gakkaizashi


日本小児科学会雑誌 目次

(登録:11.5.10)

第115巻 第4号/平成23年4月1日
Vol.115, No.4, April 2011

バックナンバーはこちら


タイトルをクリックすると要旨をご覧になれます。

総  説
1.

ライソゾーム病―治療の進歩と今後の課題

奥山 虎之  753
2.

小学生版および中学生版QOL尺度を用いた精神疾患の早期発見の検討

古荘 純一  760
3.

先天性中枢性低換気症候群におけるPHOX2B遺伝子異常について

早坂 清,他  769
原  著
1.

牛乳蛋白による新生児・乳児の消化管アレルギー患者における好酸球とCRP値の関係

木村 光明,他  777
2.

ヒトメタニューモウイルス感染症の臨床経過とウイルス排出期間の検討

板垣 勉,他  782
3.

危急的心疾患の診断における胸部レントゲン検査の重要性

菱谷 隆,他  788
4.

若年性皮膚筋炎に合併した急速進行性間質性肺炎の1男児例

石川 順一,他  793
5.

ポリオワクチン未接種乳児に発症したポリオワクチン関連麻痺の1例

宇宿 智裕,他  800
6.

急性骨髄性白血病の治療中に大脳基底核炎を起こした1例

山本 敦子,他  804
短  報

インフルエンザA/H1N1 2009出血性ショック脳症症候群の1例

芳賀 大樹,他  810
論  策
1.

小児救急医療に従事する医師のやりがいについての調査報告

山本 威久,他  814
2.

小児炎症性腸疾患におけるQOLの評価―日本語版IMPACT-IIIアンケート調査票の作成

日本小児IBD研究会小児IBD-QOLワーキンググループ,他  820
3.

情報通信技術を活用した大学病院・地域中核病院間連携小児科研修

三橋 隆行,他  823
4.

深夜における乳幼児の受診行動について―病床規模別の検討―

江原 朗  828

地方会抄録(新潟・埼玉・東京・香川・北海道)

  832
小児救急委員会報告

救急救命後の小児が長期入院となる因子について

江原 朗,他  858

専門医にゅーすNo.7 「小児科専門医臨床研修手帳(改訂第2版)」の発行について

  860

専門医にゅーすNo.8 小児科専門医を志す方へ

  888

理事会議事要録

  891

日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2011年53巻2号4月号目次

  899

雑報

  900

医薬品・医療機器等安全性情報 No.277,278

  901


【原著】
■題名
牛乳蛋白による新生児・乳児の消化管アレルギー患者における好酸球とCRP値の関係
■著者
静岡県立こども病院感染免疫アレルギー科
木村 光明  田口 智英  楢林 成之  王 茂治

■キーワード
牛乳アレルギー, 消化管アレルギー, 乳児, CRP, 好酸球
■要旨
 【はじめに】牛乳蛋白による新生児・乳児の消化管アレルギー(以下消化管牛乳アレルギー)患者では,好酸球のみならずCRPの上昇もみられる.今回,われわれは,本疾患における両者の関係についてさらに詳細に分析した.【対象と方法】平成13年4月から平成21年3月までに当科を受診した基礎疾患のない消化管牛乳アレルギー患者71名を対象とした.末梢血好酸球比率(Eo)が20%を超えるものを高Eo群,超えないものを低Eo群と分類した.CRPは5 mg/dlを超えるものを高CRP群,それ以下のものを低CRP群とした.【結果】EoとCRPの間には明らかな相関関係を認めなかった(rs=0.07).高Eo群には7名(9.9%),高CRP群には10名(14.1%)の患者が分類された.両群の患者のほとんどはいずれか一方のみに属し,両方に重複して属している患者は1名(1.4%)のみであった.高CRP群では,低CRP群に較べ有意に下痢の頻度が高く(90.0vs42.6%,p<0.01),血便の頻度が低い傾向がみられた.高Eo群では低Eo群に比べ嘔吐と血便の頻度が高い傾向がみられた.【考察】消化管牛乳アレルギーでは,細胞依存性過敏反応という免疫機序は共通でありながら,検査所見や臨床症状の面で異なる特徴を持つ亜群が存在することが明らかになり,複数の病態の関与が示唆される.


【原著】
■題名
ヒトメタニューモウイルス感染症の臨床経過とウイルス排出期間の検討
■著者
山辺こどもクリニック1),山形大学医学部感染症学講座2)
板垣 勉1)  松崎 葉子2)

■キーワード
ヒトメタニューモウイルス, 抗原検出キット, 臨床経過, ウイルス排出期間
■要旨
 イムノクロマト法を用いたヒトメタニューモウイルス(hMPV)の迅速抗原検出キットを使用して,hMPV感染症の臨床経過を前方視的に調査するとともに,ウイルス排出期間の検討を行った.対象は診察時に行った抗原検出キットが陽性で,リアルタイムPCR法でも陽性が確認できた26症例である.年齢は4か月から12歳までで,3歳以下が14例(54%)だった.臨床診断は鼻咽頭炎16例(62%),喉頭炎4例,下気道炎は気管支炎4例と肺炎2例であった.発熱と咳嗽の経過を年齢グループに分けて比較すると,発熱の持続日数の中央値は0歳児が1日,1〜2歳児が3.5日,3〜5歳児が3日,6〜12歳児が2日で,1〜2歳児が長かった.6か月未満の2例は発熱なく経過した.咳嗽は全例にあったが,持続日数に違いを認めなかった.咳嗽が発熱の前から出現したのは17例(65%)で,解熱後の6病日でも21例(81%)で続いていた.鼻汁は咳嗽よりも遅れて発熱後に出現する例が多かった.初回(5病日以内)に採取した26例の検体のhMPV遺伝子量は1,000コピー/ml以上あったが,6病日以降に2回目の検体が採取できた11例中検出できたのは3例のみで,いずれも1,000コピー/ml未満だった.一般に解熱する5病日を過ぎると排出されるウイルスはほとんどなくなることが推測された.


【原著】
■題名
危急的心疾患の診断における胸部レントゲン検査の重要性
■著者
埼玉県立小児医療センター循環器科
菱谷 隆  小川 潔  星野 健司  菅本 健司  河内 貞貴  伊藤 怜司

■キーワード
危急的心疾患, 救急, 胸部レントゲン, 心拡大
■要旨
 (背景)重症救急患者の中には心疾患が隠れていることがある.(対象及び方法)当院に一般救急患者として診療後,心疾患の疑いで循環器科の診断を受けた危急的心疾患16人について検討した.年齢群に分け,疾患名,症状,一般小児科医が心疾患を疑った理由を分類し,また循環器科医師による診察まで時間を要した原因についても検討した.(結果)新生児:4例(25%),日齢12〜26日,中央値19日,乳児:6例(37.5%),月齢1〜10か月,中央値5か月,小児:6例(37.5%),年齢1.1〜11.4歳,中央値4.0歳.新生児期ではすべて先天性心疾患,乳児期では心筋炎が含まれ,小児期ではすべて心筋及び心外膜疾患であった.頻度の高い症状は呼吸障害及び顔色不良であった.心疾患を疑った理由で最も多かったのは胸部レントゲン上の心拡大であった.循環器科の診察まで60分を越えた例は16例中12例であった.時間を要した原因は,紹介医の初期診断に影響されたこと,胸部レントゲン所見の見落とし,胸部レントゲン検査や心電図モニター装着の遅延などであった.(結論)救急外来受診の重症例では一般症状の裏に心疾患が隠れている可能性を常に疑うべきである.身体所見と共に速やかに心電図モニターを付け,胸部レントゲン検査をできるだけ早く行うことが心疾患の早期発見に重要である.


【原著】
■題名
若年性皮膚筋炎に合併した急速進行性間質性肺炎の1男児例
■著者
神奈川県立こども医療センター感染免疫科
石川 順一  鹿間 芳明  高橋 英彦  赤城 邦彦

■キーワード
若年性皮膚筋炎, 急速進行性間質性肺炎, KL-6, von Willebrand factor, 呼吸不全
■要旨
 若年性皮膚筋炎に間質性肺炎を合併することは成人の皮膚筋炎に比して少ない.今回我々は若年性皮膚筋炎に間質性肺炎を合併した10歳男児例を経験したので報告する.発症早期からKL-6とvon Willebrand factor抗原がともに高値であった.ステロイドパルスとシクロスポリンで筋力は改善したが,呼吸不全は徐々に進行した.呼吸器症状が出てから2か月後の肺生検では線維化の強い間質性肺炎でdiffuse alveolar damageと考えられた.呼吸不全の進行のため,肺生検後早期に永眠された.若年性皮膚筋炎で呼吸器症状があり,KL-6高値とvon Willebrand factor著明高値の時は急速進行性間質性肺炎の可能性がある.若年性皮膚筋炎に合併する急速進行性間質性肺炎では,病態としてリンパ球とともに単球・組織球の活性化が関与している可能性がある.


【原著】
■題名
ポリオワクチン未接種乳児に発症したポリオワクチン関連麻痺の1例
■著者
社会保険神戸中央病院小児科
宇宿 智裕  田中 香織  加納 原  坂本 泉

■キーワード
ポリオ, ワクチン関連麻痺, 急性弛緩性麻痺
■要旨
 症例は7か月男児.明らかな免疫不全の既往歴や家族歴はない.体調不良のため,X-2月に地域で集団接種として実施されたポリオワクチン(OPV)が内服できなかった.X-1月下旬に発熱を認め,解熱後から下肢の急性弛緩性麻痺を呈した.両下肢の深部腱反射は消失していたが明らかな知覚障害はなかった.髄液細胞数は36/μlと軽度増多を認めた.上肢の末梢神経伝導速度は正常だったが,下肢では複合筋活動電位が導出できず,針筋電図では下肢遠位筋で神経原性変化を認めた.脊髄MRIでは脊髄前角の異常は明らかではなかったが,腹側馬尾が造影された.便からワクチン由来のポリオウイルス2型が分離され,ワクチン関連麻痺と診断した.後遺症として,左下肢遠位の弛緩性麻痺を残した.家族内で最近OPVを内服した者はおらず,地域内で他に患者の発生はないことから,X-2月にOPVを内服した周囲の乳幼児から感染した可能性が考えられる.本邦では1980年を最後に野生型ポリオウイルスによる麻痺は発生していないが,ワクチン関連麻痺は散発している.乳幼児期早期から集団生活をする機会が昨今増加していることから,OPV定期接種を続ける限り同様の症例は増加することが予想される.一日も早い不活化ポリオワクチンの承認が待たれる.


【原著】
■題名
急性骨髄性白血病の治療中に大脳基底核炎を起こした1例
■著者
東京医科歯科大学小児科
山本 敦子  水野 朋子  荒木 聡  満生 紀子  青木 由貴  磯田 健志  高木 正稔  長澤 正之  水谷 修紀

■キーワード
大脳基底核, 髄膜脳炎, 急性骨髄性白血病, Enterococcus faecium, 日和見感染
■要旨
 急性骨髄性白血病の治療中に,敗血症・髄膜脳炎に罹患し,両側大脳基底核に特異な病変を来たした1例を経験した.症例は12歳女性.急性骨髄性白血病で当科入院中であった.化学療法による骨髄抑制期にEnterococcus faecium(E. faecium)による敗血症を来たした.3日目にけいれん・意識障害を来たし,髄液検査でE. faeciumが検出され,髄膜炎と診断された.集中治療の結果,救命することはできたが,重篤な神経学的後遺症を残した.頭部MRIで両側大脳基底核を主座とした,T2強調像,FLAIR法,拡散強調像で高信号,T1強調像,ADCで低信号の病変を呈した.臨床経過と合わせて大脳基底核炎を中心とした髄膜脳炎が疑われた.両側大脳基底核に好発する日和見感染症として,サイトメガロウイルス,トキソプラズマ,クリプトコッカスがあげられるが,本症例では否定的であり,E. faeciumによるものと推定された.
 E. faeciumを含む細菌感染による両側大脳基底核炎は稀ではあるが,易感染性をもつ宿主の場合には注意が必要であると考えられた.細菌性の大脳基底核炎の発症機序について,文献的に考察を加えて報告する.


【短報】
■題名
インフルエンザA/H1N1 2009出血性ショック脳症症候群の1例
■著者
奈良県立医科大学小児科1),奈良県立医科大学附属病院臨床研修センター2),奈良県立奈良病院小児科3),奈良県立医科大学附属病院集中治療部4)
芳賀 大樹1)  櫻井 嘉彦1)  星野 永2)  西屋 克己1)  久保 里美3)  平 康二3)  平井 勝治4)  嶋 緑倫1)

■キーワード
インフルエンザA/H1N1 2009, 出血性ショック脳症症候群, アンチトロンビン大量療法, トロンボモジュリン製剤
■要旨
 インフルエンザA/H1N1 2009出血性ショック脳症症候群の5歳男児例を経験した.発症1日目に四肢間代性痙攣が出現した後,急速に深昏睡に至った.大量の吐下血がみられ,頭部CTにて広範な脳浮腫を認めたため,出血性ショック脳症と診断し,抗ウイルス薬投与,メチルプレドニゾロンパルス療法,ガンマグロブリン大量療法に加えて,遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(トロンボモデュリンアルファ)投与およびアンチトロンビン大量療法による特殊治療を行い,急性期の重篤なDICを脱しえた.遺伝子組換えトロンボモジュリンおよびアンチトロンビンが出血性ショック脳症の出血管理に有効であることが示唆された.


【論策】
■題名
小児救急医療に従事する医師のやりがいについての調査報告
■著者
箕面市立病院小児科,箕面市医療保健センター1),豊能広域こども急病センター2),大阪大学大学院医学系研究科,小児発達医学,小児科学3)
山本 威久1)  原 納晶2)  笠原 勝2)  大薗 恵一3)

■キーワード
アンケート調査, 平均共分散構造分析, QOL, 小児救急センター, 小児科医のやりがい
■要旨
 豊能広域こども急病センターで“医師としてのやりがい”および“報酬に対する評価”に関するアンケート調査を実施した.回収率は69%で,やりがいが大いにあり,ややありと回答したものは全体の61%であり,一方報酬に対する評価で大変満足,やや満足と回答したものは全体の80%であった.前者に関連する因子(p<0.1)として,年齢,翌日勤務体制,苦情に対する不快感,報酬満足度,医師分類が,後者に対する因子としては,診療開始時間,苦情に対する不快感,電子カルテ導入に対する考え方,看護師の人数,控え室満足度,医師としてのやりがいがあげられた.カテゴリカル回帰分析では,医師としてのやりがいには報酬に対する評価が,また報酬に対する評価には医師としてのやりがい評価が有意に関連した.平均共分散構造分析を用いて,医師のやりがいが高いと評価する意識,報酬がよいと評価する意識に関連する因子について検討したところ,医師のやりがいが高いと感じた人は年齢が高い,医師分類(大学院生<後期研修医<非常勤医師<常勤医師<開業医),翌日の勤務体制が良いと評価した一方,報酬がよいと感じた人は医師としてのやりがい評価が高いことが明らかとなった.考察および結論:小児救急医療体制を整備していくためには,地域医師会との連携,勤務医が抱える翌日勤務問題の解決及び小児救急医医療に従事する医師の報酬満足度を高めることが重要であることが明らかとなった.


【論策】
■題名
小児炎症性腸疾患におけるQOLの評価―日本語版IMPACT-IIIアンケート調査票の作成
■著者
国立成育医療研究センター消化器科1),順天堂大学小児科・思春期科2),大阪府立母子総合センター内分泌・消化器科3),三重大学消化器・小児外科4),埼玉県立小児医療センター総合診療科5),パルこどもクリニック6),中里小児科7),大阪医科大学小児科8),久留米大学医療センター小児科9),藤沢こどもクリニック10)
日本小児IBD研究会小児IBD-QOLワーキンググループ  新井 勝大1)  清水 俊明2)  位田 忍3)  内田 恵一4)  鍵本 聖一5)  友政 剛6)  中里 豊7)  余田 篤8)  金 泰子8)  牛島 高介9)  藤澤 卓爾10)

■キーワード
炎症性腸疾患, 小児, Quality of Life, IMPACT-III, Cross-Cultural Adaptation
■要旨
 日本においても,小児期発症の炎症性腸疾患(IBD)患者数の増多に伴い,小児科医がIBD患者を診療する機会が増えてきた.小児IBDの治療に際しては,内科的・外科的治療による疾患のコントロールに加え,小児の成長・発達に配慮しつつQOLを改善し維持していくことが重要である.
 日本小児IBD研究会小児IBD-QOLワーキンググループでは,本邦小児IBD患者のQOLの評価と改善を目的として,北米で開発された小児IBD疾患特異的QOL評価のためのアンケートである日本語版IMPACT-IIIを作成した.
 日本語版IMPACT-IIIが,本邦小児IBD患者のQOLの実態を明らかにするとともに,QOLの改善に貢献することを希望する.


【論策】
■題名
情報通信技術を活用した大学病院・地域中核病院間連携小児科研修
■著者
慶應義塾大学医学部小児科学教室
三橋 隆行  高木 優樹  三春 晶嗣  肥沼 悟郎  野村 寿博  福島 裕之  小崎 健次郎  高橋 孝雄

■キーワード
後期研修, 遠隔カンファレンス, インターネット, e-learning
■要旨
 小児科研修を行う各研修施設には施設ごとに特徴があり,質の高い小児科研修を提供するためには,各研修施設で得られる研修機会を多くの研修者が共有できることが重要である.しかし限られた研修期間では,研修者が各施設で研修できる期間や在籍できる施設数には制限がある.そこで,これらの対象者間で研修環境を共有することを目的に,地域中核病院と大学病院とをインターネットで結合し,双方の教育内容を他の研修施設に在籍する研修者に提供するための環境を構築した.【方法】1)双方向型遠隔カンファレンスにより教育関連施設の研修者がインターネット経由で講演会に参加できる仕組みを構築し,2)講演会,抄読会などを録画用PCで録画し,IDとパスワードで保護された当科e-learningサイトよりインターネット経由で視聴可能とした.【結果】2007年2月からの20か月間に合計471個の学習内容が蓄積され,e-learningサイトへの総アクセス数は2,083回,ストリーミングを視聴した研修者は延べ1,205名であった.最大12関連施設と接続して合計11回遠隔カンファレンスを開催し,当院を含む教育関連施設の研修者延べ約1,000名が参加した.【結語】情報技術を用いることにより地域中核病院と大学病院の教育内容を他の研修施設の研修者に提供可能となった.さらに,休職中の女性医師や留学中の医師,医学生にも研修内容を提供することが可能となった.


【論策】
■題名
深夜における乳幼児の受診行動について―病床規模別の検討―
■著者
北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野客員研究員(現:広島国際大学医療経営学部)
江原 朗

■キーワード
深夜, 受診, 医療提供, 社会医療診療行為別調査
■要旨
 背景:少ない小児科医しかいない病院で夜間・休日の診療が行われており,医療現場の疲弊が懸念される.
 方法:平成19年および21年社会医療診療行為別調査(厚生労働省)における乳幼児深夜加算の回数を医療機関の種類別,病床規模別に解析し,乳幼児の深夜における受診行動を検討した.
 結果:平成19年6月および21年6月の乳幼児の深夜受診回数は64,736回および67,168回で,うち,病院45,974回(71.0%)および40,940回(61.0%),診療所18,762回(29.0%)および26,228回(39.0%)であった.さらに,平成19年6月および21年6月の病院受診を病床規模別に検討すると,300床以上の病院の受診回数は35,527回および28,588回で病院全体の77.3%および69.8%を占めていた.
 結論:深夜の乳幼児の診療は,無床診療所(休日夜間急患センターと思われる)と病院(主に300床以上)が主に担っていた.しかし,深夜に病院を受診する6歳未満の乳幼児の2〜3割は299床以下の病院を受診しており,医療現場の疲弊を解決するには,さらなる重点化・集約化が必要となろう.

バックナンバーに戻る