCR, 免疫抑制状態
■要旨
我々はMultifocal Lymphangioendotheliomatosis with Thrombocytepenia(MLT)の乳児例を経験したので報告する.症例は日齢0,女児.生下時より繰り返す消化管出血,腹部,四肢の紫斑を認めていた.皮膚生検でMLTと診断した.プレドニゾロン(PSL)内服で治療を開始したが効果乏しく,ビンクリスチン(VCR)0.05 mg/kg,週1回静注で症状改善を認めていた.治療経過中にサイトメガロウィルス(CMV)に起因すると思われる肺炎により,1週間の呼吸管理を要した.MLTでは,新生児期からの治療による免疫抑制状態と重症感染症のリスクに注意すべきである.本邦ではMLTの報告はなく,本症例が1例目である.
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【原著】
■題名
小児特発性発作性寒冷血色素尿症の4例
■著者
埼玉県立小児医療センター血液腫瘍科 荒川 ゆうき 康 勝好 松野 良介 荒川 歩 関中 佳奈子 加藤 元博 花田 良二
■キーワード
発作性寒冷血色素尿症(PCH), ステロイド, 溶血性貧血, Donath-Landsteiner抗体, 簡易D-L試験
■要旨
発作性寒冷血色素尿症(Paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)は二相性抗体であるDonath-Landsteiner抗体(以下D-L抗体)によって引き起こされる自己免疫性溶血性疾患である.診断には直接クームス試験陽性に加え,Donath-Landsteiner試験(以下D-L試験)が必要である.しかし小児特発性PCHは稀であり,その治療や経過については不明な点が多い.そこで当院においてPCHと診断した4症例についてその経過を後方視的に検討した.全例が貧血のため入院が必要で,いずれも随伴症状として褐色尿を認め,先行感染を伴っていた.血液検査では,正球性貧血を認め,ハプトグロビンが低値,直接クームス試験陽性,間接クームス試験陰性であった.末梢血において単球による赤血球貪食像を認めた.D-L試験は全例が陽性であった.全例にステロイドの投与が行われ,2例で輸血を必要とした.梅毒に関連した続発性PCHは,保温と安静のみで改善するとされているが,小児においてみられる非梅毒性のPCHは入院を要する高度な貧血をきたし,かつステロイド剤が有効であり,必要に応じて輸血を行うことが重要と考えられた.
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【原著】
■題名
神経性無食欲症に起因する心筋症の1例
■著者
国立成育医療研究センター集中治療科 上村 友二 山崎 治幸 久我 修二 六車 崇
■キーワード
神経性無食欲症, たこつぼ型心筋症, QT延長症候群
■要旨
たこつぼ型心筋症による致死的な心機能低下,不整脈をきたし厳重な集中治療管理を要した神経性無食欲症の1例を経験した.
症例は15歳女児で,呼吸不全,低血圧性ショック,低血糖を認めた.心臓超音波検査にて心尖部を主体とした壁運動の低下,心電図上ST変化を呈して,たこつぼ型心筋症に伴う急性心不全と診断した.低血圧性ショックに対して循環作動薬を要し,第2病日には血圧維持にエピネフリンを最大0.55 μg/kg/minまで増量した.低血圧性ショックの状態は離脱したが,第4病日には無脈性心室頻拍を呈し2分間の心肺蘇生とアミオダロン投与を施行した.その後,心機能低下は持続したが緩徐に改善を示し,第20病日には左室駆出率70%まで改善,第104病日退院となった.
神経性無食欲症の急性期には,心合併症の発症に十分に留意し,直ちに治療を開始できる体制を整えておくことが重要であると考えられる.
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【論策】
■題名
テオフィリン“温故知新”
■著者
広島市民病院小児科 安井 耕三
■キーワード
アポトーシス, アデノシン拮抗作用, キサンチン, 気道炎症, 抗炎症作用
■要旨
テオフィリンの気管支喘息治療薬としての位置付けは高くない.吸入ステロイドに対するアドオン効果ではロイコトリエン拮抗薬と同等かそれ以上と評価されているが,エビデンスとしての蓄積が十分ではなく,その評価が低下している.それには薬理学的機序が広く理解されていないことも理由の一因として挙げられる.テオフィリンは生理学的作用物質アデノシンの各レセプター拮抗作用を有するが,なかでもA1レセプター拮抗作用による神経細胞の興奮誘発作用が高濃度ではけいれんさらには重積をもたらすと考えられている.一方で本薬剤が有する抗炎症作用は独特かつ多彩であり,TNFαやIL-8などのサイトカイン産生抑制,炎症細胞の浸潤の抑制,細胞のアポトーシス誘導などに及ぶ.とくに遅延型気道反応に対する効果はテオフィリン特有のものであり,気道の炎症細胞を減少させている.抗炎症効果は5〜10 μg/mlの比較的低濃度で十分期待できる.近年では神経細胞に対する保護作用や樹状細胞機能の抑制効果が判明し,短中期的管理薬としての可能性が再評価されている.
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