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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:13.4.3)
第117巻 第3号/平成25年3月1日
Vol.117, No.3, March 2013
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総 説 |
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鈴木 順造,他 565 |
2. |
周産期からの子ども虐待予防と小児科医の役割:ゼロ歳児からの死亡ゼロを目指して
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井上 登生 570 |
第115回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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小嶋 純 580 |
原 著 |
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後藤 正博,他 587 |
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西村 直子,他 596 |
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石川 貴充,他 601 |
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下村 英毅,他 606 |
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杉山 未奈子,他 613 |
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三原 綾,他 618 |
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澤井 潤,他 623 |
論 策 |
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船戸 正久,他 628 |
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野村 裕一,他 633 |
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地方会抄録(中国四国・和歌山・京都・甲信・佐賀・北陸・富山)
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638 |
第113回日本小児科学会分野別シンポジウム |
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子どもの心の診療医人材育成に関する新しい取組:とくに卒前・卒後「医師のたまご世代」への教育促進に向けて
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682 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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693 |
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695 |
お知らせ |
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698 |
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700 |
日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2013年55巻1号2月号目次
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702 |
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【原著】
■題名
長期の静脈栄養をおこなっている腸管不全患者4例における内分泌学的検討
■著者
東京都立小児総合医療センター内分泌・代謝科 後藤 正博 仁科 範子 長谷川 行洋
■キーワード
静脈栄養, 腸管不全, 代謝性骨疾患, 低身長, 性腺機能
■要旨
静脈栄養parenteral nutrition(PN)の発達により腸管不全の患者の救命が可能となってきたが,小児科領域においては乳児期からの栄養管理や感染制御が困難であるために長期生存者は今なおまれであり,内分泌学的合併症についての報告は少ない.私たちは当院で長期PN管理を行っている小児期発症の腸管不全患者について吸収,栄養の評価と内分泌学的検査を行い,成長障害,骨代謝異常,性腺機能異常の観点から検討をおこなった.
対象は7〜23歳の4名(男子1名,女子3名).基礎疾患は広範囲Hirshsprung病1名,Hirshsprung病類縁疾患1名,短腸症候群2名.PN開始時年齢は0〜7歳,開始後の期間は7〜23年.PN投与量は760〜1,532 kCal/日(年齢別性別のエネルギー必要量の51〜71%)で,全例がPNの他に経口摂取をしていた.身長SDスコアは−3.3〜0.8 SDで低身長は必発ではなく,内分泌学的異常の関与も否定的であった.腰椎の骨塩量z-scoreは−4〜−2.2 SDと全例で低下しており,2例でVit D欠乏の関与が示唆された.思春期年齢以降の女子2名には続発性無月経,思春期発来の遅延が見られたが,低栄養による可逆的なものであると考えられた.
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【原著】
■題名
麻しん風しん混合ワクチン第2期接種後の抗体追跡調査
■著者
江南厚生病院こども医療センター 西村 直子 尾崎 隆男 後藤 研誠 武内 俊 服部 文彦 堀場 千尋 伊佐治 麻衣 岡井 佑 大島 康徳 細野 治樹 竹本 康二
■キーワード
麻疹・風疹混合ワクチン, 第2期接種, 麻疹抗体, 風疹抗体, ブースター効果
■要旨
MRワクチン第2期接種を受けた児のその後の抗体保有状況を追跡調査し,現行2回接種法の有用性を検討した.
2006年4月〜2007年10月に当院ワクチン外来でMRワクチン第2期接種を行い,接種前・後(4〜6週)の抗体価が測定されている78名のうち,保護者の同意が得られた31名から2010年5月〜8月に血清を採取し,麻疹抗体をNT法とHI法,風疹抗体をHI法で測定した.第2期接種からの期間は平均40.1±3.6か月(34〜46か月)であり,本調査までに両疾患の罹患を認めていない.抗体陽性率は,麻疹NT抗体(≧2)100%(31/31),麻疹HI抗体(≧8)90%(28/31),風疹HI抗体(≧8)100%(31/31)であり,発症を防御すると考えられる麻疹NT抗体(≧4)保有率は97%(30/31)であった.第2期接種前,接種後(4〜6週),本調査時の各平均抗体価(2n)は,麻疹NT抗体価5.3,6.7,5.3,麻疹HI抗体価5.0,6.4,4.7,風疹HI抗体価5.6,7.4,5.5であった.第2期接種後に全ての平均抗体価が有意に上昇していたものの(p<0.01),3〜4年後の追跡調査時の平均抗体価は第2期接種前の抗体価程度にまで下降していた.ブースター効果で得られた抗体の持続期間は長くはないことが明らかとなった.
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【原著】
■題名
新生児早期に診断した心室中隔欠損の有病率と予後
■著者
浜松医科大学小児科 石川 貴充 岩島 覚
■キーワード
先天性心疾患, 心室中隔欠損, 心臓超音波検査, 新生児, 自然閉鎖
■要旨
【目的】新生児早期に心臓超音波検査(心エコー)を行い心室中隔欠損(VSD)の有病率を評価し追跡した報告は少ない.本研究の目的は新生児早期の集団を対象に心エコーを行い,VSDと診断された症例の有病率や予後を前方視的に検討することである.
【方法】対象は2005年5月から2010年10月までの間に浜松医科大学医学部附属病院で出生した新生児連続2,501例で,日齢0〜4に心エコーを行いVSDと診断された症例を前方視的に調査した.
【結果】61例がVSDと診断され,有病率は1,000人当たり24.4人と算出された.VSDの内訳は筋性部中隔欠損(筋性部VSD)が35例,膜性部中隔欠損(膜性部VSD)が25例,漏斗部中隔欠損(漏斗部VSD)が1例であった.このうち自然閉鎖を認めたのは34例で筋性部VSDが27例,膜性部VSDが7例であり,自然閉鎖率は筋性部VSDが75.0%,膜性部VSDが29.2%であった.未閉鎖群では自然閉鎖群に比べVSDの欠損孔径が有意に大きかった.さらに自然閉鎖群では未閉鎖群に比べ,心雑音聴取ならびに染色体異常合併例が有意に少ないことが確認された.
【結論】今回の研究により,VSDの有病率は従来の報告に比べ高値であり,新生児早期に心雑音を認めないVSD症例では自然閉鎖率が高いことが確認された.
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【原著】
■題名
重症心身障害児者の急性呼吸不全に対する非侵襲的陽圧換気療法の有効性
■著者
滋賀県立小児保健医療センター小児科1),兵庫医科大学小児科学2) 下村 英毅1)2) 宮嶋 智子1) 熊田 知浩1) 齊藤 景子1) 三戸 直美1) 川北 理恵1) 楠 隆1) 藤井 達哉1)
■キーワード
非侵襲的陽圧換気療法, 重症心身障害児者, 急性呼吸不全
■要旨
非侵襲的陽圧換気療法(Noninvasive positive pressure ventilation,NPPV)は,気管内挿管等の侵襲的処置を行わずにマスク等を使用して呼吸管理を行う方法である.重症心身障害児者は呼吸器感染等を契機に容易に急性呼吸不全に陥り,重篤な場合気管内挿管を要するが,挿管困難,カニューレによる気管損傷,事故抜管など気管内挿管に伴う問題点は多い.重症心身障害児者の急性呼吸不全に対するNPPVの有効性を検討した.【対象・方法】対象は2010年1〜11月に急性呼吸不全でNPPVを行った重症心身障害児者で,神経筋疾患等で日常的にNPPVを使用している例を除外した14例である.有効性はNPPV装着前と装着1時間後の心拍数,呼吸回数,二酸化炭素分圧,経皮的動脈血酸素飽和度,臨床所見を比較したが,最終的に気管内挿管を回避できたものを有効とし,後方視的に検討した.【結果】NPPVの適応となった病名は肺炎・気管支炎10例,気管支喘息1例,薬物による呼吸抑制が3例であった.1時間後の有効例は14例中13例(93%)であった.その13例中3例でその後気管内挿管を要したが,他の10例(71%)は重篤な合併症無く離脱できた.【結論】NPPVは重症心身障害児者の急性呼吸不全に対して有効性が認められた.急性呼吸不全時にはNPPVの適応を検討すべきと考えられた.
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【原著】
■題名
タンデム質量分析計にて早期に診断したカルニチン・アシルカルニチントランスロカーゼ欠損症の1例
■著者
帯広厚生病院小児科1),手稲渓仁会病院小児科2) 杉山 未奈子1) 窪田 満2) 泉 岳1) 藤原 伸一1) 岡本 孝之1) 植竹 公明1) 松本 憲則1)
■キーワード
カルニチン・アシルカルニチントランスロカーゼ欠損症, 脂肪酸代謝異常症, タンデムマス
■要旨
症例は35週6日2,180 gで出生した男児.NICUに入室し日齢1より人工乳を開始したが,日齢2に低血糖,無呼吸発作,血圧低下などを認め,補助呼吸や高濃度グルコースの補液を要した.タンデム質量分析計(以下,タンデムマス)によるアシルカルニチン分析の結果から,カルニチン・パルミトイルトランスフェラーゼ2(以下,CPT2)欠損症,あるいはカルニチン・アシルカルニチントランスロカーゼ(以下,CACT)欠損症が疑われた.レボカルニチンの内服,中鎖脂肪酸(以下MCT)ミルクの哺乳を開始し,全身状態は改善し3か月時に退院した.退院後感染に伴い低ケトン性低血糖が出現したが,高濃度糖液の静注により軽快した.1歳5か月時に遺伝子解析によりCACT欠損症と確定診断を得た.本症例では精神発達遅滞を認め,2歳9か月時にRSウイルス感染に伴いライ様症候群となり死亡したが,発症後早期にタンデムマスによるアシルカルニチン分析を施行することで診断,治療の方針をたてることができた.CACT欠損症を含む脂肪酸代謝異常症の診断頻度は数万例に1例と低いが,近年乳幼児突然死症候群の一因とも考えられており,早期の診断によって生存や発達が期待できる.タンデムマスを用いた新しい新生児マススクリーニングの普及が望まれる.
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【原著】
■題名
集学的治療を施行したアデノウイルス脳症の1例
■著者
島根大学医学部小児科1),島根大学医学部附属病院輸血部2),山口大学院医学系研究科小児科学3) 三原 綾1) 竹谷 健1)2) 美根 潤1) 岸 和子1) 小林 弘典1) 市山 高志3) 山口 清次1)
■キーワード
アデノウイルス脳症, 低体温療法, ステロイド, グロブリン, サイトカイン
■要旨
アデノウイルス脳炎・脳症は稀な疾患でその臨床像や病態が明らかではない.症例は2歳4か月男児.発熱,下痢,腹痛が出現した7日後より,意識障害,筋緊張低下を認めた.脳波では広汎性高振幅徐波を認め,髄液検査では細胞数の増加はなかったが,髄液中のTNF-α,IL-2,IL-6,IL-10およびIFN-γが上昇していた.頭部CT/MRIは異常なかった.便からアデノウイルスが検出されたため,アデノウイルスによる急性脳症と診断した.ステロイドパルス療法,免疫グロブリン大量療法および低体温療法による集学的治療を行い,経過中フェノバルビタールによる薬疹や塩類喪失症候群を合併したが,神経学的後遺症なく治癒した.胃腸炎症状あるいは呼吸器症状が出現した数日後に意識障害あるいはけいれんを認め,頭部画像検査および髄液検査に明らかな異常がない場合,アデノウイルス脳炎・脳症を鑑別に挙げる必要がある.
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【原著】
■題名
受傷早期から経時的な頭部MRI画像変化を認めた虐待関連頭部外傷の1例
■著者
安城更生病院小児科 澤井 潤 久保田 哲夫 深沢 達也 片岡 伸介 田中 雅大 山田 浩之 北村 英里奈 柴田 陽子 羽田野 ちひろ 宮崎 史子 伊藤 祥絵 口脇 賀治代 松沢 要 孫田 みゆき 竹本 康二 加藤 有一 宮島 雄二 小川 昭正 久野 邦義
■キーワード
虐待, Inflicted traumatic brain injury, 頭部MRI, 乳幼児揺さぶられ症候群
■要旨
乳幼児揺さぶられ症候群など,虐待に関連した頭部外傷(ITBI:inflicted traumatic brain injury/AHT:abusive head trauma)は死亡率,神経学的予後ともに非常に悪い疾患である.明らかな体表面の外傷を伴わない場合も多く,確定診断が困難な症例も少なくない.頭部MRI,とくに拡散強調画像(DWI)がその診断,病態の理解に有用であることが近年報告されている.我々は虐待が疑われた1か月男児に対して,病初期から継続的に頭部MRIを施行した.来院後20時間にはDWIで皮質下白質,一部の皮質,白質にのみ認めた高信号が,第4病日には大脳全体に広がり,最終的には大脳が広範囲に液状化する画像変化を得た.この一連の画像変化は,外傷による一次性の脳損傷と,それに伴う二次性の低酸素虚血性変化を反映していると考えられた.
MRI,特にDWIでは病初期の頭部CTでは認められない広汎な皮質・白質の異常を描出でき,また遅発性神経壊死による重篤な障害に進展する経過が認識できた.
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【論策】
■題名
NICUの後方支援―療育センターの新たな役割
■著者
大阪発達総合療育センターフェニックス小児科 船戸 正久 竹本 潔 馬場 清 柏木 淳子 飯島 禎貴
■キーワード
NICU後方支援, 超重症児, ショートステイ, 在宅医療支援, 重症心身障害児施設
■要旨
近年周産期医療の進歩により,「NICU」という家から帰れない子供たちというようなNICU長期入院児が大きな問題になっている.当センターは,6年前の2006年には重症心身障害児入所施設「フェニックス」を新たに開設し現在63名の入所を受入れている.さらに2010年には訪問看護ステーション「めぐみ」を開設し,訪問看護・訪問リハビリを始めた.フェニックス入所者の内訳は,現在18歳未満が約20%,18歳以上が約80%であるが,全体の約50%は準・超重症児が占めている.在宅支援の柱であるレスパイトケアを含むショートステイ(短期入所)については,2010年の登録人数は538名で西日本で最も多い人数を受入れている.現在高度在宅支援のために人工呼吸器,腹膜透析の登録を積極的に行っている.さらに訪問看護ステーション「めぐみ」は,医療的ケアを必要とする主に重症心身障害児(者)を対象にしているが,2年前の設立以来,訪問人数・訪問回数ともに約5〜6倍に増加しつつある.
当センターの新たな役割として,大阪の新生児診療相互援助システム(NMCS),すなわち新生児医療機関と協働して行うNICU(新生児集中治療室)の後方支援がある.NICU長期入院児に対して当センターで2〜3か月の転院療育を行い,1)在宅移行支援,2)総合リハ支援,3)ショートステイ利用準備などを行うことを開始した(中間施設の役割).現在大阪府立母子総合医療センターから3名,市立八尾病院から1名受入れ,その他の病院からも計2名の受入れ予定をしている.今後こうした問題の解決のために新生児・小児医療の基幹施設や療育施設との協働・連携システムが重要となる.
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【論策】
■題名
大学病院小児科臨床実習における院外実習の現状
■著者
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野1),日本外来小児科学会教育検討委員会2) 野村 裕一1)2) 横井 茂夫2)
■キーワード
小児科臨床実習, 大学病院, 診療所実習, 二次医療施設実習, 入院患者構成
■要旨
大学病院小児科臨床実習の院外実習に関するアンケートによる調査を行った.【結果】80大学中74大学から回答が得られ,回収率は93%だった.診療所実習は27大学(36%)で行われ,二次病院施設実習は31大学(42%)で行われていた.教育担当者の院外実習についての感想は「良い」か「非常に良い」という回答が90%以上であった.診療所か二次医療施設実習が行われていた45大学の入院疾患構成はどちらの実習もなかった29大学と比較して,血液・腫瘍疾患が有意に多く(P<0.005),神経疾患や感染症疾患が有意に少なかった(それぞれP<0.05,P<0.005).両大学群で小児科臨床実習期間には差がなく2週間の大学がほとんどであった.院外実習の教育効果については両大学群の90%以上が肯定的な回答であった.【考案および結論】大学病院小児科臨床実習における院外実習は,多くの大学で病棟の入院疾患構成に応じて行われており,各大学での小児医療を総合的に学ばせる姿勢が理解された.院外実習の評価は高くその機会を更に増やす意義は高いものと考えられ,臨床実習期間の延長や選択実習での応用も含めた検討が必要と考えられた.
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