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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:09.6.8)
第113巻 第6号/平成21年6月1日
Vol.113, No.6, June 2009
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総 説 |
1. |
アレルギー疾患における漢方薬の作用機序に関する1考察
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高橋 秀実 897 |
2. |
保健所事例からみた育児支援の課題に関する研究
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木下 節子,他 902 |
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岩田 欧介,他 909 |
原 著 |
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漢人 直之,他 923 |
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布施 茂登,他 928 |
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田村 啓成,他 935 |
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蓮井 正樹,他 939 |
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植松 悟子,他 945 |
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野末 裕紀,他 954 |
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遠藤 起生,他 959 |
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五十嵐 岳宏,他 963 |
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稲垣 真一郎,他 967 |
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佐々木 吉明 972 |
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地方会抄録(北海道,秋田,山形,千葉,熊本,山梨,北陸,佐賀)
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976 |
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1044 |
日本小児科学会薬事委員会 |
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RSウイルス感染予防を必要とする小児に関する全国調査の解析
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1046 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No.12 急性アルコール中毒
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1049 |
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1050 |
小児科専門医制度に関する規則・小児科専門医制度に関する規則施行細則(改訂)
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1069 |
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1070 |
【原著】
■題名
喘鳴を繰り返す乳幼児における誤嚥の検討
■著者
国立病院機構福岡病院小児科 漢人 直之 小田嶋 博 林 大輔 田場 直彦 村上 洋子 原田 純子 手塚 純一郎 本村 知華子 岡田 賢司 柴田 瑠美子 西間 三馨
■キーワード
誤嚥, 喘鳴, 乳児喘息, 気管支喘息
■要旨
乳幼児は喘鳴を呈しやすく,その鑑別は必ずしも容易ではない.今回我々は乳児喘息の治療を行っても喘鳴を反復する24か月未満の児21例に対し嚥下造影を行ったところ,14例(66.7%)と高率に誤嚥を認めた.嚥下造影で誤嚥が認められた際に咳嗽を認めた例は1例もなく,検査上での初回嚥下時に誤嚥を認めた例も1例もなかった.
誤嚥例では,喘鳴が覚醒時に出現しやすく睡眠時には少ない例(71.4%),哺乳・食事後に喘鳴が増悪する例(57.1%)が多く,喘鳴の発症月齢は平均2.9±1.7か月であった.造影検査時点で肺炎の既往を認めたのは8例(57.1%)であったが,6例(42.9%)で肺炎既往を認めなかった.また誤嚥の予防の結果,喘鳴の出現頻度が低下したことから,誤嚥が喘鳴に関与していることが示唆された.
乳児期早期に発症する反復性喘鳴を呈する児では誤嚥を伴う例が少なからず存在し,乳幼児の喘鳴の鑑別診断を行う上で誤嚥は非常に重要であると考えられる.
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【原著】
■題名
小児の心エコー検査による冠動脈内径の標準曲線の作成LMS法(歪度,中央値,変動係数により分布を変化させる統計学的手法)による
■著者
NTT東日本札幌病院小児科 布施 茂登 森井 麻祐子 大柳 玲嬉 黒岩 由紀 母坪 智行 森 俊彦
■キーワード
川崎病, 冠動脈, LMS法, 正常値, 小児
■要旨
川崎病の冠動脈病変をより詳細に診断することを目的として,心エコー検査による小児の冠動脈内径の標準曲線を作成した.対象は当院の小児心臓外来を受診した患者のなかで,冠動脈病変のない患者544名.心エコー検査時に冠動脈内径を計測した.統計学的方法は,冠動脈内径の値をさまざまな種類の分布を正規分布化することのできるBox-Cox変換を用い,冠動脈内径の分布を正規分布化した.正規分布化したために歪み度をもったデータから平滑化曲線を作成することができるLMS法により,最適モデルのZスコア(+2,+1,0,−1,−2)曲線を作成した.年齢,体表面積に対する冠動脈内径の中央値(M),Zスコア+2,−2およびL(歪度),S(変動係数)を表に示した.川崎病における冠動脈病変の診断に際し,心エコー検査によるこれらの冠動脈内径の標準曲線は有用になると思われる.
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【原著】
■題名
小児特発性ネフローゼ症候群における細菌性腹膜炎
■著者
東京都立清瀬小児病院腎臓内科 田村 啓成 石倉 健司 濱崎 祐子 幡谷 浩史 本田 雅敬
■キーワード
ネフローゼ症候群, 細菌性腹膜炎, 腹腔穿刺, 肺炎球菌
■要旨
特発性ネフローゼ症候群において感染症は代表的な合併症であり,このうち細菌性腹膜炎は敗血症を併発する事も多く,致死率の高い重篤な小児期特有の合併症である.我々は1999年1月から2006年12月までの8年間,清瀬小児病院に入院した特発性ネフローゼ症候群の症例中,細菌性腹膜炎を発症した全12例を抽出し後方視的に解析,検討を行った.発症時の年齢の中央値は10.90歳,最少年齢は0.92歳,最長年齢は16.08歳であった.腹水貯留状態,発熱,腹痛の3徴候を施行基準として腹腔穿刺を施行したところ全例で腹膜炎の診断が確定した.この3徴候の出現は腹膜炎発症を示す重要な徴候であると考えられた.腹膜炎の代表的な付随症状の筋性防御を腹腔穿刺時に認めた症例はなく,筋性防御の出現は腹膜炎の早期診断の基準にはなり得ないと考えた.起因菌は肺炎球菌が5例と最も多く,これらを含むグラム陽性球菌を起因菌とした症例は起因菌が判明した9例中7例と大半を占めた.診断確定直後より抗生剤による治療を行い全例で72時間以内の解熱および全身状態の改善を認めた.この良好な結果は早期診断,早期治療に由来するものと考えられ,腹水貯留状態,発熱,腹痛の3徴候出現時における腹腔穿刺施行は腹膜炎の早期診断の観点から適当なタイミングの施行と考えられた.
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【原著】
■題名
インフルエンザ流行時期における学級閉鎖の有効性
■著者
小児科月一会 蓮井 正樹 岡本 力 北谷 秀樹 河野 晃 高橋 謙太郎 田丸 陽一 中村 英夫 半井 孝幸 西田 直己 野崎 外茂次 林 律子 藤澤 裕子 宮森 千明 武藤 一彦 村田 明聡 村田 祐一 山上 正彦 横井 透 渡部 礼二
■キーワード
インフルエンザ, 学級閉鎖, 欠席率
■要旨
目的:インフルエンザ流行時期における学級閉鎖の有効性を統計学的に検討した.
方法:2005年から2007年1月〜3月にかけて1学級20名以上の学童が在籍している石川県内の小学校を対象に出欠表から日々の学級別欠席率を調査した.その欠席数はその地域のインフルエンザの流行パターンと一致していた.学級の欠席率が20%を超えた日を1日目とし,2日目から2日間の休業をはさんで4日目に授業のあった場合を閉鎖(2日)群,4日連続して授業のあった場合を非閉鎖(2日)群としてその前後の欠席率の差(改善率)を比較した.同様に,3日間の休業をはさんで5日目に授業のあった場合を閉鎖(3日)群として,5日連続授業のあった非閉鎖(3日)群と比較した.
結果:閉鎖(2日)群は非閉鎖(2日)群と比べて欠席率は改善しなかったが,閉鎖(3日)群は非閉鎖(3日)群と比較して,欠席率の改善は有意に高かった(p=0.0041).
結語:インフルエンザ流行時期に学級の欠席率が20%を超えた時点で2日間の学級閉鎖を行っても欠席率の改善は期待できないが,3日間の閉鎖では改善の効果が期待できることが統計学的に示された.
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【原著】
■題名
小児軽症頭部外傷と画像検査に関する研究
■著者
国立成育医療センター総合診療部救急診療科1),同 手術集中治療部2),同 脳神経外科3) 植松 悟子1) 清水 直樹2) 安 炳文1) 尾崎 由佳1) 唐木 千晶1) 北岡 照一郎1) 黒澤 茶茶1) 黒澤 寛史1) 長井 孝二郎1) 新田 雅彦1) 濱口 正道1) 平本 準3) 上村 克徳1) 阪井 裕一2)
■キーワード
小児軽症頭部外傷, 頭蓋骨骨折, 頭蓋内損傷, 予測因子, 画像診断適応基準
■要旨
小児の頭部外傷は,救急診療を受診する原因として最も多い疾患のひとつであり,頭蓋内損傷の可能性が潜んでいるため,慎重に診療すべき疾患でもある.しかし,わが国では,その診療指針は未だに確立されておらず,不適切あるいは過剰な画像検査が問題となる.今回,当院救急センターでの小児軽症頭部外傷に対する画像検査の頭蓋内損傷の検出率と,受傷機転および症状との関連性について検討を行った.
2002年3月から2003年5月までの15か月間に当院救急センターを受診した軽症頭部外傷606症例について,診療録を後方視的に検討した.年齢,受傷機転,受診時意識レベルならびに各種症状,創部所見と画像検査所見について調査した.頭蓋骨X線検査は228例(37.6%),頭部CT検査は103例(17.0%)に施行されていた.その結果としては,単独頭蓋骨骨折7例(3.1%),頭蓋内損傷4例(3.9%)が検出されるに留まった.頭蓋内損傷は増悪傾向のある頭痛との間に,頭蓋骨骨折は,転落の高度,外傷部位,創部腫脹との間に,それぞれ有意な関連が認められた.画像検査が陽性であった症例では,受傷機転のエネルギーが高かった.
小児の軽症頭部外傷の診療に際しては,受傷機転のエネルギーの度合いや,増悪する頭痛などの症状を考慮して,画像検査の実施を判断することが,過剰な放射線被曝と検査のための鎮静およびその副作用を防ぐために重要であると考えられた.
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【原著】
■題名
患者側からみた小児救急外来におけるトリアージシステムの評価
■著者
筑波メディカルセンター病院小児科 野末 裕紀 今井 博則 斎藤 久子 青木 健 市川 邦男
■キーワード
トリアージ, 小児救急, アンケート, 看護師
■要旨
小児救急外来で実施している看護師によるトリアージシステムについて保護者にアンケート調査を行い,本システムに対する患者側の理解と評価について検討した.診察終了後の保護者1,438人中1,281人(89%)から有効な回答が得られた.トリアージの概念は,59%の保護者が知っていた.実際に看護師により判断されたトリアージ区分に対しては,「妥当な判断である」とする評価が95%と大勢を占め,トリアージ区分別では緊急度が低い群ほどトリアージ結果を妥当と感じている保護者が多かった.トリアージシステム自体に対する評価は「賛成」が79%と多く,「反対」は1%であった.理にかなった良いシステムと感じている保護者が多く,医師の診察前に看護師と接することにより待ち時間中の不安が和らぐという意見も多かった.一方,看護師により適切な判断がなされるか不安という意見や待ち時間があまりに長くなるようなら反対とする意見もあり,トリアージナースのスキルアップや待ち時間が長くなる非緊急患者への対応は考慮すべき課題であった.トリアージシステムの患者側の受け入れは良好であり,さらにトリアージには保護者に対する教育的効果も有する可能性があり,小児を対象とする救急病院では積極的に導入すべきと考えられた.
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【原著】
■題名
Episodic angioedema with eosinophiliaの1例
■著者
竹田綜合病院小児科 遠藤 起生 長澤 克俊 小林 正悟 牛嶋 裕美子 金子 真利 川村 哲夫 藤木 伴男
■キーワード
Angioedema, Eosinophilia, Episodic type, Hypereosinophilic syndrome, 小児
■要旨
症例は2歳の男児.血管性浮腫,蕁麻疹,体重増加を約1か月の周期で繰り返した.血液検査所見では,末梢血白血球数が77,700/μlと増加し,そのうち好酸球が84%と著明に増加しており,IgMが268 mg/dlと高値であった.皮膚病理所見で好酸球の浸潤を認め,他臓器には病変を認めず,Episodic angioedema with eosinophiliaと診断した.
自然軽快することが多い予後良好な疾患で,海外では幅広い年齢でみられているが,本邦での小児の報告は見当たらない.
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【原著】
■題名
ヒトメタニューモウイルス重症肺炎に罹患したムコリピドーシスII型の1例
■著者
市立豊中病院小児科 五十嵐 岳宏 笹瀬 紗知子 福島 文 河本 浩二 佐藤 恵実子 川上 展弘 吉川 真紀子 徳永 康行 松岡 太郎
■キーワード
ヒトメタニューモウイルス, 重症肺炎, ムコリピドーシスII型, 人工換気
■要旨
ヒトメタニューモウイルス(Human metapneumovirus以下,hMPV)による重症肺炎に罹患し,集中治療を要したムコリピドーシスII型(I-cell病)の1例を経験したので報告する.患児は7歳の女児で,ムコリピドーシスII型の症状として胸郭変形と弁膜症を合併していた.第1病日に発熱と咳嗽,喘鳴が出現し,その後急激に症状が悪化し,翌日に呼吸不全で入院した.入院後,人工呼吸器管理下にて抗生剤,ステイロイド,免疫グロブリン,シベレスタットにて集中治療をおこなった.入院時の気管吸引痰よりhMPVのウイルス核酸が検出され,重症肺炎の原因を特定することができた.本症例により,基礎疾患を有する場合,hMPVが喘鳴を伴う重症呼吸器感染症を発症しうることが示された.
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【原著】
■題名
末梢血泡沫細胞と頭部MRIでの髄鞘化遅延を認めたGM1ガングリオシドーシスの1例
■著者
神奈川県立こども医療センター神経内科1),同 遺伝科2),同 検査科3),同 放射線科4),同 病理科5),(独)産業技術総合研究所糖鎖医工学研究センター細胞制御解析チーム6),鳥取大学生命機能研究支援センター遺伝子探索分野7) 稲垣 真一郎1) 小坂 仁1) 辻 恵1) 鮫島 希代子1) 井合 瑞江1) 山田 美智子1) 山下 純正1) 黒澤 健司2) 永井 淳一3) 相田 典子4) 田中 祐吉5) 豊田 雅哲6) 中村 充6) 難波 栄二7)
■キーワード
ライソゾーム病, β-ガラクトシダーゼ, GM1ガングリオシドーシス, 末梢血泡沫細胞, 髄鞘化遅延
■要旨
我々は,発達遅滞を主訴に来院し,末梢血細胞では空砲化を認め,頭部MRIでは髄鞘化遅延のみを呈し,診断に苦慮したGM1ガングリオシドーシスの1例を経験した.本児は,1歳時の発達遅延,巨舌や下肢の拘縮を呈し,レントゲン写真では,椎体の変形が見られた.末梢血および骨髄塗抹標本で泡沫細胞を認め,ライソゾーム病が疑われた.しかし,頭部MRIでは髄鞘化遅延を認めたのみであったため,当初はシアル酸転送異常の検索を進めた.2歳時の頭部画像検査では,髄鞘化遅延に加え,視床の異常信号を認めたため,β-ガラクトシダーゼの酵素活性測定を行い,GM1ガングリオシドーシスと診断した.遺伝子解析では,D448V/W582Xのいずれも新規の遺伝子変異をコンパウンドへテロ接合に有していた.患児は現在3歳になり,発達の退行や体重減少が見られ,中枢性の無呼吸発作に対して非侵襲的人工換気療法を行っている.
GM1ガングリオシドーシスの頭部画像所見では,視床の異常信号が知られているが,初期においては髄鞘化遅延のみを来たす場合があり,留意する必要があると考える.
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【原著】
■題名
C型慢性肝炎に対して抗ウイルス療法を行った重症心身障害者の1例
■著者
北見中央病院小児科 佐々木 吉明
■キーワード
C型慢性肝炎, ペグインターフェロンα-2b, リバビリン, 抗ウイルス療法, 重症心身障害者
■要旨
今回我々は高ウイルス量でGenotype 2bのC型慢性肝炎の重症心身障害者(重障者)に対して,抗ウイルス療法としてペグインターフェロン(PEG-IFN)α-2bならびにリバビリン併用療法を行った.症例は,20歳 女性.原疾患はArnold-Chiari奇形II型で,生後まもなく髄膜瘤と水頭症の手術を受け,その際輸血をされた.呼吸障害のため2005年12月に気管切開術,喉頭気管分離術を施行される際,術前検査にてHCV抗体陽性と判明し,その後C型慢性肝炎と診断した.原疾患を考慮の上,十分なインフォームド コンセントの後,C型慢性肝炎への抗ウイルス治療ガイドラインにより2007年1月よりPEG-IFNα-2b(1.5 μg/kg/週)とリバビリン(400 mg/日)の併用療法を開始した.経過中副作用として精神状態の変調を来たしたため12週間の治療期間で中断した.原疾患による長期予後が望める重障者においては,健常者同様にC型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法を考慮すべきであると考える.
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