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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:12.10.11)
第116巻 第10号/平成24年10月1日
Vol.116, No.10, October 2012
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第115回日本小児科学会学術集会 |
日本小児科学会賞受賞記念講演 |
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加藤 裕久 1473 |
教育講演 |
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市川 光太郎 1484 |
教育講演 |
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廣田 良夫 1496 |
原 著 |
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南部 光彦,他 1503 |
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山元 佳,他 1512 |
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後藤 一也,他 1519 |
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山本 晶子,他 1528 |
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黒澤 照喜,他 1533 |
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星野 顕宏,他 1539 |
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齊藤 友康,他 1544 |
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熊本 崇,他 1549 |
論 策 |
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宮 一志,他 1554 |
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地方会抄録(東海・青森・静岡・熊本・宮城・山口・岩手・鹿児島・滋賀・千葉)
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1558 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害速報)No.35 鉄板による熱傷
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1644 |
日本小児科学会生涯教育・専門医育成委員会 |
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1648 |
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2012年54巻5号10月号目次
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1651 |
日本小児科学会倫理委員会小児終末期医療ガイドラインワーキンググループ |
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重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン
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【原著】
■題名
小児気管支喘息長期管理薬に関する病院および診療所小児科医と内科医の比較
■著者
天理よろづ相談所病院小児科1),奈良県立医科大学地域健康医学教室2),独立行政法人国立成育医療研究センター内科系専門診療部アレルギー科3),東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科4),大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター小児科5),名古屋大学大学院医学系研究科小児科学6),宮城県立こども病院総合診療科7),佐賀大学医学部小児科8),岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学9),喘息アンケートワーキンググループ10),小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012作成委員会11),日本小児アレルギー学会12) 南部 光彦1)10)11)12) 車谷 典男2)10) 大矢 幸弘3)10)11)12) 勝沼 俊雄4)10)11)12) 亀田 誠5)10)11)12) 坂本 龍雄6)10)11)12) 三浦 克志7)10)11)12) 濱崎 雄平8)11)12) 近藤 直実9)11)12)
■キーワード
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン, 普及, 長期管理薬, アンケート調査
■要旨
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(JPGL)の普及と長期管理薬の使用について調査するために,日本小児科学会の協力で無作為に抽出した病院勤務小児科医1,000人と診療所小児科医1,000人,並びに日本臨床内科医会の協力で無作為に抽出した診療所内科医1,000人にアンケートを郵送,それぞれ445人,531人,269人の有効回答を得て解析した.
JPGLは小児科医にはほぼ行き渡っているが,診療所の内科医にはまだ不十分であり,喘息児を経過観察している診療所内科医でもJPGLの所持は半数強に過ぎなかった.喘息児を経過観察している医師に対して,2歳未満児,2〜5歳児,6歳以上児の間欠型,軽症持続型,中等症持続型における長期管理薬について質問を行った.ロイコトリエン受容体拮抗薬が全般的には最も多く選択されていた.一方,間欠型や軽症持続型での貼付β2刺激薬が多くの医師によって選択されていたが,アレルギーに関心のある医師にはその選択は少なかった.吸入ステロイド薬と長時間作用性吸入β2刺激薬の合剤は,6歳以上児の軽症持続型,中等症持続型で選択する医師が多く,特に診療所内科医では中等症持続型での合剤の選択が50%を上回っていた.吸入ステロイド薬や合剤の選択は,アレルギーに関心のある医師に多かった.今後も特にアレルギーを専門としていない医師への小児喘息診療におけるガイドラインの周知への働きかけが大切である.
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【原著】
■題名
小児感染性心内膜炎の起因菌の変遷
■著者
神奈川県立こども医療センター総合診療科1),同 循環器科2) 山元 佳1) 上田 秀明2) 康井 制洋2)
■キーワード
感染性心内膜炎, 起因菌, 口腔内常在菌, ブドウ球菌, viridans group streptococcus
■要旨
1985年4月から2009年12月までの当院入院患児のうち,Modified Duke criteriaで感染性心内膜炎とした37症例に対し,後方視的検討を行った.1985年〜1999年に入院した患者群を前期群(n=16),2000年〜2009年の患者群を後期群(n=21)に分け,患者背景,診断と合併症,起因菌,治療成績を比較した.前期群の平均年齢は7.6±4.0歳,後期群は11.6±7.2歳であった.過去の手術歴及び心内人工物の有無に関して,二群間に有意差は無かった.Streptococcus属は前期群で8例,後期群で2例と有意な減少を認め(p=0.009),Staphylococcus属は前期群で2例,後期群で11例と有意に増加した(p=0.02).初回治療でペニシリン系抗菌剤とアミノグリコシド系抗菌剤を用いた例は,前期群では11例,後期群では3例と有意に減少し(p=0.002),後期群ではグリコペプシド系やカルバペネム系抗菌薬が第1選択となることが多くなった.総入院日数(p=0.83),退院時生存数(p=0.58)には差がなかった.
海外での変化と同じく,近年の本邦の小児感染性心内膜炎の起因菌はStaphylococcus属へと変化していた.
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【原著】
■題名
重症心身障害児病棟でみられたヒトメタニューモウイルスの集団感染
■著者
国立病院機構西別府病院小児科1),久留米大学医学部感染医学講座臨床医学部門2) 後藤 一也1) 今井 一秀1) 植村 篤実1) 平松 美佐子1) 濱田 信之2)
■キーワード
ヒトメタニューモウイルス, 重症心身障害児, 集団感染, 呼吸不全
■要旨
2009年6月から8月にかけての5週間に,重症心身障害児(重症児)病棟においてヒトメタニューモウイルス(Human metapneumovirus:hMPV)の集団感染を経験した.23例が発熱し,うち2例で咽頭拭い液のReverse Transcription-Polymerase Chain Reaction(RT-PCR)が陽性であった.蛍光抗体法によるhMPVの抗体価も測定し,10例がhMPV感染と診断された.感染が否定された2例を除く21例中10例で肺炎と診断され,うち2例は呼吸不全を認め,気管内挿管と肺内パーカッションベンチレーター(intrapulmonary percussion ventilation:IPV)を実施した.今回の集団感染の要因として,病棟構造や,処置や日常ケアの多さなどの環境因子と,hMPVの終生免疫の得られにくさなどが考えられた.重症児もhMPV感染の集団発生や重症化のリスク群と考えられ,気道感染症の集団感染をみた場合,hMPV感染も考慮し,早期診断につとめ適切な感染予防策や治療を行う必要がある.
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【原著】
■題名
Meckel憩室適応に対するシンチグラフィにおける陽性率の臨床的検討
■著者
国立成育医療研究センター総合診療部1),同 消化器科2) 山本 晶子1) 北岡 照一郎1) 前川 貴伸1) 垣内 俊彦2) 石黒 精1) 阪井 裕一1)
■キーワード
メッケル憩室, シンチグラフィ, 小児, 下血, 腸重積
■要旨
メッケル憩室を診断するためにメッケル憩室シンチグラフィ(以下メッケル憩室シンチ)が行われるが,不要な放射線被曝を避けるためには検査対象を選ぶに際して事前確率(陽性率)を高めることが求められる.2002年から2010年までの8年間に当センターでメッケル憩室シンチを施行した52症例の臨床像を検討したので報告する.症例の年齢中央値は5歳2か月,男女比は8:5であった.検査理由は多い順に血便(39例),腸重積(10例),その他(3例)であった.また,メッケル憩室シンチ(以下シンチ)陽性は5症例で,出血量の多い血便を理由に検査した症例が4例,腸重積を理由に検査した症例が1例であった.全症例で異所性胃粘膜が認められた.シンチ陽性例に出血量の少ない血便例はなかった.シンチ陰性は47症例であった.血便39症例について検討したところ,シンチ陽性例(n=4)の年齢中央値は8歳9か月で,シンチ陰性例(n=35)の年齢中央値と比較し,有意に高かった(p=0.016).これらの結果から,小児におけるメッケル憩室シンチは,出血量の多い,年齢層の高い児に対して優先的に行うのがよいと考える.
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【原著】
■題名
小児急性喉頭蓋炎9例の検討
■著者
都立小児総合医療センター総合診療部総合診療科 黒澤 照喜 柳原 知子 榊原 裕史 寺川 敏郎
■キーワード
急性喉頭蓋炎, インフルエンザ菌b型, 頸部側面単純写真, 気管挿管, 小児
■要旨
小児の急性喉頭蓋炎の多くはインフルエンザ菌b型の菌血症に続発して起こる喉頭蓋の蜂窩織炎である.疑って確定診断し適切に治療を行えば後遺症なく救命できるが,症状が電撃的に進行し不幸な転帰をたどることもある疾患である.
確定診断は頸部側面単純写真にて喉頭蓋の腫脹を確認することであり,確実な救命のために最も大切なのは気道確保である.呼吸停止などの危急事態でない限りは,患児をできる限り刺激せず,吸入麻酔下で最も熟練した者が気管挿管を行うことが望ましいと考える.
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【原著】
■題名
超低出生体重児の乳幼児期における呼吸器疾患の重症化とその危険因子
■著者
昭和大学医学部小児科学教室 星野 顕宏 藤井 隆成 阿部 祥英 石川 良子 相澤 まどか 岩崎 順弥 水野 克己 板橋 家頭夫
■キーワード
超低出生体重児, 乳幼児期, 呼吸器疾患, 呼吸不全, 危険因子
■要旨
【目的】超低出生体重児(ELBWI)の乳幼児期における呼吸器疾患の罹患率と,その危険因子を検討する.【対象と方法】過去10年間に当院新生児集中治療室を生存退院し,3歳時まで経過観察されたELBWI 69名を対象として診療録を後方視的に検討した.【結果】反復性喘鳴の罹患率,下気道感染症の罹患率,呼吸器疾患による再入院率,呼吸器疾患による2回以上の再入院率,人工換気を必要とする呼吸不全の罹患率はそれぞれ35%(24名),35%(24名),32%(22名),20%(14名),9%(6名)であった.危険因子として反復性喘鳴は在胎週数と慢性肺疾患(CLD)が選択され,下気道感染症,呼吸器疾患による再入院ではCLDが選択された.呼吸器疾患による複数回の再入院では在宅酸素療法(HOT)が,人工換気を必要とする呼吸不全では気管切開が選択された.【結論】ELBWIの呼吸器疾患罹患率は低くなく,加えてHOTや気管切開を必要とする児では,度重なる再入院や人工換気を必要とする呼吸不全など,より重篤な状態に陥りやすい危険があることが判明した.HOTや気管切開を必要とする児に対しては感染予防に関するより厳密な対応や,呼吸器疾患罹患時の慎重な対応が必要と考えられた.
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【原著】
■題名
X連鎖性低リン血症性くる病による低身長に対して成長ホルモン治療が有効であった4症例
■著者
東京都立小児総合医療センター内分泌代謝科1),松戸市立病院小児医療センター小児科2),あいち小児保健医療総合センター内分泌代謝科3) 齊藤 友康1)2) 井澤 雅子3) 武田 良淳1) 山田 誠1) 後藤 正博1) 長谷川 行洋1)
■キーワード
PHEX, 低身長, 成長ホルモン, リン製剤, 活性型ビタミンD製剤
■要旨
X連鎖性低リン血症性くる病(XLH)は近位尿細管でのリン再吸収障害とビタミンD代謝障害が主な病態で低リン血症性くる病の大部分を占める.多くの症例は歩行開始後にO脚や低身長などの症状を契機に発見される.低リン血症を認めるにも関わらず,1,25(OH)2Dの上昇は認めず,血清カルシウム値およびintact PTH値は正常である.この病態に対し,従来よりリン製剤とビタミンD製剤による治療が行われ,骨のくる病変化の改善が報告されている一方,最終身長は低く終わる症例が存在する.近年,低身長のXLH患者を対象に成長ホルモン(GH)治療が行われ,身長SD値の改善を認めたとの報告が散見される.本論文では,従来の治療によっては低身長が改善しにくいと思われたXLH患者において,低身長に対するGH治療の効果を後方視的に確認した.対象はPHEX遺伝子異常が確認されている3家系4症例(男2人,女2人)である.中性リン酸塩とビタミンD製剤の内服に加え,GHを0.254〜0.372 mg/kg/weekで投与し,身長SD値の変化を調べた.最終身長まで確認できた症例1は身長SD値が−2.6 SDから−1.0 SDと10年4か月の治療期間で+1.6 SD値の改善を認めた.他の3症例に関しても,+1.4〜+2.7 SDの身長SD値の改善(治療期間:2年5か月〜4年1か月)を認めた.本論文で検討したXLHの4症例に於いて従来のリン製剤,ビタミンD製剤と併用した成長ホルモン治療は低身長に対して有効であった.
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【原著】
■題名
Yersinia pseudotuberculosis 5a抗体価上昇が認められた腸間膜リンパ節膿瘍の1例
■著者
佐賀県立病院好生館小児科1),佐賀大学付属病院小児科2) 熊本 崇1) 前田 寿幸1) 市丸 智浩1) 田代 克弥2) 濱崎 雄平2)
■キーワード
腸間膜リンパ節膿瘍, Yersinia
■要旨
今回われわれは発熱・肝機能障害で入院し,その後腸間膜リンパ節炎から膿瘍形成にまで至ったYersinia pseudotuberculosis(Yp)感染症の1例を経験したので報告する.症例は13歳女児,てんかんに対しバルプロ酸を内服中であった.持続する高熱,四肢の不定型紅斑,黄疸を伴った肝機能障害を認め,第3病日に当院に紹介され入院した.細菌性腸炎または胆管炎と考えTAZ/PIPC投与で軽快したため17病日に退院した.しかし退院翌日に発熱・右下腹部痛を訴え再入院した.CTでは腸間膜リンパ節の腫大があり,CTRXとGMを使用したが右下腹部痛は続き,その後膿瘍を形成した.抗菌剤をMEPMとCLDMへと変更したところ,症状・検査所見ともに改善したため第45病日に退院した.後日のペア血清による検査で,Yp 5a抗体が20倍から640倍へと有意な上昇を認め,Yp感染症と診断した.われわれが検索し得た限りでは,小児の腸間膜リンパ節膿瘍例で本菌が起炎菌と考えられたのは本例が初めてであったが,Ypの培養検出が困難なため診断に至っていない症例も多いと推測される.腸間膜リンパ節炎に伴う腹腔内膿瘍例の診療にあたる際,本菌による感染症をも念頭におくことで更に多くの症例を見いだしうる可能性がある.
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【論策】
■題名
新生児・乳児へのビタミンK予防投与に関する保護者の意識調査
■著者
富山大学医学部小児科1),厚生連高岡病院小児科2) 宮 一志1) 高崎 麻美2) 斉藤 和由1) 板沢 寿子1) 上勢 敬一郎2) 足立 陽子1) 足立 雄一1) 宮脇 利男1)
■キーワード
ビタミンK欠乏, 出血症, ビタミンK予防投与, アンケート調査
■要旨
ビタミンK2シロップの不投与が要因の一つと思われるビタミンK欠乏性出血症は現在においても散見される.医療機関での体制の問題もあるが,ビタミンKの予防投与についての保護者の認識もまだ十分とは言えない.そこで,平成23年3月から4月の2か月間に富山市で行われた4か月健診対象者の保護者にアンケート調査を実施した.アンケート送付数は418で,回収数は394であり,有効回収率は94.2%であった.その結果,ビタミンK2シロップを3回とも内服したと回答した者は79.7%に留まり,新生児期の内服を確認していない者が13.4%であった.また,第一子の保護者(全体の52.8%)のうち,児の出生前にビタミンKの予防投薬について知っていた者は24.5%に過ぎなかった.ビタミンK予防投与の存在と意義を保護者が十分に認識していることは,ビタミンK不投与に対するfail safeとしても大切であると思われる.そのためには,ビタミンK予防投与に対する医療機関側の体制作りだけでなく,保護者への啓発活動も必要と考えられた.
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