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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:12.9.11)
第116巻 第9号/平成24年9月1日
Vol.116, No.9, September 2012
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総 説 |
1. |
てんかん症候群の疾患遺伝子up to date
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中山 東城,他 1327 |
2. |
クリオピリン関連周期性発熱症候群に対する生物学的製剤治療の手引き(2012)カナキヌマブ
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横田 俊平,他 1337 |
第115回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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遠藤 郁夫 1342 |
原 著 |
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片岡 昭浩,他 1345 |
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松野 良介,他 1351 |
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石川 亜貴,他 1357 |
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柳澤 大輔,他 1365 |
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安部 真理子,他 1369 |
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石川 さやか,他 1375 |
論 策 |
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是松 聖悟,他 1380 |
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中村 知夫,他 1387 |
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1392 |
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1457 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害速報)No.34 歯ブラシによる刺傷
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1458 |
日本小児科学会生涯教育・専門医育成委員会 |
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第8回:フィードバックの一つの方法:SET-GO Method
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1461 |
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1464 |
平成24年度公益財団法人小児医学研究振興財団 |
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1469 |
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1470 |
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1471 |
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イーライリリー海外留学フェローシップの募集について
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1472 |
【原著】
■題名
難治性マイコプラズマ肺炎に対する早期ステロイドの有用性
■著者
京都桂病院小児科 片岡 昭浩 浅田 大 武内 治郎 常念 大輔 森 未央子 水嶋 康浩 若園 吉裕
■キーワード
マイコプラズマ肺炎, コルチコステロイド, マクロライド耐性
■要旨
[目的]マイコプラズマ肺炎に対するステロイド治療の有効性を検討すること.
[対象と方法]2006年から2011年の6月までの期間に本院に入院となったマイコプラズマ肺炎例を対象とした.マクロライドの反応性により分類し,反応不良群におけるステロイド治療の有効性を発熱期間や合併症の有無等にて解析した.
[結果と考察]入院症例は40例でそのうち重症化したためにステロイドを使用した症例が13例あった.マクロライドの反応良好例は近年減少の傾向にあり,ステロイド治療を必要とした症例は増加傾向にあった.ステロイド治療を行った全例で速やかな臨床症状の改善を認め,呼吸器所見の悪化により早期にステロイドを使用した例でも全例が24時間以内に解熱し合併症を認めなかった.一方,ステロイドを使用しなかった群の中には胸水や髄膜炎等の合併例を認めた.マイコプラズマ感染症の重症化においては免疫の過剰反応が主な因子であるといわれており,ステロイドの早期使用の有用性が示唆された.また,血清LDHの高値がステロイド治療の適応を決める上で参考となる可能性が示された.
[結語]難治性のマイコプラズマ肺炎が増加傾向にあるが,マクロライドに反応不良の難治症例では早期のステロイド治療が選択肢になると思われた.
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【原著】
■題名
乳児血管腫およびKasabach-Merritt症候群に対するプロプラノロール治療の検討
■著者
埼玉県立小児医療センター血液・腫瘍科1),同 未熟児新生児科2),同 総合診療科3) 松野 良介1) 康 勝好1) 荒川 歩1) 関 正史1) 高橋 寛吉1) 牛腸 義宏1) 加藤 元博1) 永利 義久1) 日根 幸太郎2) 清水 正樹2) 岩間 達3) 鍵本 聖一3) 花田 良二1)
■キーワード
乳児血管腫, プロプラノロール, ステロイド治療
■要旨
はじめに:乳児血管腫の中には一部,腫瘍の増大により機能障害または生命の危険が生じる可能性のある症例が存在する.近年,海外を中心に,乳児血管腫に対してプロプラノロールが著効するという報告がなされている.我々は当センターを受診した乳児血管腫9症例とKasabach-Merritt syndrome(KMS)2症例に対してプロプラノロール内服による治療を行った.治療経過について報告する.
症例:対象は乳児血管腫の9症例とKMS2症例.乳児血管腫のうち5症例はプレドニゾロン(PSL)内服またはレーザーによる治療歴のある症例であった.プロプラノロールを3 mg/kg/日で投与を行い,効果判定は外表の病変については肉眼的所見で行い,体内病変に関してはMRIにて行った.
結果:乳児血管腫では全症例で速やかに血管腫の縮小を確認できた.PSLやレーザーによる治療の反応性が不十分な血管腫に対しても有効であった.血圧低下,徐脈,低血糖などの有害事象は認めなかった.KMS2症例では血管腫の縮小を認めなかった.
考察と結語:機能障害または生命の危険が生じる可能性がある乳児血管腫に対し,プロプラノロール内服が治療の第一選択肢になりうると考えられた.
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【原著】
■題名
CHARGE症候群26例の臨床的検討
■著者
神奈川県立こども医療センター遺伝科1),同 内分泌代謝科2) 石川 亜貴1) 榎本 啓典1) 古谷 憲孝1) 室谷 浩二2) 朝倉 由美2) 安達 昌功2) 黒澤 健司1)
■キーワード
CHARGE症候群, 合併症, 自然歴, 発達遅滞, 行動特性
■要旨
CHARGE症候群(以下CHS)の自然歴を明らかにすることを目的とし,当センターにおけるCHS 26例の出生状況,診断年齢,合併症,医療管理状況,行動特性,就学状況について検討した.
診断年齢は新生児期から24歳までと幅広く,3歳までに約2/3が診断されていた.これまで報告されている合併症の頻度と比べて,後鼻孔閉鎖は30%,食道閉鎖は1例と頻度が低く,口唇口蓋裂は38%と高かった.喉頭軟化症,摂食嚥下障害,胃食道逆流の合併は多く,濃厚な医療管理を必要とする症例が少なくないが,一部は症状が改善し,気管切開や胃瘻の閉鎖が可能となる症例もいた.発達の評価は視覚・聴覚障害のため困難であるが,約8割の症例は手話やジェスチャー・サインなどの手段を使ったコミュニケーションが可能であり,彼らの理解力は実際のパフォーマンスに比べて高いことが推測された.また行動面では,忙しなさや落ち着きのなさが目立つ傾向があり,知的障害の重症度によってその傾向は異なった.早期に視覚・聴覚障害に対する介入,療育を行い,発達の可能性を引き出し,コミュニケーション能力を育てていくことが,精神行動面の安定化,社会性の獲得につながると考えられた.
CHSの合併症,成長発達の特徴,行動特性などの自然歴を,医療,療育,教育の専門家が正しく理解し,個々の患者にあわせて適切な管理を行い生活の質を向上させることが,患者と家族にとって最も重要と考える.
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【原著】
■題名
生後60日以下で発症した川崎病の3例
■著者
前橋協立病院小児科 柳澤 大輔 齋藤 耕一郎 伊東 大吾 矢島 昭彦 深澤 尚伊
■キーワード
川崎病, 乳児早期, 治療, 合併症
■要旨
われわれは生後60日以下で発症した3例を経験した.全例とも発熱や発疹で発症し典型的な川崎病の症状を呈した.またアスピリンやガンマグロブリン療法が奏功し,心合併症もみられなかった.発熱以外の主要症状の中でも発疹は全例で病初期から出現していたため,この年齢層でも熱性発疹性疾患では川崎病を鑑別する必要がある.また不全型が多く心合併症も高率であり,疑われる場合には積極的に心臓超音波検査を行うことが早期診断・早期治療に繋がると考えられる.
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【原著】
■題名
特発性縦隔気腫の臨床像
■著者
島根大学医学部小児科1),島根大学医学部附属病院輸血部2),公立雲南総合病院小児科3) 安部 真理子1) 竹谷 健1)2) 福田 誠司1) 安田 謙二1) 葛西 武司3) 山口 清次1)
■キーワード
特発性縦隔気腫, 縦隔炎, 緊張性縦隔気腫, 胸痛, 咽頭痛
■要旨
特発性縦隔気腫(spontaneous pneumomediastinum,SPM)は健康な人に突然発症する比較的まれな疾患である.患者の多くは若年者であるため小児科でも遭遇する機会があると思われるが,小児期発症のSPMの報告は少ない.今回,私たちは20歳未満のSPM 11例の臨床像を検討した.発症年齢の中央値は15歳(10〜19歳),11例中10例(91%)が男性で,body mass indexの中央値は18.2であった.7例(64%)で発症前に気道内圧を上昇させるエピソードがあった.9例(82%)で胸部違和感,胸痛または心窩部痛を認め,呼吸困難を合併した症例は1例のみであった.6例(55%)で頸部痛や腫脹などの頸部症状を認めた.感冒とは異なる咽頭痛と嚥下痛のみの症例が1例あり,典型的な三主徴である胸痛,頸部痛,嚥下困難が全てそろった症例はいなかった.全例で胸部X線写真またはCTで縦隔内に気腫像を認めた.8例(73%)が入院し,そのうち7例で抗菌薬治療が行われたが,全例で合併症を認めず,治癒した.胸痛,頸部痛,嚥下困難や感冒時とは異なる咽頭痛や嚥下痛を訴えた場合,特に10歳代の痩せ型の男性ではSPMを鑑別することが重要である.また,発症前に嘔吐がない症例では食道破裂の可能性は低いため,食道造影検査や縦隔炎に対する予防抗菌薬投与は不要で,呼吸困難などの症状の増悪がみられない例では緊張性縦隔気腫の可能性は低く,ともに外来での経過観察が可能であると思われる.
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【原著】
■題名
喀血を繰り返し気管支動脈蔓状血管腫と診断された1例
■著者
石川県立中央病院いしかわ総合母子医療センター小児内科 石川 さやか 白橋 徹志郎 今西 洋介 南部 旨利 土市 信之 中田 裕也 篠崎 絵里 北野 裕之 西尾 夏人 上野 康尚 堀田 成紀 久保 実
■キーワード
喀血, 気管支動脈蔓状血管腫, 気管支動脈塞栓術, 気管支動脈造影, racemous hemangioma
■要旨
症例は7歳男児.これまでも数回喀血の既往があるが,確定診断には至っていなかった.日中に2度喀血があり,同日入院となった.胸部造影CTでは当初左肺に肺動静脈瘻(AVM:pulmonary arteriovenous malformation)を思わせる所見があったため,血管造影を施行した.しかしAVMの所見は認められず,気管支動脈蔓状血管腫が多発していた.気管支動脈―肺動脈短絡も認められ,喀血の原因と考えられた右中葉気管支動脈をスポンゼルで塞栓し,以後外来経過観察となった.
繰り返す喀血に対して,血管造影により診断することができた気管支動脈蔓状血管腫の1例を経験した.治療法としては,スポンゼルあるいはコイルによる気管支動脈塞栓術,気管支動脈結紮術や肺葉切除術が行われているが,いずれの方法も長所と短所があり,確立したものはない2.比較的稀な疾患だが,大量喀血により緊急事態となることもあり,慎重な経過観察が必要である.
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【論策】
■題名
公的補助による任意予防接種と医療費控除の小児医療,地域社会への影響
■著者
大分大学医学部地域医療・小児科分野1),同 小児科学2) 是松 聖悟1)2) 秋吉 健介2) 高野 智幸2) 関口 和人2) 岡成 和夫2) 武口 真広2) 岡本 知子2) 園田 幸司2) 加藤 里絵2) 松塚 敦子2) 半田 陽祐2) 島田 祐美2) 宮原 弘明2) 前田 美和子2) 山田 博2) 前田 知己2) 末延 聡一2) 拜郷 敦彦2) 泉 達郎2)
■キーワード
地域保健, 予防接種, 医療費控除, 出生数, 費用対効果
■要旨
健康で元気な子どもを育む地域社会を構築するための小児医療・福祉・保健活動を評価する目的で,小児への公的補助による任意予防接種と医療費控除が,時間外・救急を含む受診動向,予防接種率,小児医療,地域経済,出生率へ与える影響を相互比較した.
大分県竹田市は,予防接種の助成を2006年より水痘,ムンプスワクチンまで,日田市は,医療費控除を2007年に学童まで,周辺2町は中学生まで拡大させた.水痘,ムンプスが減少した竹田市に対し,日田市では麻疹,水痘が多く,また,乳幼児1人当りの小児科外来受診件数,外来医療費は竹田市の3倍を要した.軽症患児の時間外受診も1.6倍に増え,小児科医の過重就労から,時間外診療の縮小を余儀なくされた.
この取り組みにて,竹田市では予防接種助成271万円の増額により,医療費と看病による親の生産損失額が1,301万円から217万円へ削減され,年間804万円の費用対効果が得られた.日田市が同様の取り組みをした場合,年間2,744万円の費用対効果が推定された.
両市とも,合計特殊出生率は増加したが,医療費控除の拡大は,軽症患児の時間外受診を増加させたものの,感染症を減らすにはいたらなかった.一方,予防医学の拡充と啓発は,感染症減少,医療経済効果に繋がった.健康で元気な子どもが育つ街を作るための基盤となり,小児医療の健全化をもたらすことを証明した.
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【論策】
■題名
小児専門医療機関における在宅医療の現状と対策
■著者
国立成育医療研究センター周産期センター新生児科1),同 総合診療部2),同 生体防御系内科部,医療連携・患者支援センター3) 中村 知夫1) 余谷 暢之2) 小穴 慎二2) 阪井 裕一2) 横谷 進3)
■キーワード
小児在宅医療, 小児専門医療施設, 医療体制
■要旨
国立成育医療研究センターの2010年6月,7月の在宅療養指導管理料算定患者リストより,在宅自己注射指導管理料,在宅悪性腫瘍患者指導管理料算定患者を除いた346人を対象に,国立成育医療研究センターでの小児在宅医療患者の現状を分析し,多くの小児重症患者がいる医療施設での在宅医療体制のあり方について提言した.
若年から在宅療養指導を受けている幅広い年齢層の患者が世田谷を中心とした東京都内だけでなく,広範囲の医療圏から通院し,長期入院,死亡となることも多かった.原疾患は,中枢神経系の先天的/後天的疾患,周産期の異常,染色体異常を含めた先天異常など様々であった.在宅療養指導管理料算定者は,複数の診療科を受診していることが多く,半数以上が総合診療部か神経科を受診していた.また,在宅寝たきり指導加算対象者は,1/5以上が超重症児/準超重症児であり,原疾患は周産期の異常をはじめとして様々であった.
本研究により,広範囲の医療圏から,幅広い年齢層の,様々な疾患を持った在宅医療を要する患者が数多く国立成育医療研究センターに通院していることが明らかになった.当センターと同様に,多くの小児重症患者がいる医療施設が在宅医療を提供するには,(1)院内では,診療科の枠を超えた総合的な診療を効率よく行う体制と在宅医療に関する情報を集中して扱う部門の整備が,(2)院外では,広範囲の地域の行政機関,医療施設との綿密な連携が必要であると考えられた.
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