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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:09.5.8)
第113巻 第5号/平成21年5月1日
Vol.113, No.5, May 2009
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総 説 |
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児玉 浩子 795 |
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鈴村 宏,他 808 |
原 著 |
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有馬 聖永,他 817 |
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津田 悦子,他 821 |
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名木田 章,他 827 |
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梅本 多嘉子,他 834 |
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長井 静世,他 838 |
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上田 文代,他 843 |
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美根 潤,他 849 |
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野村 寿博,他 857 |
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山田 健治,他 861 |
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富田 瑞枝,他 864 |
短 報 |
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東道 公人,他 867 |
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870 |
日本小児科学会倫理委員会 |
第6回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラム |
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子どものいのちの輝きを支えるために─重度障害をもった子どもの人権と尊厳をどのように守るか
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881 |
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893 |
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894 |
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895 |
【原著】
■題名
気管支喘息発作時の細菌性気管支肺感染の関与
■著者
千葉市立海浜病院小児科1),千葉県こども病院アレルギー科2),千葉大学大学院医学研究院小児病態学3) 有馬 聖永1) 黒崎 知道1) 武田 紳江1) 山口 賢一1) 金澤 正樹1) 星岡 明2) 鳥羽 剛2) 河野 陽一3)
■キーワード
気管支喘息発作, 細菌性気管支肺感染症, 洗浄喀痰培養, ステロイド療法
■要旨
2004年1月から2006年6月に当科に入院した気管支喘息発作症例206例を対象に気道感染の頻度,細菌性気管支肺感染の原因菌,吸入および全身ステロイド療法による影響について洗浄喀痰培養の成績を用いて検討した.入院時の原因菌分離率は32%であり,Haemophilus influenzae,Streptococcus pneumoniaeが主体であった.また,管理治療としての吸入ステロイドや発作治療としてのステロイド全身投与の有無により原因菌分離率に差は認めなかった.これらのことより細菌性気管支肺感染の頻度は喘息発作時に特に増加することはなく,更に発作時,管理治療としてのステロイド療法によっても影響されないものと考えられた.
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【原著】
■題名
小児科心臓移植を申請した患者の予後の検討
■著者
国立循環器病センター小児科1),静岡県立こども病院循環器科2),新潟県立新発田病院小児科3) 津田 悦子1) 小野 安生2) 塚野 真也3) 矢崎 諭1) 北野 正尚1) 宮崎 文1) 黒嵜 健一1) 大内 秀雄1) 山田 修1)
■キーワード
拡張型心筋症, 拘束型心筋症, 左室補助人工心臓, 心臓移植, β-ブロッカー
■要旨
1992年から2007年までに,国立循環器病センター小児科から日本循環器学会(日循)に心臓移植適応を申請した27例(男16例,女11例)の予後について検討した.生存は16例(59%)で,死亡は11例(41%)であった.心臓移植は15例(56%)(男7例,女8例)に施行され,内訳は渡航移植13例(87%),国内移植2例(13%)であった.左室補助人工心臓(LVAS)は,7例(26%)に装着された.移植時の年齢は,1歳から21歳(中央値5歳)で,日循申請から移植までの期間は74日から884日(中央値243日)で,移植後5年生存率は78%であった.死亡例の内訳は,移植後3例,渡航後待機中2例,渡航移植準備中1例,国内移植待機中2例,移植の手続きにいたることなく急速に悪化した3例であった.国内移植待機中の死亡例のうち,1例はLVAS装着中脳出血のため死亡し,1例は自宅待機中突然意識を失い倒れた.また,3例は心機能の改善により移植の適応から離脱した.渡航移植の場合,遠距離の移動が患者の状態を増悪しうる.一方,国内移植においては,ドナーが少ないために移植待機期間が長くなり,自宅待機中の心事故の発生やLVAS装着中の合併症が問題である.
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【原著】
■題名
特発性小腸重積における原因と非観血的治療についての研究
■著者
水島中央病院小児科 名木田 章 竹迫 倫太郎 小坂 康子 坂田 理香 田中 勲 小林 嘉一郎
■キーワード
特発性小腸重積, 大腸菌産生毒素, 非観血的治療
■要旨
小児の特発性小腸重積の原因と非観血的治療について研究した報告はない.そこで,これら二点について前方視的に検討した.[対象と方法]特発性小腸重積の12例を対象にした.性別は男児11例と女児1例で,月齢分布は12から131か月であった.小腸分布領域に多重輪層間三日月徴候がみられ,腸管壁肥厚以外の器質的異常がない場合に本症と診断した.一般臨床検査の他に便中大腸菌の産生する志賀毒素と細胞膨化致死毒素の検出を試みた.治療は,探触子による重積部への圧迫,ニトログリセリンの経皮投与か抗コリン剤の追加静注投与後の圧迫処置,経腹壁的用手整復処置の順に実施された.[結果]整復前後の超音波検査にて急性腸炎を示唆する所見が全例に認められた.微生物学的に有意な結果は得られなかった.全患児は外科的整復処置を要しなかった.12例中3例に自然整復がみられた.他の9例のうち,2例は探触子による圧迫のみ,6例は薬剤投与後の圧迫処置,1例は経腹壁的用手整復処置を受けた.この9例中,整復後再発した2例はそれぞれ薬剤投与後圧迫処置と経腹壁的用手整復処置を受けた.今回の治療終了後に再発した患児は現在までいない.[結論]これらのことは,小児における特発性小腸重積の誘因が急性腸炎であり,非観血的治療が同重積に有用であることを示唆している.
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【原著】
■題名
BCG接種後に結核疹を呈した5か月例
■著者
徳島赤十字病院小児科 梅本 多嘉子 七條 光市 井上 奈巳 杉本 真弓 松浦 里 東田 好広 渡辺 力 中津 忠則 吉田 哲也
■キーワード
BCG接種, 結核疹, 類上皮細胞肉芽, 結核菌PCR法, 自然軽快
■要旨
BCG接種後に結核疹を呈した5か月例を経験した.BCG接種約1か月半後に,高熱と全身性の発疹が出現した.粟粒大の紅色丘疹と膿疱が多数集簇した病変が全身に散在しており,BCG接種痕には紅斑と痂皮化を認めた.皮膚生検を施行したところ,組織学的には類上皮細胞肉芽を認めた.しかし,皮膚膿部からは結核菌は培養されず,結核菌PCR法は陰性であった.BCG接種による結核疹と診断し,経過観察したところ,約1か月間で発疹は消退した.結核疹は稀な疾患であるが,診断されないまま軽快している症例もあると考えられる.BCG接種後に結核疹を発症する事は稀であり,若干の文献的考察と共に報告する.
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【原著】
■題名
集学的アプローチにより腫瘍核出術をしえた局所型先天性高インスリン血症
■著者
京都大学医学部附属病院小児科1),同 肝胆膵移植外科2),同 小児外科3),同 放射線科4),木沢記念病院小児科5),同 放射線科6),福井県済生会病院小児科7),公立能登総合病院小児科8) 長井 静世1) 依藤 亨1) 土井 拓1) 河井 昌彦1) 百井 亨1) 岡本 晋弥3) 土井 隆一郎2) 中本 裕士4) 増江 道哉5) 加古 伸雄6) 岡本 浩之7) 加藤 英治7) 長沖 優子8) 上本 伸二2) 中畑 龍俊1)
■キーワード
局所型高インスリン血症, 遺伝子診断, 腫瘍核出術, 選択的膵流入動脈内カルシウム注入法(ASVS=arterial stimulation and venous sampling), 18F-fluoro-L-dihydroxyphenylalanine positron emission tomography([18F]-DOPA PET)
■要旨
先天性高インスリン血症(Congenital hyperinsulinism,CHI)のうち,膵β細胞膜上のATP感受性カリウム(KATP)チャネル遺伝子の変異によるKATP-CHIは最も頻度が高い.従来,ジアゾキシドやソマトスタチンアナログによる内科的治療が無効のCHIの多くに,95%以上の膵亜全摘術が行われてきたが,術後低血糖の残存,遠隔期糖尿病の発症が問題であった.近年,KATP-CHIの約40%から70%が局在型であると知られるようになり,欧米の先進施設では,積極的な術前診断と腫瘍の部分摘出により後遺症なく完治する症例が増えている.しかし本邦では,ほとんどの症例で,不十分な術前診断の下,膵亜全摘が行われている.今回我々は,生後1か月で発症し,ジアゾキシド無効,オクトレオチド部分的反応性で,低血糖発作を繰り返すCHIの1歳6か月女児に対し,遺伝子診断により局所型を疑い,[18F]-DOPA PETと選択的動脈内カルシウム注入法にて腫瘍の局在を膵鉤部に絞り込み,術中組織診断を繰り返しながら核出術を行った.残存低血糖を認めず,遠隔期糖尿病発症のリスクなく治癒したと考えられた.局所型CHIの治療に対しては,遺伝子診断,および小児科,放射線科,小児外科,病理医の集学的アプローチ(multidisciplinary approach)が必要である.
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【原著】
■題名
骨髄移植治療後に外反膝を発症したムコ多糖症VI型の1歳5か月例
■著者
湘南鎌倉総合病院小児科 上田 文代 田苗 綾子 床枝 康伸 大槻 則行
■キーワード
腰椎亀背, Alder-Reilly異常, 早期診断, ムコ多糖症VI型(Maroteaux-Lamy症候群), 骨髄移植
■要旨
腰椎亀背を主訴に来院した1歳5か月の女児に多発性異骨症と軽度のガーゴイル顔貌を認め,ムコ多糖症を疑い精査した.末梢血のMay-Giemsa染色にて好中球細胞質の顆粒化(Alder-Reilly異常)を認め,ムコ多糖症VI型(Maroteaux-Lamy症候群)が疑われた.尿中総ウロン酸高値,デルマタン硫酸の異常排泄,白血球中アリルスルファターゼB低値より早期に確定診断に達し,骨髄移植による早期治療を選択できた.
1歳11か月時に骨髄移植施行,2歳7か月時に治療効果を評価した.亀背とガーゴイル顔貌は改善され,肝脾腫,関節拘縮,角膜混濁は消失した.1歳5か月時,身長73.5 cm(−1.85SD),骨年齢9か月であったが,2歳7か月時,身長80.0 cm(−2.8SD),骨年齢2歳であり成長率5.3 cm/年であった.歩行は正常化,声が鼻にかからなくなり会話は極めて上手で知能は治療前と同様に正常である.今回,1歳時に気づかなかった外反膝が明確化し大腿脛骨角153度で,将来,整形外科的矯正が必要と思われる.
ムコ多糖を排除後の,この患者の成長障害とその他の成人に達するまでに出現してくる種々の症状に対しては,定期的かつ長期にわたる観察が必要である.
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【原著】
■題名
インフルエンザワクチン接種後にみられたてんかん3例の病態の検討
■著者
静岡てんかん・神経医療センター小児科 美根 潤 高橋 幸利 高橋 宏佳 大谷 早苗 池田 浩子 久保田 裕子 今井 克美 藤原 建樹
■キーワード
インフルエンザワクチン, てんかん, ステロイドパルス療法, Granzyme B, 細胞障害性Ts細胞
■要旨
インフルエンザワクチン後に極めて稀ながら,てんかんを認めることがある.その病態と治療を検討するために,インフルエンザワクチン接種後にみられたてんかん3症例で,治療と髄液免疫マーカーを検討した.
3症例ともインフルエンザワクチン接種後3日目よりてんかんを認め,Granzyme Bが髄液中で高値であったことから,細胞障害性T細胞の関与が考えられた.症例2では,細胞障害性T細胞に加えて,IL-6,INF-γなども上昇しており,Th1細胞の関与も考えられた.3例中症例1・2では,50〜60病日にステロイドパルス療法を行い,発作及び知的予後は良好である.症例1・3では調節性T細胞が分泌するIL-10が髄液中で低値であった.
インフルエンザワクチン接種後にてんかんを認めた場合,自己免疫機構の関与を早期に検討する必要がある.
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【原著】
■題名
HPA-3a抗原不適合による新生児同種免疫性血小板減少症の1例
■著者
国立病院機構埼玉病院小児科 野村 寿博 真路 展彰 上牧 勇
■キーワード
新生児同種免疫性血小板減少症, HPA-3a抗原, 適合血小板, M-MPHA法
■要旨
HPA-3a抗原不適合による新生児同種免疫性血小板減少症neonatal alloimmune thrombocytopenia(NAIT)の1例を経験した.ガンマグロブリンと交換輸血を行ったが十分な効果が得られなかった.磁性粒子混合受身赤血球凝集法(magnetic-mixed passive hemagglutination;M-MPHA)を用いて,HPA-3a抗原陰性の適合ヒト血小板濃厚液を短時間で検索することができ,有効な止血効果が得られた.NAITの治療として確実な止血効果が期待できるのは母体洗浄血小板輸血と,HPA適合ドナー由来の適合血小板輸血である.HPA-3a抗原不適合によるNAITの場合,M-MPHA法により,在庫血小板から速やかに適合血小板を検索でき,輸血を行うことが可能である.
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【原著】
■題名
PFGEにより同一菌株を証明したMRSAによる反復性腹膜透析関連腹膜炎の1例
■著者
島根大学医学部小児科1),わたなべこどもレディースクリニック2) 山田 健治1) 竹谷 健1) 堀江 昭好1) 葛西 武司1) 渡辺 浩2) 山口 清次1)
■キーワード
腹膜透析関連腹膜炎, MRSA, パルスフィールドゲル電気泳動法, 出口部感染, バイオフィルム
■要旨
症例は17歳男子.巣状糸球体硬化症による末期腎不全で12歳から腹膜透析(PD)を導入している.PD開始後間もなくよりMRSAによるPDカテーテル出口部感染を繰り返していた.PD開始5年目に,3か月の間隔をあけて,MRSAによるPD関連腹膜炎を2回発症した.どちらも出口部感染を伴い,PD排液および出口部からMRSAが検出された.バンコマイシン腹腔内間欠投与により腹膜炎は速やかに治癒した.PD排液および出口部から検出されたすべてのMRSAはパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)により,遺伝的に同一菌株であることが証明された.同一菌株のMRSAによる出口部感染,腹膜炎を繰り返すことより,PDカテーテル入れ替え術を施行し,順調にPD療法を継続し得た.ブドウ球菌などによる反復性PD関連感染症の場合,カテーテル抜去の必要性を判断する材料として,PFGEを用いた遺伝的同一菌株の証明は非常に有用度の高い検査の一つと考えられた.
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【原著】
■題名
水腎水尿管症を伴わず幼児期から腎盂腎炎を繰り返した腎性尿崩症の1例
■著者
独立行政法人国立病院機構埼玉病院小児科 富田 瑞枝 池宮城 雅子 野村 寿博 真路 展彰 加藤 真由美 上牧 勇
■キーワード
バゾプレッシン2受容体異常, 腎性尿崩症, 腎盂腎炎
■要旨
腎盂腎炎は,腎性尿崩症の稀な合併症の一つである.これまでの報告では,腎盂腎炎が問題となってくるのは水腎症などを呈し,尿流の停滞が生じている成人期以降で,幼児期での報告は稀である.
症例は,4歳男子.バゾプレッシン2受容体異常による腎性尿崩症と診断されていた.4歳1か月時に肺炎で入院した際,無症候性細菌尿(緑膿菌)を認めた.4歳2か月時,腎盂腎炎で入院となり,抗菌薬投与後,尿道カテーテル留置により緑膿菌は陰性化した.1日尿量は4,500 ml,1回尿量は400 ml前後であり,2時間毎に排尿していた.4歳4か月時に,腎盂腎炎を再発し,同様に治療した.さらに,日中は1時間毎に排尿するよう指導した.尿量は1日3,500 mlから5,000 ml程度であり,1回尿量は200 ml程度となった.排尿コントロール開始後腎盂腎炎の再発は認めなかった.
本症例では,画像上,腎・尿路系に異常を認めておらず,尿流の停滞がないと考えられている時期であったが,排尿コントロールを行うことが,腎盂腎炎の治療,再発防止に重要であった.
腎性尿崩症において,腎盂腎炎を繰り返すことによる腎機能障害を予防するために,早期から積極的な排尿コントロールすることが重要である.
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【短報】
■題名
クオンティフェロン®TB-2Gが早期診断に有用であった成人型肺結核の1例
■著者
京都第二赤十字病院小児科1),国立病院機構南京都病院小児科2) 東道 公人1) 矢野 未央1) 青木 智史1) 久保田 樹里1) 伊藤 陽里1) 渡部 玉蘭1) 長村 敏生1) 濱谷 舟2) 宮野前 健2) 清沢 伸幸1)
■キーワード
クオンティフェロン®TB-2G, 小児結核
■要旨
持続する咳嗽と治療に抵抗する肺炎像がありクオンティフェロン®TB-2G(QFT-2G)の測定から肺結核と診断しイソニアジド,リファンピシン,エタンブトール,ピラジナミドの4剤併用化学療法にて早期に治癒した13歳女児例を経験した.
QFT-2GはBCGや多くの非結核性抗酸菌の影響を受けずヒト型結核菌に反応する特異的な検査法であり,小児肺結核の早期発見・早期治療に有用な手段のひとつになると考えられる.
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