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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:09.1.6)
第112巻 第12号/平成20年12月1日
Vol.112, No.12, December 2008
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総 説 |
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上條 岳彦 1761 |
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宮前 多佳子,他 1769 |
第111回日本小児科学会学術集会 |
会頭講演 |
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福永 慶隆 1778 |
原 著 |
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木村 光明,他 1787 |
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野口 聡子,他 1794 |
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森 有加,他 1800 |
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齋藤 和代,他 1807 |
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吉岡 三惠子,他 1813 |
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岡田 賢,他 1818 |
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田野島 玲大,他 1826 |
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日暮 憲道,他 1831 |
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岡村 和美,他 1836 |
論 策 |
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江原 朗 1842 |
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1845 |
日本小児科学会薬事委員会 |
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提言 学会要望で開発した小児医薬品の病院での採用問題について
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1866 |
日本小児科学会倫理委員会 |
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1867 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No.8 マニキュア除光液による中毒
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1869 |
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1870 |
日本小児栄養消化器肝臓学会 |
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1876 |
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第18回「こどもの健康週間」作文コンクール 日本小児科学会会長賞受賞作品
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1880 |
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1882 |
医薬品・医療機器等安全性情報 No.251,252
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1884 |
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【原著】
■題名
消化管症状を主とする乳児の牛乳アレルギーの臨床像と検査値について
■著者
静岡県立こども病院感染免疫アレルギー科 木村 光明 西庄 佐恵 王 茂治
■キーワード
牛乳アレルギー, 消化管症状, 乳児, 新生児, IgE, リンパ球増殖反応
■要旨
基礎疾患のない乳児の消化管型牛乳アレルギー62症例の臨床像と検査値についてまとめた.男女比は30:32で性差はみられなかった.栄養法は人工栄養が45.2%(28/62),混合38.7%(24/62),母乳16.1%(10/62)であった.症状は血便が64.5%(40/62)と最も多く,以下,嘔吐51.6%(32/62),下痢46.8%(29/62),腹満1.6%(1/62)の順であった.組み合わせ別の症状の頻度は,嘔吐・血便が22.6%(14/62)と最も多く,以下,血便・下痢19.4%(12/62),血便単独14.5%(9/62),嘔吐単独14.5%(9/62),下痢単独12.9%(8/62),嘔吐・血便・下痢8.1%(5/62),嘔吐・下痢6.5%(4/62),腹満1.6%(1/62)の順であった.発症時期は生後0日から7か月の広い範囲にわたっていたが,中央値は10.5日と早く,71.0%(44/62)が生後1か月以内に発症していた.検査値では,牛乳特異的IgE抗体(以下牛乳IgE)は25.8%(16/62)の症例で陽性であり,牛乳蛋白特異的リンパ球増殖反応,好酸球およびCRPは,それぞれ98.4%(61/62),69.0%(40/58)および51.1%(23/45)の症例で上昇していた.牛乳IgEとリンパ球増殖反応との間には有意な正相関が認められた(r=0.29,p<0.05).以上の特徴から,本疾患はこれまで本邦では認知・定義されたことのない,新しいアレルギー疾患と考えられる.正式に名称が決定されるまでの間,暫定的に「乳児早期消化管型牛乳アレルギー」という呼称を提案したい.本疾患の診断には牛乳蛋白特異的リンパ球増殖反応が有用である.
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【原著】
■題名
2007年一地方都市における麻疹の流行
■著者
滝川市立病院小児科1),滝川こどもクリニック2) 野口 聡子1) 大柳 尚彦1) 藤原 正貴2) 平木 雅久1)
■キーワード
麻疹, 予防接種, secondary vaccine failure
■要旨
2007年春,北海道滝川市において麻疹の流行があり,5月から6月にかけて77名の患者を経験した.そのうち1歳未満は5名に過ぎなかったが,10歳以上の例が50名と65%を占めた.また51名,66.2%に麻疹ワクチン接種歴を認め,そのほとんどがsecondary vaccine failureと考えられた.滝川市では1996年と2001年にも麻疹の流行があり,それぞれ113名,131名の症例を経験したが,この2回に比べ今回の流行では10歳以上の割合が約3倍であった.また,ワクチン既接種者の割合は1996年に比べ約4倍であった.麻疹の流行阻止には幼児期のワクチン接種率を維持するとともに,10歳以上の年長児における追加接種が重要と考えられた.
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【原著】
■題名
重症心身障害児(者)のファイバースコピーによる喉頭形態・唾液誤嚥の評価
■著者
聖隷三方原病院小児科 森 有加 木部 哲也 横地 健治
■キーワード
重症心身障害児(者), 喉頭, ファイバースコピー, 誤嚥
■要旨
呼吸障害・嚥下障害を有する重症心身障害者70例を対象として,ファイバースコピー下の外観を検討した.喉頭狭小化,喉頭蓋の形態,披裂部の腫脹,唾液の声門からの噴き出しについてそれぞれ分類した.さらに,喘鳴の強さと披裂部の腫脹の程度及び唾液の噴き出し方との比較,唾液の噴き出し方と喘鳴の強さ及び披裂部の腫脹の程度との比較,食形態(ペースト食中心の経口摂取と経管栄養)による喘鳴の強さ・披裂部の腫脹の程度及び唾液の噴き出し方についての比較,経鼻胃管(同側挿入と対側挿入)と喉頭蓋との位置関係についての比較・検討を加えた.
喉頭狭小化・喉頭蓋の変形を認める例が多かった.唾液の声門からの噴き出しや披裂部の浮腫,喘鳴を強く認める例もあり,これらが唾液誤嚥の一つの指標になると考えた.
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【原著】
■題名
知的障害児(者)のライフサイクルに応じた精神・神経的医療対応の必要性
■著者
財団法人十愛会十愛病院小児神経科1),同 精神科2) 齋藤 和代1) 野崎 秀次2)
■キーワード
自閉症, 知的障害者, 抗精神病薬, リスペリドン
■要旨
1年以上経過を観察し,外来および入院で診療した基礎に知的障害をもつ562症例について臨床的検討を行った.精神遅滞の重症度の内訳は,最重度精神遅滞225例,重度精神遅滞177例,中等度精神遅滞96例,軽度精神遅滞64例であった.精神遅滞に加え自閉症などの発達の偏りを合併している症例は174例であった.薬物による治療を要している症例は418例であった.投薬内容では,非定型抗精神病薬を含む抗精神病薬の使用がもっとも多く300例,以下は抗てんかん薬288例,睡眠薬119例,抗欝薬84例,抗不安薬67例が処方されていた.薬物による治療開始年齢は,抗てんかん薬では10歳以下が最も多かったのに比べて,抗精神病薬では,10歳以降増加し,15歳から19歳が最も多かった.投薬内容の検討では,自閉症を合併する症例群に,抗精神病薬,抗てんかん薬含め,薬物療法を要する症例が多かった.また,身体表現性障害や,気分障害などの診断症例の比率は,中・軽度の障害者に多かった.一般に,障害の告知や,小児期に発症の多いてんかんに対して,知的障害児に遭遇する機会は多い.しかし,小児科外来の年齢制限により,行動障害が顕著になる思春期以降の対応は希薄になりがちである.この時期においても,自閉性障害の合併の有無に代表されるような障害特性に配慮し,成人期に至る長期的経過へも敷衍した療育的指導と医療的対応が望まれる.
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【原著】
■題名
最近10年間の感音難聴児の病因と発症率について
■著者
神戸市総合療育センター小児神経科1),同 耳鼻咽喉科2),神戸市立医療センター中央市民病院耳鼻咽喉科3) 吉岡 三惠子1) 内藤 泰2)3)
■キーワード
感音難聴, 病因, 先天性又は新生児期発症, 発症率, 新生児聴覚スクリーニング
■要旨
平成9年1月1日から平成18年12月31日までの10年間に,人口約150万人の神戸市で出生し,良耳の平均聴力(四分法)25 dB以上の両側感音難聴と診断された先天性又は新生児期発症の107名(男64,女43)を対象として,難聴の病因と発症率などの疫学的調査を行った.家族歴,周産期の病歴及び乳幼児期の精神運動発達歴の聴取,耳鼻科的精査に加え,全身的・神経学的診察,染色体や胎内感染に関する検査,耳や頭部のCT/MRIなどを行って,病因を検索した.
107例の良耳平均聴力は78.8 dB(範囲は35〜125 dB)であり,70 dB以上の高度難聴児が約7割を占めていた.両親又は兄弟に難聴を認める遺伝性の群は11.2%,症候群性・内耳奇形はともに5.6%を占め,周産期性・胎内感染・染色体異常・多発奇形はそれぞれ13.1%,11.2%,16.8%,5.6%であった.一方,原因不明の症例は30.9%を占め,病因の究明が更に必要なことが示された.男女比では1.49対1で男児が多かった.合併症は約半数に認められ,その中では発達遅滞が最も多く,他に脳性麻痺,てんかん,心疾患などが見られた.発症率は平成18年度を除く9年間の平均で1,000出生当り0.87人であった.平成16年以降は新生児聴覚スクリーニングで発見される難聴児が年間発症数のほぼ半数を占め,早期発見・早期療育に貢献していることが明らかであった.
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【原著】
■題名
非結核性抗酸菌による多発性骨髄炎を呈したインターフェロンγ受容体1異常症の2例
■著者
広島大学大学院医歯薬学総合研究科小児科学1),都立清瀬小児病院呼吸器科2) 岡田 賢1) 末永 麻由美2) 川口 浩史1) 小林 正夫1)
■キーワード
インターフェロンγ受容体1(IFN-γR1)異常症, 多発性骨髄炎, 非結核性抗酸菌, 先天性免疫不全, Bacillus Calmette-Guérin(BCG)感染症
■要旨
Mendelian susceptibility to mycobacterial diseases(MSMD)は,抗酸菌,サルモネラ菌などの細胞内寄生菌に対して選択的に易感染性を示す疾患群である.インターフェロンγ受容体1(IFN-γR1)異常症はMSMDの1つに分類され,遺伝形式により大きく常染色体優性遺伝と常染色体劣性遺伝の2つの遺伝形式に分けられる.これらは重症度の多様性はあるが,BCG接種に伴う難治性感染症を特徴的な臨床的所見とし,非結核性抗酸菌に伴う重症感染症を繰り返す.今回我々は,非結核性抗酸菌による多発性骨髄炎を契機に診断された常染色体優性遺伝を呈するIFN-γR1(AD-IFN-γR1)異常症の2症例を経験した.両患者はともに,Bacillus Calmette-Guérin(BCG)接種に伴う難治性リンパ節炎の既往歴を有していた.患者由来のCD14陽性細胞は細胞表面にIFN-γR1を過剰に発現しており,IFN-γのシグナル伝達が部分的に障害されていた.両患者で,IFN-γR1の責任遺伝子IFNGR1にヘテロ接合性変異を認め,AD-IFN-γR1異常症と診断した.本症は非常に稀な疾患であるが,BCGや非結核性抗酸菌などの細胞内寄生菌に対して選択的に易感染性を呈し,他の病原体に対する免疫能が保たれている場合,鑑別疾患の一つとして考慮されるべき疾患と考えられる.
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【原著】
■題名
複視を契機に診断したGradenigo症候群の1例
■著者
済生会横浜市南部病院小児科 田野島 玲大 堤 晶子 山口 和子 加藤 宏美 齋藤 千穂 後藤 晶子 高橋 浩之 甲斐 純夫
■キーワード
Gradenigo症候群, 錐体尖炎, 外転神経麻痺, 中耳炎, 三叉神経痛
■要旨
中耳炎・外転神経麻痺・三叉神経痛を3徴とするGradenigo症候群を経験した.症例は6歳,女児.5歳時から急性中耳炎を繰り返していた.発熱,複視,左頬の痛みを主訴に当院受診.血液検査上WBC 13,300/μl,CRP 3.28 mg/dl,頭部X線写真から左乳突洞炎を疑い,セフジトレンピボキシル(CDTR-PI)を処方され帰宅した.速やかに解熱したが,複視が続き翌日当院救急外来を再診,左内斜視を認めたが眼球運動に問題はなかった.頭部CT上異常なく,血液検査も改善傾向にあり帰宅した.翌日も症状続き再診,精査加療目的で入院となった.頭部MRI検査で左錐体尖に炎症を認め,慢性中耳炎から波及した錐体尖炎に伴う外転神経麻痺・三叉神経痛(Gradenigo症候群)と診断した.入院後抗菌薬・副腎皮質ステロイド薬投与を行い,速やかに症状は改善し,退院となった.退院1か月後のMRI所見の変化なく,また症状の増悪もなく現在外来経過観察中である.抗菌薬の発達により典型的なGradenigo症候群は稀となっているが,複視や顔面の痛みを伴う症例では本疾患を疑い,精査をする必要があることが示された.
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【原著】
■題名
3歳発症の亜急性硬化性全脳炎女児例における不随意運動の特徴とてんかんとの鑑別
■著者
埼玉県立小児医療センター神経科1),東京慈恵会医科大学小児科2),埼玉県立小児医療センター保健発達部3) 日暮 憲道1)2) 浜野 晋一郎1) 黒田 直宏1) 吉成 聡1) 田中 学1) 南谷 幹之3) 衞藤 義勝2)
■キーワード
亜急性硬化性全脳炎, 周期性同期性放電, てんかん, 麻疹, ミオクローヌス
■要旨
3歳0か月時に発症し,脳波上周期性同期性放電が明らかではなく,脳波と問診で確認できる臨床発作型から当初ミオクロニー失立発作てんかんと診断されていた亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の女児例を経験した.急速進行性の経過で,発症後2か月程でJabbourの病期分類で4期に至った.発症約40日後の当科入院時,意識レベルは低下しミオクローヌス様の動きを繰り返していたことから,ミオクロニーてんかん重積も否定できなかったが,脳波・筋電図同時記録を用いた不随意運動の詳細な観察により,てんかん発作とは異なるSSPEに特徴的な不随意運動であることが分かった.SSPEは進行性疾患であり早期の診断,治療開始が望まれるが,発症時からこのような詳細な観察をすることは困難である.神経疾患,特にミオクローヌスを呈する場合に,まずSSPEを鑑別疾患として想定し,麻疹罹患歴を聴取することは容易,かつ最も重要なことである.また,ビデオ脳波・筋電図同時記録はミオクロニーてんかんの発作とSSPEの不随意運動の鑑別に大変有用であり,試みる価値がある.
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【原著】
■題名
RPS19遺伝子変異を認めたDiamond-Blackfan Anemiaの1家系
■著者
高松赤十字病院小児科1),徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部発生発達医学講座小児医学分野2),さぬき市民病院小児科3),国立成育医療センター研究所小児思春期発育研究部4) 岡村 和美1) 関口 隆憲1) 阪田 美穂1) 高橋 朋子1) 幸山 洋子1) 大原 克明1) 井上 奈巳2) 須賀 健一2) 坂口 善市3) 鏡 雅代4)
■キーワード
Diamond-Blackfan Anemia, RPS19遺伝子変異
■要旨
常染色体優性遺伝形式を示したDiamond-Blackfan anemia(DBA)の1家系を経験した.症例1は生下時より合併奇形のない大球性貧血を認め,生後11日の骨髄検査で赤芽球系の前駆細胞の低形成を認めた.父は生直後より心室中隔欠損症を合併したDBAと診断されており,患児もDBAと診断した.当初ステロイドで治療を開始したが,治療への反応が悪くサイクロスポリンを開始した.一旦は治療効果を認めたが,輸血回数が増加したため再度ステロイドを追加したところ,治療に反応した.現在はステロイドのみでコントロール良好である.症例2は症例1の弟であり,同様に生下時より鎖肛と両側水腎症を合併した大球性貧血を認めた.生後25日に骨髄検査を施行し,DBAと診断した.ステロイドへの反応は良好である.DBAは10〜25%で遺伝性を認め,またDBA患者の約25%にリボゾーム蛋白をコードするRPS19遺伝子の変異が報告されており,責任遺伝子のひとつと考えられている.この家系に対しRPS19遺伝子解析を行ったところ,3例全例においてExon5に2塩基対の欠失を認めた.RPS19遺伝子の変異は本邦では初の報告であり,また今回の欠失部位に関する報告例は認めず大変貴重な症例と考えられた.
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【論策】
■題名
40歳代,50歳代の小児科医師における勤務医と開業医の比率に大きな変化は生じていない
■著者
北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野客員研究員 江原 朗
■キーワード
小児科医師数, 医師歯科医師薬剤師調査, 勤務医, 労務管理
■要旨
平成18年の医師歯科医師薬剤師調査によると,平成14年から平成18年にかけて,小児科勤務医(主たる診療科が小児科であり,病院に従事する医師)の数が8,429人から8,228人へと減少している.一方,小児科開業医(主たる診療科が小児科であり,診療所に従事する医師)は6,052人から6,472人へと増加している.勤務医から開業医へとシフトが生じている.
5歳刻きざみの年齢層で解析すると,平成10年から18年にかけて,勤務医では40歳代前半が減少し,50歳代が増加していることがわかる.また,同様に,開業医では40歳代の減少と50歳代の増加が認められる.しかし,各年齢層における勤務医の比率は,平成10年から18年にかけて大きな変化はなく,この8年間で小児科医師のキャリアコースが変化したとはいえない.
勤務医が減少し,開業医が増加した主因は,小児科医師総数の最も多い50歳代が従来のキャリアコースに基づいて勤務医から開業医へとシフトした結果である.勤務医の働く環境は厳しいものではあるが,勤務医の数の減少は勤務環境の悪化だけではなく,50歳代に比べて40歳代の医師の絶対数が少ないことが大きく影響している.
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