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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:10.5.19)
第114巻 第5号/平成22年5月1日
Vol.114, No.5, May 2010
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総 説 |
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石和田 稔彦 829 |
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栗原 和幸 840 |
原 著 |
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脇口 宏,他 847 |
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鈴木 啓之,他 853 |
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永瀬 裕朗,他 858 |
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桑島 成子 865 |
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南方 俊祐,他 869 |
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小林 千恵子,他 873 |
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森 一越,他 878 |
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斎藤 朋子,他 883 |
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八代 知美,他 886 |
論 策 |
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江原 朗 891 |
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地方会抄録(新潟・栃木・千葉・鹿児島・静岡・山梨)
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896 |
日本小児科学会学校保健心の問題委員会 |
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919 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No.17 ラムネ瓶の口による舌外傷
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920 |
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922 |
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927 |
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931 |
医薬品・医療機器等安全性情報 No.267・268
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933 |
【原著】
■題名
新規開発酵素抗体法による伝染性単核症の血清診断とEBウイルス抗体価の推移
■著者
高知大学医学部小児思春期医学教室1),札幌医科大学小児科学教室2) 脇口 宏1) 前田 明彦1) 藤枝 幹也1) 田中 香織2) 堤 裕幸2)
■キーワード
Epstein-Barr virus(EBV), Enzyme-immunoassay(EIA), Viral capsid antigen(VCA), Early antigen(EA), EBV-associated nuclear antigen(EBNA)
■要旨
小児の伝染性単核症62例について,新たに開発されたEBウイルス抗体測定用enzyme immunoassay(EIA)キットを使用して,VCA-IgM抗体,VCA-IgG抗体,EA-IgG抗体,およびEBNA-IgG抗体を測定し,臨床病期別に検討した.また,一部の血清では従来の蛍光抗体法による測定結果と比較検討した.その結果,発症2週以内の急性期におけるVCA-IgM抗体は60/62例と高い陽性率を示し,9週以降の15例は3例のみが陽性であった.VCA-IgG抗体の急性期における陽性率は50/62例で,2〜7週の回復期にも4例に判定保留例が観察された.EA-IgG抗体は急性期が34/62例で陽性,9週以降の治癒後で10/15例が陽性と,いずれも同程度の陽性率が観察された.EBNA-IgG抗体は急性期には2/62例のみが陽性で,9週以降の回復後には15例中11例が陽転していた.EIA法とImmunofluorescent assay(IFA)法の両者を測定できた血清では,VCA-IgM抗体とEBNA-IgG抗体はEIA法の方がより高感度と考えられたが,VCA-IgG抗体とEA-IgG抗体は同程度の測定感度と考えられた.以上のことから,今回検討したEBウイルス抗体測定キットは従来のEIAキットがもっているIgM抗体検出が高感度に過ぎる欠点を補い,臨床経過に一致する抗体変化をとらえられることが明らかになった.
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【原著】
■題名
川崎病急性期にステロイド投与を受けた症例の冠動脈障害発生の分析
■著者
和歌山県立医科大学小児科1),関西医科大学小児科2),自治医科大学公衆衛生学3) 鈴木 啓之1) 荻野 廣太郎2) 中村 好一3) 上原 里程3) 屋代 真弓3) 柳川 洋3)
■キーワード
川崎病, ステロイド治療, 冠動脈障害, 大量免疫グロブリン静注療法不応
■要旨
第19回川崎病全国調査(2005〜06年)で報告された20,475例の内,ステロイド(ST)治療記載があった801例に2次調査を行い,情報を得た685例を対象とした.免疫グロブリン静注療法(IVIG)の追加の有無とST治療法(パルス±後療法・非パルス)によって対象をA-1群:IVIG+STパルス(97例),A-2群:IVIG+STパルス+後療法(50),A-3群:IVIG+ST非パルス(52),B-1群:IVIG+追加IVIG+STパルス(154),B-2群:IVIG+追加IVIG+STパルス+後療法(170),B-3群:IVIG+追加IVIG+ST非パルス(162)の6群に分類し,背景因子や冠動脈障害(CAL)発生頻度を後方視的に検討した.各群の平均ST開始病日と30病日でのCAL出現頻度(拡大+瘤+巨大瘤;%)は,A-1群6.7(日);5.2(%),A-2群8.1;24.0,A-3群8.6;11.5,B-1群9.2;31.2,B-2群9.3;34.7,B-3群10.4;30.9であった.ST投与前後のCAL重症度悪化率は,それぞれ2.1,20.0,5.8,24.0,26.5,23.5%であった.B群のCAL出現頻度やST治療後のCAL重症度悪化率が高く,追加IVIG不応例へのSTはCAL発症を抑制しない可能性が示唆された.
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【原著】
■題名
複雑型熱性けいれんの予後不良因子を用いた急性脳症治療開始基準の検討
■著者
兵庫県立こども病院脳神経内科1),同 救急集中治療科2) 永瀬 裕朗1) 中川 拓2) 青木 一憲2) 藤田 杏子1) 佐治 洋介2) 丸山 あずさ1) 上谷 良行2)
■キーワード
急性脳症, 熱性けいれん, 早期診断
■要旨
【目的】発熱に伴うけいれんや,意識障害を発症した小児で,発症後6時間以内に得られる予後不良因子を明らかにし,急性脳症の治療開始基準としての有用性を検討すること.【対象と方法】2002年10月〜2008年11月までの74か月間に兵庫県立こども病院PICUに入室し,入院時に複雑型熱性けいれんの診断基準を満たした86例を退院時のPediatric Cerebral Performance Category Scale(PCPC)で予後良好群69例と不良群17例に分類し,臨床的特徴,検査所見を比較し,予後不良群の症例と最終診断が急性脳症であった症例の関連を検討した.【結果】予後不良因子となった,(1)難治性てんかん重積状態,(2)発症後6時間の時点での意識障害(GCS14以下)または片麻痺,(3)AST>90 IU/lの3項目のうち1項目以上満たすことは退院時の予後不良と感度94.1%,特異度69.6%,オッズ比36.6(95%CI:4.87〜1,560)で関連していた.予後不良群の症例は同期間に当科に入院した急性脳症の診断基準を満たす症例と一致した.【結論】上記の予後不良因子のいずれかを満たす群を急性脳症が高率に予測される「重症熱性けいれん」として急性脳症介入研究の患者対象基準とすることで急性脳症に対する特異的治療の有効性が検証できると考えられる.
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【原著】
■題名
乳腺防護カバー使用による小児胸部CT被ばく低減の試み―第1報
■著者
獨協医科大学放射線医学教室 桑島 成子
■キーワード
胸部CT, 被ばく線量, 乳腺防護
■要旨
ここ数年,CT装置の進歩により撮像時間が短くなり,催眠なくして検査が行える乳幼児が増え小児のCT適応が拡大した.しかし,CTでは常に画質と被ばく線量のバランスが問題となる.小児胸部CTにおいて線量を管理しなくてはならない大きな理由が2つある.被ばく年齢が低いほど癌のリスクが高いことと乳腺のような放射線感受性が高い組織が胸部CTで直接被ばくすることである.被ばく線量低減対策として,自動露出制御(AEC:Auto Exposure Control)の設置と,まだ,一般化されていない乳腺防護カバーの使用がある.今回はファントムを用いて,乳腺防護カバーを使用することにより1)どの程度の被ばく線量が下げられるか,2)画質を維持できるかの2項目を検討した.胸部CT撮影時,乳腺防護カバー使用により約20%の乳腺被ばく低減が認められ,カバー使用前後で画質に低下はなかった.
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【原著】
■題名
皮下感染から化膿性髄膜炎を併発した後頭部先天性皮膚洞の1例
■著者
北野病院小児科 南方 俊祐 羽田 敦子 中川 権史 西田 仁 多久和 麻由子 森嶋 達也 熊倉 啓 吉岡 孝和 塩田 光隆 秦 大資
■キーワード
先天性皮膚洞, 化膿性髄膜炎
■要旨
皮下感染から化膿性髄膜炎を併発した後頭部先天性皮膚洞の1例を経験した.症例は3歳女児,出生時に後頭正中部に毛のある径7 mmの腫瘤がみられた.患児は入院8日前より頭痛を訴え,同腫瘤からの滲出物に気づいていた.入院5日前より発熱を認め,抗菌薬の内服を開始した.入院前日の頭部MRIで,後頭骨を貫く管状構造物が硬膜外に達しているとみられ,先天性皮膚洞が疑われた.血液検査上,炎症反応は軽度であったが,症状が持続するために髄液検査を行ったところ,細胞数の増多を認め化膿性髄膜炎の診断で入院となった.髄液培養は陰性で起因菌は不明であった.入院時よりバンコマイシン(VCM)+パニペネム/ベタミプロン(PAPM/BP)を投与し,頭痛と腫瘤の発赤腫脹は消失したが,微熱が続いたため,入院12日目に皮膚洞と外部との交通遮断目的で脳外科にて手術を施行した.術後症状は消失し,抗菌薬投与を計2週間行い,軽快退院した.後頭部先天性皮膚洞は稀な疾患であるが,頭蓋内への交通により,中枢神経感染症を合併する頻度が高い.本症例ではTown撮影でも骨欠損像を認め,比較的容易に交通を疑うことができた.出生時より頭部の正中部に腫瘤を認めた際,画像診断を積極的に行い,早期診断により予防的に閉鎖手術を行うことが重要であると考えられた.
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【原著】
■題名
慢性硬膜下血腫を契機に発見されたグルタル酸尿症I型の1例
■著者
山田赤十字病院小児科 小林 千恵子 梨田 裕志 川崎 裕香子 淀谷 典子 前川 佳代子 雨宮 善雄 藤原 卓 井上 正和 東川 正宗
■キーワード
グルタル酸尿症I型, 慢性硬膜下血腫, 大脳基底核病変, 脳萎縮, タンデムマス・スクリーニング
■要旨
慢性硬膜下血腫を契機にグルタル酸尿症I型の診断に至った1例を報告する.症例は7か月男児.哺乳不良,嘔吐,頸定不良を主訴に救急外来を受診した.頭部CTにて両側硬膜下水腫,左急性硬膜下血腫を認め入院となった.緊急手術適応無く経過観察後退院したが,翌日左眼球偏位・全身をよじるような動作が出現したため再来院した.頭部CT上硬膜下水腫の増大を認め,両側穿頭・慢性硬膜下血腫除去術が施行された.当初虐待による硬膜下血腫も鑑別にあがったが,術後から舌ジスキネジア,四肢不随意運動が出現した.神経学的異常所見は硬膜下血腫の影響とは考え難く頭部MRI撮影を行ったところ,シルビウス裂の著明な開大および両側基底核にT2,FRAIR画像で対称性にhigh intensity areaが認められた.臨床症状および経過と画像所見からグルタル酸尿症I型を疑い,診断に先行してカルニチンの投与および特殊ミルクによる自然蛋白制限を行い神経症状は若干改善した.後日,尿中有機酸分析および,タンデム質量分析計(タンデムマス)による血中アシルカルニチン分析の結果,グルタル酸尿症I型と診断した.新生児マススクリーニング時のろ紙血でもグルタリルカルニチンの上昇が認められ,タンデムマス・スクリーニングの有用性が確認できた.
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【原著】
■題名
2,8-dihydroxyadenine結石症の1例
■著者
聖隷佐倉市民病院小児科 森 一越 鈴木 繁 川村 研
■キーワード
2,8-dihydroxyadenine結石, adenine phosphoribosyltransferase欠損症, round crystal, 水腎症, allopurinol
■要旨
2,8-dihydroxyadenine(DHA)結石症は海外からの報告に乏しい比較的稀な結石症であり,小児の報告例も非常に少ない.今回我々は肉眼的血尿を伴った中等度の水腎症で発見に至った同症男児例を経験した.診断および治療経過を文献的考察と共に報告する.
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【原著】
■題名
ヒアルロン酸代謝異常を合併したPrimary ciliary dyskinesiaの1例
■著者
長岡赤十字病院小児科 斎藤 朋子 今村 勝 鳥越 克己 沼田 修 小野塚 淳哉 山田 剛史 渡辺 健一 星名 潤 申 将守 放上 萌美
■キーワード
原発性線毛機能不全症, ヒアルロン酸代謝異常, 気管支拡張症, 小児
■要旨
ヒアルロン酸代謝異常を合併したPrimary ciliary dyskinesiaの1例を報告した.
症例は8歳男児.生後2週目に両側第1次硝子体過形成遺残(PHPV)と診断され,手術を受けた.また,出生時,全身の皮膚が厚く皮膚の皺壁を著明に認めており,3歳時にヒアルロン酸代謝異常症と診断された.
3歳頃から肺炎,気管支炎,気管支喘息を反復し,8歳時に胸部エックス線写真で気管支拡張像を認めた.また,副鼻腔炎の既往があり,線毛機能不全を疑い鼻粘膜生検を行った.電顕像でInner dynein armの欠損を認め,Primary ciliary dyskinesiaと診断した.
著者らは,本例がヒアルロン酸代謝異常症と診断されたことについてすでに報告している.
ヒアルロン酸は気道粘膜の保護作用を有し,線毛運動が適切に行われるために不可欠である.本例では,気道上皮の過剰なヒアルロン酸の存在が,線毛機能不全による粘膜線毛輸送系の機能障害を増悪させていた可能性が考えられる.
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【原著】
■題名
早期の抗TNFα抗体療法により再出血を予防できた大量下血を伴ったクローン病の1例
■著者
岩手県立北上病院小児科1),ひらのこどもクリニック2) 八代 知美1) 越前屋 竹寅1) 平野 浩次2)
■キーワード
クローン病, 大量下血, インフリキシマブ
■要旨
大量下血を呈した小児のクローン病に対し,抗TNFα抗体製剤であるインフリキシマブ(INF)を投与し,再出血を予防できた1例を経験した.
症例は15歳女児.発熱,血便で発症し,入院後の下部消化管内視鏡検査でクローン病と診断された.ステロイド剤,5-アミノサリチル酸製剤投与により一時症状は改善したが,ステロイド剤の減量と供に大量下血を呈し,高度の貧血を呈した.絶食により症状は軽快したが,少量の血便が持続し,早期の寛解導入と再出血を防ぐため,INF 5 mg/kgを点滴投与した.その直後より血便は消失し,ステロイド剤の減量・中止に成功した.その後8週間毎にINFを投与しているが,寛解を維持し,重大な副作用も認めていない.
INFは,内科領域で治療抵抗性クローン病に対し使用されている.また,大量下血に対して,従来の内視鏡的止血術,観血的治療はいずれも再出血率が高いため,INF療法に再出血予防効果が期待されている.本症例の経過から,INF療法は大量下血を呈したクローン病の早期の寛解導入と再出血予防効果が期待できることが示唆された.しかし,抗TNFα製剤の長期の安全性は確立しておらず,小児例への適応については,さらなる検討が必要である.
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【論策】
■題名
小児科医師1人あたりの年少人口―2035年には2005年の6割弱
■著者
北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野 江原 朗
■キーワード
年少人口, 小児科医師, 少子化, 医師需要
■要旨
各年齢層の小児科医師数は10年間でどれだけ変化するのか.この問いに答えるため,平成8年〜平成18年の小児科医師数の変化を5歳ごとの年齢層で比較した.
平成8年に25〜29歳であった年齢層の男性医師数は,10年後(35〜39歳)には1.24倍に増加し,女性医師数は,10年後には0.90倍に減少していた.30〜44歳の医師数は,男女ともに10年経過(40〜54歳)しても1倍前後であったが,45〜54歳の医師数は10年経過すると0.85〜0.92倍に減少した.さらに,55歳以上の年齢層の医師数は,男女ともに10年経過すると0.75倍以下になっていた.
また,25〜34歳の医師数が将来においても平成18年の値と同じであると仮定し,求めた医師数の変化率を用いて,平成28〜48年の小児科医師数を推計したところ,医師数は現在とほとんど変わらなかった.一方,小児人口は平成47年には平成17年の59%まで減少することが予想される.現在は医師の偏在の解消がもとめられているが,将来的に医師1人あたりの小児人口が25年後には現在の6割弱にまで減少することに対して社会はどう対処するのか,国民の議論が求められる.
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