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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:13.1.21)
第117巻 第1号/平成25年1月1日
Vol.117, No.1, January 2013
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総 説 |
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芦田 明,他 1 |
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亀井 宏一 11 |
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阿部 裕一 21 |
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日本小児栄養消化器肝臓学会小児クローン病治療ガイドライン作成委員会,他 30 |
5. |
精神や行動の問題における一般小児科医療の役割
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小石 誠二 38 |
第115回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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吉永 正夫 44 |
教育講演 |
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シトリン欠損症〜ファストフードが好きなのにはわけがある〜
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岡野 善行 49 |
原 著 |
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石井 玲,他 59 |
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大塚 岳人,他 66 |
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田中 政幸,他 71 |
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砂川 慶介,他 75 |
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黒崎 知道,他 82 |
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石森 真吾,他 90 |
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清水 泰岳,他 97 |
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水野 泰孝,他 104 |
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豊福 明和,他 108 |
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高橋 寛吉,他 113 |
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江口 広宣,他 118 |
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河津 由紀子,他 122 |
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稲毛 英介,他 129 |
短 報 |
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小山 千草,他 135 |
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地方会抄録(兵庫・北陸・福井・埼玉・山梨・福島・福岡・東海・静岡・福井・宮城・愛媛・青森)
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138 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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189 |
Injury Alert(傷害速報) |
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191 |
日本小児科学会生涯教育・専門医育成委員会 |
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第11回:ポートフォリオ,小児科研修医臨床研修手帳の活用
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196 |
専門医にゅーす No. 11 |
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197 |
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203 |
日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2012年54巻6号12月号目次
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204 |
【原著】
■題名
アンドロゲン受容体異常症の精神的性発達と親の受容
■著者
東京都立小児総合医療センター内分泌代謝科1),慶應義塾大学医学部小児科2),埼玉医科大学小児科3),埼玉県立小児医療センター内分泌代謝科4),東京大学小児科5),東邦大学医療センター大森病院小児科6) 石井 玲1) 有安 大典2) 大竹 明3) 望月 弘4) 佐藤 詩子5) 北中 幸子5) 佐藤 真理6) 長谷川 行洋1)
■キーワード
アンドロゲン受容体異常症, 精神的性発達, 性自認, 養育性女児
■要旨
アンドロゲン受容体異常症は46,XYを有する個体において,アンドロゲン作用不全による外性器の不完全男性化をきたすX連鎖性遺伝形式を示す疾患である.アンドロゲン作用不全の程度により外性器は完全女性型からほぼ完全な男性型を示す.養育性女児である場合,XYという核型,精巣の存在を説明することは,その時期,患児の年齢,表現方法によっては本人および両親に混乱を与える可能性がある.今回,われわれはアンドロゲン受容体異常症が確定している12例とその親を対象に病態説明方法と,その後の本人の精神的性発達,性自認,性的指向,性役割あるいは本人/親の受容について後方視的に検討した.本人の精神的性発達,性自認は養育性に一致し過去の報告と同様だった.精巣,核型に言及した説明の後に,3例の親の受容に混乱が生じた.事実を説明するという医療の原則を遵守するとともに,個々の症例に応じ的確な時期に,不安を与えにくい表現方法を用い,精巣,核型について説明することが必要であると考えられた.今後の多症例での研究およびその結果の現場へのフィードバックが望まれる.
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【原著】
■題名
インフルエンザ菌b型侵淫地域への介入成果と問題点
■著者
佐渡総合病院小児科1),新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野2),千葉大学医学部附属病院感染症管理治療部3) 大塚 岳人1) 菖蒲川 由郷2) 藤井 小弥太1) 石和田 稔彦3) 岡崎 実1)
■キーワード
Haemophilus influenzae type b, ヒブワクチン, multilocus sequence typing, 保菌, クラスター解析
■要旨
インフルエンザ菌b型(Hib)は侵襲性細菌感染症の主要な原因菌である.2008年12月にわが国でもHibワクチンが導入され,最近は定期接種化への機運が高まっている.2010年から2011年にかけて,佐渡島南部地域で侵襲性・非侵襲性Hib感染症が8例続発し,迅速な対応を求められる事態が起きた.空間的集積を統計学的に分析するクラスター解析を用いたところ,同地域のHib発症に関するRelative Riskは島内他地域と比較して24.74倍と判明した.われわれは同地域での深刻な健康被害を食い止めるため,調査・介入を行った.まず,同地域のA保育園の全園児を対象に上咽頭培養検査を行い,Hib保菌率9.1%(5/55)と通常の約11倍の保菌率を明らかにした.その後,Hib保菌者に対してリファンピシン内服による除菌を施行,さらにHibワクチン未接種園児に対して接種を勧奨した.3か月後の上咽頭培養検査ではHib保菌者0名となり,暫定的ではあるがHib流行終息と判断した.しかし今回の調査・介入で解決すべき2点の問題が明らかとなった.第一はHibワクチン接種者であってもHibを保菌しており,リザーバーとして他者にHibを伝播していた危険があること.第二に,今回のような緊急事態でも5歳以上小児のHibワクチン接種は自費接種で,副反応補償に関しても制限があることである.今後は,未接種のままでいる乳幼児・小学生への対策,さらにはワクチン既接種者であっても保菌する可能性を考慮した対策を検討する必要があると考えられた.
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【原著】
■題名
マクロライド系抗菌薬が無効なマイコプラズマ肺炎へのステロイド投与期間について
■著者
国立病院機構滋賀病院小児科 田中 政幸 赤堀 史絵
■キーワード
マイコプラズマ肺炎, ステロイド, マクロライド耐性
■要旨
(背景)Mycoplasma pneumoniae(Mp)は幼児期後半から学童期における肺炎の主要起因菌である.治療の第一選択薬はマクロライド系抗菌薬(MLs)であるが,適切な抗菌薬治療にもかかわらず,発熱遷延症例がある.その治療にステロイドを使用することがあるが,投与期間が明確ではない.(目的)MLs無効Mp肺炎へのステロイドによる適切な治療期間を明らかにする.(対象と方法)2011年4月1日から2011年9月30日に,国立病院機構滋賀病院において,呼吸不全を呈する重症肺炎や肺外症状を伴う症例を除く,3〜7歳のMLs無効Mp肺炎に水溶性プレドニンを1〜1.5 mg/kg/日,分3で1日のみ静脈注射した.ステロイド治療中にはクラリスロマイシンを併用した.PA法によるMp抗体価測定で,ペア血清で4倍以上の上昇,又は単一血清で640倍以上を示す場合にMp肺炎と確定診断した.(結果)8症例が対象となった.患者年齢の中央値は7歳(3〜7),男児4名.ステロイド終了時には全症例が一旦解熱した.3症例が再燃したためステロイドを再投与した.それ以降の再発熱はなかった.(結論)呼吸不全や肺外症状を伴う症例を除き,MLs無効Mp肺炎へのステロイド治療は短期間で終了可能なことが多いと示唆された.
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【原著】
■題名
ガイドラインに基づき重症度分類された小児肺炎に対するテビペネム-ピボキシルの治療効果
■著者
北里大学北里生命科学研究所1),同 感染制御研究機構2),川崎医科大学小児科学3),慶應義塾大学感染制御センター4),国立病院機構東京医療センター小児科5),旭川厚生病院小児科6),外房こどもクリニック7),大阪労災病院小児科8),久留米大学医学部小児科学教室9),博慈会記念総合病院小児科10),くろさきこどもクリニック11),横須賀共済病院小児科12),富士重工業健康保険組合総合太田病院小児科13),横浜南共済病院小児科14),新潟大学医歯学総合病院小児科15) 砂川 慶介1)2) 尾内 一信3) 岩田 敏4) 込山 修5) 坂田 宏6) 黒木 春郎7) 川村 尚久8) 津村 直幹9) 田島 剛10) 黒崎 知道11) 番場 正博12) 佐藤 吉壯13) 成相 昭吉14) 大石 智洋15)
■キーワード
小児, 肺炎, 耐性菌, テビペネム ピボキシル, ガイドライン
■要旨
小児呼吸器感染症診療ガイドライン2007において注射剤による入院治療が想定される中等症又は重症の肺炎患児35例と過去1か月以内の抗菌薬投与歴を有するなどで耐性菌による感染が疑われた軽症の肺炎患児3例を対象としてテビペネム ピボキシル(TBPM-PI)の有効性及び安全性を評価した.TBPM-PIを4又は6 mg(力価)/kg,1日2回経口投与した結果,17例は投与3日以内に,18例は投与5日以内に主要症状が消失した(有効率92.1%).また,治療開始後の平均有熱期間は29.1時間であり,27例(71.1%)が投与翌日までに37.5℃未満まで解熱した.治療前後の平均値で,好中球数は7,870/μlから4,230/μlまで(p=0.0003),CRPは4.89 mg/dlから0.9 mg/dlまで(p<0.0001)有意に減少した.さらに再来院しなかった患児などを除く36例は胸部X線像を含む臨床所見及び検査所見より,治癒と判定された(治癒率100%).原因菌として分離された肺炎球菌16株及びインフルエンザ菌27株に対して,テビペネムは1 μg/ml以下で発育を阻止し,強い抗菌力を示した.なお,主な副作用は下痢(4例)であり,重篤な副作用は認められなかった.以上より,TBPM-PIは注射剤による入院治療が想定される又は耐性菌感染が疑われる肺炎患児の治療薬として極めて有用な抗菌薬であることが明らかとなった.
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【原著】
■題名
小児呼吸器感染症診療ガイドラインで推奨される常用量経口抗菌薬療法の妥当性
■著者
千葉市立海浜病院小児科1),千葉大学小児病態学2),千葉県こども病院感染症科3),君津中央病院小児科4),国立病院機構千葉医療センター小児科5),千葉市立青葉病院小児科6),済生会習志野病院小児科7),千葉市立海浜病院検査科8) 黒崎 知道1) 石和田 稔彦2) 星野 直3) 井上 紳江1) 阿部 克昭1) 石和田 文栄1) 田中 純子2) 菱木 はるか2) 深沢 千絵3) 高橋 喜子4) 大嶋 寛子5) 石川 信泰6) 郡 美夫8) 静野 健一8) 寺嶋 周7) 河野 陽一2)
■キーワード
小児呼吸器感染症診療ガイドライン, アモキシシリン, セフカペン・ピボキシル, セフジトレン・ピボキシル, PK-PD理論
■要旨
インフルエンザ菌,肺炎球菌の多剤耐性化が進む今日においても,小児呼吸器感染症診療ガイドラインでは,急性気管支炎で細菌感染の関与が疑われる場合および軽症肺炎で原因菌不明時の初期治療としてアモキシシリン(AMPC),セフカペン・ピボキシル(CFPN-PI),セフジトレン・ピボキシル(CDTR-PI)等常用量の使用を推奨している.そこでAMPC,CFPN-PI,CDTR-PIの有効性を検討する多施設共同比較試験を行った.
対象は千葉県内7施設の小児科外来に発熱,湿性咳嗽を主訴として受診し,喀痰を採取し,塗抹鏡検にてGeckler分類4以上で,グラム染色でグラム陽性双球菌,グラム陰性短桿菌が優位に鏡検された16歳未満の患者である.解析対象患者はAMPC 59名,CFPN-PI 50名,CDTR-PI 56名であった.有効率はAMPC 83.1%,CFPN-PI 82.0%,CDTR-PI 76.8%であり3群間に有意差はなかった.分離されたインフルエンザ菌と肺炎球菌の両方に対してCDTRが最も高い抗菌活性を示したが,臨床効果では差がなく,感受性検査結果と乖離がみられた.要因としては,内服後に得られる血中濃度の違い,各薬剤の蛋白結合比の相違等が推定される.
今回の結果から,小児呼吸器感染症診療ガイドラインの推奨は妥当であると考える.
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【原著】
■題名
小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群患者の成人期における現状と問題点
■著者
神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学 石森 真吾 貝藤 裕史 大坪 裕美 橋本 総子 忍頂寺 毅史 橋村 裕也 森貞 直哉 飯島 一誠
■キーワード
ステロイド感受性ネフローゼ症候群, トランジション, 有害事象, 小児慢性特定疾患治療研究事業
■要旨
小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群(SSNS)は予後良好な疾患であるが,トランジション症例については罹病期間が長いため様々な問題を抱えていると予測される.今回我々は神戸大学医学部附属病院において外来加療を継続している,初診時15歳未満でかつ最終観察時18歳以上のSSNS患者20名を対象とし,その現状と問題点を後方視的に検討した.発症時年齢,観察期間の中央値はそれぞれ4歳,18.8年であった.経過中に全例が頻回再発型を呈し免疫抑制剤を使用していた.中でもシクロスポリン(CyA)は80%で使用され,最も高率であった.CyAによる慢性腎毒性は40%に認めたが不可逆性病変がみられた症例はなく,CyAは腎生検による定期的な腎毒性評価と休薬期間確保によって安全に長期投与を行いうることが示された.直近1年の状況では55%が寛解を維持していたが無投薬は15%のみで,多くが成人期にも寛解維持目的に免疫抑制剤を必要としていた.また小児慢性特定疾患治療研究事業の非適用年齢に達すると免疫抑制剤の使用が経済的に困難となり,ステロイドによる代替療法を選択する例が少なくないことも示された.トランジション症例の管理には医療費助成拡充をはじめとした社会的側面からのアプローチも非常に重要である.
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【原著】
■題名
小児クローン病9例に対するインフリキシマブの使用経験
■著者
国立成育医療研究センター器官病態系内科部消化器・肝臓科1),慶應義塾大学医学部小児科学教室2),東京医科大学小児科学教室3) 清水 泰岳1) 新井 勝大1) 柳 忠宏1)2) 西亦 繁雄1)3) 肥沼 幸1) 伊藤 玲子1)
■キーワード
クローン病, インフリキシマブ, 小児
■要旨
インフリキシマブ(IFX)は抗TNFαモノクローナル抗体製剤で,欧米では小児クローン病(CD)における有効性が報告されている.我々は2006年9月〜2009年12月に国立成育医療研究センターで新規にIFXを導入した小児CD患者9例を対象とし,治療効果,ステロイド減量効果,成長障害改善効果,副反応等を後方視的に検討した.病型は小腸型1例,大腸型2例,小腸大腸型6例で,発症年齢は平均11歳2か月,炎症性腸疾患の診断年齢は平均12歳8か月,発症からIFX導入までは平均430日だった.治療効果はPediatric Crohn's Disease Activity Index(PCDAI)を用い,PCDAIが10以下を臨床的寛解,PCDAIが30以下で15以上改善を臨床的反応とすると,臨床的寛解と臨床的反応はそれぞれ10週で44.4%,55.6%,54週で57.1%,71.4%だった.成長障害を認めた7例中5例でz-scoreが改善した.一方,効果持続期間が短縮する二次無効を8例中3例に認め,また1例ではSAPHO症候群を合併しIFXを中止した.
IFXは寛解導入・維持効果,ステロイド離脱効果などの有効性を有し,CD治療における重要な治療選択肢であるが,長期の維持療法を要することが多く,導入には十分な適応の検討が必要である.
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【原著】
■題名
帰省したフィリピンで母親と共に罹患したデング熱の幼児例
■著者
東京医科大学病院感染制御部・渡航者医療センター 水野 泰孝 福島 慎二 清水 博之
■キーワード
デング熱, 小児熱帯感染症, 小児輸入感染症, 小児渡航者, Visiting Friends and Relatives
■要旨
母親と共に帰省したフィリピンで罹患したデング熱の日本人幼児例を経験した.本症例はデング熱が疑われた母親の受診の際に,類似の経過であった患児も来院させたことで積極的にデング熱を疑うことができ,確定診断に至った.国内における小児科臨床の現場ではデング熱をはじめとする熱帯感染症の症例に遭遇することは稀であり,的確な診断および治療を早期に行うことは困難であると言わざるを得ない.その一方で,近年の海外渡航者の増加に伴い,親族の帰省に帯同し熱帯感染症の蔓延する地域へ渡航する小児も増加傾向である.このような背景を踏まえ,日本の小児科領域においても,輸入熱帯感染症診療の必要性と,的確な診療が行えるようにするための小児熱帯感染症の専門診療ネットワーク構築が望まれる.
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【原著】
■題名
無言症・体幹失調を認めMRI拡散強調画像で広範な対称性深部白質病変を呈した1例
■著者
多摩北部医療センター小児科 豊福 明和 小保内 俊雅 新井田 麻美 遠藤 明代 小濱 雅則 深堀 俊彦 河野 千佳 玉川 公子 近藤 信哉
■キーワード
MERS, インフルエンザ, 無言症, 体幹失調, 脳波
■要旨
インフルエンザ感染の解熱に伴い,無言症・体幹失調を認めた11歳女児例を経験した.入院当日には意識清明となり,同時に無言症・体幹失調は改善したが,2病日の頭部MRIにて脳梁膝部・体部・対称性の深部白質に病変を認めた.7病日の頭部MRIでは病変は消失していた.その後,半年間,後遺症なく経過している.可逆性脳梁膨大部病変を有する脳炎・脳症(clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion;以下MERS)と類似する臨床経過,画像所見であったが,脳梁膨大部には病変を認めなかった.無言症の責任病巣は小脳または前頭葉,体幹失調の責任病巣は小脳または脳梁が疑われた.頭部MRI所見と臨床症状が一致せず,頭部MRIは撮像時期によっては症状を反映しない可能性が示唆された.
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【原著】
■題名
Wernicke脳症を発症した急性リンパ性白血病合併の21トリソミーの1例
■著者
埼玉県立小児医療センター血液・腫瘍科 高橋 寛吉 康 勝好 安井 直子 森 麻希子 秋山 康介 関 正史 加藤 元博 花田 良二
■キーワード
21トリソミー, 急性リンパ性白血病, Wernicke脳症, ビタミンB1
■要旨
Wernicke脳症(WE)はビタミンB1(Vit.B1)欠乏によって発症し,意識障害,眼球運動障害,運動失調を三徴とする.今回我々は,21トリソミー(ダウン症候群,DS)に合併した急性リンパ性白血病(ALL)において,WEと診断し大量Vit.B1投与にて治癒した症例を経験したので報告する.症例は精神遅滞を伴う15歳のDS女児で,B前駆細胞型ALLと診断し治療を開始した.中枢神経浸潤は認めなかった.偏食傾向が強く,入院後に体重減少を認めたが全身状態は良好であった.早期強化相終了後に全身性痙攣が群発し,意識障害,眼振が出現した.脳波上てんかんは否定的であった.頭部MRI FLAIR画像にて中脳水道周囲,視床内側に高信号を認め,WEが強く疑われた.直ちにVit.B1投与を開始し,450 mg/日まで増量したところで症状の改善を得た.後日Vit.B1血中濃度の低下があったことを確認し,WEの診断が裏付けられた.Vit.B1の至適投与量は症例によって異なるため,MRIにてWEが疑われた際には,可及的速やかに,かつ症状が改善するまで十分にVit.B1投与を行う必要がある.
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【原著】
■題名
肉眼的血尿を契機に発見された腎・尿路系腫瘍の3例
■著者
松戸市立病院小児医療センター小児科 江口 広宣 平本 龍吾 松本 真輔 篠塚 俊介
■キーワード
肉眼的血尿, Wilms腫瘍, 腎細胞癌, 横紋筋肉腫, 小児
■要旨
肉眼的血尿を契機に発見された腎・尿路系腫瘍の3小児例を経験した(Wilms腫瘍の6歳女児,腎細胞癌の13歳男児,膀胱横紋筋肉腫の3歳女児).診断には腹部超音波検査をはじめとする各種画像検査が極めて有用であった.Wilms腫瘍は小児腎腫瘍の中では最も頻度の高い疾患であるが,肉眼的血尿をきっかけに発見されることは比較的稀である.一方,腎細胞癌症例の多くは高齢者であり,小児期にはその発症自体が少ない.また,泌尿生殖器系に発生する横紋筋肉腫のうち,膀胱と前立腺は予後不良部位とされており注意が必要である.
小児期に起こる肉眼的血尿の原因の多くは良性の疾患とされるが,稀ではあるものの腎・尿路系悪性腫瘍が血尿の要因となっていることもある.血尿を呈する小児に遭遇した場合は,早期発見・治療が望ましいこれらの疾患も念頭に置いた診療が重要であると考えた.
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【原著】
■題名
Loeys-Dietz症候群の乳児3例
■著者
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科1),同 遺伝診療科2),同 新生児科3),かがやきクリニック4),国立循環器病研究センター研究所分子生物学部5) 河津 由紀子1) 岡本 伸彦2) 稲村 昇1) 石井 良1) 南條 浩輝3)4) 望月 成隆3) 森崎 裕子5) 萱谷 太1)
■キーワード
Loeys-Dietz症候群, 大動脈弁輪拡張, 胎児診断, TGFBR1遺伝子, TGFBR2遺伝子
■要旨
Loeys-Dietz症候群(LDS)の3例を経験した.症例1:女児.生後2か月時の心エコー検査で大動脈弁輪拡張(AAE)と大動脈弁閉鎖不全(AR)を認めた.その後,無呼吸となり上下肢の体動も消失し,MRIで頸椎(C2)亜脱臼による頸髄圧迫と診断した.症状と特徴的な顔貌とからLDSを疑い遺伝子解析を施行し,TGFBR2遺伝子の変異を認め確定診断した.1歳6か月時に急性くも膜下出血にて死亡した.症例2:男児.生後より皮膚過伸展や広い関節可動域があった.1歳8か月時に心エコー検査でAAEとARと診断.TGFBR2遺伝子の変異を確認した.頭蓋骨早期癒合があり,脳外科手術を施行した.心血管病変は徐々に進行している.症例3:男児.胎児期に著明な主肺動脈拡張を伴う先天性心疾患(両大血管右室起始及び大動脈離断)と診断した.生後9日両側肺動脈絞扼術を施行後も拡張が進行し,生後21日に右肺動脈破裂により死亡した.後日,TGFBR1遺伝子の変異を確認した.
3例とも強い心血管病変を認めた.また頸椎亜脱臼,頭蓋骨早期癒合なども合併していた.LDSの心血管病変は若年発症で進行も早く,予後不良例が多いと言われており,定期的な検査および降圧剤投与などの内科治療や外科治療の早期介入が必要である.また心血管病変だけでなく,手術を要したり致死的となる他の合併症を予測する点からも,早期の遺伝子診断が有用と考えられた.
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【原著】
■題名
成分栄養療法とメサラジン注腸で寛解を得た乳児クローン病の1例
■著者
もりおかこども病院小児科1),順天堂大学医学部小児科学教室2),川久保病院小児科3) 稲毛 英介1)2) 蒔苗 剛1)3) 米沢 俊一1) 鈴木 是光1) 高橋 明雄1) 高砂子 祐平1) 清水 俊明2)
■キーワード
クローン病, 乳児, 成分栄養療法, メサラジン, 肛門潰瘍
■要旨
乳児期発症のクローン病はまれであり予後不良との報告が多い.症例は4か月の男児で主訴は肛門潰瘍と口蓋潰瘍である.入院30日前より直腸粘膜ポリープ脱出と肛門垂が出現し,改善せず当院紹介となる.当院初診時肛門垂に加えて肛門部に露出した直腸潰瘍を認めた.大腸内視鏡検査で直腸から下行結腸にかけ,飛び石様に縦走潰瘍と縦列する不整潰瘍を認め,病理組織診でリンパ球・形質細胞主体の慢性炎症を認めた.以上からクローン病と診断.入院後エレンタールP®による成分栄養を開始.肛門部の発赤と潰瘍は改善した.退院後2か月時点で再発を認めない.栄養療法とメサラジン注腸のみで寛解導入できたため報告する.乳児クローン病の予後は不良であるとの文献的報告が多く,治療についてもコンセンサスは得られていないが,成分栄養療法は幼児・学童例同様に有効であると考えられた.
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【短報】
■題名
増加するマクロライド耐性マイコプラズマ
■著者
島根大学医学部小児科1),島根大学医学部附属病院輸血部2),東京医科歯科大学小児科3) 小山 千草1) 竹谷 健1)2) 横山 桃子1) 町田 静香3) 齋藤 敦郎1) 美根 潤1) 南 憲明1) 堀江 昭好1) 金井 理恵1) 山口 清次1)
■キーワード
マクロライド耐性マイコプラズマ, LAMP法, マイコプラズマ-IgM
■要旨
マイコプラズマ感染の正確な早期診断は容易ではなく,その上近年マクロライド耐性化も問題視されつつある.我々は,loop-mediated Isothermal amplification(LAMP)法によってマイコプラズマ感染を診断し,23SrRNA遺伝子解析によりマクロライド耐性を同定した.LAMP法陽性者13例中12例(92%)がマクロライド耐性遺伝子変異(全例A2063 G)を持ち,有熱期間,マクロライド投与後の解熱までの日数は,それぞれ8日間,5日であった.LAMP法は迅速な確定診断に有用と思われ,また,発熱が長引くマイコプラズマ感染の場合,マクロライド耐性を念頭に置くことが重要である.
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