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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:10.8.24)
第114巻 第8号/平成22年8月1日
Vol.114, No.8, August 2010
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総 説 |
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山崎 知克 1169 |
第113回日本小児科学会学術集会 |
会頭講演 |
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千田 勝一 1178 |
原 著 |
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須見 よし乃,他 1185 |
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栄徳 隆裕,他 1194 |
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大柳 玲嬉,他 1201 |
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新井田 麻美,他 1206 |
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伊藤 忠彦,他 1211 |
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大坪 善数,他 1215 |
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岩谷 壮太,他 1222 |
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岡村 和美,他 1226 |
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地方会抄録(北海道・島根・東京・山形・北陸・福井・愛媛・大分・滋賀・千葉)
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1232 |
日本小児科学会新生児委員会報告 |
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新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン
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1263 |
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1271 |
日本小児科学会新型インフルエンザ対策室報告 |
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オセルタミビル治療を受けた生後3か月未満の乳児・新生児のパンデミックインフルエンザA(H1N1)2009症例の調査解析
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1294 |
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日本小児科学会 初期臨床研修における小児科研修の目標 3か月を基本として
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1298 |
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1306 |
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1307 |
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1317 |
日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2010年52巻4号8月号目次
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1323 |
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1325 |
医薬品・医療機器等安全性情報 No.270,271
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1326 |
【原著】
■題名
Liebowitz Social Anxiety Scale for Children and Adolescents日本語版の信頼性と妥当性の検討
■著者
札幌医科大学医学部小児科1),同 神経精神科2),北海道こども心療内科氏家医院3) 須見 よし乃1) 國重 美紀1) 館農 勝2) 氏家 武3) 堤 裕幸1)
■キーワード
Liebowitz Social Anxiety Scale for Children and Adolescents(LSAS-CA)日本語版, 社交不安障害, 信頼性, 妥当性
■要旨
児童青年における社交不安障害(Social Anxiety Disorder:SAD)の評価尺度であるLiebowitz Social Anxiety Scale for Children and Adolescent(LSAS-CA)の日本語版を作成し,SADと診断された症例群40例と健常対照群80例を対象として,その信頼性と妥当性を検討した.
症例群および健常対照群におけるLSAS-CA日本語版(以下LSAS-CA-J)全項目合計のCronbachのα係数は0.89,0.93と高く,内的整合性が認められた.症例群における級内相関係数も0.94と高く,再テスト信頼性が認められた.症例群において,LSAS-CA-Jの全項目合計は,社会不安の評価尺度であるSocial Phobia Scale日本語版(SPS),Social Interaction Scale日本語版(SIAS),抑うつの評価尺度であるZung自己記入式抑うつ評価尺度日本語版(SDS)とは相関を示したが,精神的問題から生じる日常生活の機能障害の尺度であるSheehan Disability Scale日本語版(SDISS)とは相関しなかった.一方,LSAS-CA-Jの下位項目である恐怖感/不安感とSPS, SIASが強い相関を示したが,SDSとは相関が弱く,収束的・弁別的妥当性が認められた.また,臨床的重症度とLSAS-CA-Jとの間に強い相関が認められた.健常対照群と症例群の全項目合計においてROC曲線を作成してカットオフ値を求めたところ,高い感度と特異性が得られた.
以上より,今回作成したLSAS-CA-Jは児童青年におけるSADの臨床評価尺度として有用であると考えられた.
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【原著】
■題名
早期RSウイルス感染乳児に対するデキサメサゾン外来単回内服のランダム化比較試験による有効性の検討
■著者
津山中央病院小児科1),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学2),長野厚生連佐久総合病院地域ケア科3),鳥取大学周産期小児医学4) 栄徳 隆裕1)2) 小松 裕和3) 松下 博亮1)4) 山本 倫子1)2) 片山 威1) 杉本 守治1) 梶 俊策1) 藤本 佳夫1)
■キーワード
RSウイルス, デキサメサゾン内服, ランダム化比較試験, 入院率, 重症度スコア
■要旨
【背景】既に中等症から重症となったRSV感染による細気管支炎へのステロイド単回全身投与は無効との報告は多いが,細気管支炎未発症または発症早期のRSV感染乳児に対して,ステロイド全身投与が重症化を阻止し入院率を低下させるか否かを前方視的に検討した報告はない.
【対象と方法】2006年12月18日から2007年2月に津山中央病院を受診した12か月未満の乳児で38℃以上の発熱,鼻水,咳嗽のいずれか一つでも認めた全乳児にRSV迅速検査を施行した.陽性例のうち軽症で直ちに入院を要さなかった症例を,0.5 mg/kgのデキサメサゾン(DEX)単回内服群と非内服群に無作為割付し,両群に対症薬の内服を行いながらアウトカムを入院に設定し,前方視的に調査を行った.
【結果】RSV迅速検査の結果,RSV陽性を157例に認め,入院等の62例を除外した95例が無作為に割り付けられた.DEX内服群43例とDEX非内服群52例には,アレルギーの家族歴以外に基本属性に有意差はなかった.プライマリーアウトカムである入院率は,内服群14.6%(7/42),非内服群14.3%(7/48)であり,相対リスクは1.14(95%信頼区間0.44〜2.99),リスク差は2.1%(95%信頼区間−13.0〜17.1)であった.サブ解析である発症後日数による層別分析,喘鳴の有無による層別分析においても,有意な相対リスクとリスク差を認めなかった.
【結論】早期のRSV感染乳児に対し,0.5 mg/kgのDEX単回経口投与で外来加療を行っても入院を予防することはできなかった.
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【原著】
■題名
ゾニサミドまたはトピラマート投与中の重症心身障害児8例に認められた尿路結石の検討
■著者
北海道立子ども総合医療・療育センター小児科 大柳 玲嬉 渡邊 年秀 皆川 公夫
■キーワード
ゾニサミド, トピラマート, 尿路結石, 重症心身障害児, てんかん
■要旨
難治性てんかんに対してゾニサミド(ZNS)またはトピラマート(TPM)を投与中に尿路結石を認めた重症心身障害児(重症児)8例を比較的短期間に経験した.このうち6例がZNS, 2例がTPMを投与中で,7例は寝たきり状態にあった.尿路結石は肉眼的血尿や尿路感染症を契機に発見されたが,不機嫌や振戦など疼痛と考えられる症状を呈した例もみられた.このうち2例では結石の腎盂尿管移行部内嵌頓による水腎症をきたし,腎盂尿管ドレナージ,尿管ステント留置,体外衝撃波結石破砕術などの侵襲的治療を要した.
寝たきりの重症児ではZNSあるいはTPMによる尿路結石の頻度はかなり高い可能性があるため,重症児のてんかん治療においては,薬剤選択の際にZNSとTPMは尿路結石を形成するリスクが高いことを念頭におくことが重要であり,またZNS,TPMの投与中には尿砂の有無の問診および沈渣を含む尿検査を定期的に実施することが必要である.
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【原著】
■題名
重症心身障害児(者)の腎結石及び腎石灰化の有無と腎機能障害についての検討
■著者
東京都立清瀬小児病院腎臓内科1),島田療育センター2) 新井田 麻美1) 石倉 健司1) 幡谷 浩史1) 本田 雅敬1) 小沢 浩2) 大瀧 潮2)
■キーワード
重症心身障害児(者), 腎結石, 腎石灰化, 腎機能障害
■要旨
重症心身障害児・者はほとんど臥床のまま(いわゆる寝たきり)の状態であることが多く,骨折,腎結石・腎石灰化のリスクが高いといわれている.10年以上症状の固定した,寝たきり状態に近い症例24例(男性7名,女性17名,年齢32〜57歳)について腹部超音波検査を用いて腎結石・腎石灰化の有無を検討した.また,血液検査,尿検査を施行し,腎機能評価を行った.
腹部超音波検査で現在,腎結石・腎石灰化のある症例はなく,腎結石の既往のある症例は50歳代の男女各1例(8.3%)であった.eGFRで腎機能が低下している症例は,60 ml/min/1.73 m2以下が疑われた症例3例であった.また,高カルシウム血症を認めた症例はなく,高カルシウム尿症を認めた症例は1例であった.尿中β2MG/Cr比の上昇を認めた症例は4例あった.
これまでの報告に見られる重症心身障害児・者の腎結石・腎石灰化は高カルシウム血症,高カルシウム尿症を伴っていることが多く,これらにより腎石灰化・腎結石が出現していた可能性がある.栄養管理の充実や,ビタミンDの適切な使用が,高カルシウム血症,高カルシウム尿症を防ぎ,腎結石・腎石灰化の予防因子となっていると考える.
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【原著】
■題名
気管内挿管を要した重症小児救急患者の臨床的検討
■著者
秋田県厚生連平鹿総合病院小児科1),秋田県厚生連秋田組合総合病院小児科2),明和会中通総合病院小児科3) 伊藤 忠彦1) 松田 武文1) 稲見 育大1) 木下 さやか1) 小松 和男2) 渡辺 新3)
■キーワード
小児救急医療, 気管挿管, 心肺停止, 心肺蘇生
■要旨
来院後に気管内挿管を施行された15歳以下の重症小児救急患者38例を対象に,臨床像,搬送方法,来院した時間帯,予後,心肺停止(CPA)例では親の一次救命処置(BLS)の有無等を後方視的に検討した.年齢は0〜2歳に集中し,男児に多くけいれん重積と呼吸器感染による呼吸不全が多かった.来院は半数が準夜帯と深夜帯であった.救急車での搬送は18例(47%)で20例(53%)は保護者が自家用車で搬送していた.救急要請しなかった要因は,自家用車で来院する途中か到着直後に急変した,が9例でその内3例はCPA例であった.別の9例では親が危急性を認識できず救急要請していなかった.CPA例1例を含む2例では親が危急性を認識していながら,病院が自宅に近いという理由で救急要請していなかった.死亡例は7例で,全例CPA例で乳幼児突然死症候群(SIDS)3例と転落事故1例が含まれる.自宅でCPAとなった5例では親によるBLSが施行された例はなく,全例蘇生不可であった.
重症小児患者の救命率向上には,SIDSや事故の予防,正確な親の危急性認識,乳幼児BLSの普及,迅速な救急要請と搬送といった地域における救命の連鎖確立が重要である.
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【原著】
■題名
シクロスポリンAが奏功した乳児期発症Weber-Christian病の1例
■著者
佐世保市立総合病院小児科 大坪 善数 荒木 恵子 山下 文 上玉利 彰 中下 誠郎
■キーワード
Weber-Christian病, 脂肪織炎, シクロスポリンA, サイトカイン, 血管炎マーカー
■要旨
Weber-Christian病は原因不明の有熱性再発性非化膿性全身性脂肪織炎で,多発性の皮下結節のほか,全身諸臓器の脂肪織炎のため多彩な症状を呈する.成人女性に好発し,本邦での年間発症数は10例ほどで特に小児の報告例は少ない.今回我々はステロイドに不応でシクロスポリンAを併用し奏功した女児例を経験したので報告する.
生後3か月時に四肢・体幹の紅色結節と肝機能異常で発症し,生後7か月時の皮膚病理組織所見にて脂肪織炎と診断した.その後,発熱や皮下結節を繰り返し,CRPは陰性化することなく経過した.Weber-Christian病の可能性が高いと考え2歳5か月時よりステロイド内服を開始したが,虹彩炎,膝関節痛,弛張熱,成長障害などの全身合併症を認めた.5歳4か月時に6週間にわたる弛張熱を認め,サイトカイン誘導蛋白,血管炎マーカー,血清アミロイドの上昇を認めた.5歳5か月時よりシクロスポリンAを併用し,炎症反応の低下とともに臨床症状は改善した.併用開始前後のサイトカインおよび血管炎マーカーの変動について検討したところ,治療への反応性とよく相関していた.
本例は低年齢発症で血管炎も合併しており,今後のリウマチ性疾患の出現,アミロイドーシスに伴う臓器障害,またcytophagic stageへの病態転換を見逃さないように注意する必要がある.Weber-Christian病は予後不良な疾患と位置付けられているが,病態の早期把握や治療法の選択によってコントロールが可能となりつつある.小児科領域の不明熱の鑑別疾患のひとつとして認識し,さらなる症例の蓄積による原因解明が望まれる.
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【原著】
■題名
生後早期より心伝導路障害を呈した先天性筋強直性ジストロフィーの1例
■著者
兵庫県立こども病院周産期医療センター新生児科 岩谷 壮太 山口 由美 沖田 空 小川 禎治 坂井 仁美 上田 雅章 吉形 真由美 溝渕 雅巳 芳本 誠司 中尾 秀人
■キーワード
先天性筋強直性ジストロフィー, 新生児, 伝導路障害, CTGリピート
■要旨
症例は,在胎34週2日,出生体重2,057 gの男児.重症仮死にて日齢0に当院新生児搬送となった.入院後,臨床所見から先天性筋強直性ジストロフィー(Congenital myotonic dystrophy:CDM)を疑い19q13.3のCTGリピート数を検索したところ約2,100回の増幅が確認されCDMと診断した.本症例において,日齢35より心房性期外収縮(PAC),上室性期外収縮(VPC),QRS間隔の延長などの心電図異常を認めるようになり,心不全症状が進行した.さらに日齢67には,PSVT(発作性上室性頻拍)を頻発し,ATP使用も効果は一時的で管理困難となった.心不全進行に対して鎮静目的に塩酸モルヒネを使用したところ,速やかにPSVT出現頻度は軽減消失,心電図異常も軽減し,それに伴い心不全症状も改善した.筋強直性ジストロフィー(Myotonic dystrophy:DM)と心伝導路障害については成人領域において多く報告されているが,小児の報告例は少ない.本症例は生後早期から心伝導路障害を認めた新生児例であり,今後本疾患の病態および治療を考えるうえで重要な症例と考えられたので報告する.
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【原著】
■題名
胃腸炎後に発症したlupus anticoagulant hypoprothrombinemia syndromeの2例
■著者
高松赤十字病院小児科1),阿波病院小児科2),徳島赤十字病院小児科3) 岡村 和美1) 関口 隆憲1) 森 達夫1) 清水 真樹1) 高橋 朋子1) 幸山 洋子1) 坂口 善市1) 大原 克明1) 佐藤 登2) 渡辺 力3)
■キーワード
lupus anticoagulant hypoprothrombinemia syndrome, 凝固因子インヒビター, 出血傾向, 胃腸炎
■要旨
胃腸炎を契機に発症したlupus anticoagulant hypoprothrombinemia syndromeの2例を経験した.2例とも胃腸炎罹患後に,突然の皮下出血や止血困難な鼻出血などがみられた.血液検査ではPT,APTTの延長とプロトロンビンの低下および複数の凝固因子活性の低下,低補体血症を認めループスアンチコアグラント(LA),凝固因子に対するインヒビターが検出された.1例ではホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)が陽性であった.2例とも出血傾向は,約一週間後には自然に改善した.また,血液検査も2か月以内に正常化した.lupus anticoagulant hypoprothrombinemia syndromeは全身性エリテマトーデス(SLE)などの基礎疾患がある場合だけでなく,ウイルス感染を契機に発症した小児例の報告がみられ,多くは一過性で良好な経過をとることが多いとされている.aPS/PTがlupus anticoagulant hypoprothrombinemia syndromeの診断および臨床経過の評価に有用な指標となることが示唆された.後天的に出血傾向を来たす症例においては鑑別すべき疾患と考えられる.
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