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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:11.10.21)
第115巻 第10号/平成23年10月1日
Vol.115, No.10, October 2011
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総 説 |
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女性に限定されるてんかんと精神遅滞―本邦患者の特徴とPCDH19遺伝子解析を考慮するポイント
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日暮 憲道,他 1513 |
原 著 |
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大山 建司,他 1524 |
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清水 正樹,他 1531 |
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三崎 貴子,他 1535 |
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大坪 善数,他 1543 |
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木許 泉,他 1550 |
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國吉 保孝,他 1554 |
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新川 泰子,他 1560 |
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佐藤 恵美,他 1566 |
論 策 |
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小松 祥子,他 1573 |
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地方会抄録(茨城・熊本・高知・山陰・島根・滋賀・千葉・福島・山口)
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1580 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No.25 自転車搬送用コンベアによる挫滅創
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1627 |
専門医にゅ〜す No.9 |
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1630 |
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1633 |
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1634 |
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1652 |
日本小児内分泌学会・日本成長学会合同標準値委員会報告 |
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田中 敏章,他 1705 |
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2011年53巻5号10月号目次
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1710 |
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1711 |
【原著】
■題名
成長ホルモン治療を行った特発性低身長症男性例の二次性徴
■著者
山梨大学大学院医学工学総合研究部小児科学 大山 建司 佐野 友昭 太田 正法 小林 浩司 小林 基章 佐藤 和正 望月 美恵 三井 弓子 矢ケ崎 英晃 斉藤 朋洋 長嶺 健次郎 中込 美子
■キーワード
成長ホルモン, 特発性低身長症, 二次性徴, テストステロン, 思春期
■要旨
日本人男性の二次性徴の進展を検討した報告は少ない.今回,思春期発現前から成長ホルモン治療を行い,成人身長に達した特発性低身長症男性例30例の,二次性徴の発現から完成までを3か月毎定期的に観察した結果を報告する.タンナー性成熟度,精巣容量,血清テストステロン値(T値)を測定した.精巣容量3 mlへの到達年齢は11歳6か月であった.精巣容量3 mlで陰茎発育2度に達した症例は2例,8 ml以下で全例陰茎発育2度となった.平均12歳6か月で陰茎発育2度,14歳6か月で陰茎発育5度に達した.陰毛発育2度は13歳9か月,この時の平均精巣容量は10 ml,平均T値は300 ng/dlであった.陰毛発育5度の到達年齢は15歳6か月,平均精巣容量15.5 ml,平均T値428 ng/dlであった.陰茎発育2度への到達年齢は,従来の日本人男性報告より約1年遅れていたが,陰毛発育5度への到達年齢は同じであった.タンナー性成熟度の各段階におけるT値,精巣容量には大きなバラツキがあり,性成熟度の進展の評価には,精巣容量とともにタンナー性成熟度による評価が重要であることが明らかとなった.特発性低身長症男性は二次性徴の発現が若干遅れ,発現後の進展は速い可能性が示された.
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【原著】
■題名
細菌性髄膜炎に合併する低ナトリウム血症のリスク因子に関する臨床的検討
■著者
金沢大学医薬保健研究域医学系小児科1),福井県済生会病院小児科2),金沢医療センター小児科3) 清水 正樹1) 中川 裕康2) 酒詰 忍3) 太田 和秀3) 加藤 英治2) 谷内江 昭宏1)
■キーワード
細菌性髄膜炎, 低ナトリウム血症
■要旨
細菌性髄膜炎では抗利尿ホルモンの分泌亢進に伴い低Na血症を高率に合併することが知られている.近年医原性低Na血症が注目されているが,その高リスク群と考えられる細菌性髄膜炎症例における低Na血症の臨床的特徴に関する報告は少ない.今回我々は入院治療を行った細菌性髄膜炎18症例について,低Na血症の発生頻度と合併例の臨床的特徴について検討した.血清ナトリウム値が135 mEq/l未満の低Na血症は55.6%の症例に認められ,11.1%は130 mEq/l未満の重症例だった.CRP値が高値を示す症例で,血清ナトリウム値が低い傾向にあり,CRP値が12 mg/dl以上の症例では有意に低Na血症合併頻度が増加していた(P<0.05).その他のパラメーターについては有意な相関を認めなかった.以上,細菌性髄膜炎症例では高率に低ナトリウム血症の合併を認めること,小児では成人と異なり,CRP値が高値となる症例において低ナトリウム血症の合併を多く認め,重症例においても注意すべき合併症であると思われた.細菌性髄膜炎の症例に対しては,低ナトリウム血症の原因となる合併した病態に対する適切な評価を行い,電解質濃度を頻回に測定しつつ,症例ごとに慎重な輸液管理を行うことが必要であると思われる.
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【原著】
■題名
乳児院におけるインフルエンザA/H1N1 2009の施設内流行
■著者
大阪府済生会中津病院小児科1),大阪乳児院2),大阪府立公衆衛生研究所感染症部3) 三崎 貴子1)2) 高 祥恵1) 熊谷 雄介1) 海老島 優子1) 平口 雪子1) 藤本 雅之1) 大和 謙二1) 末廣 豊1)2) 高橋 和郎3)
■キーワード
インフルエンザA/H1N1 2009, 乳幼児, 施設内流行, 乳児院
■要旨
2009年11月に大阪乳児院入所児にインフルエンザA/H1N1 2009が発症し,閉鎖された施設内で次々に感染が伝播したので,乳幼児における感染様式と経過をまとめた.
同期間に在籍した乳幼児延べ65名のうち,インフルエンザA/H1N1 2009を発症した21名(11〜39か月,A室17名中14名,B室16名中7名)を対象とした.迅速診断とともに鼻腔吸引液のリアルタイムRT-PCR検査を実施し,感染経路,潜伏期間,症状,基礎疾患や合併症の有無,ワクチン接種状況について調査を行った.
発端となった職員からA室入所児6名に感染し,別の職員を介してB室入所児4名に感染した.いずれも職員の発症前日に接触し2日あけて発症した.19名が迅速診断陽性,2名が陰性(PCR検査陽性)であった.発熱は全例に見られ,咳嗽14名,鼻汁14名で,基礎疾患をもつ8名中1名が肺炎を併発した.オセルタミビルは全例5日間,36時間以内に投与開始した.ワクチン接種15名中4名が罹患した.
インフルエンザA/H1N1 2009は発症前日から感染力を持ち,潜伏期間は2〜4日間,1人の感染者は4〜6人の感受性者に感染させ得る.接触および飛沫により感染する.迅速診断で必ずしも陽性とはならず,比較的短期間で症状の改善を認めるが,基礎疾患をもつ児は注意が必要である.オセルタミビル投与の効果は不明,ワクチンの緊急接種については今後の検討が必要である.
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【原著】
■題名
子宮内環境のマーカーとしての臍帯動脈血ナトリウム利尿ペプチドホルモンの検討
■著者
佐世保市立総合病院小児科 大坪 善数 吉村 未央 後田 洋子 徳富 友紀 合田 裕治 角 至一郎 上玉利 彰 中下 誠郎
■キーワード
臍帯動脈血NT-pro BNP, brain natriuretic peptide, 子宮内炎症, 胎児循環不全, 子宮内発育遅延
■要旨
【背景と目的】子宮内環境や胎児心奇形などに伴う胎児心不全のスクリーニングとして,院内出生例全例に対し臍帯動脈血N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(N-terminal pro-brain natriuretic peptide;NT-pro BNP)を測定していく中で,心不全兆候を認めない児であっても臍帯動脈血NT-pro BNPが高値を示すことに気づいた.そこで,臍帯動脈血NT-pro BNPの基準値を明らかにするとともに,この値を上昇させる周産期因子を見いだすことを目的とした.
【対象と方法】2009年8月から2010年9月までに院内出生したNICU非入院例362名,NICU入院例115名の臍帯動脈血NT-pro BNPを測定した.NICU非入院例のうち自然分娩で出生し正期産児でappropriate for gestational age(AGA)であった212名の結果より基準値を設定した.NICU入院例を在胎週数別に3群に分類し,それぞれの臍帯動脈血NT-pro BNPと出生前後の臨床像,検査値との関連を後方視的に検討した.
【結果】NICU入院群の臍帯動脈血NT-pro BNPは在胎週数が短いほど,そして子宮内胎児発育遅延の程度が強いほど高値を示した.さらに既知の子宮内炎症マーカーや循環不全マーカーと有意な相関を示した.
【結論】心不全兆候を認めない児の臍帯動脈血NT-pro BNPは,未熟性や早産を引き起こした子宮内環境を反映している可能性がある.本研究で求められた臍帯動脈血NT-pro BNP基準値は,胎児心不全のみならず子宮内環境のマーカーとして応用する上で有用と思われる.
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【原著】
■題名
テタニーで発症したビタミンDとカルシウム欠乏による栄養障害性くる病の1例
■著者
名古屋大学大学院医学系研究科小児科学1),あいち小児保健医療総合センターアレルギー科2),山口大学大学院医学系研究科環境保健医学分野3) 木許 泉1) 武藤 太一朗1) 武田 将典1) 伊藤 浩明2) 坂本 龍雄3)
■キーワード
ビタミンD欠乏性くる病, カルシウム欠乏性くる病, 食物アレルギー, マクロビオティック
■要旨
栄養障害性くる病(以下,くる病)はビタミンD(以下,VD)欠乏だけでなくカルシウム欠乏によっても引き起こされる.また,カルシウム欠乏はVD欠乏性くる病の発症を促進することが知られている.わが国では牛乳・乳製品がカルシウムの主要な栄養源であることから,牛乳アレルギーはくる病のリスクファクターのひとつと考えられる.また,完全母乳栄養もVD欠乏性くる病のリスクファクターであり,乳児と授乳中の母親に対してVDの栄養強化が推奨されている.我々はカルシウム欠乏性テタニーをともない,VDとカルシウムの欠乏により発症したと思われるくる病の2歳男児例を経験した.この症例のVDとカルシウムの欠乏は,食物アレルギー予防とマクロビオティックによる過剰な食物制限,偏食,マクロビオティックを実践する母親からの完全母乳栄養が主な原因と考えられた.くる病を予防するため,完全母乳栄養児や,食物アレルギーやマクロビオティックなどで食物制限を余儀なくされる児は,VDとカルシウムの栄養補充に留意すべきである.
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【原著】
■題名
FDG-PETが診断に有用であった非ヘルペス性亜急性脳炎の1例
■著者
津軽保健生活協同組合健生病院小児科1),国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター臨床研究部・小児科2) 國吉 保孝1) 加村 梓1) 安田 すみ江1) 田代 実1) 高橋 幸利2)
■キーワード
亜急性脳炎, 非ヘルペス性急性辺縁系脳炎, ポジトロン断層撮影法, 抗グルタミン酸受容体抗体, 小児
■要旨
発熱を伴わず,重篤な意識障害やけいれん発作の出現もなく,精神症状が緩徐に進行した非ヘルペス性亜急性脳炎の7歳男児例を報告した.MRIとSPECT画像で異常所見を認めないものの,FDG-PET画像で左大脳半球に糖代謝の亢進を示唆する所見を認めた.右顔面と右上肢の不全麻痺を認めた.経過中に失語と失行も明らかとなった.髄液検査で細胞数が軽度上昇し,脳波所見で左半球に全般性に徐波が増加していることから,左大脳半球を主体とした亜急性脳炎と診断した.臨床的には副腎皮質ステロイドパルス療法と免疫グロブリン大量療法が有効であった.
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【原著】
■題名
免疫グロブリン大量療法が有効であった尋常性天疱瘡の4歳例
■著者
江南厚生病院こども医療センター 新川 泰子 西村 直子 大島 康徳 坂本 奏子 坂本 昌彦 後藤 研誠 細野 治樹 山本 康人 尾崎 隆男
■キーワード
尋常性天疱瘡, 口腔粘膜潰瘍, 抗デスモグレイン3抗体, 免疫グロブリン大量療法
■要旨
小児期発症の尋常性天疱瘡は非常に稀である.症例は4歳男児,2か月間続く難治性口腔内びらんと食欲不振を主訴に入院した.血液生化学検査にて,低アルブミン値(1.9 g/dl),低IgG値(441 mg/dl)および抗デスモグレイン3抗体価の異常高値を認めた.口腔粘膜の細胞診および組織診にて棘融解細胞と表皮細胞の細胞間にIgGおよびC3の沈着を認め,粘膜型の尋常性天疱瘡と診断した.メチルプレドニゾロンパルス療法,その後のプレドニゾロン内服および免疫グロブリン大量点滴静注により口腔粘膜病変は改善し,血清アルブミン値は正常化した.退院後はプレドニゾロンの少量持続内服と増悪時の免疫グロブリン大量点滴静注で治療しているが,再入院を要するような症状の悪化をみていない.6歳となった現在,やや小柄(身長−1.5SD,体重−1.0SD)である他は,身体的および精神的発達に問題を認めていない.
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【原著】
■題名
胎児期より経過観察しコイル塞栓術を施行した硬膜静脈洞奇形の1例
■著者
名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野 佐藤 恵美 加藤 晋 熊崎 滋 長屋 嘉顕 伊藤 孝一 垣田 博樹 杉浦 時雄 長崎 理香 犬飼 幸子 加藤 稲子 戸苅 創
■キーワード
先天性硬膜動静脈瘻, 新生児, 胎児超音波検査, 心不全, 血管内治療
■要旨
先天性硬膜動静脈瘻は,硬膜静脈洞奇形,幼児型硬膜動静脈瘻,大人型硬膜動静脈瘻の3種類に分類され,このうち硬膜静脈洞奇形は頭蓋内血管奇形の中で非常に稀な疾患である.今回我々は,胎児期からフォローし,脳血管内治療を施行して良好な経過を得た硬膜静脈洞奇形の1例を経験したので報告する.症例は,妊娠30週に右心系拡大を指摘され,妊娠36週の胎児心エコーで上半身のシャント性疾患を疑った.日齢2の頭部MRIにて動静脈シャントを伴う硬膜静脈洞奇形と診断した.生直後より心拡大,肺高血圧症を認め,日齢6まで酸素投与を要したが,その後は利尿剤内服で心不全のコントロールは可能であった.生後2か月で脳血管内治療を施行し,術後のMRIでは動静脈シャントの著明な改善を認めた.現在,生後1年経過しているが,心機能悪化や神経学的後遺障害を認めず経過は順調である.胎児心エコーで心内奇形のない右心拡大を認めた場合,頭蓋内シャント性疾患を疑うことが重要である.
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【論策】
■題名
新生児マススクリーニング対象疾患の保険契約の現状について
■著者
大手前栄養学院専門学校栄養学科1),大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学2),PKU親の会連絡協議会3),東北大学大学院医学系研究科遺伝病学4),国立成育医療センター研究所成育政策科学研究部5),島根大学医学部小児科6) 小松 祥子1) 新宅 治夫2) 平田 陽一3) 松原 洋一4) 原田 正平5) 山口 清次6)
■キーワード
フェニルケトン尿症, 新生児マススクリーニング, 学資保険, 生命保険, QOL
■要旨
新生児マススクリーニング(MS)対象疾患患児の学資・生命などの保険加入について,(1)民間会社(38社)の動向調査,(2)フェニルケトン尿症(PKU)患者335家族への加入状況調査を行った.
(1)では学資保険について16社,生命保険について15社から回答を得た.生命保険では当該患児が加入するための明確な条件を示した会社は1社のみであった.(2)では,有効回答のべ124家族中30家族が加入時に病名告知し,うち5家族が入院保障の特約を付加できなかった.また,「成人後に保険加入できるか心配である」という回答を多く得た.
新生児マススクリーニングが始まり30年が経過し,対象疾患の患者が正常に発達し社会に貢献するようになっているにもかかわらず,ほんの数社の学資保険にのみ加入できるだけで特約や生命保険などへの加入はほとんど不可能である現状が明らかになった.
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