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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:11.1.27)

第115巻 第1号/平成23年1月1日
Vol.115, No.1, January 2011

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総  説
1.

日本の性分化疾患の実情 I.性分化疾患の実態調査結果

大山 建司  1
2.

日本の性分化疾患の実情 供ダ分化疾患の初期対応

堀川 玲子  5
3.

小児・思春期糖尿病における日本人の特性と今後の課題

雨宮 伸  13
4.

産科医療補償制度の現状と今後

須貝 研司  33
原  著
1.

母子健康手帳の記録による小児メタボリックシンドロームのリスク因子の評価

松下 理恵,他  44
2.

2007年から2009年のインフルエンザ菌・肺炎球菌全身感染症罹患状況

石和田 稔彦,他  50
3.

溶血性尿毒症症候群患児から単離した腸管出血性大腸菌O165:HNMの病原性遺伝子解析

西崎 直人,他  56
4.

小児期・青年期心臓移植後患者19例の臨床像

石田 秀和,他  62
5.

過去9年間に経験した早発型敗血症10例の検討

田中 登,他  69
6.

ステロイド投与による血清シスタチンC測定値への影響

亀井 宏一,他  74
7.

当センターにおける過去10年間の被虐待児入院症例215例の実態と問題点

丸山 朋子,他  77
8.

パンデミックインフルエンザA/H1N1 2009による無気肺8例の検討

郷司 彩,他  83
9.

病院感染による発症が考えられる遅発型B群溶連菌再発感染の1例

清水 聖子,他  89
10.

カテーテルアブレーションで治療しえた乳児心房粗動の1例

川越 信,他  93
11.

IL-5の著明な高値を認めた特発性好酸球増多症の1例

坂本 謙一,他  97
12.

敗血症性ショックを伴う腎膿瘍を発症した軽度先天性水腎症の1例

荒畑 幸絵,他  102
13.

補体制御因子factor Hの遺伝子変異を持つ非典型的溶血性尿毒症症候群の1例

天野 芳郎,他  107
14.

TTF1遺伝子変異を認め甲状腺機能低下・反復性下気道感染を合併した良性遺伝性舞踏病

伊藤 貴美子,他  113
15.

23歳時に貧血精査を契機に診断されたモザイク型Turner症候群の1例

菅野 潤子,他  118
論  壇

小児脳死患児・家族とどのように向き合うか?

阿部 祥英  122
論  策
1.

小児がん治療後のQOL―Erice宣言と言葉の重要性―

石田 也寸志,他  126
2.

保育園児・妊婦との継続的交流体験の教育的効果:医療系学生の気づきと学び

川上 ちひろ,他  132
3.

小児科臨床実習における学生の担当患児数と学生による実習評価との関連

野村 裕一,他  138
4.

小児救急患者救命後の長期入院に関する全国調査

江原 朗,他  143

地方会抄録(宮城・滋賀・山梨・青森・愛媛・福島・甲信・静岡・福岡・北陸)

  149
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会

Injury Alert(傷害注意速報)No.22 ロック機構付きシートベルトによる窒息

  185

PAS/ASPR joint meetingの参加登録が開始されました

  186
予防接種推進専門協議会

緊急声明

  187

日本小児科学会理事会議事要録

  190

医薬品・医療機器等安全性情報 No.275

  195


【原著】
■題名
母子健康手帳の記録による小児メタボリックシンドロームのリスク因子の評価
■著者
浜松医科大学小児科
松下 理恵  中川 祐一  橘田 一輝  永田 絵子  佐竹 栄一郎  佐野 伸一朗  藤澤 泰子  中西 俊樹  大関 武彦

■キーワード
小児メタボリックシンドローム, 腹囲, 腹囲/身長比, 母子手帳, adiposity rebound
■要旨
 小児期メタボリックシンドロームのより効果的な介入対象の選択のため,母子健康手帳を用い出生時の体重およびBMI(body mass index)の標準値に対する割合(%BMI),乳幼児期のBMI増加率(ΔBMI)が小学生時の腹囲/身長比に与える影響を検討した.小学生のうち腹囲/身長比が0.5以上の群を小児メタボリックシンドローム危険群,0.5未満の群を非危険群とし比較したところ,危険群では肥満度,BMI,体脂肪率,収縮期血圧,拡張期血圧ともに有意に高く,診断基準に用いられる腹囲/身長比はメタボリックシンドロームのリスクの評価に有用と考えられた.出生歴・成長歴の検討では出生体重は危険群で有意に低く,出生時%BMIが10%タイル未満の児は10〜90%タイルの児に比べ,小学生になると有意に腹囲/身長比が増大していた.重回帰分析の結果では乳児期のΔBMIは小学生時の腹囲/身長比と相関を認めないが,18か月〜3歳,3歳〜6歳のΔBMIが大きい児では小学生時の腹囲/身長比が有意に高かった.これらの結果より,出生体重の低下とともに1歳6か月以後のΔBMIの上昇は,小学生の腹囲/身長比の増加と有意に相関していることが示され,血圧上昇などのメタボリックシンドロームのリスクと関連することが示唆される.母子健康手帳の記録は成長歴の解析に有用な情報を含んでいた.


【原著】
■題名
2007年から2009年のインフルエンザ菌・肺炎球菌全身感染症罹患状況
■著者
千葉大学医学部附属病院小児科1),千葉県こども病院感染症科2),くろさきこどもクリニック3)
石和田 稔彦1)  荻田 純子1)  菱木 はるか1)  星野 直2)  黒崎 知道3)  河野 陽一1)

■キーワード
インフルエンザ菌, 肺炎球菌, 罹患率, 全身感染症, ワクチン
■要旨
 インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンと7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)導入前後の状況を把握する目的で,千葉県内及び周辺の小児入院施設を対象に,2007年〜2009年の3年間に血液,髄液などの無菌部位からインフルエンザ菌及び肺炎球菌が分離された全身感染症症例に関する調査を実施した.インフルエンザ菌全身感染症症例数(5歳未満人口10万人あたりの罹患率)は2007年19例(6.4),2008年38例(13.5),2009年32例(11.2)であった.血清型別は76例(76/89;85.4%)で実施されており,1例を除きHib(75/76;98.7%)であった.Hibワクチンの供給不足により,接種率が低値にとどまっていたため,Hibワクチン導入後の発症数の大幅な減少は認められなかった.肺炎球菌全身感染症症例数(5歳未満人口10万人あたりの罹患率)は2007年39例(13.5),2008年61例(21.3),2009年76例(26.1)であり,3年間で罹患数が約2倍に急増していた.血清型は60例(34.1%)の株で実施されており,PCV7に含まれている血清型は65.0%(39例/60例)であった.PCV7導入後高い接種率が確保出来れば,肺炎球菌全身感染症の減少効果が期待できる.両ワクチンの安定供給と一日も早い定期接種化が強く望まれる.


【原著】
■題名
溶血性尿毒症症候群患児から単離した腸管出血性大腸菌O165:HNMの病原性遺伝子解析
■著者
埼玉県立小児医療センター腎臓科1),同 病院長2),済生会川口総合病院小児科3),順天堂大学練馬病院小児科4),順天堂大学小児科5)
西崎 直人1)  藤永 周一郎1)  平野 大志1)  金井 宏明1)  東 範彦3)  大山 昇一3)  大友 義之4)  清水 俊明5)  城 宏輔2)

■キーワード
腸管出血性大腸菌, O165, 溶血性尿毒症症候群, 志賀毒素, Locus of enterocyte effacement領域
■要旨
 腸管出血性大腸菌(entrohemorrhagic Escherichia coli,以下EHECと略す)O165感染により下痢を伴う溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome with diarrhea,以下D+HUSと略す)を発症した2歳男児例について報告した.患児は急性腎不全に陥ったが腹膜透析と輸血を含む支持療法にて後遺症なく軽快した.入院時の便培養から志賀毒素(Shiga toxin,以下Stxと略す)2産生O165が検出され,血清O165抗体価の上昇を確認した.単離したStx2産生O165菌株について病原性遺伝子解析を行ったところ本菌株の保有するstx遺伝子バリアントはstx2stx2cでありD+HUSへの進行率が高く,強毒性であることが明らかとなった.さらにD+HUS発症に関与する病原性関連遺伝子Locus of enterocyte effacement領域(以下LEE領域と略す)を有していた.EHEC感染における菌同定の際にはO165など稀な血清型についても積極的な検索をするとともに重症度やD+HUSへの進行率を把握するためには遺伝子レベルでのStxバリアントやLEE領域の解析が有用である.


【原著】
■題名
小児期・青年期心臓移植後患者19例の臨床像
■著者
大阪大学大学院医学系研究科小児科学
石田 秀和  小垣 滋豊  市森 裕章  成田 淳  内川 俊毅  前川 周  松本 明香  岡田 陽子  大薗 恵一

■キーワード
心臓移植, 小児, 移植後合併症
■要旨
 (背景と方法)心臓移植は小児末期重症心不全の治療として確立しており,その生存率も向上してきている.一方,移植後に起こり得る合併症が患者の予後やQOLに影響を与えている事実がある.移植法改正に伴い,本邦での小児心臓移植実施数が増加することが予想される.今回,著者らが管理している19例の小児期・青年期心臓移植後患者の臨床像を後方視的に検討し,その臨床像を明らかにした.(結果)移植時平均年齢は6.1±5.6歳,平均移植待機年数は0.74±0.37年,移植後平均経過年数は4.4±2.8年であった.死亡症例は無く,6歳以上の17例は全例就学または就職できていた.移植後遠隔期合併症として,中等度以上の腎機能低下を6例,急性拒絶反応を5例,移植後リンパ増殖性疾患を2例で認めた.腎不全により,1例で透析の導入に至った.移植後の発育は概ね良好であったが,合併症を有する症例では必ずしも良好ではなかった.心機能は全例で良好に保たれており,冠動脈病変は認めていない.(結語)心臓移植は小児末期心不全患者にとって有効な治療法で,当院における移植後管理成績も良好である.移植後合併症として,免疫抑制剤の副作用による腎機能障害,移植後リンパ増殖性疾患や急性拒絶反応に対し注意深い監視が必要である.


【原著】
■題名
過去9年間に経験した早発型敗血症10例の検討
■著者
順天堂大学静岡病院新生児センター1),順天堂大学医学部小児科2)
田中 登1)  菅沼 広樹1)  池田 奈帆1)  松井 こと子1)  岩崎 友弘1)  大川 夏紀1)  佐藤 洋明1)  永田 智1)  久田 研2)  東海林 宏道2)  清水 俊明2)

■キーワード
早発型敗血症, Streptococcus agalactiae, 予防, 薬剤耐性菌
■要旨
 新生児の早発型敗血症は予後不良であり,早期の診断と治療が必要である.今回,2001年1月から2009年12月の9年間に経験した早発型敗血症10例について後方視的に検討した.原因菌はGBSが4例と最も多く,E. coli 2例,E. faecalis 2例,PRSP,Listeriaを各1例ずつ認めた.GBSの1例は母体スクリーニング検査が未施行であり,3例は偽陰性であった.また,薬剤耐性菌としてPRSPを認めた.入院主訴は呼吸障害5例,新生児仮死2例,発熱1例,not doing well 1例,哺乳障害1例であり,うち2例が早産児であった.入院時血液検査は5例が炎症反応の上昇を認めなかったが,10例中9例でI/T比の上昇を認めた.初期治療として9例が生後24時間以内にABPC+AMKを投与されていた.予後はGBS 1例が死亡し,PRSP 1例が発達遅滞を認めた.早発型敗血症には母体スクリーニングが予防に重要であり,特に母体GBSスクリーニング検査の偽陰性の問題は検討されるべきである.


【原著】
■題名
ステロイド投与による血清シスタチンC測定値への影響
■著者
国立成育医療研究センター腎臓・リウマチ・膠原病科
亀井 宏一  佐藤 舞  石川 智朗  藤丸 拓也  宇田川 智宏  小椋 雅夫  伊藤 秀一

■キーワード
血清シスタチンC, ステロイド薬, 血清クレアチニン, 糸球体濾過量, イヌリンクリアランス
■要旨
 【背景】血清シスタチンC(CysC)は,ステロイド投与で高値を示すという報告が散見される.【方法と対象】腎機能が正常な小児患者をステロイド投与群・非投与群に分けて,CysCの値を比較した.また,プレドニゾロン(PSL)連日治療を開始した小児患者で,投与前後のCysCの値を比較した.【結果-1】ステロイド投与群が13名,非投与群26名であった.両者の腎機能に差はなかったが,CysCは有意にステロイド投与群の方が高値であった(0.854±0.207 mg/L vs 0.714±0.113 mg/L,p=0.033).【結果-2】対象は18名であった.PSL投与前後で血清クレアチニンは不変であったが,CysCは有意に増加していた(0.705±0.141 mg/L→0.888±0.159 mg/L,p<0.0001).【考察】日本人小児患者においてもステロイド投与によりCysCは高値を示すことが証明された.


【原著】
■題名
当センターにおける過去10年間の被虐待児入院症例215例の実態と問題点
■著者
大阪府立急性期・総合医療センター小児科
丸山 朋子  馬場 美子  高野 智子  田尻 仁

■キーワード
児童虐待, 虐待通告, 育児支援, 退院後の処遇, 関係機関連携
■要旨
 2000年4月1日から2010年3月31日までの10年間に当センターに入院した被虐待児の背景因子と対応等を調査し,問題点について考察する.
 入院患者は0か月0日から17歳7か月までの215例で,未就学児が154例であった.虐待の種類はネグレクトが103例,身体的虐待が99例と多く,主たる虐待者は母が118例で最も多かった.兄弟の被虐待歴が明らかになったのは52例であった.家族背景として,両親離婚・再婚,ひとり親家庭が多く認められた.約60%は児童相談所を介した入院であり,入院時の診断名は身体的虐待では硬膜下血腫が35例,その他の頭蓋内病変が26例,熱傷が14例,ネグレクトでは低身長が49例,低体重・体重増加不良が43例と多く認められた.既通告症例が149例,当院からの通告症例が45例であった.退院後の処遇は,自宅退院が66例,一時保護所入所が44例,施設入所が70例,転院が10例であり,その他として親戚宅退院,里親委託などが認められた.
 我々小児科医をはじめ,医療機関で子どもに関わるすべての職員が虐待を見逃さないことはもとより,児童相談所等関係機関との連携の下,重症被虐待児に対する治療と安全確保にあたることが重要である.さらに,要支援家庭に対する地域保健活動と連携し,虐待予防にも努めねばならない.


【原著】
■題名
パンデミックインフルエンザA/H1N1 2009による無気肺8例の検討
■著者
高松赤十字病院小児科
郷司 彩  関口 隆憲  大西 達也  清水 真樹  高橋 朋子  幸山 洋子  坂口 善市  大原 克明

■キーワード
パンデミックインフルエンザA/H1N12009, 無気肺, Plastic bronchitis, IgE, 好酸球
■要旨
 2009年8月から2010年2月までに当院にてパンデミックインフルエンザA/H1N12009による低酸素血症(平均SpO2 89.7%)で入院した無気肺は8例であった.男女差はなく,年齢は5歳から11歳(平均6.9歳)であった.発熱から短期間(平均1.25日)で無気肺になった.3例に気管支鏡により粘稠痰を吸引し,1例はplastic bronchitisであった.人工呼吸器管理を行った2例の粘稠痰はフィブリン中に好酸球の浸潤を多数認め,血清中の非特異的IgEが高値で症状の経過と共に上下した.無気肺8例のうち7例で非特異的IgEが高値を示した.アトピー素因は7例全てに認めたが,1例のみ気管支喘息と診断されていた.パンデミックインフルエンザA/H1N12009は季節性インフルエンザよりも肺胞障害が著明であることが報告されており,肺胞障害の程度により様々な呼吸障害を呈すると考えられる.アトピー素因の患児にパンデミックインフルエンザA/H1N12009が感染するとTh2系サイトカインが刺激され,IgEの産生や肺での好酸球性炎症が惹起され,粘稠痰による無気肺を来たしやすいことが示唆された.今後無気肺をきたしやすい機序や,無気肺に対してステロイドや去痰剤の有効性の有無に関して更なる症例の蓄積が必要である.


【原著】
■題名
病院感染による発症が考えられる遅発型B群溶連菌再発感染の1例
■著者
トヨタ記念病院小児科1),同 新生児科2)
清水 聖子1)  原 紳也1)  浅野 孝基1)  野坂 宜之1)  河野 好彦1)  会津 研二2)  細野 治樹2)  藤巻 英彦2)  木戸 真二1)  岡田 純一1)

■キーワード
B群溶連菌遅発型感染, 再発感染, 院内感染, 超低出生体重児
■要旨
 症例は在胎28週6日,出生体重990 g,Apgar score7点/9点(1分/5分),母体妊娠高血圧症が進行し緊急帝王切開にて出生した男児で,出生時胎内感染徴候を認めなかった.日齢22と39にB群溶連菌(group B Streptococcus,GBS)感染による敗血症を発症,初回発症時十分な抗菌薬投与を行い炎症反応の陰性化を確認したにもかかわらず再発し,再発時は敗血症性ショック,DICに至ったが治療に反応し改善した.同時期NICU内に鼻腔培養にてGBS陽性患者が他に3人おり,パルスフィールドゲル電気泳動解析(PFGE)を施行し1人の患者と一致した.本症例と一致した患者の母乳培養はGBS陰性であり,GBS保菌者より感染し遅発型GBS感染症に至った症例と考えた.NICU内でGBS保菌者が現れた場合,一般的にMRSAほど感染予防対策を意識しない傾向にあるが遅発型GBS感染症の感染経路に水平感染があることを今一度認識し,日常の標準感染予防に努めるべきと考える.


【原著】
■題名
カテーテルアブレーションで治療しえた乳児心房粗動の1例
■著者
帝京大学医学部小児科学講座1),キッズクリニック南柏2),小張総合病院小児科3)
川越 信1)  萩原 教文1)  久津間 弘文1)  笠神 崇平1)  舟木 尚美2)  伊達 正恒3)  脇田 傑1)  柳川 幸重1)

■キーワード
心房粗動, 心原性ショック, 高周波カテーテル心筋焼灼術
■要旨
 症例は1歳6か月男児.3か月時の乳児健診で偶然頻脈と脈の不整を指摘され心房粗動と診断された.心房粗動は薬物治療に抵抗性で,興奮に伴う心房粗動1:1伝導で心拍数は300/分以上となり心原性ショックを来たすことがあり,電気的除細動を必要とした.
 心原性ショックを繰り返すため1歳6か月時に高周波カテーテル心筋焼灼術施行し根治した.幼児心房粗動において,薬物抵抗性で,心原性ショック等の重篤な既往を認める場合,高周波カテーテル心筋焼灼術は有用な治療方法と考えられ報告する.


【原著】
■題名
IL-5の著明な高値を認めた特発性好酸球増多症の1例
■著者
京都府立医科大学大学院医学研究科小児発達医学
坂本 謙一  今村 俊彦  塩見 梢  平嶋 良章  土屋 邦彦  細井 創

■キーワード
好酸球増多症, 小児, 腹痛, CD25, IL-5
■要旨
 腹痛を契機に診断した特発性好酸球増多症Idiopathic hypereosinophilic syndrome(IHES)の4歳女児を経験した.発症時,末梢血中の好酸球数は23,011/μlと著増し,消化管,心臓,肺,および膀胱への浸潤が疑われる画像所見を認めた.骨髄検体における,FIP1L1-PDGFR融合遺伝子や染色体異常は認めず,クローナルなT細胞の増殖も認めず,二次性の好酸球増多を来す疾患の合併も否定されたため,特発性好酸球増多症と診断した.また,発症時のIL-5は非常に高値であり,これに伴うCD25陽性の活性化好酸球増加を認めた.ステロイドに対する反応は非常に良好であり,好酸球数の低下と共にIL-5も速やかに低下しており,病態形成にIL-5が強く関与していたと考えられた.HESは成人以降の発症が多く小児期発症は極めて稀であり,その病因は成人期発症のそれとは一部異なると考えられている.本例のIL-5上昇の機序は不明であるが,IL-5と病勢の推移を評価しえた小児期発症の貴重な症例であり,文献的考察を含めて報告する.


【原著】
■題名
敗血症性ショックを伴う腎膿瘍を発症した軽度先天性水腎症の1例
■著者
総合病院国保旭中央病院小児科
荒畑 幸絵  北澤 克彦  松本 弘  本多 昭仁  仙田 昌義  小林 宏伸  小暮 裕之  小林 匡  小谷 匡史  森藤 祐次

■キーワード
先天性水腎症, 尿路感染症, 腎膿瘍, 敗血症性ショック, DIC
■要旨
 症例は,発熱3日目に意識障害を認めたため入院した1歳9か月女児.胎児期よりgrade 2の左水腎症を指摘されていたが,12か月時のフォローアップ検査では有意な腎盂拡張は認めなかった.入院時,C-reactive protein(CRP)高値(30.0 mg/dl)とdisseminated intravascular coagulation(DIC)を認め直ちに細菌性髄膜炎を考慮した抗菌薬治療を開始したが,急速に敗血症性ショックが進行したため人工呼吸,dopamine投与などの集中治療を要した.髄液検査で髄膜炎は否定されたが,血液および尿培養でKlebsiella pneumoniaeが検出された.入院時の尿検査では膿尿を認めなかったが,超音波上,左腎の腫大,grade 3の水腎症,膿腎症の所見を認め,8日目の造影CTで腎膿瘍の存在を確認した.当初使用したceftriaxone(120 mg/kg/day)は効果不十分であったが12日目から使用したpiperacillin/tazobactam(330 mg/kg/day)は有効であり計43日間の抗菌薬治療で外科的治療なしに腎膿瘍は治癒した.本症例のように重症化する小児尿路感染症(urinary tract infection:UTI)は稀であるが,自然軽快を期待して観察中の軽度の先天性水腎症においても重症UTIの発症には留意すべきである.


【原著】
■題名
補体制御因子factor Hの遺伝子変異を持つ非典型的溶血性尿毒症症候群の1例
■著者
長野赤十字病院小児科1),信州大学医学部小児医学講座2),東京都立清瀬小児病院腎臓内科3),信州大学医学部附属病院臨床検査部4),信州大学医学部病理組織学講座5)
天野 芳郎1)  日高 義彦2)  伊藤 有香子1)  松崎 聡1)  高山 雅至1)  中村 真一1)  南 勇樹1)  森 哲夫1)  山崎 崇志2)  幡谷 浩史3)  廣田(川戸洞) 雅子4)  若林 早紀4)  江原 孝史5)  小池 健一2)

■キーワード
非典型的溶血性尿毒症症候群, 補体制御因子factor H, 血漿交換, 新鮮凍結血漿輸注
■要旨
 1歳4か月の女児が,インフルエンザワクチンを接種したところ12日後に浮腫,血尿,蛋白尿,溶血性貧血,腎機能障害を呈した.血小板数は正常範囲であったが,上気道感染を契機に腎障害の悪化を繰り返した臨床経過と腎組織所見から非典型的溶血性尿毒症症候群(aHUS)と診断した.補体制御因子factor Hの遺伝子解析で,遺伝子変異(c. 3717G>A)と,遺伝子多型(c. −257C/T,c. 2089A/G,c. 2881G/T)が検出された.これらはaHUSの原因としてすでに報告されているが,日本での報告はない.父方祖父は48歳時に血栓性血小板減少性紫斑病で死亡していた.父親に患児と同一の遺伝子変異,母親に同じ遺伝子多型を認めたが,両親はaHUSを発症していない.初期治療として血漿交換を行ったところ,進行性の腎機能障害は抑制された.その後,aHUSの再発予防としてウイルス感染時の新鮮凍結血漿(FFP)輸注,および定期的なFFP輸注を約2年間繰り返し,腎機能は正常化しないものの,悪化しなかった.本例に対する,血漿交換およびFFP輸注治療は一定の効果があると考えられたが,常に再燃のリスクがあり,有効な治療法の開発が望まれる.


【原著】
■題名
TTF1遺伝子変異を認め甲状腺機能低下・反復性下気道感染を合併した良性遺伝性舞踏病
■著者
大垣市民病院小児科1),東京都立清瀬小児病院内分泌代謝科2),島根大学医学部附属病院輸血部3)
伊藤 貴美子1)  岩田 晶子1)  中嶋 義記1)  鈴木 絵理2)  長谷川 行洋2)  竹谷 健3)

■キーワード
良性遺伝性舞踏病, 甲状腺機能低下症, 下気道感染, TTF1/NKX2-1遺伝子, brain-lung-thyroid syndrome
■要旨
 良性遺伝性舞踏病は,小児期に発症する認知症を伴わない非進行性の舞踏病である.常染色体優性遺伝形式をとり,甲状腺,肺,大脳基底核に発現するThyroid Transcription Factor-1TTF1/NKX2-1)遺伝子異常が病因と考えられている.しばしば甲状腺機能低下症と反復性下気道感染症を合併する.症例は7歳女児.乳児期より運動発達遅滞を認め,3歳頃より舞踏アテトーゼを発症した.また,2歳よりfree T4は正常範囲であったがTSH高値を認めたため,甲状腺ホルモン補充療法を開始した.生後2か月から4歳まで,頻回に下気道感染症による入退院を繰り返していた.7歳現在,舞踏アテトーゼ,歩行障害,構音障害および気管支喘息を有している.家族歴として,父が小児期に,歩行障害を認め,下気道感染症と気管支喘息発作を繰り返していた.28歳現在,歩行障害はなく,気管支喘息を有している.家族歴および症状から,良性遺伝性舞踏病と診断し,TTF1遺伝子解析では,父子ともに,これまで報告のないヘテロ接合性変異(Arg178Pro)を認めた.乳幼児期発症の舞踏病,甲状腺機能低下症,呼吸器症状を呈する場合,すべてがそろわなくても,本疾患を念頭に置く必要があり,TTF1遺伝子解析が診断に有用であると思われた.


【原著】
■題名
23歳時に貧血精査を契機に診断されたモザイク型Turner症候群の1例
■著者
東北大学病院小児科1),同 遺伝科2)
菅野 潤子1)  藤原 幾磨1)  小松崎 匠子2)  鎌田 文顕1)  箱田 明子1)  柿崎 周平1)  森本 哲司1)  呉 繁夫1)  松原 洋一2)  土屋 滋1)

■キーワード
ターナー症候群, モザイク, 遺伝カウンセリング
■要旨
 貧血精査のための骨髄検査が診断の契機となった23歳のTurner症候群(TS)の1例を経験した.骨髄血のG分染法では45,X,末梢血のG分染法では45,X/47,XXX,頬粘膜スメアでのFISH法では45,X/47,XXX/46,XXのモザイクであった.本症例の表現型は軽症で,過去の47,XXXを含むモザイク症例の報告と同様であった.低身長は認めず,月経自然発来あり,23歳までTSと診断されていなかった.末梢血と骨髄における核型の相違は組織特異的モザイクと考えられた.本症例においては,正確な診断と適切な遺伝カウンセリングのために,複数の方法や組織を用いた染色体検査が重要であった.


【論壇】
■題名
小児脳死患児・家族とどのように向き合うか?
■著者
昭和大学医学部小児科学教室
阿部 祥英

■キーワード
脳死, 小児医療, 臓器移植
■要旨
 死の定義,脳死,移植についてさまざまな考え方があるが,医療現場は臓器移植法案が改正される事実を受け入れて対応しなければならない.また,臓器提供が可能な年齢に制限が無くなることにより,小児医療現場でも脳死患児をドナーとした臓器移植医療に携わる機会が増えることが予想される.新たな対応を迫られることにより混乱が生じる可能性もある.脳死患児とその家族も,臓器提供を待っている患児とその家族も死に直面していることに変わりはない.医療従事者としてどちらにも配慮した姿勢が必要であるが,医療従事者が脳死を人の死とすることに固執すると脳死患児の家族の感情が救済されない可能性がある.死の定義や臓器移植に対する見解を統一するよりも,それらに対する多様な考え方を包括できる医療体制が望ましい.医療従事者が法案の改正を契機に脳死を一律に人の死として対応するのは多数意見として妥当でも医療として妥当であるかについて慎重な議論が必要である.


【論策】
■題名
小児がん治療後のQOL―Erice宣言と言葉の重要性―
■著者
聖路加国際病院小児科
石田 也寸志  細谷 亮太

■キーワード
小児がん経験者, QOL, Erice宣言, 治癒, late effect
■要旨
 2006年10月にイタリアEriceで行われたInternational Berlin-Frankfurt-Münster(I-BFM)のEarly and Late Toxicity Educational Committee(ELTEC)委員会で採択されたErice宣言について解説した.この会議では,小児がん治療終了後に「治癒」という言葉をどのように使うべきか,継続的な長期フォローアップとケアにどう取り組むべきか,小児がん経験者や社会とどのように対話するべきか,今後どのような研究が必要かについて話し合われた.
 小児がんの治癒およびその長期的ケアの目標は経験者が病気から立ち直り,十分に機能を回復し,望ましいQOLのもと自立した一人の成人として,同年代の人々と同じように社会に受け入れられるようになることである.そのために,小児がん治療終了後に用いる「cure」「late effects」「long-term survivors」「transition」などに対して適切な日本語訳が使われ,その意味が理解されることが重要と考えられ,その点について私見を述べた.


【論策】
■題名
保育園児・妊婦との継続的交流体験の教育的効果:医療系学生の気づきと学び
■著者
岐阜大学医学部医学教育開発研究センター1),名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻精神健康医学分野2),岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学3)
川上 ちひろ1)2)  阿部 恵子1)  藤崎 和彦1)  丹羽 雅之1)  鈴木 康之1)3)

■キーワード
コミュニケーション, フォーカスグループディスカッション, ポートフォリオ, 地域体験実習
■要旨
 地域医療や小児・産科医療を担う医師不足が社会的な問題となっている.また地域コミュニティや家族機能の低下した中で育った医療系学生に対して,抽象論で地域医療,小児科・産科医療の必要性を唱えても,実感を伴って響かないような現状も生まれている.
 このような状況を打開するための教育的介入として,入学早期の地域体験や医療体験が効果的であると考えられている.今回我々は,医療者として重要なコミュニケーション・人間性・ライフサイクル・地域医療などを学ぶ目的で,医学科・看護学科の1年生ボランティアを対象として,園児あるいは妊婦との「継続的地域体験実習」を行い,その効果を検討した.
 学生は園児とは一対一で,妊婦とは男女のペアで,同一の対象者と2〜7回の継続した交流を行い,その効果をフォーカスグループディスカッションとポートフォリオで質的分析した.
 学生は言語・非言語コミュニケーションの難しさと喜びを体感し,人間関係構築の流れを体験した.また小児科や産科における医療者の役割の重要性を認識するなどの学びや気づきも得た.以上により,本実習は医療系学生が小児科や産科医療への関心を高める一つの方策として有効に機能するものであることが示唆された.


【論策】
■題名
小児科臨床実習における学生の担当患児数と学生による実習評価との関連
■著者
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野
野村 裕一  山崎 雄一  児玉 祐一  新小田 雄一  江口 太助  田邊 貴幸  徳田 浩一  豊島 光雄  岡本 康裕  河野 嘉文

■キーワード
小児科臨床実習, 担当患児数, 学生による実習評価
■要旨
 小児科臨床実習における学生の担当患児数をなるべく多くする方針から2名へ制限する変更を行った.担当患児数と学生による実習評価との関連を検討した.【対象および方法】2004年度から6年間に実習した学生を対象とした.制限を行わなかった(前期)学生による各実習の個別評価および総合評価(1〜5;5が高点)と担当患児数の関係を検討した.また前期と担当制限を行った(後期)学生の評価を比較検討した.【結果】実習評価を解析できたのは前期の345名中の292名(85%)と後期の179名中の142名(79%)だった.前期の学生による評価は全て4点以上だった.担当患児数は全ての評価と負の相関があり,実習の総合的評価等において有意だった.担当制限で患児数は3.5±1.1人から2.1±0.4人と減少した.後期の評価は病棟実習の一部と全ての院外実習で有意に低下した.一方,実習の総合的評価を含む実習全体の評価は高点のまま変化しなかった.【考案】学生による実習評価はその満足度に関連する.満足度向上は小児医療への興味向上等に繋がることから実習評価向上に努めることは重要である.実習の総合評価は担当制限で低下はしなかったが,後期に導入した小児医療体験型実習の高評価が影響した可能性も考えられた.【結論】学生による実習評価と担当患児数には負の相関があり,実習評価の向上には担当患児数を単純に増やすだけでは不十分と考えられた.


【論策】
■題名
小児救急患者救命後の長期入院に関する全国調査
■著者
小樽市保健所1),近畿大学医学部小児科2),大宮医師会市民病院小児科3),国立成育医療センター総合診療部4)
江原 朗1)  和田 紀久2)  安田 正3)  阪井 裕一4)

■キーワード
小児救急, 出口問題, 慢性期医療, 医療体制
■要旨
 【背景】救急医療により患児の生命は救えたが,慢性的な病態が残ってしまい,急性期病棟から退院できない小児に関する全国的な資料はない.
 【方法】小児科専門医研修施設578施設に,「急性期の医療により病態は安定したが,その後長期にわたって退院ができない,という状況に陥っている小児患者」に関するアンケート調査を行った.
 【結果】調査票回収360施設,回収率62%.
 1.回収された360施設のうち,116施設において,急性期を脱したが退院できない小児患者がいた.総数では244人に達し,これらの施設の入院患者の4.6%を占めた.
 2.年齢分布は,0〜4歳58%,5〜9歳23%,10〜14歳9%,15歳以上10%であった.
 3.入院期間の分布は,6か月未満32%,6〜12か月17%,1〜3年25%,3年以上26%であった.
 4.呼吸管理では,64%が気管切開を受け,70%が人工呼吸下にあった.また,90%がチューブないしは胃瘻による栄養を受けていた.
 5.近い将来(半年程度)の退院見込みが「なし/ほとんどなし」の患者が56%を占めた.
 【結論】慢性期の診療体制が整備されていないことが,わが国の小児救急医療体制を整備していくうえで大きな支障になっていると思われる.

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