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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:13.4.18)

第117巻 第4号/平成25年4月1日
Vol.117, No.4, April 2013

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日本小児神経学会推薦総説

新生児脳波から見た周生期脳障害

奥村 彰久  705
日本小児栄養消化器肝臓学会推薦総説

小児急性肝不全の内科的治療戦略

十河 剛,他  718
原  著
1.

軽症/中等症持続型乳幼児喘息に対する低用量ブデソニド吸入用懸濁液の長期管理効果

今村 直人,他  732
2.

Prader-Willi症候群の脂肪分布の特徴と成長ホルモン治療の効果

阿部 美子,他  740
3.

発熱が持続しステロイド投与を必要としたマイコプラズマ肺炎における危険因子

村上 至孝,他  747
4.

単純型大動脈縮窄29例の臨床的検討

菅本 健司,他  753
5.

Cockayne症候群I型における合併症出現時期と全身管理

中嶋 枝里子,他  760
6.

個人輸入不活化ポリオワクチンの接種状況

藤岡 一路,他  766
7.

チアマゾール内服により多発性関節炎を発症した小児バセドウ病の2例

林 雅子,他  773
8.

肺炎球菌7価結合型ワクチン3回接種後に血清型23F肺炎球菌による化膿性股関節炎に罹患した1例

工藤 絵理子,他  778
9.

回復期に左冠動脈瘤を認めた川崎病乳児例

橋本 郁夫,他  783
10.

抗HLA抗体による重症の新生児同種免疫性血小板減少症の双胎

峰 研治,他  787
論  策

新臨床研修制度は病院小児科医の偏在を助長したのか―都道府県別の検討―

江原 朗  792

地方会抄録(滋賀・山形・福岡・埼玉・山口)

  799
専門医にゅーす No. 12

研修記録簿改訂に関するお知らせ

  821

日本小児科学会理事会議事要録

  822

雑報

  840


【原著】
■題名
軽症/中等症持続型乳幼児喘息に対する低用量ブデソニド吸入用懸濁液の長期管理効果
■著者
慈愛会今村病院1),やのファミリークリニック2),富山大学医学部3),むらかみ小児科アレルギークリニック4),済生会高岡病院5),獨協医科大学小児科6),糸魚川総合病院7),都立小児総合医療センター8),おのうえこどもクリニック9),慈恵医科大学第三病院10)
今村 直人1)  立元 千帆2)  足立 雄一3)  村上 巧啓4)  淵澤 竜也5)  吉原 重美6)  中林 玄一7)  赤澤 晃8)  尾上 洋一9)  勝沼 俊雄10)

■キーワード
乳幼児喘息, 吸入ステロイド薬, ブデソニド吸入用懸濁液, 長期管理薬, ネブライザー
■要旨
 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(Japanese Pediatric Guideline 2012:JPGL2012)では軽症持続型ならびに中等症持続型の乳幼児気管支喘息患者に対し,ブデソニド吸入用懸濁液(BIS)の標準用量として1日0.25〜0.5 mgが推奨されている.しかしながら,その論拠は十分といえない.日常の診療においては,より少ない用量で有効性を認める症例をしばしば経験する.そこで,今回私たちは,軽症持続型ならびに中等症持続型の乳幼児気管支喘息に対し,ブデソニド吸入用懸濁液0.25 mg(1回/日)を12週間投与し,その有効性と安全性について非ステロイド療法として広く臨床に使用されているクロモグリク酸ナトリウム(ネブライザー用)(CIS)を比較対照として検討した(Mild One Study).
 軽症/中等症持続型の喘息患者(0〜5歳)を対象に,BIS 0.25 mg 1日1回吸入,もしくはCIS 20 mg 1日3回吸入に無作為に割り付け,12週間の治療を行った.BIS群では,日常生活と夜間睡眠の障害度,症状点数が投与前に比べ有意に改善された.CIS群では,統計的に有意な改善を認めなかった.両群とも早朝コルチゾール値に有意な変動は認められず,有害事象もみられなかった.
 軽症から中等症の乳幼児喘息に対し,BIS 0.25 mg 1日1回投与は有用な長期管理方法であることが示唆された.


【原著】
■題名
Prader-Willi症候群の脂肪分布の特徴と成長ホルモン治療の効果
■著者
獨協医科大学越谷病院小児科
阿部 美子  田中 百合子  大戸 佑二  板橋 尚  白石 昌久  村上 信行  永井 敏郎

■キーワード
Prader-Willi症候群, 内臓脂肪, 皮下脂肪, 成長ホルモン, アディポネクチン
■要旨
 Prader-Willi症候群(PWS)は,乳幼児期には筋緊張低下によるエネルギー摂取不足で痩せているが,年長児からは高度肥満となり,成長に伴い体脂肪量が劇的に変化する疾患である.また,近年PWS患者の多くに導入されている成長ホルモン(GH)療法は体組成を変化させる.今回我々は,6〜39歳のPWS患者48人(年齢中央値16歳,BMI中央値24.0 kg/m2)において,脂肪分布(内臓脂肪量(VAT),皮下脂肪量(SAT),VAT/SAT(V/S))をFat scan®で解析し,脂肪分布と年齢の関係と,GH療法の脂肪分布への影響について後方視的に検討した.また,脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンを測定した.結果,SATはGH投与中も年齢と共に増加していたが,VATはGH投与中群では増加はみられず,GHの投与のない思春期以降から著増していた.GH投与歴あり,GH投与歴なし群でのVAT,SATの有意差は認めなかった.BMI≧25 kg/m2の肥満群22例中,V/S≧0.4の内臓脂肪型肥満は5人で,皮下脂肪型肥満が多かった.アディポネクチンはVAT(r=−0.54,p<0.001)SAT(r=−0.50,p<0.001)と強い負の相関を示したが,肥満PWS群において,正常値(4 μg/ml)以下は2人のみだった.体脂肪分布を良好に保持するためにも成人期もGH継続投与が望ましいと考えた.


【原著】
■題名
発熱が持続しステロイド投与を必要としたマイコプラズマ肺炎における危険因子
■著者
独立行政法人国立病院機構福岡病院小児科
村上 至孝  本荘 哲  岡田 賢司  新垣 洋平  網本 裕子  増本 夏子  田場 直彦  村上 洋子  本村 知華子  永利 義久  小田嶋 博

■キーワード
マイコプラズマ肺炎, ステロイド, LDH, 高サイトカイン血症
■要旨
 2010年4月〜2011年3月の1年間に入院したマイコプラズマ肺炎142例中7例が,抗菌薬治療にもかかわらず発熱が持続し,ステロイド投与を必要とした.7例とも血清フェリチンや尿中β2ミクログロブリンが高値であり,高サイトカイン血症の存在が示唆された.抗菌薬治療で解熱した135例(解熱群)と,発熱が持続しステロイド投与を必要とした7例(発熱持続群)の2群に分類して,臨床的特徴を検討した.解熱群と発熱持続群を比較すると,幾何平均白血球数は6,237/μl(95%信頼区間5,901〜6,593)と4,505/μl(2,653〜7,648)(p=0.01),AST(幾何平均)は29 IU/l(28〜31)と76 IU/l(42〜140),ALTは16 IU/l(15〜17)と42 IU/l(22〜82),LDHは278 IU/l(266〜290)と590 IU/l(386〜900)であった(いずれもp<0.01).月齢,性,白血球減少,CRP上昇を考慮すると,AST≧67 IU/L,ALT≧85 IU/L,LDH≧460 IU/Lによる発熱持続のオッズ比はそれぞれ187.97(9.76〜3,620.05),75.91(4.37〜1,319.61),364.75(18.23〜7,297.67)であった.高サイトカイン血症のマーカーや血清サイトカイン値の測定と比べ,LDHは日常診療の中で容易に検査が可能であり,LDHの上昇は発熱が持続するマイコプラズマ肺炎に対しステロイド治療を開始する際の有用な指標になることが示唆された.


【原著】
■題名
単純型大動脈縮窄29例の臨床的検討
■著者
埼玉県立小児医療センター循環器科
菅本 健司  小川 潔  星野 健司  菱谷 隆  斉藤 千徳  森 琢磨

■キーワード
単純型大動脈縮窄, 高血圧症, うっ血性心不全, 先天性心疾患
■要旨
 大動脈縮窄の多くは先天性心疾患に合併し複合型として認めることが多く,大きな心内病変を伴わない単純型大動脈縮窄は比較的少数で診断の契機も多彩である.単純型大動脈縮窄の自験例について臨床像を中心に後方視的に検討した.
 1983年4月から2011年12月の間に当科で経験した単純型大動脈縮窄は29症例で,ターナー症候群が2例含まれていた.診断時年齢は日齢0〜16歳4か月であり乳児期早期と学童期にピークを持つ二峰性の分布を示していた.診断の契機は診断時年齢によって異なり,新生児期から乳児期早期ではショックや心不全での発症が多く,年長児では心雑音や高血圧などの症状から診断に至った例が多かった.合併心疾患は左心系狭窄性病変が多く,大動脈二尖弁も5例含まれていた.また左上大静脈遺残,WPW症候群の合併も散見された.治療については待機的に手術を行うものからショック,腎不全を合併し緊急手術を要する例もあり様々であったが,概ね治療後の短期予後は良好であった.遠隔期合併症とされる高血圧については,著明な高血圧を示すものはなかったが軽度高血圧を示すものが少数いた.
 単純型大動脈縮窄は治療後遠隔期の問題点は残るが,治療後の経過はおおむね良好である.診断の機会を逸することのないよう注意する必要がある.


【原著】
■題名
Cockayne症候群I型における合併症出現時期と全身管理
■著者
名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野1),千葉大学教育学部基礎医科学2)
中嶋 枝里子1)  服部 文子1)  伊藤 哲哉1)  小林 悟1)  中島 葉子1)  安藤 直樹1)  杉田 克生2)  齋藤 伸治1)

■キーワード
Cockayne症候群, 合併症, 腎不全, 高尿酸血症, 全身管理
■要旨
 Cockayne症候群はDNA修復障害の一種であるが,経過については不明な点が多い.当院のCockayne症候群I型4例(10〜17歳)の臨床像と各合併症の発症時期を後方視的に検討した.高血圧症は2例で認め,10歳時に学校健診で初めて指摘されていた.高コレステロール血症は2例,血清クレアチニン値高値は3例,高尿酸血症は全例で認めた.いずれも10歳以前に異常が指摘されていた.高尿酸血症は治療開始に伴い尿酸値は低下し,その後血清クレアチニン値の上昇時期と一致して再度上昇傾向がみられた.当院の症例を検討した結果,Cockayne症候群I型では,様々な合併症が10歳以前より潜在し進行していることが示唆された.これらの合併症は臨床症状から発見することが困難であるため,就学前後の時期から定期評価を行うことが望ましい.


【原著】
■題名
個人輸入不活化ポリオワクチンの接種状況
■著者
神戸海星病院小児科1),神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野2),同 医学研究科内科系講座小児科学分野こども発育学部門3)
藤岡 一路1)2)  飯島 一誠3)

■キーワード
不活化ポリオワクチン, 定期接種, 輸入ワクチン, ワクチン関連ポリオ麻痺
■要旨
 当施設はトラベルワクチンとして,国内未承認である輸入不活化ポリオワクチン(inactivated polio vaccine:IPV)のIMOVAX® Polio(Sanofi Pasteur)を倫理委員会の承認のもと以前より導入してきた.2010年2月に神戸市でワクチン関連ポリオ麻痺(vaccine-associated paralytic poliomyelitis:VAPP)が発生して以降,IPV希望者の強い要望を受けて2010年7月より輸入IPVによる通常接種を開始した.
 輸入IPVの接種にあたっては,初回受診時に説明を行い,2回目以降に接種した.2010年1月から2011年3月までの期間に,135名の受診者があり,243回のIPV接種を行った.通常接種開始後の2010年7月以降に受診者の著増を認め(前期14名;後期121名),市外(44.0%),県外(16.4%)からの受診者が半数以上を占めた.接種方法は皮下注で0.5 mlを,初回免疫3回を4〜8週間隔で,4歳以降に追加接種1回の計4回とした.初回免疫3回終了後に抗体価測定を行った31名において,全例でポリオ免疫の獲得を認めた.輸入IPVによる重篤な副反応は認めなかった.
 輸入IPVによる通常接種の開始後,社会の未承認ワクチンに対する理解の乏しさ,副反応発生時の法的責任や補償の問題,施設間の接種スケジュールの差異,輸入IPV導入施設の局在など,多くの解決すべき問題が浮き彫りとなった.今後も,輸入IPVを導入する医療機関,IPV接種希望者は増加することが予測され,全ての希望する小児が平等に安全なポリオワクチン接種を受けられるような体制作りのためには,輸入IPVの使用も含めて更なる議論が必要であると考えている.


【原著】
■題名
チアマゾール内服により多発性関節炎を発症した小児バセドウ病の2例
■著者
新潟大学医歯学総合病院小児科
林 雅子  佐藤 英利  小川 洋平  長崎 啓祐  菊池 透  内山 聖  斉藤 昭彦

■キーワード
バセドウ病, 抗甲状腺薬, 副作用, 関節炎症候群, 多発性関節炎
■要旨
 バセドウ病の薬物治療は,チアマゾールが第一選択薬とされているが,多岐にわたる副作用が報告されている.多発性関節炎は重篤な副作用とされているが,報告例はわずかであり,その臨床像や初期対応については明確ではない.我々はチアマゾール内服により多発性関節炎を発症した小児バセドウ病の2例を報告し,治療中に認める関節痛の鑑別や治療方針について考察した.症例1は11歳女児,症例2は13歳女児である.症例1,2ともにバセドウ病の診断後チアマゾール30 mg/日の内服を開始した.いずれも治療後2週で皮疹を認め,その数日後から多発性の関節痛を認めた.症例1は,チアマゾールを中止し,ヨウ化カリウム内服を行い,最終的に甲状腺摘出術を施行した.症例2は,チアマゾールを減量したが改善なく,プロピルチオウラシルに変更した.いずれも関節痛はチアマゾール中止後1週間で軽快した.抗甲状腺薬内服中に認められた複数部位の関節痛は重篤な副作用である関節炎症候群の可能性があり,MPO-ANCA関連血管炎,SLE様症候群,多発性関節炎の鑑別が必要である.紫斑や関節の腫脹熱感の有無やMPO-ANCA含めた自己抗体を確認し,速やかに抗甲状腺剤を中止して治療法の変更を考慮するべきである.抗甲状腺剤内服中は,関節痛についても十分注意が必要である.


【原著】
■題名
肺炎球菌7価結合型ワクチン3回接種後に血清型23F肺炎球菌による化膿性股関節炎に罹患した1例
■著者
KKR札幌医療センター小児科
工藤 絵理子  吉岡 幹朗  津曲 俊太郎  佐々木 大輔  縄手 満  簗詰 紀子  鹿野 高明  高橋 豊

■キーワード
肺炎球菌ワクチン, 化膿性股関節炎, 侵襲性肺炎球菌感染症, 血清型特異的IgG抗体濃度, オプソニン活性
■要旨
 症例は生後11か月の女児.オムツ交換時の啼泣,左下肢の自発運動の消失を主訴に来院し,化膿性股関節炎疑いで入院となった.左股関節腔に膿性関節液を認め,左化膿性股関節炎と診断が確定した.切開排膿術,抗菌薬投与で加療し,後遺症を残さず治癒した.股関節穿刺液および血液より肺炎球菌が分離され,莢膜血清型は肺炎球菌7価結合型ワクチン(プレベナー®,7-varent pneumococcal conjugate vaccine:PCV7)に含まれる23Fであった.患児はPCV7を生後6,8,9か月時に既に3回接種していたため,Primary vaccine failureの可能性を考え,肺炎球菌血清型特異的IgG抗体濃度・オプソニン活性を測定した.その結果,PCV7に含まれる血清型のうち,23F特異的IgG抗体濃度・オプソニン活性は,他の血清型と比較し,罹患時・罹患2か月後ともに明らかに低値であった.さらに,罹患5か月後にPCV7の4回目接種を行った後も,23F特異的オプソニン活性の上昇は認めなかった.原因として,PCV7接種前の保菌,侵襲性肺炎球菌感染による過剰な抗原暴露の関与が考えられた.


【原著】
■題名
回復期に左冠動脈瘤を認めた川崎病乳児例
■著者
富山市民病院小児科
橋本 郁夫  中川 裕康  金田 尚  舌野 陽子  三浦 正義

■キーワード
川崎病, 冠動脈瘤, 回復期
■要旨
 症例は6か月男児,第5病日に6/6症状にて川崎病と診断された.同日大量免疫グロブリン(2 g/kg)の投与がなされ,1回の投与で速やかに症状は改善し炎症反応の鎮静化も得られた.この時点での冠動脈は心エコー検査では左右とも径約2.5 mmと一過性拡張の範囲であり,第11病日にて退院となった.第26病日での心エコー検査で左冠動脈起始部が約3.8 mmと拡大を認め,第31病日より口唇発赤が出現し第32病日に行った心エコー検査では左冠動脈起始部に約6 mmの動脈瘤を認めた.口唇発赤のみであったが再燃と判断し入院のうえ再度免疫グロブリン(2 g/kg)の投与を行ったところ数日で口唇発赤は改善,第41病日での心エコー検査では左冠動脈は約3.6 mmと退縮傾向を認めた.現在アスピリンに加えワーファリン内服にて外来観察中である.
 乳児例に於いては,回復期にあっても動脈瘤が生じてくる恐れがあるため発症後1〜2か月は注意深い観察が必要である.


【原著】
■題名
抗HLA抗体による重症の新生児同種免疫性血小板減少症の双胎
■著者
関西医科大学小児科学教室
峰 研治  關谷 真一郎  平林 雅人  中島 純一  黒柳 裕一  辻 章志  大橋 敦  野田 幸弘  中野 崇秀  河崎 裕英  木下 洋  金子 一成

■キーワード
新生児同種免疫性血小板減少症, 抗HLA抗体
■要旨
 抗HLA抗体に起因する新生児同種免疫性血小板減少症(Neonatal alloimmune thrombocytopenia:NAIT)の双生児例を経験した.症例の父親はタイ人,母親は日本人で,妊娠中の母体血小板数は正常であった.在胎36週0日,子宮口開大による切迫早産のため帝王切開で出生した.出生時から全身に出血斑を認め,日齢1にNICUに入院した.血小板数は第1子1.0×104/μl,第2子0.9×104/μlと著明に減少していた.第1子,第2子ともに超音波検査で脳室上衣下出血を認めた.血小板減少に対して血小板輸血を行ったが血小板減少は遷延した.母親の血清中に父のHLA抗原に反応する抗体を認め,さらに父の白血球と母の血清との交差試験が陽性であったため,日本人には認められない父親由来のHLAを抗原とするNAITと診断した.
 国際結婚にて出生した児において,出生直後からみられる新生児血小板減少症が遷延する場合にはNAITの存在も念頭におくべきである.


【論策】
■題名
新臨床研修制度は病院小児科医の偏在を助長したのか―都道府県別の検討―
■著者
広島国際大学医療経営学部
江原 朗

■キーワード
新臨床研修制度, 小児科勤務医, 医師歯科医師薬剤師調査, 小児人口
■要旨
 平成16年に導入された新臨床研修制度が病院勤務の小児科医師数にどのような影響を与えたのかを都道府県別に解析した.平成14年から平成22年の8年間に,全国の病院小児科医師数は8,429人から9,308人へと10.4%増加した.しかし,12の府県では,8年間で病院小児科医師数は減少していた.また,和歌山(−12.2%),広島(−10.1%),徳島(−10.1%),青森(−9.9%),島根(−7.7%),京都(−7.4%),愛媛(−3.1%),群馬(−3.0%),秋田(−2.5%),兵庫(−2.5%),三重(−1.8%),高知(−1.5%)の順で減少が著しかった.
 しかし,平成14年から平成22年の間に,14歳以下の小児人口は東京を除く46道府県で減少している.そこで,14歳以下の小児1,000人あたりの病院小児科医師数を算出してみると,全国値では平成14年の0.47人から平成22年の0.55人へと18.7%増加し,減少した府県も,京都(−1.1%),広島(−3.4%)に限られていた.さらに,小児人口に対する病院小児科医師数の変動係数(標準偏差/平均値),(最大値/最小値)および(90パーセンタイル値/10パーセンタイル値)が平成14年に比べて平成22年では減少しており,小児人口に対する病院小児科医師数の都道府県間の格差が進行したとは言えなかった.

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