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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:10.11.9)
第114巻 第10号/平成22年10月1日
Vol.114, No.10, October 2010
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総 説 |
1. |
小児のHelicobacter pylori感染症
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今野 武津子 1487 |
2. |
日本における小児がん登録の現状と将来:日本小児がん学会小児がん全数把握登録事業について
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池田 均 1497 |
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山崎 嘉久 1506 |
4. |
宮城県における女性小児科医の勤務環境を改善するための指針
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福與 なおみ,他 1516 |
第113回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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杉山 登志郎 1526 |
教育講演 |
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上松 一永,他 1534 |
原 著 |
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横山 忠史,他 1542 |
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田中 政幸,他 1550 |
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熊谷 健,他 1553 |
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河畑 孝佳,他 1557 |
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釜江 智佳子,他 1562 |
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宗村 純平,他 1567 |
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伊藤 怜司,他 1572 |
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白神 浩史,他 1577 |
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荷見 博樹,他 1582 |
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堀川 慎二郎,他 1588 |
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大森 意索,他 1592 |
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平田 善章,他 1598 |
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堀川 慎二郎,他 1603 |
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1608 |
日本小児科学会新生児委員会報告 |
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パンデミックインフルエンザA(H1N1)2009の新生児症例についての2009年度全国調査
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1625 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No.19 子守帯(スリング)内での心肺停止
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1629 |
日本小児腎臓病学会小児CKD対策小委員会報告 |
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1631 |
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2010年52巻5号10月号目次
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1636 |
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1637 |
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1643 |
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1644 |
【原著】
■題名
ロタウイルス性胃腸炎における尿細管機能障害に関する検討
■著者
珠洲市総合病院小児科1),金沢大学医薬保健研究域医学系血管発生発達病態学(小児科)2),金沢医療センター小児科3),富山県立中央病院小児科4) 横山 忠史1)2)3) 清水 正樹2) 土市 信之3) 長沖 優子3) 水野 和徳3) 井上 巳香3) 前馬 秀昭3) 酒詰 忍3) 太田 和秀3) 藤木 俊寛4) 田村 賢太郎4) 中山 祐子4) 東山 弘幸4) 藤田 修平4) 市村 昇悦4) 二谷 武4) 五十嵐 登4) 畑崎 喜芳4) 谷内江 昭宏2)
■キーワード
ロタウイルス, 尿路結石, 尿中β2ミクログロブリン, glucose transporter 9
■要旨
目的
ロタウイルス(Rotavirus:RV)胃腸炎は,しばしば重篤な脱水によって腎前性腎不全を合併することが知られている.しかし近年,RV胃腸炎で両側の尿路結石を形成した結果,腎後性腎不全に陥った症例が報告されるようになった.また,RVはウイルス血症を来していることが報告されているが,特に有熱時に血中ウイルス抗原量が多いことが知られている.今回,我々はRV胃腸炎患者の一部に蛋白尿が陽性である症例が存在し,その尿蛋白はほとんど尿中β2ミクログロブリン(β2microglobulin:β2MG)であることを見出した.このことから,RVは脱水やアシドーシスによる影響以外に,直接的な尿細管機能障害を引き起こすことで腎前性・腎後性腎不全を呈しやすい環境に陥るのではないかと考え,検討を行った.
対象および方法
RV胃腸炎および非RV胃腸炎患者を対象とした.初診時第一尿を採取し,尿中β2MG,尿中N-アセチル-β-D-グルコサミニナーゼ(N-acetyl-β-glucosaminidase:NAG)を測定した.これら尿中β2MG, NAGについて原因ウイルスによる相違や,臨床所見との相関関係について比較検討した.
結果
尿中β2MGについて,RV群では非RV群に比較して尿中β2MGが高値(1,000 μg/g・Cr以上)の症例が多かった.更にRV群での検討では,有熱性の患者は無熱性の患者に比較して有意に尿中β2MGが高値であった.
考察
RVは非RVとは異なり,RV特異的に腎尿細管機能障害を引き起こす可能性が示唆された.また,RV胃腸炎患者のうち有熱性の患者で尿中β2MGが高値であったことから,RVはウイルス血症の後に腎尿細管細胞に何らかの形で影響を及ぼしている可能性が推察された.従って,RVは他のウイルス性腸炎と異なり,脱水やアシドーシスの影響のみならず,直接的な腎尿細管機能障害を引き起こすことで尿路結石の形成が誘発される可能性があるものと考えられた.
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【原著】
■題名
胃腸炎関連けいれんに対するPhenytoin少量単回点滴療法
■著者
国立病院機構滋賀病院小児科1),国立病院機構舞鶴医療センター小児科2),京都府立医科大学小児科3) 田中 政幸1) 杉野 由里子1) 短田 浩一2) 森本 昌史3)
■キーワード
胃腸炎関連けいれん, Phenytoin, Carbamazepine, 電位依存性Na+チャネル, ロタウイルス
■要旨
胃腸炎関連けいれん(CwG)に対するPhenytoin(PHT)少量単回点滴治療の有効性を検討した.初診時の臨床症状からCwGを疑い,静脈ルート確保時にけいれん発作が再発した症例を同疾患の可能性が極めて高いと判断した.それらの症例にPHT 10 mg/kgを目安に点滴投与した.その後は抗けいれん剤を投与せずに入院経過観察した.対象は1歳3か月から2歳8か月,男児3名,女児3名の計6症例.PHT点滴投与までのけいれん発作回数は2から10回で,PHT平均投与量は11.8 mg/kgであった.PHT投与後は全症例でけいれん発作再発は認めなかった.PHT点滴投与に伴う副反応は認めなかった.PHT少量単回点滴投与はCwGに対する有効な治療法となる可能性がある.
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【原著】
■題名
過去11年間に当院に入院した新生児期発症危急性先天性心疾患の検討
■著者
和歌山県立医科大学附属病院総合周産期母子医療センターNICU1),和歌山県立医科大学小児科2) 熊谷 健1) 樋口 隆造1) 平松 知佐子1) 杉本 卓也1) 奥谷 貴弘1) 武内 崇2) 鈴木 啓之2) 吉川 徳茂2)
■キーワード
critical congenital heart disease, 新生児, 胎児診断
■要旨
当院は和歌山県内で先天性心疾患の外科治療を行っている唯一の施設で,新生児期に発症した先天性心疾患の大多数が当院に入院していると思われる.1996年から2006年までの11年間に新生児期に当院に入院し,初回入院中に外科治療またはカテーテル治療を必要とした危急性先天性心疾患児110人について発見契機,入院時期,短期予後について調べた.出生前診断されたのが6例,産科入院中に発見されたのが91人,退院後に家人が異常に気付いたのが13人だった.出生後から入院までに要した時間は,非チアノーゼ群は平均141時間,チアノーゼ群は平均21時間だった.死亡退院したのは22例(20%)だった.ショック状態で入院したのが11人で内5人が死亡退院した.この率はショック無しで入院し死亡退院した17人より有意に(p=0.04)高かった.
出生前診断の利点を数字上で表すことはできなかったが,より早期の安定した状態で異常を発見すべき点から胎児心エコーを和歌山県全域に普及させていく必要があると考えられた.
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【原著】
■題名
膠原病類似の血液所見を呈したマイコプラズマ感染による結節性紅斑の1例
■著者
石川県立中央病院いしかわ母子総合医療センター小児内科 河畑 孝佳 中田 裕也 稲手 絵里 木村 学 千葉 茜 北野 裕之 西尾 夏人 上野 康尚 堀田 成紀 久保 実
■キーワード
マイコプラズマ感染症, 結節性紅斑, 膠原病, III型アレルギー
■要旨
膠原病類似の血液所見を呈したマイコプラズマ感染による結節性紅斑の6歳男児例を経験した.発熱,左足関節の腫脹・疼痛,両側下肢の硬結のある有痛性紅斑を主訴に入院.紅斑の生検組織は,血管炎を伴わないseptal panniculitisで,結節性紅斑と診断された.胸部X線では肺炎像はなく,血液検査では,マイコプラズマ抗体価が80倍(PA法)で,マイコプラズマ感染による結節性紅斑を疑い,クラリスロマイシンを開始したところ解熱し,紅斑も消退し,関節炎所見も軽快した.発症約1か月後の抗体価は320倍(PA法)と上昇しており,マイコプラズマ感染による結節性紅斑・足関節炎と確定診断した.入院時の血液検査では,膠質反応の上昇,免疫グロブリン(IgG,IgM)の上昇がみられ,膠原病類似の所見を呈しており,III型アレルギーが関与するSLEやリウマチ性疾患の可能性も考慮されたが,ss-DNA抗体は陰性であった.
マイコプラズマ感染による結節性紅斑の機序として,マイコプラズマ抗原とそれに対する抗体によって生じる免疫複合体の血管壁沈着で起こるIII型アレルギー反応が考えられている.本症例は,発熱,左足関節の腫脹・疼痛が見られ,局所のみならず全身的にもIII型アレルギー反応を引き起こしたことが膠原病類似の血液所見を呈したと推定され,興味ある症例と考えられたので報告する.
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【原著】
■題名
Fontan術後9年目に脳膿瘍,肝硬変,肝肺症候群を合併した1例
■著者
防衛医科大学校小児科 釜江 智佳子 金井 貴志 石渡 隆寛 松本 浩 西山 光則 若松 太 浅野 優 野々山 恵章
■キーワード
Fontan術, 脳膿瘍, 肝硬変, 肺動静脈ろう, 肝肺症候群
■要旨
Fontan術後遠隔期の合併症として,肝硬変,肺動静脈ろう,肝肺症候群についての報告は少ない.
症例は10歳男児.出生時,三尖弁閉鎖症(Ib)と診断し,1歳2か月でFontan術を施行した.6歳時の心臓カテーテル検査結果は良好であり,年1回の定期検診で経過観察していた.術後9年目に多発性脳膿瘍を発症し,多剤の抗菌剤による保存的治療で軽快した.
肝機能障害,高アンモニア血症,チアノーゼを認め,腹部超音波検査,造影CT,肝生検にて,結節性過形成を伴う肝硬変と診断した.
心臓カテーテル検査では,中心静脈圧,肺動脈圧は12 mmHgで,有意な心房間短絡や静脈間短絡を認めず,肺静脈の酸素飽和度の低下を確認した.コントラストエコー検査の陽性所見もあわせ肺動静脈ろうと診断した.肝硬変を合併しており,肝肺症候群と考えた.
Fontan術後遠隔期の合併症として,肝硬変は重要と考えられた.治療が困難でかつ予後不良な肝肺症候群を合併する可能性もあり,Fontan術後の肝硬変の発生頻度,危険因子の検討が必要と考えられた.
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【原著】
■題名
アンジオテンシンII受容体拮抗薬を含めた慢性心不全治療が奏効した拡張型心筋症の1小児例
■著者
滋賀医科大学小児科 宗村 純平 藤野 英俊 米田 真紀子 中川 雅生
■キーワード
拡張型心筋症, アンジオテンシン変換酵素阻害薬, アンジオテンシンII受容体拮抗薬, ホスホジエステラーゼ阻害薬, β遮断薬
■要旨
アンジオテンシンII受容体拮抗薬を含めた抗心不全治療により,長期カテコラミン投与から離脱し得た拡張型心筋症の女児例を報告する.患児は1歳6か月の女児.突然眼瞼浮腫,尿量低下,活動性低下が出現した.胸部レントゲン写真で著明な心拡大を認め,超音波断層心エコー検査にて著明な左室拡大と心機能低下を認めた.拡張型心筋症と診断し,利尿薬,ホスホジエステラーゼIII阻害薬,カテコラミンの静脈内投与と酸素投与を開始した.これにより浮腫,多呼吸などの心不全症状の改善を認めたものの,心機能は改善せず,βブロッカー,アンジオテンシン変換酵素阻害薬の追加投与を行った.しかし,カテコラミン投与から離脱することができなかったため,入院151日目にアンジオテンシンII受容体拮抗薬の投与を追加した.アンジオテンシンII受容体拮抗薬の開始後心機能は明らかな改善を認め,投与開始から70日目にカテコラミンの投与を中止することができた.小児の難治性拡張型心筋症に伴う心不全に対し,アンジオテンシンII受容体拮抗薬を含めた慢性心不全治療は,有用な治療法になりうると考えられた.
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【原著】
■題名
複雑心奇形を合併したPeters'-Plus症候群の2例
■著者
埼玉県立小児医療センター循環器科1),同 遺伝科2) 伊藤 怜司1) 飯島 正紀1) 菅本 健司1) 菱谷 隆1) 星野 健司1) 小川 潔1) 清水 健司2) 大橋 博文2)
■キーワード
Peters'-Plus症候群, 先天性心疾患, 新生児, 前眼部形成異常
■要旨
Peters'-Plus症候群は世界で50例程度の稀な症候群である.眼前部形成異常,特徴的顔貌,短肢型小人症,発達遅滞を特徴とし,約3割に心奇形を合併するが軽症である事が多い.新生児期に複雑心奇形を合併した本症候群の2症例を経験したので報告した.
症例(1)は日齢2の女児,多呼吸,チアノーゼを主訴に入院した.左心低形成症候群と診断しLipo-PGE1,低酸素療法で加療した.日齢11,Ductal shockに至り蘇生を行ったが反応せず死亡した.症例(2)は日齢0の女児,心雑音,チアノーゼを主訴に入院した.総動脈幹遺残症,肺動脈低形成と診断し2か月時にBlalock-Taussigシャント手術を施行し経過観察中である.心疾患が重症である点を除けば両症例の臨床像は本症候群に典型的と考えた.しかし,本症の責任遺伝子と報告されたB3GALTLに変異は検出されず,本症の遺伝的異質性が示唆された.
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【原著】
■題名
経管栄養を必要とした心因性嚥下障害の1例
■著者
独立行政法人国立病院機構岡山医療センター小児科1),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学2) 白神 浩史1) 塚原 紘平1) 森 茂弘1) 福原 信一1) 今井 憲1) 森田 啓督1) 宮島 悠子1) 小倉 和郎1) 木村 健秀1) 清水 順也1) 古城 真秀子1) 久保 俊英1) 岡田 あゆみ2)
■キーワード
心因性嚥下障害, 摂食障害, 経管栄養, 中心静脈栄養
■要旨
心因性嚥下障害は,一般に予後良好とされているが,治療法や経過については未だ報告が少ない.今回我々は,咽頭炎の後,全く経口摂取ができなくなり精神症状も出現した5歳女児例を経験した.末梢輸液で自然回復を待ったが改善しないため,約50日後に経管栄養を開始した所,精神症状も改善し,約5か月の経過でほぼ普通に経口摂取できる様になった.
本症の治療において,全く経口摂取ができない様な重症例では,栄養状態が悪化し精神症状の出現する症例もあるので,適切な時期を選んで経管栄養を開始する事が,早期の回復につながると思われたので報告した.
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【原著】
■題名
脳幹梗塞を発症した肺動静脈瘻を伴う遺伝性出血性毛細血管拡張症の1例
■著者
東京都立広尾病院小児科1),日本大学医学部附属板橋病院小児科2) 荷見 博樹1) 原 光彦1) 中空 真二郎1) 山本 康仁1) 藤田 之彦2)
■キーワード
遺伝性出血性毛細血管拡張症, 脳幹梗塞, 脳梗塞, 肺動静脈瘻, 小児
■要旨
我々は脳幹梗塞を契機に遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia,以下HHTと略)と診断された男児例を経験した.我々が渉猟した限り,本邦では脳幹梗塞を合併したHHTの小児の報告例はなく,小児脳梗塞の鑑別診断上重要な症例と考え報告する.症例は12歳男児.反復する鼻出血の既往あり.母親に肺動静脈瘻あり.突然の頭痛,めまい,構音障害および急激に進行する右片麻痺で発症し,頭部MRIにて塞栓性脳幹梗塞と診断した.胸部3D-CT angiographyで左肺動静脈瘻を認め,既往歴,家族歴をふまえてHHTと診断した.内科的治療で軽快し,発症35日目にリハビリテーションのために他院へ転院した.
HHT患者は小児期から鼻出血を繰り返すが,その他の臨床症状は思春期以降に明らかになることが多い.遺伝性疾患である本症を早期診断するためには詳細な家族歴が非常に重要である.本症例では母親に肺動静脈瘻があるもののHHTとは診断されておらず,患児の発症を契機としてHHT家系と診断された.家族歴からHHTが疑われていれば患児の脳幹梗塞の発症を予防出来た可能性もあり,小児科領域での本症に対する認知を進める必要がある.
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【原著】
■題名
造影CTによる3次元再構築血管画像により診断した線維筋形成不全の1乳児例
■著者
富山大学医学部小児科学 堀川 慎二郎 田村 賢太郎 影山 隆司 渡辺 一洋 本郷 和久 市田 蕗子 宮脇 利男
■キーワード
造影CT, 3次元再構築血管画像, 線維筋形成不全, 頭頸部病変, 脳虚血発作
■要旨
症例は10か月女児.不機嫌と嘔吐にて発症し腎血管性高血圧と診断され内服降圧薬で治療を受けていた.その後けいれん部分発作・片麻痺を発症し,頭部MRIにて多発性脳梗塞を認めた.全身の血管病変を検索するため施行した造影CTによる3次元再構築血管画像(3D-CTA)にて,両側内頸動脈のstring of beads signと右中大脳動脈のtubular stenosisを認め,線維筋形成不全(FMD)と診断された.
乳幼児における頭頸部血管系の画像診断法の選択において3D-CTAは非常に有用であると思われた.乳児期発症のFMDは極めて稀であるが,乳児期発症の脳虚血疾患の鑑別として本疾患の可能性も考慮することが必要と考えられた.
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【原著】
■題名
HRAS変異が同定されたCostello症候群の1例
■著者
都立墨東病院周産期センター新生児科1),国立病院機構岡山医療センター新生児科2) 大森 意索1) 清水 光政1) 渡辺 とよ子1) 山邊 陽子2)
■キーワード
Costello症候群, 分子遺伝学的解析, 超低出生体重児, 遺伝子型―表現型相関, 肥大型心筋症, 乳頭腫
■要旨
Costello症候群は特徴的な顔貌,心合併症,皮膚異常,成長障害などを伴う先天奇形症候群であり,HRAS遺伝子の変異に起因する.今回,超低出生体重児(在胎23週,出生体重766 g,女児)で出生したCostello症候群でまれなHRAS変異(G12C)例を経験したので報告する.出生時にはCostello症候群の身体的特徴を認めなかったが,生後1か月以降に不整脈,心筋症が認められ,3か月以降に特徴的な顔貌と皮膚所見が顕在化した.患児は超低出生体重児として治療されたが,慢性肺疾患と喉頭軟化症のため長期間の人工呼吸管理を要した.肥大型心筋症の治療に苦慮し2剤(プロプラノロール,シベンゾリン)併用にて治療を行った.また皮膚(乳頭腫)の管理も難渋したがプラバスタチン投与を試み,臨床的な効果を認めた.2歳過ぎに人工換気から離脱可能となり退院した.Costello症候群におけるHRAS変異は8割がG12S変異であり,G12C変異の報告は現在まで3例のみである.このためこの遺伝子型の臨床的特徴は不明で今後の解明が望まれる.本症例の経験からG12C変異は,Costello症候群の中で重症型でないかと考えられた.
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【原著】
■題名
広角眼底カメラが乳幼児揺さぶられ症候群の診断に有用であった頭蓋内出血の2例
■著者
長野県立こども病院新生児科1),同 麻酔集中治療科2) 平田 善章1) 広間 武彦1) 中村 友彦1) 椎間 優子2) 津田 雅世2)
■キーワード
乳幼児揺さぶられ症候群, 虐待, 眼底カメラ, 眼底出血
■要旨
広角眼底カメラRetCam120での眼底撮影が乳幼児揺さぶられ症候群(以下SBS)の診断確定に有用であった2症例を報告する.2例とも頭蓋内出血を契機に当院に紹介入院となった乳児であった.病歴,外表所見,全身骨レントゲンから虐待の確証は得られなかった.両児とも入院から1週間以内にRetCam120で眼底撮影を行った.これによりSBSと診断した.
SBSは外表・レントゲンの異常を伴わないことも多く,診断に苦慮する場合が少なくない.このような状況の中で,眼底の所見は診断に非常に重要なものである.また,意識のある乳児の眼底を診察することは容易ではなく,眼科専門でない医師の診察では出血所見を見逃されることも少なくない.RetCam120を用いての眼底撮影を行うことにより,眼底の鮮明な画像を得ることができた.眼底写真を撮ることにより,眼科医でなくても正確に眼底所見を観察でき,SBSの見逃し防止につながると考えられた.
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【原著】
■題名
膵分泌性トリプシンインヒビター遺伝子変異を認めた家族性膵炎の1例
■著者
富山大学医学部小児科1),久美愛厚生病院小児科2) 堀川 慎二郎1) 板澤 寿子1) 木曽原 悟2) 金兼 弘和1) 宮脇 利男1)
■キーワード
家族性膵炎, 膵分泌性トリプシンインヒビター, SPINK1(serine protease inhibitor, Kazal type 1)
■要旨
症例は2歳7か月女児.1歳6か月時に急性膵炎の既往あり.腹痛,食欲不振,嘔吐にて紹介医を受診し,血液検査,画像検査から急性膵炎の再発と診断し,入院となった.Magnetic resonance cholangio-pancreatography,Drip infusion cholangiographic-computed tomographyで膵胆管系に解剖学的異常を認めず,母が13歳時に急性膵炎で入院歴があったことから家族性膵炎が疑われた.遺伝子解析の結果,患児および母に膵分泌性トリプシンインヒビターであるserine protease inhibitor,Kazal type 1(SPINK1)遺伝子のN34S変異を認めた.保存的治療にて症状は一旦軽快したが,脂肪制限食からの離脱が困難であり,現在も入退院を繰り返している.近年,カチオニックトリプシノーゲンであるprotease serine1(PRSS1)遺伝子の変異を有する遺伝性膵炎の報告が小児科領域でも散見されるが,SPINK1遺伝子変異を有する小児膵炎の報告例は国内では稀である.原因不明の繰り返す膵炎の診療に当たっては,家族性・遺伝性膵炎の可能性を念頭におく必要があり,診断には遺伝子検査が有用である.
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