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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:10.9.17)
第114巻 第9号/平成22年9月1日
Vol.114, No.9, September 2010
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総 説 |
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余田 篤 1329 |
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市山 高志 1341 |
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原 正則 1348 |
4. |
小児プライマリーケアにおける抗菌薬の適正使用について―プライマリーケアの治療を考え直そう―
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西村 龍夫 1357 |
第113回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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子育て支援から始める軽度発達障害の臨床―ペアレントトレーニングを中心に
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横山 浩之 1367 |
教育講演 |
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田島 敏広,他 1373 |
教育講演 |
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水口 雅 1381 |
原 著 |
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浅井 洋子,他 1389 |
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田島 剛,他 1394 |
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近藤 信哉,他 1399 |
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小池 泰敬,他 1406 |
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廣間 武彦,他 1412 |
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植田 紀美子,他 1419 |
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中村 文人,他 1427 |
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横山 孝二,他 1431 |
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森 達夫,他 1436 |
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佐藤 和生,他 1442 |
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松下 博亮,他 1447 |
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村山 晶俊,他 1452 |
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1456 |
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1478 |
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1479 |
平成22年度財団法人小児医学研究振興財団 |
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イーライリリー海外留学フェローシップの募集について
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1485 |
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1486 |
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1486 |
【原著】
■題名
入院患者における菌血症の臨床的検討
■著者
旭川厚生病院小児科 浅井 洋子 石羽澤 映美 五十嵐 加弥乃 土田 悦司 野原 史勝 梶野 真弓 高瀬 雅史 白井 勝 坂田 宏 沖 潤一
■キーワード
菌血症, Haemophilus influenzae, Streptococcus pneumoniae, 耐性菌, 7価肺炎球菌ワクチン, Hibワクチン
■要旨
2003年1月から2008年12月までの6年間に旭川厚生病院小児科に入院した10,109例のうち血液培養陽性となった126例中,臨床経過および血液検査所見から混入菌と診断された58例を除く68例を菌血症とし,最高体温,血液培養採取までの日数,検査所見,診断名,原因菌とその耐性化,血清型について後方視的に検討した.発症年齢は,日齢7から14歳6か月(中央値1.5歳)であった.原因菌は,Streptococcus pneumoniaeが37例(54%),次いでHaemophilus influenzaeが15例(22%)であり,両菌で76%を占めた.S. pneumoniaeの耐性化については,penicillin intermediate-resistant S. pneumoniae(PISP)とpenicillin resistant S. pneumoniae(PRSP)を合わせて89%を占めた.H. influenzaeの血清型はすべてtype bであり47%に耐性化が見られた.血清型から判断すると7価肺炎球菌ワクチン(PCV-7)はS. pneumoniaeによる菌血症の70%を,13価肺炎球菌ワクチン(PCV-13)は78%をカバーする.また,インフルエンザ菌b型ワクチン(Hibワクチン)はH. influenzaeによる菌血症のすべてをカバーする.ワクチンによる菌交代を考慮しなければPCV-7とHibワクチンによって菌血症の約6割を予防することができると考えられ,早期のワクチン導入・定期接種化が望まれる.
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【原著】
■題名
市中肺炎患児における外来抗菌薬静注療法選択可能症例の調査
■著者
博慈会記念総合病院小児科1),山梨厚生病院小児科2),山梨赤十字病院小児科3),東京慈恵会医科大学付属柏病院小児科4),石心会狭山病院小児科5) 田島 剛1) 小林 浩司2) 佐野 友昭3) 和田 靖之4) 豊永 義清5)
■キーワード
外来抗菌薬静注療法(OPAT), 小児市中肺炎, 小児呼吸器感染症ガイドライン2007, セフトリアキソン, 医療経済
■要旨
2007年1月〜3月の3か月間に入院治療された小児細菌性市中肺炎の症例145例を対象として後方視的に検討し,外来抗菌薬静注療法(OPAT)による治療が可能と予想される症例の割合を調査した.「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2007」の重症度判定を用いて中等症以下と判定された症例群において,年齢,脱水症状の有無,摂食の可否,基礎疾患の有無によってOPAT選択可能症例を選別した.ガイドラインによる判定では145例中45例が中等症以下であった.外来治療には不適と考えられる経口摂取不良症例などを除くと,17例が最終的にOPAT選択可能症例と分類された.入院治療された市中肺炎の10〜20%が外来で治療できる可能性があり,このことは患者の満足度の向上と医療費の抑制に貢献できると考えられた.ガイドラインによる判定と主治医の印象との間で重症度の判定に乖離が認められたが,呼吸数の測定法,判定基準が原因ではないかと推測された.
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【原著】
■題名
硬結を用いたツベルクリン反応陽性判定基準
■著者
都立清瀬小児病院結核科1),独立行政法人国立病院機構宇都宮病院小児科2) 近藤 信哉1) 影山 さち子2)
■キーワード
小児結核, ツベルクリン反応, 硬結, カット・オフ値, 遅延型過敏性
■要旨
ツベルクリン反応(ツ反)は理論的に硬結に基づいて判定されるべきであることなどから,2005年の結核予防法改正の機会に従来のツ反陽性判定基準は削除された.従って,小児における硬結を用いた新たなツ反陽性判定基準の設定が求められる.今回,小児における陽性カット・オフ値を暫定的に設定し,その感度,特異度を検討した.1993年〜2005年に来院した接触者検診受診児,発病児を合わせた965例のツ反硬結分布から,陽性カット・オフ暫定値はBCG接種と無関係に3〜5 mmと考えられた.そして,結核発病小児293例のツ反硬結分布から,カット・オフ値を3 mm,5 mmのいずれに設定しても感度は94%であった.また,結核菌感染が考え難い,上述965例とは別の乳児127例における特異度は陽性カット・オフ値を3 mm,5 mmのいずれに設定しても100%であった.これらの結果はBCG接種と無関係に,硬結5 mmが現時点での日本の感染性結核患者と接触した小児,結核発病が疑われる小児においてツ反陽性カット・オフ値の候補の一つとなりうることを示唆する.
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【原著】
■題名
脳室内出血予防インドメタシン投与が超低出生体重児に与える影響の検討
■著者
自治医科大学小児科 小池 泰敬 高橋 尚人 川又 竜 矢田 ゆかり 本間 洋子 桃井 真里子
■キーワード
超低出生体重児, 脳室内出血, インドメタシン, 予防投与
■要旨
静注用インドメタシン投与により早産児の脳室内出血(IVH)発症が抑制されることが報告されている.同薬剤は副作用の頻度の高い薬剤であり,その投与が超低出生体重児の急性期の病態に与える影響について検討した.2006年9月から2007年4月に,NICUに入院した在胎27週未満の超低出生体重児11例を予防投与群とした.その平均在胎週数は25.0±1.0週,平均出生体重は724±103 g.予防投与群には,インドメタシン0.1 mg/kg/回を24時間ごとに3回投与した.2005年1月から2006年8月に入院し,予防投与を行わなかった在胎27週未満の超低出生体重児21例を対照群とし,診療録を後方視的に解析した.IVHの頻度は予防投与群では発症は無く,対照群8例.症候性動脈管開存症(PDA)の発症頻度も予防投与群で有意に低く(p=0.04),発症日齢は予防投与群15.2±4.3日,対照群3.1±3.8日で,予防投与群で有意に遅かった(p=0.0004).生後1週間の血清クレアチニン値,血糖値は両群間で差はなく,時間尿量はむしろ予防投与群で日齢1,2,4,6で有意に多かった.生後早期のインドメタシン投与は,IVH予防に効果があり,腎血流低下や乏尿,低血糖などをきたさずに行える予防法と考えられた.
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【原著】
■題名
新生児・妊産婦搬送受け入れ不能根絶のための新生児医療地域連携への取り組み
■著者
長野県立こども病院総合周産期母子医療センター新生児科 廣間 武彦 中村 友彦
■キーワード
新生児集中治療室, 極低出生体重児, 妊産婦搬送, 新生児搬送, バックトランスファー
■要旨
長野県立こども病院は長野県唯一の総合周産期母子医療センターで,長野県内出生の超低出生体重児の約7割,重症先天性心疾患児,手術を要する外科や脳外科疾患児のすべてを24時間365日受け入れている.当院新生児科では「重症児または急性期は当院で,その後の急性期以降はバックトランスファーによる転院によって地域の周産期医療機関・小児医療機関で管理」という連携システムを長野県内で構築し,積極的に地域病院へのバックトランスファーをおこなってきた.その結果,当院新生児科の極低出生体重児の年間入院数は増加傾向にあるが,平均在院日数は減少し,時に100%以上の利用率であった新生児病床の運用状況は改善している.特記すべきは極低出生体重児の転院率で2008年度は81%であった.またバックトランスファー後のフォローアップ体制も整備され,2005年度当院に入院した極低出生体重児のフォローアップ率は94.2%であった.
現在国公私立大学病院を中心にNICUベッド数の増加整備がおこなわれているが,全国的に慢性的なNICUベッド数不足問題の早急な改善策が必要と思われる.長野県のケースが全ての都道府県に適応できるかは不明だが,効率的なNICUベッド稼働システムを県単位もしくは総合周産期母子医療センターを中心に構築する必要性があると考えられる.
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【原著】
■題名
精神健康調査票(短縮版)を用いた小児外来患者家族の精神健康状態の検討
■著者
大阪府立母子保健総合医療センター企画調査部1),大阪大学大学院人間科学研究科2),大阪府立母子保健総合医療センター新生児科3) 植田 紀美子1) Fifi Ngoma Mbumba2) 森 臨太郎1) 中村 安秀2) 北島 博之3) 岡本 伸彦1)
■キーワード
精神健康, 精神健康調査票, 患者家族, 小児病院, オッズ比
■要旨
【目的】小児専門病院の患者家族の精神健康状態を日本版精神健康調査票(The General Health Questionnaire以下「GHQ」と略)の短縮版(以下「GHQ28」と略)を用いて把握し,精神健康状態に影響する因子を分析する.【方法】2009年1月の4日間,大阪府立母子保健総合医療センター小児外来患者家族に対して,無記名自記式質問紙を用いて調査した.ノンパラメトリック法で患者家族のGHQ28と各因子との関連性を,ロジスティック回帰分析で患者家族の精神健康が悪いリスク因子を分析した.有意水準は両側p<0.05とした.【結果】309人を解析対象とした.患者家族の47.6%が精神健康が悪い集団であった.療育手帳または身体障害者手帳の保有者は保有していない者より,育児負担感がある者はない者より,配偶者または両親,近隣または友人の協力がない者はある者よりGHQ28が有意に高かった.地域サポーターの協力については,ない者がある者よりもGHQ28が有意に高かった.患者家族の精神健康が悪いリスク因子は,育児負担感と苦しい主観的経済状況であった.子どもの年齢を7歳以上に絞ったロジスティック回帰分析では,それらに加え,月1回以上のセンター受診と配偶者または両親の協力なしがリスク因子であった.【結論】患者家族は精神健康が悪く,早期治療を要する方も含まれ,家族支援の必要性が明らかとなった.
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【原著】
■題名
日齢2に発症したペニシリン耐性肺炎球菌による細菌性髄膜炎の1例
■著者
総合病院国保旭中央病院新生児科1),同 小児科2) 中村 文人1) 川戸 仁1) 戸石 悟司1) 仙田 昌義1) 藤森 健1) 小暮 裕之2) 荒畑 幸絵2) 小林 宏伸2) 松本 弘2) 北澤 克彦2) 本多 昭仁2)
■キーワード
ペニシリン耐性肺炎球菌, 新生児, 細菌性髄膜炎, 敗血症, パニペネム/ベタミプロン
■要旨
経産道感染が示唆され日齢2に発症したペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)による髄膜炎/敗血症の症例を経験した.患児は妊娠38週,6時間の前期破水後経腟分娩で出生した男児.出生37時間後より発熱し加療目的で入院した.髄膜炎量のアンピシリン(ABPC)+セフォタキシム(CTX)で治療を開始したが,髄液グラム染色とラテックス凝集反応から肺炎球菌が起因菌と推定され直ちに抗菌薬をパニペネム/ベタミプロン(PAPM/BP)80 mg/kg/日に変更した.入院時すでに急性腎不全,DICを認め,入院後急激に呼吸不全と敗血症性ショックが進行したが高頻度振動換気による人工呼吸,アドレナリン持続静注などの集中治療に加えガンマグロブリン製剤,G-CSF製剤などを使用し救命された.12か月時点で両側高度難聴と中等度の精神運動発達遅滞を認めている.
本症例で分離された肺炎球菌はABPCとCTXに対し高い最小発育阻止濃度を示し(それぞれ2.0,1.0 μg/ml),感受性判明前にPAPM/BPを開始したことが救命の一因と考えられた.新生児においてPAPM/BPの至適投与方法や安全性は確立していないが,PRSPによる髄膜炎/敗血症ではPAPM/BPの使用を考慮しても良いと思われる.
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【原著】
■題名
RSウイルス感染に合併した重症間質性肺炎の2例
■著者
自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児科 横山 孝二 森本 哲 四元 茂 高橋 尚人 森本 康子 村上 智明 白石 裕比湖 桃井 真里子
■キーワード
RSウイルス, サイトカイン, 間質性肺炎, ステロイドパルス療法, Down症候群
■要旨
Respiratory syncytial Virus(RSウイルス)は乳児の下気道感染症の原因となり,ときに急速に呼吸不全,低酸素血症をきたすことがある.今回我々はRSウイルスによる致死的な間質性肺炎をきたした2症例を経験した.症例1は先天性心疾患術後の9か月のDown症の児で,症例2は2か月の児で基礎疾患を有さなかった.2例とも吸入酸素濃度100%の人工呼吸管理を要し,ステロイドパルス療法を施行した.症例1は呼吸不全により死亡したが,症例2は救命できた.2例とも血清の炎症性サイトカイン(IL-6,IL-8,TNF-α,IFN-γ),及びAST,LDH,フェリチン,尿中β2-microgloblin(β2-MG)は高値であった.それらは,死亡した症例1でより高い値を示しパルス療法によっても低下しなかった.AST,LDH値の推移が病勢の把握に有用であった.
早期のステロイドパルス療法によって,このような症例を救命できる可能性があると考えられた.
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【原著】
■題名
日齢9に難治性痙攣発作にて発症した限局性皮質異形成の1例
■著者
高松赤十字病院小児科 森 達夫 関口 隆憲 岡村 和美 清水 真樹 高橋 朋子 幸山 洋子 坂口 善市 大原 克明
■キーワード
限局性皮質異形成, 難治性痙攣, 異形成部切除術, 精神運動発達良好
■要旨
日齢9より両上下肢の間代性痙攣が出現し,日齢14に当科を受診した.左側半身に軽度不全麻痺があり,MRIで右前頭葉深部に皮質と等信号の腫瘤像を認めたため,限局性皮質異形成と診断した.痙攣発作に対してフェノバルビタール,ゾニサミド,バルプロ酸ナトリウムはいずれも無効であった.日齢58に皮質異形成部切除術を施行した.その後痙攣発作は消失し,生後1歳2か月まで明らかな精神運動発達の遅れを認めていない.限局性皮質異形成は,難治性てんかんにより神経学的後遺症を認めることが多いが,早期の摘出術の実施が良好な精神運動発達につながった.
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【原著】
■題名
卵巣静脈瘤を合併したnutcracker症候群の1例
■著者
札幌東徳洲会病院小児科 佐藤 和生 上田 大輔
■キーワード
卵巣静脈瘤, Nutcracker症候群, 骨盤うっ血症候群, 腎静脈狭窄
■要旨
12歳の女児が数時間持続する激しい腹痛のため外来を受診した.発熱はなく,腹部全体に圧痛を認めたが特異的な所見はなく,血液検査でも炎症所見などは認められなかった.腹部CTでは左腎静脈が下降大動脈と上腸間膜動脈の間で圧排されて狭窄している所見があり,腹部超音波では,左卵巣に接して静脈血流の豊富な腫瘤性病変を認めた.腹部MRI及びMRAで左卵巣静脈の拡張と巨大な卵巣静脈瘤,左卵巣静脈の逆向き血流を証明したが,これらは左腎静脈の側副血行路としての役割を担っていると考えられた.画像検査の結果より,nutcracker症候群に合併した左卵巣静脈瘤と診断した.
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【原著】
■題名
潰瘍性大腸炎を合併したTurner症候群の1例
■著者
津山中央病院小児科1),鳥取大学医学部周産期・小児医学2) 松下 博亮1)2) 梶 俊策1) 倉信 裕樹2) 奥野 啓介2) 片山 威1) 杉本 守治1) 長田 郁夫2) 藤本 佳夫1) 神崎 晋2)
■キーワード
Turner症候群, 潰瘍性大腸炎, 染色体異常
■要旨
症例はTurner症候群(核型45,X/46,XX)の13歳女児.2か月前より腹痛と6,7回/日の水様性下痢が出現し,2日前に血便を認め,当科を受診した.血液検査では血小板の増加(61.9万/mm3)を認めたが,炎症反応は陰性であった.大腸内視鏡にて全結腸に粘膜のびらん・血管透見像の消失を認め,潰瘍性大腸炎(UC),全大腸炎型と診断した.メサラジンの内服を1.5 g/日から開始し,3.0 g/日まで増量し,ステロイド注腸を併用し,治療開始3か月後に寛解した.
Turner症候群とUCの合併例は今回検索した限りでは,日本で5例,海外で7例の症例が報告されているに過ぎず,さらに15歳未満の小児に限ると自験例を含めて4例しか報告例はない.しかし,一般人口でのUCの発症率1.95/10万人と比較すると,過去の報告からはTurner症候群におけるUCの発症率は高いと推測され,Turner症候群では消化器症状の出現に注意を要すべきである.
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【原著】
■題名
潰瘍性大腸炎に特発性血小板減少性紫斑病とステロイドによる高眼圧症を合併した1例
■著者
宮城県立こども病院総合診療科1),同 血液腫瘍科2),同 眼科3) 村山 晶俊1) 虻川 大樹1) 三浦 克志1) 稲垣 徹史1) 梅林 宏明1) 渡邊 肇子1) 今泉 益栄2) 佐藤 篤2) 藤井 邦裕2) 山口 慶子3)
■キーワード
潰瘍性大腸炎, 炎症性腸疾患, 特発性血小板減少性紫斑病, ステロイド, 高眼圧症
■要旨
症例は8歳男児.6歳時(2005年3月)初発の潰瘍性大腸炎(UC)でステロイド依存性の経過をたどり,プレドニゾロン(PSL),メサラジン(5-ASA),アザチオプリン(AZA)の内服で加療していた.PSL減量中の2007年9月より徐々に血小板減少が出現し,AZAの副作用を疑って中止したが改善せず,11月にUCが再燃した.ステロイドパルス療法にてUCは緩解したが,ステロイドパルス療法後に急激な眼圧上昇が認められたためPSLの減量を余儀なくされた.高眼圧症は眼圧下降剤点眼,アセタゾラミド内服,マンニトール点滴,レーザー線維柱帯形成術に抵抗性を示し,観血的線維柱帯切開術を施行するに至った.一方血小板減少はステロイドパルス療法後に一時的に改善したが,PSL減量に伴って再び悪化した.骨髄検査等より特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断され,ガンマグロブリン投与により改善が得られた.PSLからの離脱に伴い一時的にUCの再燃を認めたが,ITPの治療後,血小板数の正常化ののちUCも再緩解に至った.その後半年間UCは緩解を維持し,血小板数も正常のままである.UCにITPが合併しうる点と,ステロイド投与中は眼圧上昇に十分留意すべきである点が重要と思われる症例であった.
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