 |
日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:08.10.2)
第112巻 第9号/平成20年9月1日
Vol.112, No.9, September 2008
バックナンバーはこちら
|
 |
|
総 説 |
|
岡田 賢司 1335 |
|
宇理須 厚雄,他 1347 |
|
山崎 崇志,他 1358 |
原 著 |
|
真部 哲治,他 1369 |
|
西村 龍夫,他 1373 |
|
木村 正彦 1379 |
|
山田 健治,他 1382 |
|
吉松 昌司,他 1386 |
|
池田 ちづる,他 1390 |
|
沖本 聡志,他 1398 |
|
白神 浩史,他 1403 |
|
平野 大志,他 1409 |
|
鎌田 和明,他 1414 |
|
地方会抄録(山形,山陰,島根,宮城,北陸,福島,山口,鹿児島,福岡,富山)
|
|
1419 |
|
1449 |
日本小児内分泌学会糖尿病委員会(5) |
|
国際小児思春期糖尿病学会 臨床診療コンセンサスガイドライン2006〜2008 日本語訳の掲載について
|
|
1453 |
|
第8回日本小児医学教育研究会・第6回全国小児科チェアマン協議会のお知らせ
|
|
1479 |
|
1480 |
【原著】
■題名
乳児喘息の急性発作治療におけるアミノフィリン持続点滴の必要性
■著者
横浜南共済病院小児科 真部 哲治 新田 啓三 成相 昭吉
■キーワード
乳児喘息, アミノフィリン持続点滴, プレドニゾロン, 入院期間
■要旨
乳児喘息の急性発作に対する,アミノフィリン(Am)持続点滴の有無が入院中の臨床経過にどのように影響したかを後方視的に比較し,その必要性について検討した.
2004年度,2005年度の2年間における,重症例を除いた2歳未満の喘息発作入院53例(RSウイルス関与例は含まない)を対象とした.全例,サルブタモール定時吸入とプレドニゾロン(PSL)2 mg/kg/日,分2の点滴静注を施行した.Am持続点滴の有無により,Am投与群36例(平均月齢16.9か月)とAm非投与群17例(同14.5か月)に分けて検討した.
入院時の月齢,酸素飽和度,心拍数,呼吸数,発熱の有無,CRPに有意な差はなかった.経過中の酸素飽和度,心拍数,呼吸数の経時的変化およびPSL投与期間,入院期間にも,有意な差は見られなかった.今回の検討から,2歳未満の重症例を除く乳児喘息発作感染合併例の入院治療に,Am持続点滴は必ずしも必要ではなく,PSL投与を中心とした治療で対応が可能であると考えられた.
|
|
【原著】
■題名
b型インフルエンザ菌菌血症・髄膜炎の発症頻度
■著者
にしむら小児科1),ふかざわ小児科2),よしだ小児科クリニック3),北里大学北里生命科学研究所4),小児外来診療における抗菌薬適正使用のためのワーキンググル-プ5) 西村 龍夫1)5) 深澤 満2)5) 吉田 均3)5) 生方 公子4)
■キーワード
b型インフルエンザ菌, 菌血症, 細菌性髄膜炎, occult bacteremia, Hibワクチン
■要旨
目的:b型インフルエンザ菌(以下,Hib)ワクチンの必要性を判断するには,Hibによる重症感染症の発症頻度の調査が必須である.わが国では重症細菌感染症の全数報告制度がなく,発症頻度の動向が不明であるため,かかりつけ小児科開業医の菌血症と細菌性髄膜炎の症例数から発症頻度を推測する.
方法:2003年1月から2006年12月までの4年間,原則としてBaraffらの基準にしたがい継続的に血液培養検査を施行しているにしむら小児科(大阪府),ふかざわ小児科(福岡県),よしだ小児科クリニック(石川県)の3施設で,血液培養からHibが検出された症例および紹介先の病院でHib髄膜炎と診断された症例を対象とした.対象となる出生数は,各施設での麻疹ワクチン接種数と地域での麻疹ワクチン接種率から算出した.
結果:3施設でのHibの菌血症は計10例であり,2歳未満が7例,2歳以上5歳未満が3例であった.Hib髄膜炎は計5例であり,全例が2歳未満であった.また,全例で菌血症を伴っていた.髄膜炎発症例を含むHib菌血症の発症頻度は,5歳未満10万人あたり年間61.8例(29.7〜113.6例:95% confidence interval [CI])であり,全国で年間3,399例(1,634〜6,248例:95%CI)の発症と推測された.Hib髄膜炎の発症頻度は,5歳未満10万人あたり年間30.9例(10.0〜72.1例:95%CI)であり,全国で年間1,700例(550〜3,966例:95%CI)の発症と推測された.
結論:わが国のHibによる重症感染症の発症頻度は,Hibワクチン導入前の先進各国と同様であると推測された.
|
|
【原著】
■題名
離乳食開始前に塩化リゾチーム製剤により蕁麻疹を起こした1乳児例
■著者
きむらこどもファミリークリニック 木村 正彦
■キーワード
塩化リゾチーム, 食物アレルギー, 卵白アレルギー
■要旨
生後4か月25日の男児.鼻汁のために塩化リゾチーム製剤を投与され,耳介,頸部,体幹および四肢に紅斑をきたした.卵白および卵黄のIgE(RAST)が陽性であった.塩化リゾチームは卵白由来の蛋白であり,アナフィラキシーを起こすことが知られている.患児は離乳開始前であった.離乳前は食物アレルギーの有無が不明であるため,食物抗原を含む薬の使用を避ける必要がある.また,塩化リゾチームは本邦において医家用,市販用とも一般に広く使われており,副作用の報告も本邦からのものが圧倒的に多く,安全性への配慮が適切とは言えない製剤である.
|
|
【原著】
■題名
ピボキシル基をもつセフェム系抗菌薬11日間投与後に2次性カルニチン欠乏症を来たした2歳男児例
■著者
松江赤十字病院1),島根大学医学部小児科2) 山田 健治1)2) 小林 弘典2) 遠藤 充2) 長谷川 有紀2) 白石 英幸1) 山口 清次2)
■キーワード
カルニチン欠乏症, 低ケトン性低血糖, ピボキシル基, 抗菌薬
■要旨
症例は2歳1か月男児.発熱を主訴に受診し,その直後に痙攣を認めた.痙攣時の血糖値12 mg/dl,血中総ケトン体587 μmol/lと低ケトン性低血糖を認めた.アシルカルニチン分析で遊離カルニチン0.73 μmol/lと著明に低下し,一方C5アシルカルニチン(AC)が1.12 μmol/lと上昇がみられた.C5ACの上昇する疾患としてイソ吉草酸血症が知られているが,尿中有機酸分析で否定された.受診前に連日11日間のピボキシル基をもつ抗菌薬の内服歴があったことより,C5AC上昇は抗菌薬によるピバロイルカルニチンから由来するものと考えられた.発症14日目からl-カルニチン20 mg/kg/dayを17日間内服した.中止後も低カルニチンは認めていない.これまで,ピボキシル基をもつ抗菌薬の長期間投与によるカルニチン欠乏症は報告されている.本症例のように11日間の投与でもカルニチン欠乏きたす可能性があり注意を要する.
|
|
【原著】
■題名
完全治癒し得た破傷風の1乳児例
■著者
茨城西南医療センター病院小児科1),筑波大学附属病院小児内科2) 吉松 昌司1) 長谷川 誠1) 加藤 啓輔1) 藤山 聡1) 室伏 航2) 齋藤 貴志2) 田中 竜太2) 松井 陽2)
■キーワード
破傷風, 開口障害, 硬直, 届け出
■要旨
近年本邦では稀である破傷風乳児例(生後4か月)を経験した.開口障害による哺乳障害で発症し,哺乳障害の進行とともに表情の乏しさと全身の硬直を認めたため入院した.初診時の皮膚所見は虫刺症痕のみで,外傷の既往もなく,診断に至るまで非常に苦慮したが,三種混合ワクチンが未接種で,臨床経過と症状から破傷風と診断した.入院後ペニシリンG静注と抗破傷風ヒト免疫グロブリンの投与を行ったところ,呼吸管理には至らず,約1か月で完全に治癒した.また,発症時血清からマウス法により破傷風毒素が検出され,診断を確実なものとした.本邦において,小児破傷風は非常に稀な疾患となったが,致命率は依然高値である.本疾患は,血液検査・画像検査などで特異的な所見を示さず,また全国統計では破傷風全症例の約4分の1は感染経路が不明もしくは極めて小さいかすり傷程度と報告されている.よって,検査所見や外傷の有無にとらわれず,臨床経過・症状から破傷風を念頭に治療することが必要である.
|
|
【原著】
■題名
日本脳炎の1幼児例
■著者
熊本赤十字病院小児科 池田 ちづる 平井 克樹 武藤 雄一郎 足立 芙美 竹内 芙実 樋泉 道子 本村 栄章 右田 昌宏 西原 重剛
■キーワード
日本脳炎, 一次性脳炎, 日本脳炎ワクチン, 脳低温療法, 脳圧モニター
■要旨
日本脳炎は,一次性脳炎の代表的疾患であるが,近年本邦での報告は減少し,1990年以来本邦での就学前の日本脳炎の報告はない.また,日本脳炎ワクチンは,急性散在性脳脊髄炎(Acute Disseminated Encephalomyelitis;以下ADEM)の副作用の報告があり,2005年5月厚生労働省により積極的なワクチンの接種勧奨の一時中止が勧告されている現状である.
今回我々は,2006年9月に3歳男児の日本脳炎の1例を経験した.
発熱,痙攣重積から意識障害,瞳孔不同(右3.0 mm左4.0 mm)があり,気管内挿管後集中治療室にて全身管理を開始した.脳循環管理も意識し,脳圧モニター下の脳低温療法も併用した.当初ヘルペス脳炎を考えたが否定され,日本脳炎抗体ペア血清の上昇で確定診断に至った.徐々に状態は改善し,右上肢の不全麻痺と言語障害が残るも歩行可能となり第42病日に退院となった.画像所見では,早期よりMRI拡散強調画像で両側の視床と左の頭頂葉から側頭葉に異常信号がみられ,その後同部位の萎縮がみられた.
日本脳炎は過去の感染症ではなく,脳炎患者の鑑別の対象とすべき疾患である.一度発症すれば不幸にも後遺症を残す可能性も高く,ワクチンの問題も含め,もう一度再認識すべき疾患だと考える.
|
|
【原著】
■題名
パレコウイルス3型による新生児脳症
■著者
広島市立舟入病院小児科1),JA広島厚生連府中総合病院小児科2) 沖本 聡志1) 上野 哲史2) 田辺 真奈美1) 安村 純子1) 米倉 圭二1) 下薗 彩子1) 羽田 聡1) 金子 陽一郎1) 高本 聡1) 岡野 里香1) 兵藤 純夫1)
■キーワード
パレコウイルス3型, 新生児, 脳炎・脳症
■要旨
パレコウイルス属は1999年に新たに分類されたウイルス属である.現在までHuman parechovirusとして1型から6型まで6つの型が報告されている.主に3歳未満に感染が好発し,発熱,胃腸炎症状や呼吸器症状を呈す.中枢神経合併症は,1型で脳炎,6型でReye症候群の報告がある.今回我々は,Human parechovirus 3型感染が原因と考えられた新生児脳症を経験したので報告する.
症例は日齢21の女児.発熱,哺乳力低下を主訴に入院後,第2病日より人工呼吸管理を要する無呼吸発作を反復.AST,LDH上昇を認め,第6病日に施行した頭部CTでびまん性の脳浮腫,両側後頭葉から頭頂葉・右前頭葉にかけて広範な低吸収域と,頭部MRIで同部位にT2強調画像,拡散強調画像で高信号域を認めた.急性脳症と診断し,加療を行った.入院中の咽頭ぬぐい液と便よりHuman parechovirus 3型が分離され,髄液からはHuman parechovirus遺伝子を検出した.生後8か月より左不全麻痺が顕在化.脳波では,右後頭葉から側頭葉に活動性の低下を認め,MRIでは右後頭葉に著明な萎縮を認めた.
新生児・乳児の発熱,脳炎・脳症の原因としてHuman parechovirus 3型を考慮する必要がある.
|
|
【原著】
■題名
インフルエンザにより異常行動を示した症例に認められた脳波異常と一過性脳梁膨大部病変
■著者
独立行政法人国立病院機構岡山医療センター小児科 白神 浩史 今井 憲 森田 啓督 塚原 紘平 上田 悠子 森 茂弘 小倉 和郎 木村 健秀 清水 順也 古城 真秀子 福原 信一 古山 輝久 金谷 誠久 久保 俊英
■キーワード
インフルエンザ, 異常行動, インフルエンザ脳症, オセルタミビル, 一過性脳梁膨大部病変
■要旨
2006年冬から2007年春にかけて,インフルエンザに罹患後,異常行動が認められた症例を4例経験した.
4例のうち,けいれんをおこしたのは1例,オセルタミビルを内服したのは4例,脳波検査で異常が認められたのは2例,MRIで異常の認められたのは1例であった.
インフルエンザ罹患時に認められる異常行動では,脳波異常やMRI異常を呈する症例があり,これらは,インフルエンザにより中枢神経系に何らかの異常をおこしている可能性があると思われるので,注意深い経過観察が必要と思われる.
|
|
【原著】
■題名
育児過誤によって血清Na 206 mEq/lを呈した2か月男児例
■著者
東京慈恵会医科大学附属青戸病院小児科1),独立行政法人国立病院機構相模原病院小児科2),東京慈恵会医科大学附属病院小児科3) 平野 大志1) 宿谷 明紀2) 津田 隆1) 臼井 信男1) 衞藤 義勝3)
■キーワード
高Na血症, 育児過誤, 脱水, 塩類中毒
■要旨
育児過誤による慢性的な脱水に塩類中毒が重なり,高ナトリウム(Na)血症(血清Na 206 mEq/l)を呈した2か月男児例を経験した.周生期の異常はなく,退院後自宅で人工乳栄養にて養育されていたが,1か月健診の際に体重増加不良(+10.5 g/日)を指摘された.生後2か月時に不機嫌,哺乳力低下を主訴に当科外来を受診した.来院時,意識障害,多呼吸,頻拍を伴う著明な脱水を呈し,血液検査にて高Na血症が認められた.厳重な輸液管理の結果,全身状態は改善し,後遺症は認められなかった.また原因検索として種々の検査を行ったが,基礎疾患の存在は否定的であった.臨床経過,父母の問診から,育児過誤によって飲水量が慢性的に減少,かつ粉乳の誤った調整による塩類中毒が重なって,高Na血症が生じたと考えた.退院後は保健婦,ソーシャルワーカーの定期的な訪問指導を行い,現在成長発達ともに順調である.
異常な成長・発達の小児を診察する際には,常に家族背景なども考慮に入れることが重要であると考えられた.
|
|
【原著】
■題名
シネMRIと拡散強調背景抑制法が診断と経過観察に有用であったクローン病の1例
■著者
東京逓信病院小児科1),同 放射線科2) 鎌田 和明1) 鈴木 淳子1) 北爪 勉1) 小野 正恵1) 武村 濃2)
■キーワード
クローン病, DWIBS, 拡散強調背景抑制法, シネMRI, 炎症性腸疾患
■要旨
症例は初発のクローン病と診断した14歳女児.
腸管病変を評価する方法として,炎症による腸管蠕動運動の低下に着目し,シネMRIで病態の活動期・寛解期における変化を捉えた.また,T2強調画像で腸管の浮腫を描出し,最近発明された撮像法の拡散強調背景抑制法(DWIBS)で,異常信号で腸管炎症部位を描出し,寛解期に異常信号の消失を認めた.
MRI画像診断は炎症性腸疾患における非侵襲的な初期診断と治療評価の方法として有用であることが示唆された.
|
|
|
バックナンバーに戻る |
|