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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:12.4.24)
第116巻 第4号/平成24年4月1日
Vol.116, No.4, April 2012
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総 説 |
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児玉 浩子,他 637 |
2. |
筋ジストロフィーのbest supportive care
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小牧 宏文 655 |
3. |
小児の急性腎傷害(AKI)と急性血液浄化療法
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伊藤 秀一 666 |
4. |
新生児期に高熱を生じる新興感染症ヒト・パレコウイルスの病態―横浜市でみられた小流行からの考察―
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横田 俊平,他 679 |
原 著 |
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菊池 健二郎,他 687 |
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喜瀬 智郎,他 693 |
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安達 裕行,他 699 |
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松浦 隆樹,他 705 |
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諸戸 雅治,他 710 |
短 報 |
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粟生 耕太,他 715 |
論 策 |
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大杉 夕子,他 719 |
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河野 達夫 728 |
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地方会抄録(中国四国・鹿児島・福島・静岡・甲信・栃木・北海道・佐賀・山形・福岡・愛媛・埼玉・山口・北陸・富山・青森)
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740 |
日本小児科学会薬事委員会報告 |
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ピボキシル基含有抗菌薬投与による二次性カルニチン欠乏症への注意喚起
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804 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報) No.30 蛇口による乳臼歯の脱臼
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807 |
日本小児科学会生涯教育および専門医育成認定委員会 |
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813 |
専門医にゅーす No.10 |
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816 |
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817 |
【原著】
■題名
小児けいれん重積状態に対する静注用抗けいれん薬の選択と有効性の検討
■著者
埼玉県立小児医療センター神経科1),東京慈恵会医科大学小児科学講座2),埼玉県立小児医療センター保健発達部3) 菊池 健二郎1)2) 浜野 晋一郎1) 松浦 隆樹1)2) 菅谷 ことこ1) 田中 学1) 南谷 幹之1) 井田 博幸2)
■キーワード
急性脳症, けいれん重積状態, てんかん, フェノバルビタール, 副作用
■要旨
【はじめに】けいれん性てんかん重積状態(以下,けいれん重積状態)に対する治療薬剤の使用状況,有効性を評価することを目的とした.
【対象と方法】けいれん重積状態の小児を対象とした.けいれん重積状態の定義は,一つの発作が30分以上持続するか,発作が断続的に出現する場合は発作間欠期の意識が回復しない状態とした.効果判定は,薬剤投与後24時間以上けいれんの再発を認めなかった場合を「有効」,それ以外を「無効」とした.けいれん重積状態に対する静注用抗けいれん薬の薬剤選択順位,有効率,副作用について後方視的に検討を行った.midazolam(MDL)については,MDL静注とMDL持続静注に分けて検討した.
【結果】189機会(155例,男児:女児=89例:66例)のうち,原因疾患は,てんかんが42.3%,熱性けいれんが41.3%であった.12機会(6.3%)は無治療で自然頓挫した.第1選択に使用された薬剤はdiazepam(DZP),MDL静注の順に多く使用され,第2選択はMDL静注,phenobarbital(PB)の順に,第3選択はPB,MDL持続静注の順であった.薬剤別の有効率は,PB(71.1%),DZP(70.1%),thiopental(TPL)(57.1%),MDL持続静注(55.6%),MDL静注(43.1%),phenytoin(38.5%),lidocaine(0.0%)であった.副作用は全体の26.6%で認められ,TPLが最多であり,次いでMDL持続静注,PBの順に多かった.重度副作用は,TPL,MDL持続静注で多かった.
【考察】けいれん重積状態に対する抗けいれん薬は,第1はDZP,第2および第3はPBとMDL,第4はTPLが適当と考えられた.MDLはけいれん重積状態に対して現状では適応外であるが,有用性の高いことが示された.同薬の適応承認が望まれる.
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【原著】
■題名
抗菌薬予防投与を行わない原発性膀胱尿管逆流症33例の検討
■著者
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児腎臓科1),沖縄県立中部病院小児科2) 喜瀬 智郎1) 譜久山 滋1) 吉村 仁志1)2) 岩間 達2) 三宅 史子2)
■キーワード
膀胱尿管逆流, 尿路感染症, 抗菌薬予防内服
■要旨
膀胱尿管逆流症(以下VUR)のうち原発性のものに対し抗菌薬予防投与を行わないフォローアップを行った.外来でバッグ採取尿にて尿培養を施行し,尿培養で単一菌が105/ml以上であれば,次回外来受診時に導尿,グラム染色を施行し,細菌尿があれば尿路感染症(以下UTI)の再発として抗菌薬内服治療を開始した(無熱性再発).発熱時はただちに救急室にて導尿後細菌尿を認めれば抗菌薬を静注で開始した(有熱性再発).上部尿路感染症(以下UTI)再発後に抗菌薬予防投与を行うか保護者と検討した.対象は33例(男児28例,女児5例)で,VUR I〜III度(A群)21例,VUR IV〜V度(B群)12例であった.平均観察期間はA群20.7±2.4か月,B群20.3±1.9か月であった.UTI再発はA群で6例(28%),B群で10例(90%)であり(p=0.002),再発回数は,A群が8回でそのうち3回が有熱性再発であり,B群は17回のうち16回が有熱性再発であった(再発回数p=0.001).抗菌薬予防投与を開始したのはA群では1例もなく,B群で6例あった.予防投与開始後にUTIを再発し,手術となったのはB群で4例であった.抗菌薬予防投与を行わない我々の方法はA群については有効であるが,B群では予防投与を行う方法と同様に有効ではなかった.
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【原著】
■題名
感染性心内膜炎の治療中にリネゾリド耐性MRSAを検出した先天性魚鱗癬様紅皮症の1例
■著者
秋田大学大学院医学系研究科医学専攻機能展開医学系小児科学講座1),同 医学系研究科医学専攻病態制御医学系感染・免疫アレルギー・病態検査学講座2) 安達 裕行1) 新井 浩和1) 伊藤 智夫1) 萱場 広之2) 高橋 勉1)
■キーワード
リネゾリド耐性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌, バンコマイシン, MIC creep, 感染性心内膜炎, 先天性魚鱗癬様紅皮症
■要旨
リネゾリド(LZD)は我が国で2006年に承認された第4の抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)薬である.現在のところ我が国でLZD耐性MRSA検出の報告はごく少数に限られており,調べ得た範囲では小児での報告はない.症例は日齢0の男児で,先天性魚鱗癬様紅皮症のため当科へ入院した.生後2週でMRSA感染性心内膜炎を発症し,バンコマイシン(VCM)で2週間治療したが無効でありLZDに変更した.LZDは奏功し8週間投与を行ったが,LZD投与中も皮膚のMRSA保菌が続き,投与開始後6週でMRSAに対するLZDの最小発育阻止濃度(MIC)が>4 μg/mlを示し耐性化した.しかし感染性心内膜炎の悪化はなく,LZDのMRSAに対する感受性もLZD中止後2週で回復した.近年MRSAに対するVCMのMIC上昇(MIC creep)が問題となっており,自験例のMRSA株においてもVCMのMICは2 μg/mlと感受性上限を示していた.今後VCMの治療効果低下に伴いLZDの使用増加が予想される.LZDはその特有の機序により耐性化はまれであるが,投与が長期に及ぶ場合や投与中もMRSAの保菌が続く場合は,耐性化が起こりうることに十分注意する必要がある.
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【原著】
■題名
サルモネラ腸炎でけいれん・高CK血症を呈した急性脳症の2例
■著者
埼玉県立小児医療センター神経科1),東京慈恵会医科大学付属柏病院小児科2),東京慈恵会医科大学小児科3),埼玉県立小児医療センター循環器科4),同 総合診療科5) 松浦 隆樹1)2) 浜野 晋一郎1) 菊池 健二郎1)3) 山田 哲史3) 伊藤 怜司3)4) 和田 靖之2) 久保 政勝2) 鍵本 聖一5) 井田 博幸3)
■キーワード
サルモネラ腸炎, 急性脳症, 高CK血症, 横紋筋融解症
■要旨
非チフス性サルモネラ腸炎はしばしば経験されるが,稀に胃腸炎症状に続いて重篤な腸管外合併症や脳症などの合併症が散見される.我々はサルモネラ腸炎に伴い,痙攣と高CK血症を呈し,サルモネラ脳症と思われる2例を経験した.症例1は8歳男児,発熱,消化器症状,2分続く痙攣で発症した.便培養でSalmonella09,血液検査で横紋筋融解症(最大CK 6,080 IU/L)を認めた.入院後,意識障害が1週間以上遷延した.脳波で全般性高振幅徐波,脳血流シンチグラフィーで両側側頭葉下部に血流低下を認めた.抗生剤,γ-globulin,Dexamethasoneで加療し,後遺症なく軽快した.症例2は2歳女児,発熱,消化器症状,痙攣重積で発症した.便培養でSalmonella09,血液検査でCK高値(最大747 IU/L)を認めた.入院後,意識障害は遷延し,10から15分の痙攣を2回認め,Midazolam,Phenobarbitalで頓挫した.脳波で全般性高振幅徐波,脳血流シンチグラフィーで小脳と大脳全体の血流低下を認めた.抗生剤,Edaravone,Dexamethasoneで治療を行うも立位や発語は不可能となった.サルモネラ腸炎は脳症を起こすことがあり,一部は横紋筋融解症を合併し,後遺症を残すことがあるため,注意が必要である.
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【原著】
■題名
幼児期に脳梗塞を発症した標準型13トリソミーの1例
■著者
京都府立医科大学大学院医学研究科小児発達医学1),京都第一赤十字病院新生児科2),同 小児科3) 諸戸 雅治1)3) 光藤 伸人2) 木原 美奈子2) 木崎 善郎3) 森本 昌史1) 細井 創1)
■キーワード
脳梗塞, 13トリソミー, 被殻, レンズ核線状体動脈, てんかん
■要旨
幼児期に脳梗塞を発症した標準型13トリソミーの男児例を経験した.重篤な心奇形,中枢神経奇形を合併せず生後49日でNICUを退院した.2歳頃より脳波異常が出現したが明らかなてんかん発作は認めなかった.2歳1か月時に寛解増悪を繰り返す右上下肢の脱力を主訴に救急外来を受診し,定期脳波検査で異常波(全般性多棘徐波複合)を認めていたことからてんかん発作を強く疑い,ジアゼパムを挿肛したが同様の症状を繰り返した.第5病日に頭部MRIを施行し脳梗塞と診断した.一過性脳虚血発作で発症し脳梗塞に至ったと考えられたが,原因は特定できなかった.理学療法を中心に行い症状は改善,再発も認めず現在5歳となった.13トリソミーは致死的染色体異常として知られるが,近年長期生存する症例も増加してきている.13トリソミーは1年生存率が10%未満であり幼児期以降の合併症の報告が極めて少ない.本症例の様に幼児期になって脳梗塞を発症した症例の報告は過去に認められず,脳梗塞も13トリソミーの留意すべき合併症の一つである可能性があり,今後も症例の蓄積が必要である.
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【短報】
■題名
新生児・乳児期早期に発症したヒトパレコウイルス3型の4例
■著者
横浜市立みなと赤十字病院小児科1),横浜市立大学附属市民総合医療センター小児総合医療センター2),横浜市立大学医学部大学院医学研究科発生成育小児医療学3) 粟生 耕太1) 田中 晶1) 塩島 裕樹1) 平林 文誉1) 白井 加奈子1) 磯崎 淳1) 大澤 由記子1) 菊池 信行1) 森 雅亮2) 横田 俊平3)
■キーワード
ヒトパレコウイルス3型, 新生児, 発熱, 傾眠傾向
■要旨
ヒトパレコウイルス(Human parechovirus;HPeV)は1999年に,分類上エコーウイルス(EV)22・23型から独立し,それぞれHPeV-1型,HPeV-2型とされ,その後新たにHPeV-3〜16型が加わったウイルスである.小児に胃腸炎症状や呼吸器症状,ときに敗血症様症状,髄膜炎をもたらす.当院では2011年7月21日から29日にかけて生後1か月齢前後の新生児・乳児期早期の発熱を主訴とする5例の入院が続いた.そのうち4症例の便検体からHPeV-3型ウイルスを認めた.いずれの症例も発熱と傾眠傾向を認めた.高熱は3〜4日持続し,解熱とともに全身状態は良好となり,傾眠傾向,哺乳不良は軽快した.HPeV-3型ウイルス感染症は敗血症様症状や中枢神経症状を呈したり,突然死に至る重症例も報告されており,新生児・乳児期早期の発熱性疾患として注意を必要とする.
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【論策】
■題名
小児がん患者における疼痛緩和に関するアンケート結果
■著者
大阪市立総合医療センター小児医療センター血液腫瘍科1),大阪市立大学医学部小児科2),広島大学医学部小児科3) 大杉 夕子1) 山口(中上) 悦子2) 西村 真一郎3)
■キーワード
疼痛緩和, 小児がん, プレパレーション, 処置関連の痛み, がん性疼痛
■要旨
小児がん患者の痛みに関する,医療従事者の対応についてのアンケート調査を,日本小児白血病研究会参加施設の医師を対象に行った.参加106施設中67施設から回答を得た.解析結果:痛みの評価には,38施設が患者,家族とスタッフ間の共有スケールを用いていた.処置の疼痛緩和は,血管穿刺時は,場合によって行われ,5歳児を想定した場合の静脈穿刺時には,テープやクリームの経皮的局所麻酔薬や非薬物的方法を用いる施設が多かった.骨髄穿刺時は,疼痛緩和,鎮静をそれぞれ,常に行っている54,32施設,場合によって行っている11,28施設,腰椎穿刺時は,常に行っている37,29施設,場合によって行っている23,31施設であった.使用薬剤はケタミンを含む全身麻酔薬が多く,併用薬剤は,施設間で差が見られた.処置以外の場面での疼痛緩和は,主に終末期,腫瘍による痛みや,大量化学療法時の粘膜障害に対して,行われていた.強オピオイドは57施設で使用され,副作用やコントロール不良の痛みで困った時には,主治医のみでなく,保護者,当該科医,看護師,他,緩和医療チーム,麻酔医,精神科医と相談して対応していた.まとめ:多くの施設が小児がん患者の痛みに配慮しており,その方法は多彩であった.本邦で,処置時,処置以外ともに汎用される小児がんの疼痛緩和,鎮静のガイドラインはなく,今後,既存のガイドラインの利用法の検討,もしくは,安全性を含め,現場の問題点を踏まえた新たなガイドライン作成の検討が望まれる.
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【論策】
■題名
小児の死後画像
■著者
東京都立小児総合医療センター放射線科,茨城県立こども病院放射線科 河野 達夫
■キーワード
オートプシー・イメージング, virtopsy, virtual autopsy, postmortem imaging, nonaccidental trauma
■要旨
死後画像(オートプシー・イメージング(以下Ai))は死後に施行される画像検査を指し,使用モダリティーはCTが大半を占める.日本医師会の検討委員会は,小児死亡全例についてAiをすべきと提言し,今後ニーズは高まっていくと思われる.小児Aiを施行する際には,骨折が検出できるよう全身スキャンが推奨される.撮影前にカテーテル類を抜去せず,エンジェルケアは行わない.撮影条件は再構成に耐える高線量で高精細の撮影を行う.所見は放射線科専門医による読影が推奨され,訴訟対策としては第三者読影を活用できる.診療報酬は制定されておらず,大半は病院負担を余儀なくされている.死後CTの所見は生存時から存在する所見,死因に関連する変化,蘇生術後変化,そして死後変化が複合されたものである.蘇生術後変化として胸郭損傷(骨折),消化管拡張やエアリーク,血管内ガスが,死後変化として血液就下,右心系拡張,動脈壁高吸収化,脳浮腫が挙げられる.Aiで死因を特定できる率は高くはないが,陰性所見の意義も大きい.小児において最も注目されるのは虐待の診断であるが,そのAi所見についてはまだ報告例が少なく一定の見解が得られていない.経験則に基づけば,骨折の診断はCTの方が優れると推測される反面,血液就下の影響で頭蓋内出血はわかりにくくなるであろう.最大の問題点は医療コストであり,一日も早い制度設定と費用捻出が期待されている.
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