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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:10.7.12)
第114巻 第7号/平成22年7月1日
Vol.114, No.7, July 2010
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総 説 |
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根津 敦夫 1033 |
原 著 |
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閑野 将行,他 1041 |
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小田中 豊,他 1048 |
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光藤 伸人,他 1053 |
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田中 肇,他 1060 |
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小出 照子,他 1065 |
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中村 俊紀,他 1069 |
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吾郷 真子,他 1073 |
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永田 弾,他 1077 |
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朽名 悟,他 1082 |
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地方会抄録(北海道・宮城・栃木・宮崎・福岡・沖縄)
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1086 |
G8 Academy Summitの声明「母子の健康推進」について
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1115 |
日本小児科学会国際渉外委員会 |
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The Global Pediatric Education Consortium : Transforming Pediatric Training and Child Health through Collaboration
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1120 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No.18 解決したはずの浴槽用浮き輪による溺水(2009年3月,10月の2例)
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1123 |
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【原著】
■題名
小児下気道感染症に対するアンピシリンとスルバクタム/アンピシリンの治療効果の比較
■著者
山形県立中央病院小児科 閑野 将行 今野 昭宏 早川 裕子 内田 奈生 鈴木 恵美子 柏原 俊彦 渡辺 哲 内田 俊彦 饗場 智 渡辺 真史 藤山 純一
■キーワード
小児, 下気道感染症, 初期治療, アンピシリン, スルバクタム/アンピシリン
■要旨
小児呼吸器感染症診療ガイドラインに基づき,小児下気道感染症に対する初期選択薬としてのアンピシリン(ABPC)とスルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC)の有用性について,前方視的に比較検討した.2007年3月から2008年3月まで下気道感染症の診断で当科に入院した患児383例のうち,抗菌薬投与の適応とした219例をABPC(100〜120 mg/kg/日)投与群とSBT/ABPC(150〜180 mg/kg/日)投与群に分け,治療開始後の有熱期間,副作用の有無などを集計した.ABPC投与群は120例,SBT/ABPC投与群は99例で,両群の患者背景に差は認めなかった.解熱が得られないか副作用のため抗菌薬を変更した症例は,ABPC群では5例(4.2%),SBT/ABPC群では4例(4.0%)であった.抗菌薬変更を行わなかったABPC群115例,SBT/ABPC群95例についての解熱時期は共に中央値0.5日,第1・第3四分位数は0.5日・1.0日と全て同じであった.副作用としては下痢が最も多く,ABPC群で16.6%,SBT/ABPC群で15.2%であった.両群での有効性や副作用発現率に統計学的有意差を認めず,ABPCとSBT/ABPCは同等に有用であるとの結論を得た.そのため,小児下気道感染症の入院例の初期治療は,βラクタマーゼ阻害薬を加えていないABPCでも充分対応可能であると考えた.
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【原著】
■題名
2004年以降のペニシリン耐性肺炎球菌検出率の動向
■著者
市立枚方市民病院小児科1),大阪医科大学小児科2) 小田中 豊1) 田辺 卓也1) 中島 三和1) 松村 英樹1) 笠原 俊彦1) 洪 真紀1) 原 啓太1) 岡空 圭輔1) 玉井 浩2)
■キーワード
肺炎球菌, 抗菌薬, 耐性化, 起因菌, 常在菌
■要旨
呼吸器感染症における市中病原細菌の耐性化が問題となっており,当院における肺炎球菌の耐性菌検出率と抗菌薬の処方動態の経年的変化を検討した.対象:2004年4月から2008年3月までに当院において上咽頭,咽頭培養より肺炎球菌が検出された1,790例(男児1,008例,女児782例,平均年齢25.8±26.6か月).気道感染症の起因菌と想定される検出菌と常在菌群に分けた.PCGに対してMIC≧2 μg/mlをペニシリン耐性肺炎球菌(以下PRSP),MIC 0.12〜1 μg/mlを同低感受性肺炎球菌(以下PISP),MIC≦0.06 μg/mlを同感受性肺炎球菌(以下PSSP)とした.調査は,(1)肺炎球菌耐性化率の経年的変化(2)培養検査前の抗菌薬処方率の経年的変化(3)感受性別の培養検査前抗菌薬の処方率(4)当院における抗菌薬の処方件数の経年的変化について行った.結果:常在菌群でPSSPが有意に増加し,PISP,PRSPが有意に減少を認めた.起因菌と想定される検出菌でも同様の傾向であったが,2005年度には一時的に耐性菌が増加した.培養検査前の抗菌薬の処方率は,2005年度が80%と最大で,それ以降は減少傾向であった.また,耐性菌では培養検査前の抗菌薬処方率が有意に高かった.抗菌薬の処方動態は,ペニシリン系が増加傾向で,セフェム系は減少傾向であった.考察:肺炎球菌の耐性化率は,減少しており,抗菌薬の処方動態の変化や培養検査前の抗菌薬の処方率の減少が,関与している可能性が示唆された.
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【原著】
■題名
早産児晩期循環不全による中枢神経系障害の検討
■著者
京都第一赤十字病院新生児科 光藤 伸人 河北 亜希子 林 藍 山村 玲理 徳弘 由美子 中林 佳信 濱田 裕之 木原 美奈子
■キーワード
早産児晩期循環不全, 脳室周囲白質軟化症, 中枢神経障害, 頭部MRI, 頭部エコー
■要旨
2001年6月から2005年5月の4年間に当院NICUに入院となった在胎33週未満の早産児120例を対象に早産児晩期循環不全(late-onset circulatory dysfunction,以下,LCD)の中枢神経障害について検討した.神経学的予後と有意に相関していたのは,LCD発症の有無と酸素投与日数であった.次にLCDを発症した19例の神経学的後障害の検討を行った.19例中8例は異常を認めず正常群とした.残りの11例は脳性麻痺,精神遅滞あるいはてんかんの何れかの合併がみられ異常群とした.異常群の4例は軽度の痙性両麻痺を認めた.2例は痙性四肢麻痺を認め,両者とも重度の精神遅滞を合併していた.3例は痙性四肢麻痺,重度精神遅滞にてんかんを合併していた.2例には精神遅滞がみられた.男女比,出生体重,在胎期間,酸素投与日数,人工換気日数,未熟児網膜症に対するレーザー凝固術の頻度に両群で有意差を認めなかったが,動脈管結紮術の頻度は異常群で有意に高かった.発症時体重,発症時修正週数,発症日齢,無尿期間,発症時血清Na値,治療に要したステロイド量は両群で有意差を認めなかった.頭部エコーでは,異常群のうち,7例でLCD発症9〜17日後に嚢胞性脳室周囲白質軟化症が確認され,退院時頭部MRIで6例に嚢胞性変化が,2例に側脳室壁不整がみられた.LCDは早産児の神経学的予後を左右する因子として重要であると考えられた.
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【原著】
■題名
乳児期における腹臥位遊びと運動発達との関係に関するアンケート調査
■著者
北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター小児科1),旭川市保健所2) 田中 肇1) 福田 郁江1) 宮本 晶恵1) 岡 隆治1) 川田 友美2) 長 和彦1)
■キーワード
乳児, 運動発達, 腹臥位遊び
■要旨
北海道旭川市で平成21年1月から3月に行われた1歳半健診に参加した児の保護者660名を対象に,乳児期の腹臥位遊びと運動発達の関係を検討する目的でアンケート調査を行った.541名の保護者から回答が得られ,回収率は82.0%であった.
5〜6か月頃の腹臥位遊びが少なかったという回答は40%,多かったという回答は22%であった.腹臥位遊びが少なかった理由としては,「特に気にしていなかったのでわからない」が44%,「本人が腹臥位を嫌がった」が40%,「保護者が危険と思いできるだけさせないようにしていた」が13%であった.腹臥位の多かった群は少なかった群に比べ,「自分で座位姿勢になれる」「ハイハイ」「自分でつかまり立ち姿勢になれる」「歩行」の四項目全てにおいて,その到達月齢が有意に早かった.保護者の意識に関しては,「子どもの腹臥位遊びに特別意識を向けていなかった」との回答が65%と最も多かったが,「意識して腹臥位遊びを避けていた」が5%にみられた.この回答をした保護者の児は腹臥位遊びが明らかに少なく,運動発達項目の到達月齢も有意に遅かった.
乳児期の腹臥位遊びは筋力の向上や姿勢変換の獲得につながる大切な要素であり,乳児健診などで保護者に対して正しい認識を持ってもらうための指導は重要である.
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【原著】
■題名
虫体の遺伝子解析により診断された日本海裂頭条虫症の兄妹例
■著者
春日井市民病院小児科1),国立感染症研究所寄生動物部2) 小出 照子1) 山崎 浩2) 渡辺 伸元1) 木許 泉1) 河邊 太加志1)
■キーワード
日本海裂頭条虫症, 小児, サクラマス, 遺伝子検査, プラジカンテル
■要旨
富山産サクラマスの生食が原因と考えられる日本海裂頭条虫に感染した小児の兄妹例を経験した.2例とも肛門から便とともに紐状の虫体を排出したのに気付き受診した.糞便内の虫卵と自然排出された虫体の形態より当初は広節裂頭条虫と同定され,プラジカンテルで駆虫された.駆虫にて,兄からは頭節を欠く1虫体が,妹からは頭節を有する2虫体がそれぞれ排出された.ホルマリン固定された虫体について,より詳細な形態観察と遺伝子解析を行ったところ,排出された虫体はすべて日本海裂頭条虫と同定された.本症は成人のみならず,低年齢層の症例も報告されており,小児科医が経験するのも稀ではない.日本海裂頭条虫と広節裂頭条虫の形態学的鑑別は困難なことも多く,その確定診断には遺伝子解析が望まれる.
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【原著】
■題名
マイコプラズマ肺炎の後に細気管支炎を続発した14歳の1例
■著者
昭和大学小児科学教室 中村 俊紀 藤井 隆成 斉藤 多賀子 岩崎 順弥 板橋 家頭夫
■キーワード
Mycoplasma pneumoniae, 細気管支炎, ステロイド
■要旨
Mycoplasma pneumoniae肺炎は小児の市中肺炎として一般的な疾患である.ほとんどが軽症であるが,今回重篤な呼吸障害が遷延し,細気管支炎を呈した症例を経験したため報告する.
症例
14歳の男児.発熱と咳嗽が出現し,第2病日からクラリスロマイシンを内服していた.第5病日に発熱および呼吸障害のため緊急入院した.入院時Mycoplasma pneumoniae微粒子凝集抗体価は上昇せず,IgM迅速抗体検査も陰性であったため,アンピシリンを投与したが改善しなかった.抗菌薬をクラリスロマイシン,パニペネムへ変更を行い,解熱したものの,起座呼吸などの呼吸障害は遷延した.第12病日に胸部CTで小葉中心性の粒状陰影を認め,第18病日にはM. pneumoniae PA抗体価が5,120倍に上昇しており,M. pneumoniaeによる細気管支炎と診断した.ミノサイクリンとメチルプレドニゾロン(mPSL)により軽快したが,呼吸機能検査では末梢気道の閉塞パターンが残存した.
まとめ
当初,典型的な非定型肺炎を示しておりながら,経過とともに細気管支炎に変化した症例を経験した.mPSLが奏功した事を考慮すると病態は菌による気道の傷害から活性化された免疫の過剰反応へと変化したと考えられた.
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【原著】
■題名
麻痺性イレウスを呈した驚愕病の姉弟例
■著者
島根大学医学部小児科1),島根大学医学部附属病院輸血部2),きむらこどもファミリークリニック3),島根大学医学部消化器・総合外科4),松江赤十字病院小児科5) 吾郷 真子1) 竹谷 健1)2) 木村 正彦1)3) 安田 謙二1) 久守 孝司4) 岸 和子1) 瀬島 斉1)5) 山口 清次1)
■キーワード
驚愕病, hyperekplexia, startle disease, 麻痺性イレウス, GLRA1遺伝子
■要旨
驚愕病は新生児期より四肢の硬直や刺激に対する過度の驚愕反応で発症する稀な疾患で,グリシン作動性神経伝達の異常が病因と考えられている.我々は,手術や胃腸炎を契機に麻痺性イレウスを発症した驚愕病の姉弟例を経験した.姉弟ともに新生児期より四肢の硬直を認め,nose tapping testが陽性で,臍ヘルニアを合併していた.父方に過度の驚愕反応を示す家族歴があった.両患者でグリシン受容体GLRA1遺伝子のヘテロ接合性変異(Arg271Gln)を同定し,驚愕病と確定診断した.クロナゼパムにより,四肢の硬直および驚愕反応は改善した.興味深いことに,急性胃腸炎に罹患した時および臍ヘルニア根治術後に麻痺性イレウスを発症した.驚愕病は痙性四肢麻痺やてんかん等と診断され,不必要な検査や治療を受けることもある.本疾患は乳幼児期を過ぎれば驚愕反応のみ残存する予後良好な疾患であるため,臨床症状とnose tapping testおよび遺伝子解析による正しい診断が重要である.また,これまで本疾患において麻痺性イレウスを合併した報告はないが,グリシン作動性神経伝達を有する脳幹・脊髄は自律神経系の一次中枢であることから,自律神経のアンバランスが関与したと思われる.さらに,驚愕病の特徴である筋硬直に術後疼痛や嘔吐が加わって腹腔内圧が亢進することが,麻痺性イレウスの発症に寄与すると推測された.
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【原著】
■題名
9歳で診断されたびまん性汎細気管支炎の1例
■著者
北九州市立医療センター小児科1),国立病院機構福岡病院小児科2) 永田 弾1) 野口 貴之1) 三原 由佳1) 三井 敬一1) 日高 靖文1) 手塚 純一郎2) 岡田 賢司2)
■キーワード
びまん性汎細気管支炎, tree-in-bud appearance, エリスロマイシン
■要旨
びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB)は40〜50歳代をピークとして幅広い年代層で報告されているが,小児例の報告は少ない.今回,これまでの報告の中で最年少での診断と考えられるDPB症例を経験した.症例は9歳女児.5歳時に喘鳴や咳嗽が出現し喘息と診断された.以後,気管支拡張薬や抗アレルギー薬の内服,吸入ステロイド薬を併用したが徐々に呼吸困難は増悪し,在宅酸素も導入したが計17回の入退院を繰り返した.9歳時,18回目の入院の際,胸部CTで全肺野にびまん性の粒状影を認め,1998年の厚生労働省研究班によるDPB診断の手引きのうち,必須項目である臨床症状,副鼻腔炎の合併,胸部X線と胸部CT所見の3つを満たした.さらにHLA(Human Leukocyte Antigen)-B54,A11が陽性で寒冷凝集素価の上昇を認め,肺生検では呼吸細気管支周囲への泡沫細胞を含めた炎症細胞の浸潤がみられDPB確実例と診断した.エリスロマイシン内服開始1か月後の胸部X線,胸部CTでは所見の改善がみられた.コントロール不良な喘鳴や咳では副鼻腔炎の有無を確認し積極的に胸部X線や胸部CT撮影を行うべきと思われる.日常診療でよく遭遇する主訴の中にDPBが紛れている可能性があり,小児科医もDPBについて知識を持つ必要があると考えられる.
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【原著】
■題名
先天性嚢胞性腺腫様奇形4型の1例
■著者
千葉市立海浜病院小児科1),国立成育医療センター呼吸器科2) 朽名 悟1) 加藤 いづみ1) 永井 文栄1) 阿部 克昭1) 橋本 祐至1) 安齋 聡1) 地引 利昭1) 金澤 正樹1) 黒崎 知道1) 菊池 信太郎2) 樋口 昌孝2) 川崎 一輝2)
■キーワード
先天性嚢胞性肺疾患, congenital cystic adenomatoid malformation, 新生児, 1か月健診
■要旨
症例は1か月の女児.産院での1か月健診で努力呼吸・体重増加不良を認め,胸部単純エックス線・胸部CTで先天性嚢胞性肺疾患が疑われた.呼吸窮迫徴候を認めていたため,緊急手術となり,右中葉切除術を施行した.手術後,呼吸状態は著明に改善し,術後8日目に退院となった.病理組織学的にcongenital cystic adenomatoid malformation(CCAM)type 4と診断された.新生児期に多呼吸・努力呼吸・チアノーゼなどの呼吸窮迫症状を呈した場合は,鑑別疾患としてCCAMを念頭におく必要がある.
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