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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:09.7.28)

第113巻 第7号/平成21年7月1日
Vol.113, No.7, July 2009

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総  説

小児疾患とエピジェネティクス―“後天性小児遺伝性疾患”概念の創設―

久保田 健夫  1071
原  著
1.

社会的同調因子の刺激による重症心身障害児のサーカディアンリズムの変化

里村 茂子,他  1079
2.

成人肺結核排菌者に接触した小学生の肺結核確定診断におけるQuantiFERON® TB-2Gの有用性

横山 忠史,他  1088
3.

発達コホート研究における構造化された医師観察法とその有効性

関 あゆみ,他  1095
4.

発達コホート研究における医師観察結果と質問紙法による発達評価との関係

関 あゆみ,他  1103
5.

インフルエンザに対するノイラミニダーゼ阻害薬の有効性とその適正使用

日比 成美,他  1111
6.

携帯式電子記録メディアを用いた療育システム

糸数 直哉,他  1118
7.

非医療従事者による心肺蘇生および自動体外式除細動器により救命しえたfallot四徴症心内修復術後患者の1例

木村 正人,他  1123
8.

新生児同種免疫性血小板減少症の経過観察中に急性巨核芽球性白血病を発症した新生児の1例

安達 裕行,他  1128
9.

巨大卵巣成熟嚢胞奇形腫により両側閉塞性腎症を呈し腎機能低下にいたった1例

岡本 孝之,他  1133
10.

浴槽用浮き輪による乳児溺水事故の3例

中川 直美,他  1137
論  策

地域中核施設における“準小児集中治療室”の意義

長田 浩平,他  1141

地方会抄録(茨城,大分,静岡,沖縄,青森,佐賀,福岡,愛媛)

  1146

雑報

  1180
日本小児科学会倫理委員会
  小児脳死臓器移植に関するアンケート調査

―日本小児科学会会員に対する意識調査2007―

  1181

医薬品・医療機器等安全性情報 No.257

  1194


【原著】
■題名
社会的同調因子の刺激による重症心身障害児のサーカディアンリズムの変化
■著者
徳島県立ひのみね整肢医療センター小児科1),国立病院機構香川小児病院臨床研究部2)
里村 茂子1)  横田 一郎2)

■キーワード
重症心身障害児, サーカディアンリズム, 睡眠・覚醒リズム, メラトニン
■要旨
 重症心身障害児のなかには睡眠・覚醒リズムが乱れ,集団生活が困難な児もみられる.重症心身障害児のうち睡眠・覚醒リズムの乱れた6名(男女各3名,8〜18歳)を対象群,睡眠・覚醒の乱れを示さない6名(男4名,女2名,8〜19歳)をコントロール群とし,サーカディアンリズムの状態を評価し,外的刺激によりサーカディアンリズム,睡眠・覚醒リズムが改善するか否かを検討した.サーカディアンリズムの指標として腋窩体温,自律神経機能,唾液中のメラトニン分泌量を用い,睡眠・覚醒リズムは睡眠図を参考とした.外的刺激としては日中2時間の座位保持を連日6か月間行い,3か月ごとに各指標を評価した.対象群は介入後に一時的ではあるが腋窩体温,自律神経機能が改善した.メラトニンは介入前後で変化を認めなかった.睡眠・覚醒リズムは改善あり群(3名),改善なし群(3名)に分類された.改善あり群では介入前のサーカディアンリズムはコントロール群に似ていたが,改善なし群では介入前のサーカディアンリズムがコントロール群から乖離し,介入による改善は乏しかった.睡眠・覚醒が乱れている症例でもサーカディアンリズムの指標が比較的良好な場合は,これらのリズムの乱れは部分的ではあるが改善し,日中の座位保持は試みる価値があると考えられた.


【原著】
■題名
成人肺結核排菌者に接触した小学生の肺結核確定診断におけるQuantiFERON® TB-2Gの有用性
■著者
珠洲市総合病院小児科1),金沢大学医薬保健研究域医学系血管発生発達病態学(小児科)2)
横山 忠史1)2)  谷内江 昭宏2)

■キーワード
結核, 接触者健康診断, QuantiFERON® TB-2G, 胸部CT検査, 小学生
■要旨
 結核の接触者健診は,患者個人の早期発見と集団感染を予防するのに大変重要な事業である.従来の健診では,接触者にはまずツベルクリン反応(ツ反)と胸部レントゲン検査(胸部X-p)を行い,感染の可能性を判定していた.しかし,小児の接触者健診を行う際には,日本では乳児期にBCG接種を受ける小児が大多数であることや,小児の初期肺結核病変は胸部X-pでは検出しにくいという特徴を考慮しなければならない.
 近年,成人の結核診断にQuantiFERON® TB-2G(QFT)が有効であるとのエビデンスが確立され,接触者健診に組み込まれるようになった.小児においてもQFTはツ反の補助的・代替的検査方法となりつつある.
 今回我々は,成人の肺結核排菌者に接触した小学生8名に接触者健診を行った.まず登録直後の健診時に,全例にQFTとツ反を施行した.更に2か月後に同様の健診を行った.これらの健診の結果をもとに,感染の強く疑われる症例に胸部X-p・胸部CT検査を施行した.本方法にて,従来の方法では潜在性結核感染症者と診断される可能性のあった2名を肺結核発症患者と診断した.また同様に,潜在性結核感染症者と診断される可能性のあった2名を感染なしと判断し得た.
 今後,小児肺結核の臨床的特徴を考慮し,QFTや胸部CT検査を組み合わせた小児独自の接触者健診の方法を考えていく必要性を感じた.


【原著】
■題名
発達コホート研究における構造化された医師観察法とその有効性
■著者
科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)1),鳥取大学地域学部地域教育学科2),情報・システム研究機構統計数理研究所3)
関 あゆみ1)2)  石田 開1)  竹内 亜理子1)2)  前田 忠彦1)3)  小枝 達也1)2)

■キーワード
社会性, 発達障害, 観察法, コホート研究, 5歳児健診
■要旨
 社会技術研究開発センターでは「子どもの認知・行動発達に影響を与える要因の解明」において,社会能力の発達の解明を目的にコホート研究を行っており,鳥取研究グループは5歳を開始年齢とする幼児群の追跡調査を担当している.今回,大規模コホートでの実行可能性を考え,短時間で実施でき,評価者が異なっても安定した評価を得ることができるという観点から作成した5歳時の医師観察法について,発達障害疑い児の同定が可能となる基準設定に関して検討した.
 平成17年度に研究に参加した5歳児111名に対し,5つの領域(会話,動作模倣,協調運動,概念,行動制御)からなる医師観察を実施した.小集団での遊びの観察,保護者からの情報を含めた総合評価により注意欠陥多動性障害(AD/HD)7人,広汎性発達障害(PDD)4人,精神遅滞または特異的言語発達障害(MR/SLI)6人の発達障害疑い児を同定した.この疑い診断に対し,医師観察の領域・下位領域およびその組み合わせにより最も判別に有効な基準を求めた.AD/HDでは「行動制御」と「協調運動上肢」または「しりとり」の組み合わせ,PDDでは「協調運動・下肢」と「会話」「共感性」「用途」のいずれかの組み合わせ,MR/SLIでは「概念」を用いることで,それぞれの疑い群の感度を0.75以上,特異度を0.87〜0.99とし,かつ他の疑い群の感度が0.50以下となる基準を設定することができた.


【原著】
■題名
発達コホート研究における医師観察結果と質問紙法による発達評価との関係
■著者
科学技術振興機構社会技術研究開発センター1),鳥取大学地域学部地域教育学科2),情報・システム研究機構統計数理研究所3)
関 あゆみ1)2)  石田 開1)  竹内 亜理子1)2)  前田 忠彦1)3)  小枝 達也1)2)

■キーワード
社会性, 発達評価, 観察法, コホート研究
■要旨
 社会性発達の解明を目的とするコホート研究「子どもの認知・行動発達に影響を与える要因の解明」において,鳥取研究グループは幼児群の追跡調査を担当している.本研究における医師観察は幼児の全般的な発達の評価および発達障害疑い児の同定を目的とする.今回,標準化された発達評価質問紙との比較により5歳児医師観察法の発達評価としての妥当性を検証した.対象は平成17年度に医師観察を行った5歳児のうちKinder Infant Development Scale Type C(KIDS-C)の回答が得られた43名(男児22名,女児21名)である.
 ステップワイズ多重回帰分析では,医師観察の「会話」は言語理解の,「動作模倣」は対成人社会性の,「協調運動」は運動の,「概念」は言語理解の,発達年齢で最もよく説明された.発達障害疑い例を除く34名の解析でも同様の結果が得られた.医師観察の各領域の観察項目は目的とする健常児の発達の各側面を的確に捉えており,構成概念の妥当性が確認された.同時に全領域にわたって加算した総合スコアの内的一貫性が高い(α=0.84)ことから,医師観察法は全体として大まかな発達水準の評価としても用いることができると言える.しかし,総合スコアとKIDS-Cの総合発達年齢は非線形の相関を示しており,特に総合スコアの低い例では対人緊張や発達障害などの子ども側の要因を考慮し,より慎重に扱う必要がある.


【原著】
■題名
インフルエンザに対するノイラミニダーゼ阻害薬の有効性とその適正使用
■著者
小児感染症研究グループ
日比 成美  生嶋 聡  藤原 史博  綱本 健太郎  橋田 哲夫

■キーワード
インフルエンザ, ノイラミニダーゼ阻害薬, タミフル, リレンザ, 適正使用
■要旨
 【目的】インフルエンザA(FluA)およびB(FluB)に対するノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)の有効性を再評価し,その適正使用について考察した.【対象および方法】2007年の1〜4月にFluAあるいはFluBと診断された1歳から19歳の患者844人(FluA:467例,FluB:377例)を対象に臨床経過を調査し,治療群別に48時間解熱率(48FF),90%解熱時間(TRF 90%)を比較検討した(NAI群746人,Non-NAI群98人).NAI(オセルタミビル(Os),ザナミビル(Za))の処方については本人あるいはその家族の希望に従った.【結果】FluAの48時間解熱率(FF48)は,Non-NAI群が53.3%であったのに対し,NAI群ではOs 85.4%,Za 90.2%と著しく高率であった(p<0.01).90%解熱時間(TRF 90%)も,Non-NAI群では107時間であったのに対し,NAI群ではOs 58時間,Za 48時間と有意に有熱期間が短縮された(p<0.001).他方,FluBについてはいずれの解析でもNAIによる病期の短縮は観察されなかった.FluAに対するNAIの有効性をさらに解析したところ,年齢が6歳未満かつ診断までの最高体温が39.0℃以上の患者でのNon-NAI群では,NAI使用群に比べ著しく解熱が遅れ(48FF:25.0%,TRF 90%:120時間以上),逆に,年齢が6歳以上かつ最高体温が39.0℃以下の患者の場合には,NAIを使用せずとも速やかに解熱した(48FF:90.9%,90%TRF:48時間).【結論】FluAについてNAIは,明らかに有効な薬剤であるが,中にNAIを使用せずとも速やかに解熱するグループがあることが明らかになった.また,FluBに対してはNAIを使用する意義は少ないと思われる.今後さらに検討することによりNAIの適正な使用対象を明らかにする必要がある.


【原著】
■題名
携帯式電子記録メディアを用いた療育システム
■著者
柳川療育センター1),国際医療福祉大学大学院2),福島大学共生システム理工学類3),久留米大学医学部小児科4),聖マリア病院母子総合医療センター新生児科5),福岡市立こども病院小児神経科6),九州大学医学部小児科7)
糸数 直哉1)  高嶋 幸男1)2)  柴原 哲太郎3)  吉川 聡3)  松石 豊次郎4)  橋本 武夫5)  中島 正幸5)  花井 敏男6)  曳野 俊治7)

■キーワード
携帯式電子記録メディア, システム開発, 療育, 脳障害予防, 電子母子手帳
■要旨
 脳障害児やその危険性のある児(リスク児)の発育過程で得られた医療情報をコンピューターと電子記録メディアを用いて保存・蓄積しながら継続的に活用するために,個人が医療情報を携帯して伝達するシステムを確立した.このシステムを用いて,共同研究施設間で患者の正確な出生前および周産期の病歴と鮮明な神経画像を伝達し,情報が共有できることを確認した.患者の個人情報はメディアをパスワードで凍結し,本人もしくは保護者に携帯させることで保護できた.本システムを用いると,脳障害児やリスク児の病歴,神経画像や脳波といった大容量のデータを含む検査結果および治療歴などの医療情報を長期間にわたって保存・蓄積,携帯しながら閲覧することが可能で,詳細な経過観察や発達に伴う病態変化を正確に把握できる.このため,応用次第で本システムは,重症心身障害児・者の二次障害要因を解析することで障害進展防止や予防へ,またリスク児を解析することで高次脳機能障害や発達障害の病因解明へ発展できる可能性がある.また,一般小児や成人に対しても母子手帳や健康手帳のような活用が可能であり,公衆衛生にも応用できるので,広く普及することを期待したい.


【原著】
■題名
非医療従事者による心肺蘇生および自動体外式除細動器により救命しえたfallot四徴症心内修復術後患者の1例
■著者
財)日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院循環器小児科
木村 正人  西山 光則  朴 仁三  村上 保夫

■キーワード
非医療従事者, 心肺蘇生, 自動体外式除細動器, fallot四徴症, 植込み型除細動器
■要旨
 非医療従事者による心肺蘇生(CPR)および自動体外式除細動器(AED)により救命しえたfallot四徴症心内修復術後患者の1例を経験した.症例は16歳女児.心内修復術を14歳で受けた.2度の大動脈弁逆流(AR)が残存していたが,その他の経過は良好で,血管拡張剤(エナラプリル)を服薬し外来でフォローされていた.体育の授業でランニングをした後に突然失神した.直ちに体育教諭によりCPRとAEDによる心室細動(VF)の除細動が施行され,蘇生した後に近医救急病院を経て当院に搬送された.蘇生後の神経学的な後遺症はなく,当院入院後に大動脈弁置換術(AVR)および蘇生からの生還例として植込み型除細動器(ICD)植込み術を施行した.


【原著】
■題名
新生児同種免疫性血小板減少症の経過観察中に急性巨核芽球性白血病を発症した新生児の1例
■著者
秋田赤十字病院小児科1),中通総合病院小児科2),秋田大学医学部小児科3)
安達 裕行1)  新井 浩和1)  伊藤 智夫1)  久保田 弘樹1)  松田 武文1)  後藤 良治1)  平山 雅士2)  渡辺 新2)  高橋 勉3)

■キーワード
新生児同種免疫性血小板減少症, 抗HLA抗体, 急性巨核芽球性白血病
■要旨
 我々は抗HLA-B35抗体による新生児同種免疫性血小板減少症と診断し経過観察中に急性巨核芽球性白血病を発症した新生児例を経験したので報告する.
 症例は日齢4の正期産男児.黄疸が増強し光線療法のため当科に入院したが,入院時検査で血小板4.1万/μlと減少を認め,母血清中に父血小板と反応する抗HLA-B35抗体を認めたことから新生児同種免疫性血小板減少症と診断した.しかし治療後1か月を経過しても血小板減少は改善せず,日齢49に肝脾腫と末梢血芽球の著増を認め,急性巨核芽球性白血病と診断した.
 新生児同種免疫性血小板減少症の診断においては,他の血小板減少症を除外する必要があるが,除外は必ずしも容易ではなく,自験例のようにのちに悪性疾患であることがわかる場合もあるので,免疫血清学的に診断できたとしても,血小板の回復を確認するまでは経過観察を継続することが重要である.


【原著】
■題名
巨大卵巣成熟嚢胞奇形腫により両側閉塞性腎症を呈し腎機能低下にいたった1例
■著者
北海道大学大学院医学研究科小児科学分野1),北海道社会保険病院小児科2)
岡本 孝之1)  佐々木 聡1)  伊東 広臨1)  椿 淳子2)  澤田 博行2)  有賀 正1)

■キーワード
卵巣嚢腫, 水腎症, 腎不全
■要旨
 症例は14歳女児.11歳時から腹痛,下痢,便秘などを訴えていた.13歳時から嘔気の症状が出現し徐々に増強した.近医にて原因不明の腎機能低下,両側水腎症,骨盤腔内腫瘤を指摘され当科紹介となった.入院時腎機能低下を呈し,画像上骨盤腔内を占拠する巨大な多房性卵巣嚢腫を認めた.嚢胞による尿管圧排から両側閉塞性腎症を呈しており,直ちに内視鏡下嚢腫核出術を施行した.嚢腫内成分を吸引すると同時に尿流出を認め,術後速やかに腎機能,消化器症状は改善した.卵巣嚢腫が閉塞性腎症を来すまでに巨大化して発見されることは稀である.これまでの報告と併せて検討する.


【原著】
■題名
浴槽用浮き輪による乳児溺水事故の3例
■著者
広島市立広島市民病院循環器小児科1),同 小児科2),岡山赤十字病院小児科3)
中川 直美1)  鎌田 政博1)  藤原 倫昌2)  関本 員裕2)  木口 久子1)  小川 和則2)  伊予田 邦昭2)  楢原 幸二3)

■キーワード
浴槽用浮き輪, 溺水, 乳児, 事故防止, 事故情報集約システム
■要旨
 浴槽用浮き輪を使用し溺水,溺死した乳児3例を経験した.一緒に入浴していた保護者が着衣のために浴室を出て目を離した間に転覆し,事故が発生した.
 今回の事故の経緯を国民生活センターに報告したところ,聞き取り調査および再現実験が行われた.浴槽用浮き輪は重心が高いため不安定で,かつ一旦転覆すると元に戻りにくく,また足の固定がかえって致命的になる可能性があることが示され,2007年7月5日,正式に危害情報として公表された.
 事故情報を報告する手段,報告先が必ずしも明確ではなく,より幅広く事故情報を集約するシステムの確立が必要と考えられる.


【論策】
■題名
地域中核施設における“準小児集中治療室”の意義
■著者
埼玉医科大学総合医療センター小児科
長田 浩平  櫻井 淑男  浅野 祥孝  小林 貴子  荒川 浩  森脇 浩一  田村 正徳

■キーワード
小児, 集中治療, 救急医療, 大学附属病院, 医学教育
■要旨
 当院では平成17年11月に小児科病棟内に8床の高度な小児呼吸循環管理が出来る病室(以下“準小児集中治療室”)を開設し,一般・救急外来からの重症小児患者と共に急性増悪した在宅呼吸管理患者などを主な対象として小児救急に密着した集中治療を目指し運営を開始した.平成17年11月から平成18年12月までの期間に準小児集中治療室に入院した延べ221例は小児科総入院患者数の12.8%を占め,主な原疾患は呼吸器疾患101例,神経疾患58例,消化器疾患32例で全体の86.2%を占めていた.人工呼吸管理を必要としたのは45例で,“準小児集中治療室”の総入院数の約20%を占めた.平均人工呼吸管理期間は約6.0日(0日〜17日)であった.死亡例は221例中3例であった.入室者は殆どが院外からの緊急入院患者か在宅呼吸療法中の患者であり,NICU長期入院中の患者の在宅療法への移行にも大きく貢献していた.急務の課題となっている我が国の小児救急体制と周産期医療ネットワークを両立して発展させるうえで,このような地域に開かれた24時間体制で入院可能な小児の呼吸循環管理室を各地域に確立することが有用であると考えられた.

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