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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:12.11.7)
第116巻 第11号/平成24年11月1日
Vol.116, No.11, November 2012
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第115回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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堀本 洋 1653 |
教育講演 |
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多田羅 竜平 1666 |
教育講演 |
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江島 伸興 1676 |
教育講演 |
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金原 洋治 1680 |
教育講演 |
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小児メタボリックシンドロームへの遺伝・運動・栄養の影響
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坂本 静男,他 1688 |
教育講演 |
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浜崎 雄平 1697 |
原 著 |
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玉木 久光,他 1709 |
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加藤 いづみ,他 1717 |
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木村 直子,他 1724 |
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伊藤 弘道,他 1728 |
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熊坂 栄,他 1733 |
論 策 |
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矢ヶ崎 英晃,他 1737 |
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輿石 薫,他 1743 |
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小山田 美香,他 1748 |
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地方会抄録(香川・栃木・東海・山形・福島・鳥取・東京)
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1754 |
日本小児科学会東日本大震災対策委員会報告 |
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井田 孔明,他 1781 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害速報)No,36 カーテンの留め紐による縊頸
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1788 |
日本小児科学会生涯教育・専門医育成認定委員会 |
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第10回:日常診療の評価:MiniCEX, DOPS, SEA
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1790 |
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1793 |
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1799 |
【原著】
■題名
1981〜2010年の当院における小児細菌性髄膜炎に関する検討
■著者
東京都立墨東病院小児科 玉木 久光 伊藤 昌弘 西口 康介 福原 淳示 大森 多恵 三澤 正弘 大塚 正弘
■キーワード
細菌性髄膜炎, インフルエンザ菌, 肺炎球菌, Hibワクチン, 結合型肺炎球菌ワクチン
■要旨
1981年1月〜2010年12月の期間中に東京都立墨東病院小児科で入院加療した小児細菌性髄膜炎は119症例であった.原因菌は,インフルエンザ菌62例(52%),肺炎球菌34例(29%),B群レンサ球菌11例(9%),大腸菌8例(7%)とその他であった.年齢は1歳未満が全体の44%,2歳未満68%,5歳未満94%であった.予後は死亡4例(3%)で,いずれも肺炎球菌であった.初療抗菌薬は新規抗菌薬の上市や推奨抗菌薬の変更により変化した.1980年代から1990年代中頃まではアンピシリンと第3世代セフェムの併用が,1990年代後半からは第3世代セフェムとカルバペネムの併用が多く使用された.小児細菌性髄膜炎は,患者実数で減少傾向,小児入院患者1,000人あたりの患者数でも減少傾向であったが,二次医療圏内5歳未満人口10万人あたりの当院患者数は減少傾向を認めなかった.小児細菌性髄膜炎の患者実数減少は小児人口減少を反映し,罹患率自体は変化していないことが推測された.罹患率減少のためには,従来の対応では不完全であると考えられた.2008年からインフルエンザ菌b型ワクチンが,2010年から7価肺炎球菌ワクチンが導入され,罹患率の減少が期待されるものの,接種率増加が必要であり,定期接種化や医療費助成などの措置が必要であると考えられた.
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【原著】
■題名
新生児期発症ミトコンドリア呼吸鎖異常症の兄妹例
■著者
千葉市立海浜病院新生児科1),千葉県こども病院代謝科2),千葉県がんセンター研究所3),埼玉医科大学小児科4) 加藤 いづみ1) 村山 圭2)3) 鈴木 康浩1) 岩松 利至1) 今井 郁子1) 大塚 春美1) 大竹 明4)
■キーワード
ミトコンドリア呼吸鎖異常症, 致死型乳児ミトコンドリア病, 肥大型心筋症, 副腎機能低下症, 難聴
■要旨
ミトコンドリア呼吸鎖異常症(MRCD)は最も頻度の高い先天性代謝異常症であり,新生児発症例も多い.我々は,肥大型心筋症,副腎機能低下症,難聴を呈した新生児発症MRCDの兄妹例を経験した.妹は,出生直後より高乳酸血症,呼吸不全を呈し,ミトコンドリア呼吸鎖酵素活性の測定によりミトコンドリア呼吸鎖異常症(呼吸鎖複合体I+III+IV欠損症)と診断された.兄も生後5か月時に突然死しており,死後の筋病理でチトクロムCオキシダーゼ欠損症(ミトコンドリア呼吸鎖複合体IV欠損症)を指摘されていた.今回,兄の残検体でも酵素活性を測定したところ,妹と同様の結果が得られた.兄妹の臨床経過,剖検所見について報告する.
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【原著】
■題名
A型インフルエンザ治癒直後に肺結核再燃を生じた潜在性結核感染症の1例
■著者
多摩北部医療センター小児科1),都立小児総合医療センター総合診療科2),同 呼吸器科3) 木村 直子1) 近藤 信哉1) 小保内 俊雅1) 新井田 麻美1) 小濱 雅則1) 遠藤 明代1) 武田 良淳1) 河野 千佳1) 玉川 公子1) 公家 里依2) 宮川 知士3)
■キーワード
インフルエンザA/H1N1 2009, 潜在性結核感染症, 結核再燃, インフルエンザパンデミック
■要旨
2009年のインフルエンザA/H1N1 2009のパンデミックの時期に,A型インフルエンザ治癒後間もなく一般細菌,肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジアのいずれかによる肺炎と合併して肺結核再燃を生じた,潜在性結核感染症の17歳女児例を報告する.来院時,全身状態不良であり,胸部にラ音を聴取した.胸部画像所見は両下肺野の広範な浸潤影と左右上肺野の線状影,左肺門部リンパ節石灰化を認めた.一般抗菌薬投与開始後も発熱,咳症状の改善が乏しいことなどから肺結核再燃が疑われ,喀痰結核菌PCR,培養検査で診断を確定した.この報告はA型インフルエンザウイルス感染が細胞性免疫を抑制し,器質的傷害を生じて古い病巣内の結核菌を活性化させた可能性があると考えられ,おそらくインフルエンザA/H1N1 2009感染が潜在性結核感染症児に結核再燃を生じた最初の報告である.
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【原著】
■題名
5歳発症のナルコレプシーの1例
■著者
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部発生発達医学講座小児医学分野 伊藤 弘道 森 健治 森 達夫 香美 祥二
■キーワード
ナルコレプシー, 日中の過剰な眠気, 睡眠ポリソムノグラム
■要旨
まれな5歳発症のナルコレプシーの1女児例を経験した.児は日中の過度の眠気と笑う際の情動脱力発作を認めた.髄液中オレキシン濃度は40 pg/ml以下であった.睡眠ポリソムノグラムにて睡眠段階Iとrapid eye movement(REM)睡眠が優位であり,頻回の中途覚醒,6回の入眠時REM睡眠を認めた.児は日中の過剰な眠気のため学校生活が困難であり忘れっぽさと肥満を認めた.塩酸メチルフェニデートを処方され,日中の過剰な眠気はコントロールされたが,学業不振,忘れっぽさ,肥満は内服後3年経過した時点でも改善されなかった.ナルコレプシーは発症が幼児期の場合,好発年齢ではないために見逃されたり誤診されたりしやすい.児が幼児であっても日中の過剰な眠気を訴える場合,ナルコレプシーを鑑別に入れる必要がある.
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【原著】
■題名
覚醒剤使用歴のある母体から出生した新生児例
■著者
葛飾赤十字産院新生児科 熊坂 栄 峯 牧子 中島 瑞恵 横山 愛子 寺田 有佑 島 義雄
■キーワード
覚醒剤, メタンフェタミン, アンフェタミン, 新生児
■要旨
妊婦の覚醒剤使用は,欧米と比べると本邦では少ないものの,児には興奮症状をはじめとする様々な症状が見られることがある.症例は,在胎39週3日,出生体重3,204 g,帝王切開で出生した女児.母は週2回程度,分娩7〜10日前まで覚醒剤を使用していた.児は,日齢3まで発熱,発汗,頻脈を認めた.日齢2の尿中覚醒剤反応は,アンフェタミン,メタンフェタミン共に陽性であったが,日齢8には陰性化した.覚醒剤使用歴のある母体より出生した新生児の長期予後は不明な点が多く,今後の神経学的フォローアップが重要であると考えられる.
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【論策】
■題名
小児急性虫垂炎における診療基準の作成と診療情報シートの活用
■著者
山梨県立中央病院小児科1),同 小児外科2),山梨厚生病院小児科3),山梨大学医学部第2外科4),同 小児科5) 矢ヶ崎 英晃1) 駒井 孝行1) 鈴木 健之2) 大矢知 昇2) 尾花 和子2) 小林 浩司3) 蓮田 憲夫4) 高野 邦夫4) 東田 耕輔5) 杉田 完爾5) 山梨小児標準医療研究会
■キーワード
急性虫垂炎, 診療情報提供書, 診療基準
■要旨
急性虫垂炎は,緊急手術の頻度が高く,適切な外科紹介のタイミングが求められる.山梨小児標準医療研究会において,虫垂炎の診療アウトカムを1.虫垂炎が適切に診断される,2.小児科・外科の連携のなかで適切に治療される,3.穿孔,死亡などの合併症を減少させる,と設定し検討を行った.小児虫垂炎に関する国内・海外文献を論文根拠の強さに分類して評価し,小児科・小児外科・腹部外科の間で意見交換を行った.その結果山梨県小児救急ネットワークの中で,虫垂炎に対する診療基準を定め,小児科・外科で連携できる診療情報シートを作成した.
本診療基準は6歳から15歳までの小児を対象とし,一次診療では診断上重要と考える身体所見を組み合わせて,虫垂炎診断を進めることを推奨した.二次診療においては,画像検査を活用し診断精度の向上を推奨した.治療に関しては,敗血症性ショックの際に等張液輸液を使用し,抗生物質治療は外科医師と相談し最適な選択を行うことを推奨した.
小児救急センターにおいて虫垂炎の診療情報シートの使用を2011年4月から開始している.虫垂炎を疑ったときに適切に所見をとり,二次診療と連携することが可能となった.虫垂炎の診療がスムーズに行えるよう,今後の使用経験を基に検討を重ねてゆく予定である.
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【論策】
■題名
母の精神神経疾患と乳幼児の薬物中毒についての考察
■著者
独立行政法人国立病院機構東京医療センター小児科 輿石 薫 池上 千晶 山本 恭平 後藤 美和 岡田 隆文 長島 由佳 中村 揚子 松原 啓太 有馬 ふじ代 込山 修
■キーワード
虐待, 急性薬物中毒, 育児支援, 新生児薬物離脱症候群
■要旨
乳幼児期に母の抗精神病薬内服による急性薬物中毒症状を呈し,児童相談所による介入を行った2症例を経験した.小児の薬物中毒としては,代理によるミュンヒハウゼン症候群が有名であるが,いずれの母親もこの症候群とは異なる病歴・経過であり,育児放棄を目的に子どもに不適切な薬物投与を行った身体的虐待であった.
今回経験した母親は,妊娠前から多剤の抗精神病薬を内服しており,不安定な家族・経済環境や孤立といった環境要因を有していた.一方,このような母親の生物学的な遺伝因子や育児環境により,子どもの側でも発達障害や過敏性が高まる可能性があった.このような状況に加え,子どもの年齢が1歳前後であったために頻繁な世話が必要であり,母親の育児不安や子どもへの統制不能感が高まりやすい育児環境でもあった.
多剤抗精神病薬を内服中の母親に対しては,地域の支援に頼るのみならず,医療従事者も定期的に母子の状態を確認しつつ支援する必要がある.具体的には,まずキーパーソンには今まで以上に母親に関心を持たせ,薬を共同で管理させること.乳幼児に母親の薬を飲ませるのは虐待であるという認識を持たせること.次に子どもを中心にした介入を増やし,家族全体を支援する関係を作ること.最後に,必要な時には,母親が自ら育児支援を求めるように教育することである.
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【論策】
■題名
大学病院小児科病棟における発達支援型小児入院治療
■著者
秋田大学医学部小児科 小山田 美香 沢石 由記夫 高橋 勉
■キーワード
入院, ホスピタル・プレイ・スペシャリスト, 臨床心理士, 病棟保育士, 医師不足
■要旨
入院体験が患児に与える精神的影響については多くの報告がなされており,情緒的な側面や発達段階についても配慮した医療を提供することが求められている.このことに対し,諸外国では遊びを基盤とした支援が行われてきており,またそのための専門家も配置されている.当科においても平成19年度より専任の小児科医師1名,臨床心理士1名,保育士2名の計4名による発達支援グループ「たんぽぽ」を組織し,小児科入院患児を対象に発達支援活動を開始した.また,病院という特殊な環境に対応した遊びの専門性を取り入れるため,病院における遊びの専門職であるホスピタル・プレイ・スペシャリストの資格を専任小児科医師が修得した.専門多職種チームによるより包括的な発達支援活動は,患児の家族にも病棟スタッフにも受け入れられ,本邦における発達支援型小児入院治療のモデルを構築することができた.
また,学生や研修医が実習や研修の一環として発達支援活動に参加することは,小児科への選択希望を促すことになると考え,活動期間のうち平成19〜21年度の3年間は,文部科学省の「医師不足分野等教育指導推進経費」事業によって行った.学生を対象としたアンケートの結果より,この取り組みは学生に小児科医療の魅力と可能性を実感させることができると考えられた.
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