gakkaizashi


日本小児科学会雑誌 目次

(登録:11.4.5)

第115巻 第3号/平成23年3月1日
Vol.115, No.3, March 2011

バックナンバーはこちら


タイトルをクリックすると要旨をご覧になれます。

総  説
1.

わが国におけるB型肝炎母子感染の問題と対策―ユニバーサルワクチン接種に向けて―

乾 あやの  529
2.

子どものくり返す痛みの診かた・考えかた―日本小児心身医学会くり返す子どもの痛みのガイドラインの視点から―

石崎 優子  538
3.

ウイルス性胃腸炎の合併症―尿管結石閉塞による腎後性急性腎不全―

藤枝 幹也,他  546
4.

小児薬物副作用の遺伝子マーカー:臨床応用への問題点

坂口 佐知,他  552
原  著
1.

本邦における先天性高インスリン血症の実態調査

川北 理恵,他  563
2.

インフルエンザ菌b型結合体ワクチンの製造販売後臨床試験

吉岡 和子,他  570
3.

小児を対象としたAS03アジュバント添加インフルエンザA/H1N1 2009ワクチンの臨床評価

齋藤 昭彦,他  578
4.

小児難治てんかん症例におけるLamotorigineの併用使用経験

高橋 幸利,他  585
5.

上部尿路感染症における腎瘢痕形成予測における急性期DMSAシンチグラフィーの有用性

清水 正樹,他  592
6.

小児科診療における産後うつ病スクリーニング尺度の活用

三品 浩基,他  597
7.

Turner症候群における死亡4例

小野 真,他  603
8.

全身性けいれんと意識障害で発症した中枢神経系ループスの6歳例

西山 将広,他  611
9.

背景信号抑制全身拡散強調画像が早期診断に有用であった化膿性仙腸関節炎の1例

國吉 保孝,他  616
10.

発症早期からMRI拡散強調画像異常を認めたインフルエンザ菌髄膜炎の1例

鎌田 彩子,他  623
11.

アンギオテンシン変換酵素阻害剤の増量が有効であった拡張型心筋症の1例

佐野 仁美,他  629
12.

初経後の持続的腹痛を契機に発見されたHerlyn-Werner-Wunderlich症候群の1例

原田 涼子,他  635
13.

びまん性軸索損傷の6例

三浦 慎也,他  639
短  報

生後1か月で発症し鉄剤投与が有効であった頻回憤怒けいれんの1例

早野 聡,他  644
論  策
1.

大規模小児医療施設における院内水痘発症状況

勝田 友博,他  647
2.

海外帰国後小児の健康上の問題点

水野 泰孝,他  653

地方会抄録(埼玉・和歌山・高知・佐賀・宮城・栃木・香川・山口)

  657
日本小児科学会新生児委員会

1.新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版)

  705

2.2005年に出生した超低出生体重児の死亡率

  713
日本小児リウマチ学会分科会報告

「小児リウマチ性疾患全般におけるシクロホスファミド静注薬」の適応拡大の取得

  726
お知らせ

第4回専門医試験結果

  734

査読者一覧

  736

日本小児科学会議事要録

  737

Pediatrics International 2011年53巻1号2月号目次

  748

平成23年度日本小児科学会分科会開催予定

  749

雑報

  750

医薬品・医療機器等安全性情報 No.276

  751


【原著】
■題名
本邦における先天性高インスリン血症の実態調査
■著者
京都大学医学部附属病院小児科1),滋賀県立小児保健医療センター内分泌・代謝科2),東京女子医科大学母子総合医療センター3),大阪市立総合医療センター小児代謝・内分泌内科4)
川北 理恵1)2)  杉峰 啓憲1)  長井 静世1)  河井 昌彦1)  楠田 聡3)  依藤 亨4)

■キーワード
先天性高インスリン血症, 全国疫学調査
■要旨
 本邦における先天性高インスリン血症の実態を明らかにするため,平成21〜22年度厚生労働省難治性疾患克服研究事業の研究班活動の一環として,全国疫学調査を行った.対象は2007年10月から2009年9月の2年間に出生した高インスリン血症の患児で,全国の300床以上の病院のうち小児科ないし新生児科をもつ1,057施設に調査票を送付し,624施設から回答を得た(回収率59.0%).188人の患者発生を同定し,うち発症後3か月以内に治療が不要になった一過性高インスリン血症群が127人,持続性高インスリン血症群が61人で,出生数当たりの年間発症率は,一過性群で約17,000人に1人,持続性群で約35,400人に1人であった.低血糖時のインスリン/血糖比,総ケトン体,遊離脂肪酸は両群間で有意差を認めなかったが,在胎週数,出生体重のパーセンタイル値は有意に一過性群で低かった.ジアゾキサイドの副作用である乏尿・浮腫,うっ血性心不全は106人中25人(23.6%)に認めた.オクトレオチド使用児では22人中2人(9.1%)に壁在胆石を認めた.外科的治療は持続性群の61人中7人(11.5%)に施行された.神経学的予後については短期予後のみであるが,先天性高インスリン血症以外に明らかな原因のあるものを除外すると両群合わせて15人(8.0%)に何らかの神経学的後遺症を認めた.


【原著】
■題名
インフルエンザ菌b型結合体ワクチンの製造販売後臨床試験
■著者
サノフィパスツール第一三共ワクチン株式会社1),北里大学北里生命科学研究所2),札幌市立大学看護学部3),国立病院機構三重病院4)
吉岡 和子1)  都築 大祐1)  檜山 義雄1)  中山 哲夫2)  富樫 武弘3)  神谷 齊4)

■キーワード
Haemophilus influenzae type bワクチン, 免疫原性, 安全性, ActHIB・DPT併用接種
■要旨
 インフルエンザ菌b型結合体ワクチン(アクトヒブ®)の製造販売後臨床試験として,国産沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(DPT)と同時接種した際の免疫原性および安全性を検討した.アクトヒブ®・DPT併用接種試験における抗D抗体,抗T抗体,抗PT抗体,及び抗FHA抗体の感染予防レベル以上の保有率は,DPT単独接種試験と同様であり,併用による影響は認められなかった.また,抗PRP抗体の1.0 μg/mL以上の抗体保有率は95.7%(178/186)で,承認申請時に実施したDF-098第形衫彎音邯海砲ける保有率92.4%(110/119)と同様であった.安全性については,併用接種により臨床上問題となるような有害事象は認められず,その発現状況は同様であった.副反応のため併用接種を中止した症例はなかった.以上より,アクトヒブの初回免疫において,DPTとの併用接種による有効性は同等であり,安全性上の問題は見出されなかった.


【原著】
■題名
小児を対象としたAS03アジュバント添加インフルエンザA/H1N1 2009ワクチンの臨床評価
■著者
国立成育医療研究センター内科系専門診療部感染症科1),グラクソ・スミスクライン株式会社開発本部2),国立成育医療研究センター総合診療部3),同 治験管理室4),GlaxoSmithKline Biologicals Global Clinical Research & Development5),国立成育医療研究センター6)
齋藤 昭彦1)  田村 忍2)  永井 章3)  土田 尚3)  佐古 まゆみ4)  前川 貴伸3)  矢作 尚久4)  Ping Li5)  David W Vaughn5)  François Roman5)  加藤 達夫6)

■キーワード
パンデミックインフルエンザA(H1N1)2009, ワクチン, 小児, 日本人, AS03アジュバント
■要旨
 目的:6か月〜17歳の日本人小児を対象に水中油滴型アジュバント(AS03)添加パンデミックインフルエンザA(H1N1)2009ワクチンの臨床評価を行った.対象と方法:本試験はAS03を添加しA/California/7/2009 H1N1株のヘムアグルチニン抗原を含む単価ワクチンを2回接種した場合の免疫原性と安全性を評価する第II相非盲検臨床試験である.6か月〜9歳の小児(A群;N=30)には成人の半量を,10〜17歳の小児(B群;N=30)には成人と同量のワクチンを接種した.抗体価はワクチン接種前(第0日)及び接種21日後に赤血球凝集抑制法で測定した.米国及び欧州の承認基準に従い免疫原性を評価した.今回はワクチン1回接種21日後の成績を速報として報告する.結果:本ワクチン1回接種21日後の免疫原性は,米国及び欧州の承認基準を満たした.A群の抗体陽転率(SCR),抗体保有率(SPR)はいずれも100%であり,B群のSPR,SCRは100%と93.3%であった.最も多く報告された特定有害事象は注射部位疼痛であった.結論:本ワクチンは本試験に参加した6か月〜17歳の日本人小児に対し1回のワクチン接種で高い免疫原性を示し,忍容性も良好であった.


【原著】
■題名
小児難治てんかん症例におけるLamotorigineの併用使用経験
■著者
国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター小児科1),岐阜大学医学部小児病態学2)
高橋 幸利1)2)  久保田 裕子1)  池田 浩子1)  高山 留美子1)  最上 友紀子1)  池上 真理子1)  向田 壮一1)  大谷 英之1)  大谷 早苗1)  美根 潤1)  重松 秀夫1)  今井 克美1)

■キーワード
Lamotorigine, てんかん, >50%発作抑制率, 発作悪化率, 中止率
■要旨
 新規抗てんかん薬が相次いで発売されたが,小児適応があるのはLamotorigine(LTG)のみであり,小児難治てんかん症例での有効性・安全性について検討する.
 2009年9月までにLTGを使用した15歳以下の小児60例で,LTG投与前と投与後最終観察時の4週間の発作頻度を後方視的に調査した.発作完全抑制率(Seizure free ratio, SFR),>50%発作抑制率(Responder rate, RR),発作悪化率(Aggravation rate, AR),中止率(Discontinuation ratio, DR)により効果を判定した.
 症候性局在関連性てんかん35例のSFRは5.7%,RRは42.9%であった.複雑部分発作は2 mg/kg未満の投与量ではRRは46.7%と高く,4 mg/kg以上の投与量ではRRは20.0%と低値であった.症候性全般てんかん9例のSFRは22.2%, RRは44.4%で,ARは22.2%, DRは22.2%であった.West症候群16例ではSFRは6.3%, RRは43.8%, ARは6.3%, DRは12.5%と他のてんかん症候群よりもARは低かった.LTGの全体でのARは10.0%,DRは20.0%で,中止例の67%は副作用で中止となり,おもな副作用は発作増加(頻度7%)と薬疹(頻度3%)であった.3歳未満の発病や投与開始例ではARが25%以上と特に高く,発作増加に注意が必要である.


【原著】
■題名
上部尿路感染症における腎瘢痕形成予測における急性期DMSAシンチグラフィーの有用性
■著者
金沢大学医薬保健研究域医学系小児科
清水 正樹  太田 和秀  西尾 さやか  上野 和之  横山 忠史  藤木 拓磨  金田 尚  瀬野 晶子  谷内江 昭宏

■キーワード
尿路感染症, DMSAシンチグラフィー, 膀胱尿管逆流, 腎瘢痕
■要旨
 (背景)上部尿路感染症の診療において,腎瘢痕形成の高リスク群である高度膀胱尿管逆流(VUR)の適切な管理が重要である.これらの高リスク群の診断に対する急性期Technetium-99m dimercaptosuccinic acid scintigraphy(DMSAシンチ)の有用性について検討した.(対象と方法)初発上部尿路感染症25例について,急性期DMSAシンチ欠損群と非欠損群,発症3〜6か月後の瘢痕形成群と非瘢痕形成群において,臨床所見,検査所見の違い,VURの有無,程度について検討した.(結果)14例で急性期欠損像を認め,うち9例で回復期に瘢痕形成を認めた.急性期欠損群と非欠損群および瘢痕形成群と非瘢痕形成群で,年齢,治療開始までの日数,末梢血白血球数,CRP値,尿中β2microglobulin値,尿中NAG値に有意差はなかった.III度以上の高度VURを瘢痕形成群9例中6例で認め,有意に瘢痕形成が多かった.急性期非欠損群11例で高度VURを認めた例はなかった.(結論)急性期DMSAシンチで異常の認められない症例では高度VURを合併している可能性は低く,また再発のリスクも少ないと考えられた.排尿時膀胱尿道造影は放射線被曝を伴い侵襲性も高い検査であり,急性期DMSAシンチで異常の認められない症例では回避できる可能性があり,症例を選択して施行するべきであると思われる.


【原著】
■題名
小児科診療における産後うつ病スクリーニング尺度の活用
■著者
財団法人聖バルナバ病院小児科1),京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療疫学2),国立成育医療研究センター総合診療部3)
三品 浩基1)2)3)  三品 瞳1)  森田 優治1)

■キーワード
乳幼児健康診査, 産後うつ病, スクリーニング, 二質問法, 母子保健
■要旨
 目的:うつ病スクリーニング尺度である二質問法を1か月乳児健診の問診票に導入し,母親に対する産後うつ病スクリーニングとしての実施可能性を評価した.また,母親の産後うつ傾向が乳児健診の受診頻度に関連するかどうかについて評価した.方法:2009年4月14日から7月27日の間に財団法人聖バルナバ病院小児科の1か月乳児健診を受診した児とその母親を対象とし,カルテレビューによって二質問法への回答率,検査陽性率,対象施設での2,3,4か月乳児健診の受診歴を調査した.二質問法の得点によって対象を陽性群と陰性群に分類し,2〜4か月乳児健診の受診頻度を比較した.結果:対象の母親313人の98%が二質問法に回答し,そのうち20%が陽性であった.二質問法陽性群は陰性群に比べて,2〜4か月乳児健診を継続的に全て受診する割合が高かった(22% vs 7%;P=.001).多変量ロジスティック回帰分析によって母児の特性(高齢出産,初産,帝王切開,低出生体重,早産)を調整した場合も,二質問法陽性は2〜4か月の継続した健診受診と正の関連を示した(OR 3.8,[95%信頼区間:1.7〜8.8]).結論:1か月乳児健診での二質問法による産後うつ病スクリーニングの実施可能性は高いことがわかった.産後1か月時に産後うつ傾向を有する母親に対して,生後2か月以降も小児科の個別健診を継続して受診できる健診実施体制が必要と考える.


【原著】
■題名
Turner症候群における死亡4例
■著者
Trace The Turner Study Group1),東京医科歯科大学大学院発生発達病態学分野2),新潟大学医歯学総合病院小児科3),島根大学医学部小児科4),国立病院機構長野病院小児科5),東京都立小児総合医療センター内分泌代謝科・遺伝子研究科・総合診療科6)
小野 真1)2)  長崎 啓祐1)3)  小林 弘典1)4)  森 哲夫1)5)  長谷川 行洋1)6)

■キーワード
Turner症候群, 大動脈解離, ウイルス性心筋炎, 大腸癌
■要旨
 Turner症候群(TS)は低身長や性腺機能低下症,様々な身体徴候を呈する症候群である.種々の合併症が知られ,生命に関わる重要なもののひとつに心血管系異常があげられる.全国23施設で経験したTS 415例に含まれていた死亡4例について報告する.
 症例1は40歳時に胸部大動脈解離で死亡.12歳でTSと診断.成長ホルモン(GH)療法は施行せず,17歳から女性ホルモン療法開始.26歳以降に糖尿病,抑鬱傾向,慢性甲状腺炎を発症.38歳時点で心エコー,胸部エックス線,胸部MRIに異常なし.40歳時に重いものを持ち上げたときに左背部痛,冷汗,嘔吐が出現し,同日死亡した.症例2は21歳時に胸部大動脈解離で死亡.10歳でTSと診断され,12歳からGH療法開始.16歳から女性ホルモン療法開始.21歳時に突然の嘔吐,腹痛で発症し人工血管置換術中に死亡した.症例3は3歳時にウイルス性心筋炎疑いで死亡.2歳でTSと診断されGH療法開始.その5か月後に発熱,嘔吐を主訴に入院し,翌日突然死した.症例4は14歳時に大腸癌で死亡.1歳でTSと診断され,8歳からGH療法開始.14歳から腹痛,腹部膨満,便秘,発熱が出現し,横行結腸内腔を閉塞する大腸癌と診断された.脈管浸潤と腹膜播種を認め,症状出現8か月後に死亡した.
 TSは循環器系や消化器系に限らず様々な疾患を合併しうることが報告されており致死的なものもある.生涯にわたる年齢に応じた適切なフォローアップにより,可能な限り予防および早期発見できるよう管理することが重要である.


【原著】
■題名
全身性けいれんと意識障害で発症した中枢神経系ループスの6歳例
■著者
姫路赤十字病院小児科
西山 将広  濱平 陽史  植村 加奈子  二階堂 量子  山本 寛子  岸田 真  北山 路子  山本 暢之  上田 陽子  伴 紘文  高見 勇一  柄川 剛  高橋 宏暢  岸本 芽子  五百蔵 智明  久呉 真章

■キーワード
全身性エリテマトーデス, 中枢神経ループス, ステロイドパルス療法, 痙攣, 肝障害
■要旨
 全身性痙攣,意識障害で発症し全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された症例を経験した.症例は生来健康な6歳男児.持続する発熱,前腕と頬部の皮疹,リンパ球減少,肝障害を認め入院した.入院1日目,全身性強直間代痙攣が突然に出現し,挿管下チオペンタール投与にて約2時間後に痙攣が頓挫した.鎮静薬中止後もJCS3桁の意識障害が4日間遷延したが,入院3日目からのメチルプレドニゾロン・パルス療法が著効し次第に意識レベルが改善した.抗核抗体2,560倍,抗ds-DNA抗体105.6 IU/mLを認めSLEと診断された.以後の経過良好で,入院43日目に神経学的後遺症を残さず退院し,退院後もステロイドとミゾリビン内服にてコントロール良好である.
 痙攣や意識障害をともなう中枢神経系ループスはSLEの超重症に分類されるが,本症例では初期治療のステロイドパルス療法によく反応した.小児のSLEにおいて痙攣が初発症状となることは稀であるものの,既往歴のない学童期前の小児においても中枢神経症状で発症するSLEが存在することを認識すべきと思われた.


【原著】
■題名
背景信号抑制全身拡散強調画像が早期診断に有用であった化膿性仙腸関節炎の1例
■著者
津軽保健生活協同組合健生病院小児科
國吉 保孝  加村 梓  安田 すみ江  田代 実

■キーワード
化膿性仙腸関節炎, MRI, 背景信号抑制全身拡散強調画像, 小児
■要旨
 症例は9歳の女児.発熱,臀部痛,歩行困難を主訴に,第6病日に入院となった.入院後直ちに抗菌薬治療を開始したところ,第7病日には解熱した.第11病日に背景信号抑制全身拡散強調画像を含むMRI検査で,化膿性仙腸関節炎と診断された.第21病日には疼痛なく歩行できるまで改善し,抗菌薬は内服も含め第47病日まで継続した.第60病日のMRIでは,拡散強調画像で,骨髄の高信号所見の領域は縮小傾向であったが,T1強調画像では所見に変化なく,脂肪抑制T2強調画像では,むしろ骨髄の高信号所見が明瞭となっていた.第120病日のMRIでは,拡散強調画像も含め骨髄に異常信号を認めず,症状の再燃なく治癒した.背景信号抑制全身拡散強調画像は,病変を鋭敏に検出し,化膿性仙腸関節炎の早期診断に有用であった.また治癒過程において,拡散強調画像も含め,臨床症状の改善に遅れてMRI所見が改善することが確認された.


【原著】
■題名
発症早期からMRI拡散強調画像異常を認めたインフルエンザ菌髄膜炎の1例
■著者
順天堂大学医学部附属練馬病院小児科
鎌田 彩子  渡辺 直樹  大友 義之  新島 新一

■キーワード
MRI拡散強調画像, インフルエンザ菌, 細菌性髄膜炎, 細胞障害性浮腫
■要旨
 MRI拡散強調画像(DWI:diffusion-weighted image)は脳虚血性疾患や脳膿瘍の診断に有用といわれているが,小児細菌性髄膜炎での病初期における検討は少ない.今回発症極早期から脳実質内にDWI異常所見を認めたインフルエンザ菌髄膜炎の症例を経験したので報告する.
 症例は8か月女児.発熱から半日後に全身性強直間代性痙攣を認めたため当科受診.到着時痙攣重積の状態で鎮痙後も右上下肢のミオクロニー痙攣が群発した.頭部CTおよび髄液一般検査では異常所見を認めなかったが,頭部MRI・DWIにのみ左頭頂葉から側頭葉皮質に高信号域を認めた.初診時の血液培養・髄液培養からHaemophilus influenzae type b(Hib)が少数分離されHibによる髄膜炎と診断した.その後DWI異常所見は経時的に変化し4か月後には消失したが右上下肢の不全麻痺を残した.自験例では髄液細胞数や蛋白濃度上昇がない時点ですでにDWIの変化を認めたが,MRAでは狭窄病変は認めず造影CTでも膿瘍形成は認めなかった.局在的血管炎から惹起された細胞障害性浮腫を伴った虚血性限局性髄膜脳炎を反映しているものと考えられた.
 DWIは中枢神経感染症の病初期の病態を鋭敏に反映する可能性があり,自験例においても発症極早期に頭部MRI・DWIを撮像したことが病勢把握に有用であった.


【原著】
■題名
アンギオテンシン変換酵素阻害剤の増量が有効であった拡張型心筋症の1例
■著者
市立札幌病院小児科1),北海道大学小児科2)
佐野 仁美1)  武田 充人2)  山崎 健史1)  濱野 貴通1)  須藤 章1)  上野 倫彦2)  福島 直樹1)

■キーワード
拡張型心筋症, 慢性心不全, アンギオテンシン変換酵素阻害剤, ベータ遮断剤
■要旨
 小児の重症慢性心不全に対してベータ遮断剤とアンギオテンシン変換酵素阻害剤の使用例は増加しているが,有効な治療量は確立されていない.我々は重度の心不全を示した拡張型心筋症の乳児に対し,アンギオテンシン変換酵素阻害剤の増量を試みたので経過を報告する.初期治療として利尿剤とホスホジエステラーゼIII阻害剤を開始し,続いて慢性心不全に対しアンギオテンシン変換酵素阻害剤であるシラザプリルを有効治療量とされる0.04 mg/kg/日まで漸増した.さらにベータ遮断剤であるカルベジロールを導入し1.0 mg/kg/dayまで漸増したが,明らかなポンプ機能の改善は認められずN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチドは33,000 pg/ml前後で推移した.そこでレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の抑制をより強化する方針とし,腎機能に留意しつつシラザプリルを0.07 mg/kg/日まで増量した.血圧や心拍数の低下とともに心機能が一旦悪化したが,ベータ遮断剤の効果を思わせる反応であったためカルペリチドとホスホジエステラーゼIII阻害剤を併用し治療を続行した.1か月後には左室拡張末期径およびN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチドの明らかな改善を認め,心負荷軽減に引き続き左室収縮力も次第に回復した.


【原著】
■題名
初経後の持続的腹痛を契機に発見されたHerlyn-Werner-Wunderlich症候群の1例
■著者
東邦大学医療センター大森病院小児科
原田 涼子  橋本 卓史  嶋田 博光  長谷川 慶  佐藤 真理  松裏 裕行  小原 明  佐地 勉

■キーワード
腟留血腫, 重複子宮, 重複腟, 一側腟閉鎖, 同側腎無形成
■要旨
 11歳の女児.1か月以上持続する臍周囲の疝痛を主訴に,複数の医療機関を受診後紹介受診された.初経は来院1か月半前で,来院までに計3回認められていた.臍周囲から下腹部にかけて強い圧痛がみられ,血液検査所見は正常で便潜血も陰性であった.腹部超音波検査にて子宮内腔および腟内に液体の貯留を認め,腹部MRI検査を施行した.画像所見から腹痛の原因は重複子宮・重複腟・一側腟閉鎖による腟留血腫と考えた.同時に右腎は無形性でありHerlyn-Werner-Wunderlich症候群(HWWS)と診断した.全身麻酔下に貯留していた血腫の吸引除去と腟中隔の切開を行い,盲端となっていた右側の腟を開口し終了した.術後合併症はなく,退院後も腹痛は再燃せず月経も順調である.
 HWWSは,重複子宮・一側腟閉鎖・同側腎無形性を呈する稀な奇形であり,初経後に段階的に増悪する下腹部痛を契機に発見される.しかし,本症例のように初経開始直後では腹痛は軽度で断続的であり,早期診断が困難であった.生殖器奇形は10代の若年例であっても不正出血や月経時痛などの婦人科的主訴が多く,婦人科を受診し診断される例が殆どである.しかし,本症例のように連日持続する腹痛のみで小児科を受診することも十分考えられる.腹痛を主訴とする思春期女児の診察時には詳細な病歴聴取と,月経関連症状がなくても婦人科的疾患の可能性を念頭におくことが重要と考えられた.


【原著】
■題名
びまん性軸索損傷の6例
■著者
静岡県立こども病院救急総合診療科1),同 小児集中治療科2)
三浦 慎也1)  関根 裕司1)  真野 浩志1)  中野 哲志1)  宮本 大輔1)  山内 豊浩1)  古田 千左子1)  黒澤 茶茶1)  勝又 元1)  加藤 寛幸1)  植田 育也2)

■キーワード
びまん性軸索損傷, 高次脳機能障害, 頭部外傷, 地域連携, 社会復帰
■要旨
 我々はびまん性軸索損傷(diffuse axonal injury;以下DAI)を発症した小児の6例を経験した.4例は交通外傷,1例は墜落外傷,1例は転落外傷により発症した.頭部CT所見,頭蓋内圧亢進症が軽微であったにも関わらず,意識障害の遷延,高次脳機能障害及び,DAIに典型的な頭部MRI所見を認めた.リハビリテーションにより症状の改善を認め,社会復帰を果たした症例もある一方で,重度の高次脳機能障害を残し,自立した日常生活が困難な症例も経験した.小児領域ではDAIや,これに伴う高次脳機能障害の報告は少ない.受傷急性期の症状の重さに比べ,その後の高次脳機能障害は目立たない為,診断されずに社会に戻され,環境不適応に陥っている例が少なくないと考えられる.DAI後の高次脳機能障害を適正に診断,評価し,機能訓練を行い,環境を整備し,適切な社会復帰を目指す事は重要である.その為に,各診療科,リハビリテーション施設,学校,家族などと連携し,中心的な役割を果たす事が小児科医の責務と考える.


【短報】
■題名
生後1か月で発症し鉄剤投与が有効であった頻回憤怒けいれんの1例
■著者
安城更生病院小児科
早野 聡  久保田 哲夫  澤井 潤  伊藤 祥絵  松井 照明  北瀬 悠磨  鈴木 俊彦  林 直子  松沢 要  大江 英之  城所 博之  竹本 康二  加藤 有一  宮島 雄二  小川 昭正  久野 邦義

■キーワード
憤怒けいれん, 泣き入りひきつけ, 鉄剤, 鉄欠乏性貧血, 乳児
■要旨
 症例は1か月11日の男児で,生後30日頃から激しい啼泣後に四肢を強直させるけいれん発作様のエピソードを1日5回ほど繰り返すようになり,精査目的に入院した.エピソード時の脳波は正常で,心電図では徐脈を認めるのみでてんかん発作は否定的であり,憤怒けいれん(チアノーゼ型)と診断した.鉄欠乏性貧血は認めなかったが,鉄剤の経口投与のみで症状は劇的に改善し,憤怒けいれんに対する経口鉄剤の有効性が示唆された.


【論策】
■題名
大規模小児医療施設における院内水痘発症状況
■著者
国立成育医療研究センター感染症科1),同 理事長2),聖マリアンナ医科大学医学部小児科学教室3),藤田保健衛生大学医学部小児科学教室4)
勝田 友博1)3)  中村 幸嗣3)  鶴岡 純一郎3)  中島 夏樹3)  齋藤 昭彦1)  吉川 哲史4)  浅野 喜造4)  加藤 達夫2)

■キーワード
水痘, 院内発生, アシクロビル, 免疫グロブリン, 水痘ワクチン
■要旨
 水痘はワクチン接種により予防が可能なVaccine Preventable Diseasesに含まれるが,本邦における水痘ワクチン接種率は低く,依然として保育施設や入院病棟における水痘発症が認められており,その結果,免疫抑制患者などにおける水痘重症化が危惧されている.今回我々は,院内水痘発症予防策を検討するために,本邦の大規模小児医療施設(71施設)における過去3年間の院内水痘発症状況,発症時対応,事前予防策等をアンケート調査した.
 その結果,事前予防策として入院時の水痘既往歴,ワクチン接種歴聴取のほか,医療従事者や予定入院患者に対する水痘抗体調査などの対応がなされていたにも関わらず,3年間の調査期間中,対象施設の51%において計108例の院内水痘発症が確認された.発症者の90%は水痘ワクチン未接種または接種歴不明の児であり,二次感染予防策としてはグロブリン製剤や抗ウイルス薬の使用,緊急ワクチン接種などが行われていた.
 調査対象施設の多くは不特定の緊急入院患者を受け入れる三次救急施設であり個別の水痘対策には限界がある.院内水痘発症を予防するためには,定期接種化により国内での水痘ワクチン接種率を向上させる必要がある.


【論策】
■題名
海外帰国後小児の健康上の問題点
■著者
独立行政法人国立国際医療研究センター病院国際疾病センター
水野 泰孝  金川 修造

■キーワード
輸入感染症, 熱帯感染症, Travel Medicine, Visiting Friends and Relatives, 小児渡航者
■要旨
 近年の国際化に伴い,海外渡航に小児を帯同することは日常的となり,その渡航先は先進国ばかりではなく,時に開発途上国でかつ生活環境がきわめて劣悪な場所の場合もある.このような背景を踏まえ,海外から帰国後に何らかの健康上の問題点を認めた小児を対象として渡航先,渡航目的,疾病構造等を検討した.海外から帰国した後であっても疾患の多くは日常診療でよくみられる疾患であった.一方でマラリアやデング熱などの熱帯感染症も全患者の5%前後にみられ,動物咬傷も頻度が高い問題点であった.我が国では欧米諸国に比べて,熱帯感染症罹患のハイリスク群に位置付けられるVisiting Friends and Relatives(VFR)の割合が少ない.しかしながら,数は少ないものの当センターで熱帯感染症と診断された全ての患者がVFRであったことから,このような渡航形態の小児が帰国後に発熱を認めている場合には,一般の渡航者以上に熱帯感染症の可能性を考慮すべきである.今後,国際結婚の増加によるVFRの増加や,開発途上国への長期滞在者の増加などにより,小児を対象とした熱帯感染症の診断,治療,予防に関する渡航関連情報の提供やトラベルワクチン接種の必要性も高まることが予想される.

バックナンバーに戻る