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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:12.6.20)
第116巻 第6号/平成24年6月1日
Vol.116, No.6, June 2012
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総 説 |
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小児救急医療現場における脳死下臓器提供に関する問題点と課題
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市川 光太郎 969 |
原 著 |
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小川 正道,他 979 |
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黒田 友紀子,他 985 |
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松井 克之,他 990 |
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垣内 俊彦,他 995 |
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谷口 留美,他 999 |
論 策 |
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岡藤 隆夫,他 1003 |
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1007 |
日本小児科学会小児死亡登録・検証委員会 |
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子どもの死に関する我が国の情報収集システムの確立に向けた提言
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1027 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害注意速報) |
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1036 |
Injury Alert(傷害注意速報) |
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1038 |
Injury Alert(傷害注意速報) |
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1042 |
日本小児科学会生涯教育および専門医育成認定委員会 |
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1044 |
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1047 |
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1069 |
日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2012年54巻2号4月号目次
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1070 |
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1072 |
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1073 |
【原著】
■題名
特発性成長ホルモン分泌不全性低身長症における治療による成人身長
■著者
低身長外来研究会1),小川クリニック2),野瀬クリニック3),くまもと発育クリニック4),なごやかこどもクリニック5),きのしたこどもクリニック6),徳田こどもクリニック7),つるのぼるクリニック8),まつおこどもクリニック9),平野こどもクリニック10),橋本こどもクリニック11),おがわクリニック12),五十嵐小児科13),たなか成長クリニック14) 小川 正道1)2) 野瀬 宰1)3) 岡田 稔久1)4) 上條 隆司1)5) 木下 英一1)6) 徳田 正邦1)7) 津留 徳1)8) 松尾 敏1)9) 平野 岳毅1)10) 橋本 伸子1)11) 小川 治夫1)12) 五十嵐 裕1)13) 田中 敏章1)14)
■キーワード
成長ホルモン分泌不全性低身長症, 成長ホルモン治療, 成人身長, 蛋白同化ホルモン, 性腺抑制療法
■要旨
13の小児内分泌専門のクリニックにおいて治療された,成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)の成長ホルモン(GH)治療による成人身長を検討した.
対象は特発性GHDと診断された89名(男子56名,女子33名)で,重症11名,中等症41名,軽症37名だった.平均治療開始年齢は9.33±3.2歳,治療開始時平均身長SDスコアは,-2.76±0.62 SDだった.
結果:GH治療は,平均0.192±0.047 mg/kg/週で開始され,平均6.5±2.8年間治療された.蛋白同化ホルモンの単独併用療法を受けた者5名,単独性腺抑制療法を受けた者4名,蛋白同化ホルモン+性腺抑制療法の併用を受けた者3名であった.成人身長の平均は,男女それぞれ163.9±4.6 cm(-1.16±0.88 SD),150.9±5.7 cm(-1.40±1.14SD)で,治療開始からの身長SDスコアの改善度は,男子+1.52±0.97 SD,女子+1.50±1.13 SDであった.成人身長SDスコアが-2SD以上になった割合は,男子84%,女子76%であった.男子の88.9%(40/45),女子の90.3%(29/31)がtarget height range内だった.
今回の報告はいままでの日本の報告のなかでも良い成績で,その理由は治療開始年齢が若く,治療開始時身長SDスコアが高いなどの早期診断に加え,治療量を常に基準量を下回らないようにするなどの細かい臨床上の注意力によると考えられた.
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【原著】
■題名
Guillain-Barré症候群を合併した川崎病の1例
■著者
東京大学大学院医学系研究科小児医学講座1),同 医学系研究科発達医科学講座2) 黒田 友紀子1) 三牧 正和1) 寺嶋 宙1) 佐藤 敦志1) 高橋 寛1) 狩野 博嗣1) 岡 明1) 水口 雅2) 五十嵐 隆1)
■キーワード
川崎病, ギランバレー症候群, 四肢麻痺, 歩行障害, 神経伝導速度
■要旨
川崎病の急性期に四肢不全麻痺を呈した幼児例を経験した.症例は2歳男児.発熱,発疹で発症し,診断基準5/6を満たし川崎病と診断された.第5病日に歩行困難が出現した.独り立ち不能となり,下肢優位の筋力低下と深部腱反射減弱を呈した.運動神経伝導検査でM波の潜時および振幅は正常であったが,上下肢のF波が消失しており,Guillain-Barré症候群と診断された.第8病日に免疫グロブリンを投与したところ,すみやかに解熱して立位,歩行が可能となり,第15病日にはF波も改善した.発症1か月後には運動機能が病前と同程度まで回復した.川崎病とGuillain-Barré症候群の時間経過が一致しており,両者が合併した稀な症例と考えられた.
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【原著】
■題名
ACTH療法に甲状腺機能低下症を合併したWest症候群の1例
■著者
滋賀医科大学小児科1),近江八幡市立総合医療センター小児科2) 松井 克之1) 上原 陽治1) 塚村 篤史2) 龍神 布紀子1) 松分 久美子1) 吉岡 誠一郎1) 丸尾 良浩1) 高野 知行1) 竹内 義博1)
■キーワード
West症候群, ACTH療法, 合併症, 甲状腺機能低下症, ガイドライン
■要旨
West症候群に対する治療は欧州ではVigabatrinが第一選択とされているが,我が国では認可されておらず,ACTH療法が第一選択とされている.ACTH療法の副作用として高血圧,副腎皮質機能不全,大脳退縮,硬膜下血腫などが知られているが,甲状腺機能低下症については十分認識されていない.我々はACTH療法中に甲状腺機能低下症を呈し,甲状腺ホルモン補充療法を必要とした女児例を経験したので報告する.生後5か月にWest症候群を発症し,ビタミンB6やバルプロ酸,ゾニサミドによる治療が行われたが効果なくACTH療法を行った.けいれんは消失したが,治療前は正常であった甲状腺機能がTSH 0.29 μIU/ml,fT3 0.7 pg/mI,fT4 0.62 ng/dIと低下を認め,L-thyroxine補充を行った.TRH負荷試験でTSH分泌抑制を認め,中枢性甲状腺機能低下症と診断した.回復までに10週間のL-thyroxine補充を行った.過去にACTH療法の合併症として甲状腺機能低下症が高頻度に起ると報告されているが,十分な検討はなく,診療ガイドラインにも反映されていない.West症候群自体が精神発達遅滞の原因となるため甲状腺ホルモンを補充した場合の発達予後の評価には難しい点はあるものの,甲状腺機能低下症による発達遅滞は予防できることを考えればACTH療法時には甲状腺機能を定期的に評価し,機能低下の際にはホルモンを補充することが必要であると思われる.今後,多施設,多数例での検討,評価が望まれる.
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【原著】
■題名
脳死分割肝移植を実施した小児2症例
■著者
独立行政法人国立成育医療研究センター病院 垣内 俊彦 笠原 群生 阪本 靖介 金澤 寛之 唐木 千晶 重田 孝信 福田 晃也 中川 聡 中澤 温子 松井 陽
■キーワード
分割肝移植, 脳死肝移植, 小児末期肝疾患, 改正臓器移植法
■要旨
2010年7月に改正臓器移植法が施行され,家族承諾があれば脳死臓器提供が可能になった.小児脳死臓器提供の増加が見込まれたが,2010年4月に1例提供があったのみである.脳死分割肝移植は,成人ドナー肝臓を分割し,2人のレシピエントに移植する術式である.ドナー・プール増加のための手段である.当センターで改正臓器移植法後,2例の脳死分割肝移植を実施したので報告する.
症例1は劇症肝不全の9歳女児.両親ともに医学的理由で生体肝移植ドナー不適格であった.脳死肝移植登録後3日目に脳死ドナーが出現し分割肝移植を行った.症例2は胆道閉鎖症の11か月女児.生体肝移植の準備と同時に,家族の希望で脳死肝移植登録を行った.登録後45日目に脳死ドナーが出現し分割肝移植を行った.
改正臓器移植法施行後より,脳死下臓器提供が増加傾向にある.生体ドナー・家族の負担の軽減からも,今後小児で脳死肝移植を積極的に考慮していくべきである.分割肝移植は小児脳死肝移植を増加させる可能性があり,積極的に適応すべきであると考える.
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【原著】
■題名
労作時呼吸困難を認めた肺胞微石症の小児例
■著者
さいたま市民医療センター小児科 谷口 留美 細井 洋平 野田 あんず 佐山 麗実 岡本 陽子 越野 由紀 西本 創 高見澤 勝
■キーワード
肺胞微石症, びまん性微細粒状陰影, 遺伝性肺疾患, 在宅酸素療法, 肺移植
■要旨
症例は,特記すべき家族歴のない,アレルギー性鼻炎の既往を持つ13歳の男子.学校健診で心室性期外収縮を認めたため,当院に紹介となった.心臓超音波検査及び心電図は正常範囲内であったが,胸部単純X線検査でびまん性微細粒状陰影を認めた.KL-6を含む血清学的検査は正常で,抗トリコスポロン抗体も陰性であった.また,結核を含めた呼吸器感染症も否定的であった.胸部CT検査では胸膜下優位の微細粒状影を認めた.初診時,自覚症状はなかったが,数日後より軽度の労作時呼吸困難が出現した.2週間の入院後も呼吸困難は持続していたため,2か月後に,胸腔鏡下肺生検を行い,肺胞微石症と診断した.肺胞微石症は稀な遺伝性呼吸器疾患である.本例のように小児期から症状を呈する例は少なく,今後,在宅酸素療法,肺移植を含めた治療が必要になると思われる.
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【論策】
■題名
兵庫県下各自治体における予防接種台帳整備状況調査
■著者
兵庫県小児科医会感染症対策委員会 岡藤 隆夫 吉田 元嗣 田中 一宏 江原 伯陽 芥川 宏 安部 治郎 梶山 瑞隆 小林 謙 多木 秀雄 筒井 孟 三木 和典 八若 博司 春田 恒和 吉村 竜太 横山 純好
■キーワード
兵庫県, 予防接種台帳, 住民基本台帳, 予防接種率, 予防接種管理システム
■要旨
予防接種率の向上を図るには,接種状況の把握と未接種者への個別の勧奨が必要と考える.そのためには予防接種台帳の整備と,さらには電算化が不可欠と思われる.そこで兵庫県下の各自治体を対象に,予防接種台帳の整備状況や転入児に対する接種歴の確認方法などについて,文書によるアンケート調査を行った.回収率は100%で,その結果,41市町のうち40市町が予防接種台帳(電子媒体37,紙媒体3)を整備していた.約4割の市町で,「予防接種台帳を整備していない」「住民基本台帳と連動していない」「転入児の接種歴を正確に把握していない」との理由により,未接種者へ個別に接種勧奨するシステムが十分に整備されてない状況であった.国立感染症研究所で,予防接種歴を電子媒体で管理するために開発されたソフトウェア「予防接種管理システム」の認知度は低い印象だった.兵庫県の全市町で,予防接種台帳を電算化し住民基本台帳と連動した上で適切に管理することを,小児科医からも市町に強く要望していく必要があると思われた.
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