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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:08.11.21)
第112巻 第11号/平成20年11月1日
Vol.112, No.11, November 2008
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総 説 |
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呉 繁夫 1631 |
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早川 昌弘 1637 |
第111回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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尾見 徳弥 1647 |
教育講演 |
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辻 浩一郎 1654 |
教育講演 |
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閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対する対応とその治療
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工藤 典代 1663 |
原 著 |
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大山 建司,他 1667 |
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犬塚 幹,他 1674 |
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山倉 慎二,他 1680 |
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光藤 伸人,他 1685 |
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清水 正己,他 1690 |
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岡田 和子,他 1694 |
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荒新 修,他 1700 |
短 報 |
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品川 友江,他 1707 |
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武本 環美,他 1710 |
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星野 顕宏,他 1713 |
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1716 |
日本小児科学会教育委員会 |
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「医師不足分野等教育指導推進経費」に関する調査結果
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1730 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No.7 乳児用ベッドからの転落
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1732 |
日本小児内分泌学会糖尿病委員会(7) |
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国際小児思春期糖尿病学会 臨床診療コンセンサスガイドライン2006〜2008 日本語訳の掲載について
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1733 |
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1758 |
【原著】
■題名
男性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に対する二次性徴導入法の検討
■著者
山梨大学大学院医学工学総合研究部 大山 建司 中込 美子 小林 浩司 佐藤 和正 内田 則彦 佐野 友昭 太田 正法
■キーワード
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症, 性腺刺激ホルモン, 二次性徴, 精巣, テストステロン
■要旨
二次性徴の発現していない男性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症2症例に対し,少量のHCG投与で治療を開始し,その後HMGを併用する新たなプロトコールを作成し,二次性徴の進行度を検討した.12歳から治療を開始し,50 IU週1回皮下注から4週毎に100,200,500 IUへと増量し,500 IUは12週間投与して1,000 IUへ増量し,6か月後からHMG 75 IU週1回を併用した.精巣容量はHCG 200 IU/週投与時に軽度の容量増加がみられ,血中テストステロン濃度の増加はHCG 500 IU/週に増量後に認められた.この時の精巣容量は2〜3 mlであった.血中テストステロン濃度がほぼ成人レベルとなる300 ng/dl以上に達した時の精巣容量は症例1で4 ml,症例2で8 mlであった.陰茎の増大は治療開始5〜6か月で認められ,陰嚢の変化は陰茎増大に1か月先行して認められた.陰毛発生は症例1が13か月後,症例2が18か月後であった.治療開始から二次性徴の完成までの期間は,症例1が4年3か月,症例2が3年6か月であった.二次性徴の発現(陰嚢の変化)から完成までの期間は症例1が3年8か月,症例2が3年3か月であった.2症例の二次性徴の完成時において,陰茎・陰毛はタンナー5度に達したが,精巣容量は10〜12 mlと松尾らが報告している日本人成人精巣容量の15〜20 mlには達しなかった.以上,陰茎発育,陰毛発生から二次性徴の完成までの進行経過は健常思春期男性とほぼ同様であった.血清テストステロン濃度の増加も同様の経過で成人男性レベルに達したが,精巣容量の増大が不十分であった.
HCG/HMG療法に関して,HCG投与法は今回の方法でよいと考えるが,HMG(FSH)投与時期はHCGと同時またはHCGに先行する方法を今後検討する必要がある.
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【原著】
■題名
小児における肺炎クラミジア感染症の臨床像および診断上の問題点についての検討
■著者
佐世保中央病院小児科 犬塚 幹 山田 克彦
■キーワード
肺炎クラミジア, ヒタザイムC.ニューモニエ, カットオフ値, 偽陽性, イムノカードマイコプラズマ抗体
■要旨
小児の呼吸器感染症343例に検査キット「ヒタザイムC.ニューモニエ」を用いて肺炎クラミジアIgM抗体の測定を行い,同時に検査キット「イムノカードマイコプラズマ抗体」による肺炎マイコプラズマIgM抗体の定性も行った.ヒタザイムC.ニューモニエにおいてIgMインデックス4.00以上を示し肺炎クラミジア感染症の可能性が高いと思われた4症例の臨床像をインデックス4.00未満の例と比較したが,白血球数,血清CRP値,および肺炎・気管支炎合併例,咳嗽が2週間以上持続した例,肺副雑音を聴取した例,38℃以上の発熱を認めた例の頻度においていずれも差は認められなかった.IgMインデックス4.00以上を示した4例のうち3例は5歳以下であり,肺炎クラミジアは年少児においても呼吸器感染症の原因菌として注意すべきであると思われた.IgMインデックスは肺炎マイコプラズマ陽性例で有意に高かったが,この理由として肺炎マイコプラズマの感染が何らかの機序によりIgMインデックスを上昇させている可能性が考えられた.検査キット「ヒタザイムC.ニューモニエAb-IgM」を用いた肺炎クラミジア感染症の診断には,陽性判定基準を変更するのみでは解決困難な問題点が含まれており,感度,特異度ともに優れた方法への改良が必要と考えられた.
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【原著】
■題名
重症心身障害児(者)の骨評価
■著者
社会福祉法人小羊学園 重症心身障害児施設つばさ静岡 山倉 慎二 浅野 一恵
■キーワード
重症心身障害児(者), 定量的超音波測定法, 重症度, 栄養方法, エネルギー摂取量
■要旨
歩行のできない重症心身障害児・者の音響的骨評価値(以下 骨評価値)を測定した(男37名,女22名).骨評価値は男女間に有意な差を認めず(男:女=1.858±0.251:1.809±0.242(×106)p:NS),年齢とも相関しなかった(r=0.027 p:NS).栄養方法別では経管栄養者の骨評価値が経口摂取者に比べ有意に低値を示した(1.624±0.084:1.900±0.242(×106)p<0.001).経口摂取者の障害像別(1群:寝返り不能17名,2群:座位保持不能16名,3群:移動不能+4群:歩行不能13名)では各群間に有意差はなかった(1群:2群:3+4群=1.909±0.243:1.877±0.252:1.918±0.245(×106)).しかし,経管栄養者の骨評価値は最も障害の重い1群の経口摂取者(障害像としては経管栄養者と同じ)よりも有意に低く(1.624±0.084:1.909±0.243(×106)p<0.001),経腸栄養剤単独では栄養が不十分であると考えられた.また経口摂取者の骨評価値は体重,身長,摂取エネルギーと有意な相関を示し,中でも摂取エネルギーとの相関が最も強く表れ,摂取エネルギーが少ないほど骨評価値は低値を示した.重症心身障害児・者の骨評価値は18〜29歳でも80歳の標準値より低値を示しており,小児期から積極的な栄養への介入,治療を行っていく必要がある.
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【原著】
■題名
新生児仮死の予後予測におけるヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白の有用性
■著者
京都第一赤十字病院小児科総合周産期母子医療センターNICU 光藤 伸人 吉田 朋子 徳弘 由美子 中内 昭平 中林 佳信 中川 由美 木原 美奈子 木崎 善郎
■キーワード
ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白, 新生児仮死, 低酸素性虚血性脳症, 予後
■要旨
新生児仮死の予後予測におけるヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)の有用性を検討した.新生児仮死を認めた47例(仮死群)のH-FABP値は65(27〜170)ng/ml【中央値(25〜75パーセンタイル値)】で,胎児・新生児仮死を認めず,心エコーにて異常を認めなかった15例(対照群)のH-FABP値21(13〜40)ng/mlと比べ有意に高値であった.仮死群47例のうち神経学的予後が良好であった40例(予後良好群)のH-FABP値は52(27〜89)ng/ml,神経学的予後が不良あるいは急性期に死亡退院した7例(予後不良群)のH-FABP値は570(380〜710)ng/mlであり,対照群,予後良好群および予後不良群の何れの2群間においても有意差を認めた.神経学的予後予測効率から求めたH-FABPのカットオフ値は245 ng/mlで,この時,感度は100%,特異度は95%であった.同様に,Apgarスコア5分値のカットオフ値を5点に設定すると,感度は100%,特異度は95%であった.Apgarスコア5分値が5点以下の症例でH-FABP値が245 ng/ml以上の場合には,神経学的予後が不良であるか,あるいは死亡する可能性が極めて高いと考えられた.以上より,H-FABPは新生児仮死の予後予測に有用であり,Apgarスコア5分値と組み合わせることにより,より正確に予後を予測できる可能性があると考えられた.
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【原著】
■題名
脊髄出血後の下肢麻痺に対してメチルプレドニゾロン超大量療法が著効した1例
■著者
医療法人宏潤会大同病院小児科1),同 小児アレルギー科2),聖霊病院小児科3) 清水 正己1) 森下 雄大1) 遠藤 剛3) 浅井 雅美1) 寺田 明彦2) 水野 美穂子1)
■キーワード
メチルプレドニゾロン超大量療法, 急性期脊髄損傷, 脊髄出血, 脊髄血管腫, 小児
■要旨
メチルプレドニゾロン超大量療法(30 mg/kgを15分かけて静注後,5.4 mg/kg/時で23時間又は47時間持続点滴)は脊髄損傷急性期の治療として確立されており,受傷後8時間以内に開始された場合に神経予後を有意に改善するとされている.しかし,脊髄損傷急性期におけるステロイドの有効性についての議論は,一方では懐疑的な意見もあり,今日なお決着していない.
症例は5歳女児.急激に発症した下肢麻痺・腹痛・背部痛・膀胱直腸障害にて入院した.入院4日目のMRIにてTh4〜5の脊髄に直径1 cmの出血を疑わせる病変及び周囲脊髄の炎症像を認めた.発症後5日経過していたが,メチルプレドニゾロン超大量療法を施行した.神経症状は劇的に改善し,発症後2か月以内に困難なく歩いたり走ったりするまで回復した.現在まで約4年間経過観察中であるが,再発を認めていない.
小児期の神経組織は可塑性・再生能が高いと考えられるため,成人に比して小児では急性脊髄損傷後の神経機能回復が強く期待できるものと思われた.
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【原著】
■題名
小児慢性機能性便秘症における治療プロトコールの検討
■著者
岡田小児科クリニック1),東京女子医科大学東医療センター小児科2),東京女子医科大学医学部小児科3) 岡田 和子1) 若林 康子2) 杉原 茂孝2) 大澤 真木子3)
■キーワード
慢性便秘症, 治療, 小児
■要旨
小児の便秘は日常診療でもよくみられるが,中には症状が悪化し日常生活に支障をきたすものが見受けられる.そのため適切な治療法の確立が必要と考え,我々は治療プロトコール(治療P)を作成・実施しその有用性を検討した.対象および方法:慢性便秘を主訴に来院した基礎疾患のない0〜6歳未満の小児50例を対象に,詳しい問診表の記入,肛門視診・触診を含む診察を行い,器質的疾患は除外し,治療Pに沿って治療を行い経過観察する.治療Pの内容は,第一に,生活・食事指導.診察時直腸内に便塊の貯留があれば浣腸などで排除する.そして規則的な排便習慣を促すために薬物療法を行う.第一選択薬は,A塩類下剤.硬便のため排便時痛がある場合は,Aに加えB大腸刺激性下剤の坐薬または内服を併用,さらに経過不良例ではC消化管運動改善薬や漢方薬などの併用を行う.結果:他院からの紹介ですでに治療Bが行われていた27例中経過良好の5例はそのままBを頓服使用したが,経過不良の22例は当科に直接初診の23例と合わせ45例で治療Pの有用性を検討した.治療経過は,Aのみで良好は17例,A+Bで良好は15例,Cを加えて良好は9例で,治療Pの有効率は89%と有用と思われた.治療Pを開始し経過良好となるまでの期間は,6か月未満が58%,1年未満が91%で,根気強い治療が必要であった.
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【原著】
■題名
感音性難聴を合併した川崎病の1例
■著者
広島市立安佐市民病院小児科 荒新 修 安村 純子 林 知宏 藤田 篤史 和合 正邦 上田 一博
■キーワード
川崎病, 感音性難聴
■要旨
感音性難聴を合併した川崎病の1幼児例を報告する.症例は3歳男児である.発熱,右頸部リンパ節腫脹のため,第2病日に入院となった.両側眼球結膜の充血,口唇の紅潮,いちご舌,掌蹠の紅斑,背部と両膝の小紅斑により,第4病日に川崎病と診断した.免疫グロブリン2 g/kg/日の単回投与とアスピリン50 mg/kg/日の内服後,第8病日より解熱したものの,第10病日に難聴に気づかれ,感音性難聴,右側中等度難聴,左側高度難聴と診断した.いったん改善したが,発病3か月から不安定となり,発病1年8か月後の現在,両側中等度難聴が残っている.経過中,冠動脈病変は来さなかった.過去に報告された感音性難聴を合併した川崎病14例とともに,まとめて考察した.
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【短報】
■題名
BCG接種が原因と考えられるアナフィラキシーを呈した1例
■著者
秋田赤十字病院小児科1),にしのみやこども医院2) 品川 友江1) 伊藤 誠人1) 木村 滋1) 西宮 藤彦2)
■キーワード
アナフィラキシー, BCG
■要旨
BCG接種直後にアナフィラキシーを呈した3か月の男児例を経験した.患児はBCG接種10分後より発疹,頻脈,多呼吸が出現し当院ERへ救急搬送された.接種前には特記すべき異常はなく,薬物投与もされておらず,BCG接種によるアナフィラキシーが疑われた.
現在BCG接種は3〜6か月の間に施行されているが,副反応としてアナフィラキシーは報告されていない.本症例はBCG接種が原因と考えられるアナフィラキシーの本邦第1例目と思われ,稀ではあるがBCG接種の際には注意する必要があると思われたため報告した.
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【短報】
■題名
イオン飲料多飲による脚気の1歳児
■著者
福岡市立こども病院小児神経科 武本 環美 花井 敏男 鎌田 綾 權藤 健二郎
■キーワード
脚気, イオン飲料, 食思不振, 歩行障害, ビタミンB1
■要旨
食思不振で発症し,診断までに時間を要した脚気の1例を報告した.症例は1歳8か月女児,水痘罹患後に食思不振と嘔吐が遷延した.イオン飲料を主に与えたが改善なく,約1か月の経過で歩行,立位,坐位が不能となり当科を受診した.悪心,嘔吐の他,腱反射消失,下肢優位の筋力低下,足底の感覚異常を認めた.症状から脚気を疑い,採血後に補液とビタミン剤投与を直ちに開始した.治療開始後,これらの症状は速やかに改善した.治療前の血液でビタミンB1低値を認め脚気と診断した.現在でも誤った栄養法により脚気が容易に発生しうること,初期症状は非特異的な胃腸炎様であることが再認識され,貴重な症例と考えた.
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【短報】
■題名
家族に支援されて在宅療法への移行を試みた脳死小児の1例
■著者
昭和大学医学部小児科 星野 顕宏 阿部 祥英 校條 愛子 齋藤 多賀子 森田 孝次 大戸 秀恭 岩崎 順弥 田角 勝 板橋 家頭夫
■キーワード
脳死, 小児, 在宅人工呼吸療法, 臓器移植
■要旨
症例は4歳5か月の女児である.2歳8か月時に急性脳症による痙攣重積を認め,発症31日目に臨床的脳死と判断された.短期退院が反復され,臨床的脳死の診断後,1年6か月以上にわたって心拍が持続し,4歳5か月時にショックにより死亡した.近隣の訪問看護ステーションや往診医の協力が得られたので,ホルモン補充療法と注入栄養管理を行いながら,在宅人工呼吸療法に移行する方針であった.在宅人工呼吸療法に移行した小児脳死例の報告は少ないが,小児脳死症例の取り扱いに関して症例の積み重ねと家族が望む医療を配慮した議論が必要であると考える.
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