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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:11.6.3)
第115巻 第5号/平成23年5月1日
Vol.115, No.5, May 2011
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総 説 |
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2010CoSTRに基づく日本版新生児心肺蘇生法ガイドライン(NCPRガイドライン2010)
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田村 正徳,他 903 |
原 著 |
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高柳 勝,他 910 |
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JACLS QOL小委員会,他 918 |
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JACLS QOL小委員会,他 931 |
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松本 真輔,他 943 |
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内山 真,他 948 |
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久保田 一生,他 956 |
論 策 |
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長谷川 功,他 961 |
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浅野 祥孝,他 967 |
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緊急フォーラム:この大災害に小児科医はどう立ち向かうか─適切な初動と情報の共有化を目指して─開催報告
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969 |
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971 |
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1001 |
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【原著】
■題名
10年間における急性脳症60例の検討
■著者
仙台市立病院小児科1),南光台やまもと小児科2),宮城県拓桃医療療育センター小児神経科3),仙台市立病院救命救急部4) 高柳 勝1) 山本 克哉2) 北村 太郎1) 萩野谷 和裕3) 村田 祐二4) 大浦 敏博1) 大竹 正俊1)
■キーワード
インフルエンザウイルス, C型インフルエンザ, 急性壊死性脳症, けいれん重積型急性脳症, 電位依存性ナトリウムチャネル
■要旨
急性脳症は小児における重篤な神経疾患のひとつである.我々は2000年1月から2009年12月までの10年間に仙台市立病院小児科へ入院した60例の急性脳症例を後方視的に検討した.急性脳症の診断は,感染を契機に急激に発現する遷延性意識障害などの神経症状のみならず,脳波あるいは脳画像検査で客観的陽性異常所見を認めたもののみを確定例とした.
病原体としてはインフルエンザウイルスが最多で,A・B型のほか,従来軽症と考えられてきたC型による脳症を経験した.そのほか数多くの病原体が関与していただけでなく,特定できない例も半数以上あり,脳症発症には外因だけでなく宿主側因子も深く関与していることが示唆された.近年,急性脳症において遺伝子異常の報告がなされ始めている.我々の症例にも電位依存性ナトリウムチャネルα1サブユニット遺伝子変異を認めた1例を含んでいたことが特筆されたが,殆どの症例の宿主側因子は不明であり,今後一層の解明が望まれる.病態別の推移としては,急性壊死性脳症の発生の減少と,けいれん重積型急性脳症の増加が目立った.一方,分類不能型も半数近く認められ,それらは比較的予後良好であった.急性脳症全体の予後として,致命率の減少に比し神経学的後遺症を残す例が現在でも減少していないことが今後の課題である.
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【原著】
■題名
小児急性リンパ芽球性白血病患児・家族のQOLアンケート調査―第1報
■著者
小児白血病研究会(JACLS) JACLS QOL小委員会 石田 也寸志 山口 悦子 堀 浩樹 本郷 輝明 圀府寺 美 久川 浩章 吉成 みやこ 栗山 貴久子 岡田 周一 太田 秀明 八木 啓子 堀部 敬三 原 純一
■キーワード
小児急性リンパ芽球性白血病, Quality of Life(QOL), アンケート調査, 臨床研究
■要旨
小児白血病研究会の急性リンパ芽球性白血病(ALL)プロトコールで治療した症例の家族に対して,同意を取得後治療中に4回,患児身体,患児心理,家族の医療者との関係,家族の家族/社会関係面,家族自身の心理の5ドメインについて前向きに無記名・自記式QOLアンケート調査を行い,ALL-97とALL-02の2群を比較した.
患児基本情報の不足のあった144通を除外し,ALL-97(n=898)とALL-02(n=1,006)を解析した.両群の比較で,患児身体,患児心理,家族関係と家族心理の4ドメインでQOL点数の有意差がみられたが,患児心理面のみALL-02の点数が良く,他はALL-97の方が良かった.リスク別の治療相変化に関しては,SR群とER群においてはどの治療相でもALL-97に比べALL-02の合計点数が悪かった.1例毎のQOL合計点数の経時的変化には6種類のパターンが見られた.重回帰分析では,ALL-02自体がQOLに与える影響は少なく,大きな影響を与えていた要因は,治療強度(リスク分類)や治療相であった.患児への検査や治療に関しては,ALL-97よりもALL-02の方が有意に負担を少ないと感じている家族が多かった.
本研究の結果から,アンケートによる調査でもQOLの視点からプロトコールの評価が可能であることが裏付けられた.
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【原著】
■題名
小児急性リンパ芽球性白血病患児・家族のQOLアンケート調査―第2報
■著者
小児白血病研究会(JACLS) JACLS QOL小委員会 石田 也寸志 山口 悦子 本郷 輝明 堀 浩樹 吉成 みやこ 栗山 貴久子 圀府寺 美 久川 浩章 岡田 周一 太田 秀明 八木 啓子 原 純一 堀部 敬三
■キーワード
小児急性リンパ芽球性白血病, Quality of Life(QOL), アンケート調査, 臨床研究
■要旨
小児白血病研究会の急性リンパ芽球性白血病(ALL)プロトコールで治療した10歳以上の患児本人に対して,保護者の同意と本人のアセントを取得後,治療中に4回,患児身体,日常生活,患児心理,医療者との関係,家族関係面の5つのドメインについて前向きに無記名自記式QOLアンケート調査を行い,ALL-97とALL-02の2群を比較した.
患児基本情報に不足のあった19例を除外しALL-97(n=215)とALL-02(n=167)を解析した.両群の比較で,患児生活,患児心理,家族関係の3つのドメインと合計点では有意差が認められ,ALL-02の得点の方が良かった.1例毎のQOL合計点数の経時的変化は多様で,治療相が進むにつれて緩やかに改善する傾向を示すものが多かった.検査や治療に関しては,ALL-02群で負担感が少ないと感じていた患児が多く,医療関係者の対応や援助に関しても,ALL-02群で医師・看護師ともに良好と感じている患児が多かった.本人評価と家族評価との比較では,身体面や合計点数などで両者の点数の相関が高かったが,患児心理や医療者との関係,家族関係のドメイン同士に関して相関は低かった.
本研究の結果から,アンケートによる調査でもQOLの視点からプロトコール自体の評価が可能であることが裏付けられたが,QOL評価には小児であっても可能な限り本人による評価を含めて多面的に検討することが重要であると考えられた.
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【原著】
■題名
小児の血液透析における長期留置用透析カテーテルの合併症と管理
■著者
東京都立清瀬小児病院腎臓内科1),同 臨床試験科2) 松本 真輔1) 濱崎 祐子1) 吉村 めぐみ1) 稲葉 彩1) 岡本 正二郎1) 濱田 陸1) 坂井 智行1) 石倉 健司1)2) 幡谷 浩史1) 金子 徹治2) 本田 雅敬1)
■キーワード
血液透析, カテーテル, 小児, 合併症
■要旨
カテーテルを用いた血液透析(HD)では脱返血不良や感染症などの合併症に悩まされることが多い.本研究では,小児のHDにおける長期留置用透析カテーテル管理の現状を把握する目的で,カテーテルの留置期間,合併症について後方視的に検討した.
2000年1月から2009年12月に都立清瀬小児病院にて3週間以上カテーテルを用いてHDを行った20歳未満の全症例(計10例)を対象とした.対象カテーテルの本数は計27本,カテーテル挿入年齢の中央値は3.1歳であった.カテーテル27本の留置期間と抜去理由,および合併症としての脱返血不良と感染症について検討した.
カテーテル留置期間の中央値は111(5〜592)日であった.抜去理由は脱返血不良が9本,感染症が4本,選択的な抜去理由が10本であった.脱返血不良発症までの日数の中央値は37日であった.感染回数はカテーテル留置期間1,000日あたり4.2回認められ,初回感染までの日数の中央値は126日であった.多変量解析では,カテーテル留置期間に関して,カフの有無は有意に寄与する因子ではなかったが,カフ無しのカテーテル早期抜去のリスクは高い傾向がみられた(リスク比=2.89,95%CI=0.33〜25.18).
カテーテル抜去理由は,脱返血不良と感染症で約半数を占め,これらの対策が重要である.カフ無しのリスクは高い傾向がみられ,可能な限りカフ付きを検討すべきである.
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【原著】
■題名
ゾルピデム酒石酸塩の小児不眠症患者に対する有効性と安全性の検討
■著者
小児不眠症ゾルピデム研究チーム,日本大学医学部精神医学系1),東京医科大学病院小児科2) 内山 真1) 星加 明徳2)
■キーワード
小児, 思春期, 不眠症, ゾルピデム, 無作為化比較試験
■要旨
2007年1月〜2010年1月に国内40施設にて,12歳〜18歳のInternational Classification of Diseases(ICD)-10における非器質性睡眠障害のうち,非器質性不眠症と診断された患者を対象に,ゾルピデム酒石酸塩(以下ゾルピデム)の多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検群間比較試験を実施した.164例の被験者から同意を取得し,122例をゾルピデム投与群(以下Z群)とプラセボ投与群(以下P群)に無作為に割付けた.
Z群ではP群に比し,主要評価項目である睡眠潜時が有意に11.35分(p=0.006)短く,副次評価項目においても,総睡眠時間が有意に26.98分(p<0.001)長く,途中覚醒時間が有意に5.96分(p=0.010)短かった.また患者の印象においても,睡眠の満足度,日中の気分や体の調子等の項目において,Z群ではP群に比し有意に評価スコアが高かった.これらよりゾルピデムは,小児不眠症患者の睡眠の量と質を改善し,QOLの改善をももたらすことが示唆された.
なおZ群において,特に問題となる所見,小児特有の有害事象,或いは依存性及び退薬症候を示唆する症候も認められず,ゾルピデムの高い安全性が確認された.
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【原著】
■題名
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2欠損症のろ紙血血清のアシルカルニチンプロファイルの経時的変化
■著者
岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学1),同 連合創薬医療情報研究科医療情報学専攻2),島根大学医学部小児科3) 久保田 一生1) 深尾 敏幸1)2) 堀 友博1) 小林 弘典3) 舩戸 道徳1) 長谷川 有紀3) 山口 清次3) 近藤 直実1)
■キーワード
CPT2欠損症, 脂肪酸β酸化障害, アシルカルニチン, タンデムマススペクトロメトリー, 新生児マススクリーニング
■要旨
我々は,カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)2欠損症の血液ろ紙,血清のアシルカルニチンプロファイルの出生後からの経時的変化を検討した.症例は日齢0の男児.切迫早産のため在胎37週0日,帝王切開にて出生した.姉がCPT2欠損症のため本症例もブドウ糖輸液を行い注意深い観察を行った.血液ろ紙,血清のアシルカルニチンプロファイルを経時的に分析し,以下の所見と姉がCPT2欠損症と酵素診断されていることから本症例は無症状であったがCPT2欠損症と化学診断した.血液ろ紙におけるC16-アシルカルニチン(C16),C18:1アシルカルニチン(C18:1),C18-アシルカルニチン(C18)は日齢3にピークとなり,カットオフ値を超えていたがその後カットオフ値以下となった.(C16+C18:1)/C2は生後14日までカットオフ値を超えており,スクリーニング指標として有用と考えられた.血清でもC16,C18:1,C18は日齢3にピークとなり,その後徐々に低下したが,日齢14まで常にカットオフ値を超えており,ろ紙血よりも血清におけるアシルカルニチン分析の方が確実に異常を指摘できた.ろ紙血による現行の採血時期における脂肪酸代謝異常症のスクリーニングでは,我々の症例のようにすでにC16,C18,C18:1がカットオフ値を下回り偽陰性となる可能性がある.このようなCPT2欠損症例を見逃さないためにはスクリーニング時期をより早期に設定する必要性が示唆された.
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【論策】
■題名
「NICU退院後の子どもと家族への支援ネットワークづくり」に関するアンケート調査
■著者
京都小児科医会子育て支援委員会1),京都小児科医会前会長2),同 会長3) 長谷川 功1) 浅野 明美1) 安藤 ルリ子1) 大久保 秀夫1) 清澤 伸幸1) 幸道 直樹1) 坂田 耕一1) 菅野 知子1) 平井 清1) 山内 英子1) 有井 悦子1) 竹内 宏一2) 吉岡 博3)
■キーワード
新生児集中治療室, 病院小児科医, 小児科開業医, 連携
■要旨
NICUを退院した児を病院小児科医と地域の小児科開業医が連携してみていくシステムづくりを構築するにあたり,新生児医療を行っている病院小児科医と小児科開業医にアンケート調査を行った.病院小児科医へは長期入院患者の実態と小児科開業医に対する要望を,小児科開業医にはNICUを退院した児に対してどのような形で診療に関わることができるか,などを中心に質問した.長期入院児は平成21年9月1日現在,京都府全体で6か月以上1年未満が7人,1年以上が3人であった.病院小児科医がNICU退院児のフォローアップに関して開業医に希望することは,予防接種(85%),一般診療(75%),在宅医療(65%)が上位を占めた.NICU退院児のかかりつけ医として小児科開業医が対応可能と答えた診療内容は,予防接種(88%),一般診療(86%),健診・発達相談(62%)の順に多かった.小児の在宅医療については,「関心はあるができない」が56%ともっとも多く,「関心がない」は11%であった.両者とも,お互いに連携ができているという認識は低かった.NICU退院児を地域の小児科開業医と連携して診ていくためには,病院小児科医,その中でも特にNICU医師と開業医の交流,情報交換が不可欠であり,地域の小児科医会が積極的に関与すべきである.
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【論策】
■題名
東日本大震災被災地からの活動報告
■著者
埼玉医科大学総合医療センター小児科 浅野 祥孝 布施 至堂 櫻井 淑男 田村 正徳
■キーワード
東北地方太平洋沖地震, 災害医療, 小児医療, DMAT, 救護活動
■要旨
東日本大震災時に気仙沼市立病院から救護班の派遣を要請され,発生7日目から11日目の亜急性期に支援活動を行った.小児科医師として参加したが,患者の多くは高齢者であり,事前に災害地で頻発する成人疾患の知識の習得もしくは,内科医師とチームを組んでの参加が必要と考えられた.小児患者の数は少ないが,特に乳幼児の患者に対するトリアージにおいて小児科医は必要であった.また,現場では乳幼児に成人薬剤からの目分量の薬剤投与が行われており,小児の体重に配慮した分包薬剤が必要であった.未曾有の大災害であり,今後現地の人材の疲弊が予想され,日本小児科学会で現在検討されているような長期的な支援の必要性がある.
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