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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:10.12.1)
第114巻 第11号/平成22年11月1日
Vol.114, No.11, November 2010
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総 説 |
1. |
インフルエンザA/H1N1 2009と小児気管支喘息
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松井 猛彦 1645 |
2. |
小児心身症としての呼吸器疾患―気管支喘息,神経性咳嗽,過換気症候群
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赤坂 徹 1655 |
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佐久間 啓 1665 |
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金生 由紀子 1673 |
5. |
早発型・遅発型B群溶連菌感染症の特徴と垂直感染予防方法の考察
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松原 康策 1681 |
原 著 |
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西庄 佐恵,他 1692 |
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富田 瑞枝,他 1698 |
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亀井 宏一,他 1701 |
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櫻井 淑男,他 1708 |
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佐藤 真理,他 1713 |
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島川 修一,他 1718 |
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榊 久乃,他 1723 |
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藤井 隆成,他 1729 |
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今村 秀明,他 1733 |
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垣内 俊彦 1739 |
論 策 |
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原 まどか,他 1744 |
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1751 |
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1769 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No.20 ローラー滑り台による股関節脱臼
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1770 |
日本小児科学会新生児委員会報告 |
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「新しい在胎期間別出生時体格標準値」の修正について
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1771 |
専門医にゅーすNo.6 |
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専門医試験に関するお知らせ・小児科専門医試験の開催地について
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1807 |
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1808 |
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1817 |
【原著】
■題名
2005年から2009年に入院治療した重症アトピー性皮膚炎患者の臨床的特徴
■著者
静岡県立こども病院感染免疫アレルギー科 西庄 佐恵 田口 智英 王 茂治 木村 光明
■キーワード
アトピー性皮膚炎, 重症, 乳児, 合併症
■要旨
重症アトピー性皮膚炎(AD)児の診療の問題点を明らかにするために,最近われわれの施設で入院治療した重症AD患者の特徴を分析した.対象は2005年1月から2009年4月までの4年3か月の間に当科で入院治療した46名(延べ49名)である.入院時年齢の中央値は1歳,範囲は3か月〜16歳であり,約半数の24名(49.0%)を0歳が占めていた.重症度は,最重症33名(67.3%),重症9名(18.4%),中等症7名(14.3%)と8割以上が重症以上であった.17名(34.7%)に体重増加不良・体重減少(70.5%),低蛋白・低アルブミン血症(70.5%),低ナトリウム血症(76.5%),発達遅延(52.9%)などの深刻な全身性合併症を認めた.このような全身性合併症の頻度は0歳児で高く(62.5%),年長児では低かった(8.0%).ADの悪化因子は,手技拙劣が20名(40.8%)と最多であり,ついでステロイド拒否11名(22.4%),皮膚感染症9名(18.4%),医療側のステロイド拒否4名(8.0%)などであった.治療拒否の2名を除き,全員が適切なスキンケアとステロイド軟膏外用により症状が改善し,入院後新たに食物制限を要した症例はいなかった.以上より,最近の入院治療を要する重症ADでは,乳児患者の比率が高いこと,乳児患者では発達・発育障害を初めとする全身的かつ深刻な合併症のリスクが高いこと,AD悪化の主な原因は不十分なスキンケアであることが明らかになった.今後,乳児の重症ADの予防と早期治療に重点をおいた対策を講じる必要がある.
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【原著】
■題名
血液培養の皮膚消毒におけるエタノールとポビドンヨード消毒のコンタミネーションの割合の比較
■著者
独立行政法人国立病院機構埼玉病院小児科 富田 瑞枝 遠山 章子 河野 美緒 池宮城 雅子 内藤 陽子 真路 展彰 上牧 勇
■キーワード
血液培養, 皮膚消毒, エタノール, ポビドンヨード
■要旨
血液培養において,コンタミネーションは臨床的に重要な問題である.血液培養時の皮膚消毒の方法については,これまで様々な検討がなされているが,どの消毒法がコンタミネーションの割合を低くするかについては,エビデンスは少ない.
当院小児科では2006年10月1日から血液培養の消毒法を,エタノール消毒に変更した(エタノール群).過去2年間のポビドンヨード消毒を対照(ポビドンヨード群)とし,当科で提出した血液培養におけるコンタミネーションの割合を後方視的に検討した.
コンタミネーションは,ポビドンヨード群で830検体中10検体(1.2%),エタノール群では684検体中2検体(0.29%)であった.Odds比は0.24,95%信頼区間は0.03〜1.13,P値は0.08であった.
本報告の結果,血液培養において,エタノール消毒は有意ではないが,ポビドンヨードと比較し,76%コンタミネーションを減らす可能性があることが示された.
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【原著】
■題名
小児におけるイヌリンクリアランス測定法の確立とシスタチンCによる糸球体濾過量推定式の作成
■著者
国立成育医療研究センター腎臓・リウマチ膠原病科1),神戸大学大学院医学研究科小児科こども発育学2) 亀井 宏一1) 伊藤 秀一1) 飯島 一誠2)
■キーワード
イヌリンクリアランス, 糸球体濾過量, 24時間クレアチニンクリアランス, 血清シスタチンC
■要旨
イヌリンクリアランス(Cin)は糸球体濾過量(GFR)測定のゴールドスタンダードとされているが,日本人小児における報告はなく,プロトコールも確立されていない.今回我々は,小児の体格や腎機能に合わせたプロトコールでCinの測定を行い,24時間クレアチニンクリアランス(24hCcr)との比較を行った.また,Cinに最も相関する因子を検討し,臨床的に有用なGFR推測式の作成を試みた.初期量として1%イヌリン注射液5 ml/kg(最大150 ml)を30分で点滴静注し,維持量(ml/時)として1.5×推定GFR(ml/分/1.73 m2)×体表面積(m2)/1.73(最大100 ml/時)という計算式で施行した.104例の小児患者(1.1〜19.6歳)でCin測定を行った.中央値は100.27 ml/分/1.73 m2(18.32〜260.32 ml/分/1.73 m2)であった.副作用及び合併症はなかった.24hCcrとの比較では,99例中78例(79%)で24hCcrはCinよりも高値をとった.成人での報告と同様,小児でも腎機能が悪い児ほど24hCcrは真のGFRよりも高値をとることが証明された.Cinと各種パラメーター(血清シスタチンC:CysC,血清β2ミクログロブリン,血清クレアチニン,Schwartz法による推定Ccr)との相関の検討では,CysCが最も良好な相関を認めた.回帰式はEstimated GFR=78.49×CysC−1.225(R2=0.786)となり,臨床的に有用であると考えられる.
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【原著】
■題名
1〜4歳児死亡小票全国調査からみた原因不明で死亡した児の特徴
■著者
埼玉医科大学総合医療センター小児科1),国立成育医療研究センター総合診療部2),大阪府立母子保健総合医療センター3),厚生労働科学研究「幼児死亡の分析と提言に関する研究班」4) 櫻井 淑男1)4) 阪井 裕一2)4) 藤村 正哲3)4)
■キーワード
小児, 死亡小票, 突然死, 剖検, 死亡時画像診断
■要旨
はじめに:
2005,2006年度の1〜4歳児死亡小票全国調査により全死亡2,245名の中で178名の患者が死亡原因不明であった.本調査では,死亡原因不明に至る要因を検討して今後の改善点を考察した.
対象と方法:
2005,2006年度1〜4歳児死亡小票全国調査の結果2,245名の死亡患者が認められた.この中で死因の種類が(1)不明,(2)不詳の死,(3)その他及び不詳の外因死,(4)病死及び自然死の中で乳児突然死症候群及び病名不明,原因不明の急性心不全と原因不明の窒息を加えた総計178名を対象とした.
結果:
1)1〜4歳児総死亡患者の8%(178名)は,死亡原因不明であった.
2)過半数が発症から死亡までの時間が不明であり,死亡までの時間が分かっているもののうち82%は6時間以内に死亡していた.
3)死亡場所は,自宅,その他,不明で約半数を占めており,中核病院(大学病院,小児病院)で死亡した者は18%に過ぎなかった.
4)剖検率は,42%であった.
考察:
1)死亡原因不明の要因として,(1)死亡までの時間が短く,死亡原因の検索ができない.(2)死亡場所が病院でないものが約半数を占めていて詳細な情報の獲得が困難である.(3)人的・物的資源の豊富な中核病院にほとんど搬送されていない.(4)剖検率が低い.などが推定された.
2)以上の問題点の解決策として(1)中核病院を中心とした小児心肺停止患者の搬送システムの再構築,(2)剖検率を上げるための法整備やAiなどの新たな技術の導入
以上の点を考慮して,これからの小児死亡原因診断の精度を上げる努力が必要と考える.
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【原著】
■題名
ヨウ化カリウムによる治療を長期間施行したバセドウ病の3例
■著者
東邦大学医療センター大森病院小児科1),東邦大学医療センター佐倉病院小児科2) 佐藤 真理1) 麻生 敬子1) 中山 智孝1) 松裏 裕行1) 小原 明1) 舘野 昭彦2) 佐地 勉1)
■キーワード
バセドウ病, ヨウ化カリウム, Wolff-Chaikoff効果
■要旨
過剰なヨードは甲状腺ホルモン産生抑制作用(Wolff-Chaikoff効果)を持つが効果が持続しない(エスケープ現象)ため,バセドウ病治療に長期間用いられることは一般的にはない.抗甲状腺剤による有害事象などのため,11歳,12歳,18歳のバセドウ病女子にヨウ化カリウム(potassium iodide:KI)治療を長期間施行した.メチマゾールとの併用治療を9か月間施行した1症例(KI最大投与量:300 mg),単独治療を3年5か月間施行した1症例(KI最大投与量:250 mg)では,甲状腺機能が正常化した.しかし単独治療を1年間施行した1症例(KI最大投与量:300 mg)では,甲状腺機能は完全には正常化しなかった.エスケープ現象は,ヨードがsodium/iodide symporter(NIS)mRNAの発現を抑制し,甲状腺内へのヨードの取り込みが減少して起こる.本3症例ではエスケープ現象と考えられる甲状腺ホルモン増加が認められた場合に,KI投与量を増量することで甲状腺機能をある程度長期的に抑制することが可能であった.KI増量で,受動的に甲状腺内に取り込まれるヨード量を維持し得たためと推察する.抗甲状腺剤による有害事象が認められた場合,KI投与は考慮されるべき治療法の1つと考える.
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【原著】
■題名
インフルエンザ菌b型髄膜炎治癒9か月後に同菌による骨髄炎を発症した1例
■著者
大阪医科大学小児科1),大阪労災病院小児科2) 島川 修一1) 川村 尚久2) 福井 美保1) 玉井 浩1)
■キーワード
インフルエンザ菌b型, 細菌性髄膜炎, 細菌性骨髄炎, 抗PRP抗体, Hib結合型ワクチン
■要旨
インフルエンザ菌b型(Hib)は全身感染症の起因菌で,Hibの莢膜多糖体(PRP)に対する抗原認識が幼児期早期まで弱いことが発症に起因している.2歳前後の児ではHib全身感染症罹患後も抗PRP抗体の上昇がない児が含まれていることが報告されているが,Hib全身感染症が反復することはまれである.今回われわれは1年間にHibによる全身感染症を反復した児を経験したので報告する.症例は1歳11か月の男児.発熱,活気低下を主訴に来院.入院時の血液,髄液培養からHibを検出,細菌性髄膜炎と診断.抗菌剤治療で後遺症なく治癒した.9か月後,膝の痛みと発熱が出現し来院.血液培養からHibが検出され,膝部単純レントゲンで骨透亮像が確認され,細菌性骨髄炎と診断し,抗菌剤治療を行った.児の細菌性骨髄炎発症時の抗PRP抗体価は<0.1 μg/ml,細菌性骨髄炎治療後の抗PRP抗体価は9.6 μg/mlと上昇していた.乳幼児期のため抗原認識が不十分で,初回感染時の抗PRP抗体の上昇が得られず,細菌性骨髄炎を発症したと考えた.本症例は抗PRP抗体の上昇がみられない児が,Hib全身感染症に再度罹患しうることを示している.さらにHib全身感染症罹患後にもHibワクチンを必要な児が存在することも意味しており,今後任意ワクチン接種の接種対象者を考える上で貴重な経験と思われた.
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【原著】
■題名
耳性水頭症の1例
■著者
黒部市民病院小児科1),富山大学医学部小児科2) 榊 久乃1)2) 伊吹 圭二郎1) 中林 玄一1) 篠崎 健太郎1) 金兼 弘和2) 宮脇 利男2)
■キーワード
耳性水頭症, 中耳炎, 乳様突起炎, S状静脈洞血栓症, 耐性菌
■要旨
中耳炎に頭痛,嘔吐,活気不良を呈した4歳男児例で,髄液圧の亢進ならびに頭部MRI/MRAにて横静脈洞,S状静脈洞の血栓を認め,耳性水頭症と診断した.抗菌薬投与に加え,乳突洞削開術,抗凝固療法等にて乳様突起炎は改善し,血栓も消失した.耐性菌の出現により中耳炎の治療が難治化している現在,耳性水頭症の存在を再認識する必要がある.
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【原著】
■題名
川崎病の診断基準を満たし低補体血症を呈したヒトパルボウイルスB19感染症の1例
■著者
昭和大学病院小児科 藤井 隆成 中村 俊紀 斉藤 多賀子 岩崎 順弥 板橋 家頭夫
■キーワード
ヒトパルボウイルスB19, 川崎病, 低補体血症, 補体古典経路, 血小板減少
■要旨
ヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)感染症は多彩な臨床症状や血液学的異常を呈することが知られており,まれに川崎病の診断基準をみたす症例が存在する.また,HPV-B19感染症の一部で低補体血症を認める症例が存在し,その原因として免疫複合体形成の関与が想定されているが詳細は不明である.今回,川崎病の診断基準をみたし,低補体血症を呈したHPV-B19感染症の2歳男児例を経験した.第5病日に自然経過で解熱し,第10病日に膜様落屑を認め,川崎病の診断基準を6項目みたした.HPV-B19 IgMの上昇からHPV-B19感染が示唆された.また著明な低補体血症を認め,補体成分活性の解析で典型的な古典経路活性のパターンを示した.本症例はHPV-B19感染により川崎病の診断基準をみたし,かつ低補体血症を認め免疫複合体形成による全身性の血管炎が生じていた可能性を推察させる.
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【原著】
■題名
Behçet病様症状が主体であった慢性活動性EBウイルス感染症の1例
■著者
宮崎大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野1),宮崎県立宮崎病院小児科2),高知大学医学部小児思春期医学3) 今村 秀明1) 水上 智之1) 下之段 秀美1) 布井 博幸1) 西口 俊裕2) 佐藤 哲也3) 前田 明彦3) 脇口 宏3)
■キーワード
慢性活動性EBウイルス感染症, Behçet病, 種痘様水疱症, 血球貪食組織球症
■要旨
症例は5歳の女児.下血を主訴に受診し,結腸内視鏡検査で多発性の小潰瘍を認めた.加えて口腔内アフタ・外陰部潰瘍等が出現し,HLA-B51陽性より不全型Behçet病と診断した.上記の病変はいずれも自然治癒したが,水疱性皮膚病変が繰り返し出現し,下肢に多発性の潰瘍を形成した.Behçet病に合併した皮膚病変と考え,ステロイドパルス療法,コルヒチン,シクロフォスファミドパルス療法,シクロスポリン,さらにサリドマイドも使用したが,手指の一部位の病変は切断を考慮するほどに進行した.初診時より1年9か月後に白血球減少・血小板減少が出現し,EBウイルス関連血球貪食組織球症(EBV-HLH)と考え精査を行ったところ,CD8+T細胞を中心としたEBV感染と,そのモノクローナルな増殖が確認された.遡って下血発症時の腸管組織ならびに皮膚病変の痂皮検体では,EBVの潜伏感染関連遺伝子であるEB-encoded small RNA1(EBER1)が陽性であった.発症時からの一連の症状は慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)と考えられた.
多発性消化管潰瘍,口腔内アフタ,外陰部潰瘍で発症しEBV関連抗体異常に乏しかったものの,難治性種痘様水疱症からEBV-HLH症状を呈し,CD8+T細胞を主体とするEBV感染を認めた稀なCAEBVの1例を報告する.
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【原著】
■題名
反復性腹痛を呈するHelicobacter pylori陽性の慢性萎縮性胃炎に対して除菌療法を試みた1例
■著者
佐賀県立病院好生館小児科 垣内 俊彦
■キーワード
反復性腹痛, 慢性萎縮性胃炎, H. pylori除菌療法, H. pylori除菌療法ガイドライン
■要旨
反復性腹痛(RAP)とは5歳以上の小児の10%程度に認められる症状である.原因として機能性疾患と器質性疾患とがあり,後者にはH. pylori感染による慢性萎縮性胃炎や消化性潰瘍などがある.RAPとH. pylori感染との関連性は確立してはいないが,H. pyloriの感染率が有意に高いとする報告や,本症例のように除菌療法にてRAPが改善するとの報告もある.
今回,RAPを呈するH. pylori陽性の慢性萎縮性胃炎の12歳の男児に除菌療法を試みた.一次除菌療法では除菌に至らず,腹部症状は継続した.二次除菌療法で除菌に成功し,それ以降腹部症状は認められなくなった.H. pyloriの除菌がRAPを改善したと考えられた.
また,慢性萎縮性胃炎の児では,除菌療法による胃粘膜の炎症の消失が萎縮の進展を予防することが推察され,H. pylori除菌療法は,RAPの有無にかかわらず有益なものと考えられた.
現在,日本小児栄養消化器肝臓学会のH. pylori除菌療法ガイドラインでは,慢性胃炎は除菌療法の相対的適応となっている.今後,小児の慢性胃炎でのH. pylori除菌療法の症例が蓄積され,適応拡大なども検討される必要があるかもしれない.
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【論策】
■題名
山梨県における小児救急体制「山梨システム」の解析
■著者
山梨県小児科医会1),市立甲府病院小児科2),山梨厚生病院小児科3),国立病院機構甲府病院小児科4),山梨県立中央病院小児科5),甲府共立病院小児科6),甲府市医師会7),富士吉田市医師会8),山梨大学医学部小児科9) 原 まどか7) 東田 耕輔9) 青山 香喜2) 池田 久剛3) 久富 幹則4) 駒井 孝行5) 永井 敬二6) 新津 直樹7) 矢内 淳1) 田中 均1) 石原 俊秀8) 小松 史俊1) 中澤 眞平9) 杉田 完爾9)
■キーワード
小児救急, 山梨県, 二次輪番, 病院小児科, 広域化
■要旨
山梨県は,人口的には88万人と47都道府県中第41位の小さな県であるが,開業医・勤務医・大学病院医師の大多数が参加する全県を対象とした小児初期救急センターが平成17年3月から,甲府市に開設された.準備委員会の開催から開設まで約2年7か月を要した.開設後3年10か月間を経て,年間約18,000名の受診があるが,大きなトラブルも無く,また1日の休みも無く診療を行っている.地域的,年齢的に可能な小児科医はほぼ全員が出務に協力している.また,開設後は休日・夜間における地域の二次病院勤務医の負担は著明に軽減した.平成20年10月に,富士吉田市にも小児初期救急センターが新設されて,順調に運営されている.
本県において全県的な小児救急システムの構築が可能となった理由は,地域の小児医療をよく理解している小児科医が草案(試案)を作成し,草案をたたき台として納得行くまで議論がなされたことによって小児科医の間で救急システムに対する総意と信頼関係が構築され,マンパワーの結集が可能となったためと考えられる.
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