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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:08.08.29)
第112巻 第8号/平成20年8月1日
Vol.112, No.8, August 2008
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総 説 |
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糸球体上皮細胞,その構造と機能―蛋白尿の発症原因の解明に向けて―
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張田 豊 1219 |
原 著 |
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日比野 健一,他 1227 |
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足立 昌夫 1233 |
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長谷川 有紀,他 1243 |
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高橋 朋子,他 1249 |
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西川 拓朗,他 1255 |
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友納 優子,他 1260 |
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柴田 真理,他 1266 |
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宮村 能子,他 1271 |
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1275 |
日本小児科学会女性医師の職域での環境改善プロジェクト委員会小児科医バンクの取り組みについて
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1283 |
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1289 |
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1290 |
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1291 |
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1301 |
日本小児内分泌学会糖尿病委員会(5) |
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国際小児思春期糖尿病学会臨床診療コンセンサスガイドライン2006〜2008 日本語訳の掲載について
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1307 |
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1332 |
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1333 |
【原著】
■題名
川崎病治療に関する多施設共同研究
■著者
静岡川崎病研究会 日比野 健一 芦田 実華 岩島 覚 上野山 裕巳 大河原 一郎 上牧 務 小山 尚俊 鶴田 悟 福岡 哲哉 宮地 雅直 武藤 庫参 村田 浩章 小野 安生 和田 尚弘 木村 光明
■キーワード
川崎病, ガンマグロブリン療法無効, 冠動脈病変, ステロイド
■要旨
静岡川崎病研究会においては川崎病治療に関して多施設共同研究を行っている.今回平成17年4月1日から平成19年3月31日までに当研究会参加施設にて経験した224症例を対象とし,統一プロトコールに基づき基本療法(ガンマグロブリン大量静注(以下IVIG)1回,無効の場合2回目を追加)ついで選択療法(ステロイドや血漿交換(以下PEX)など)の順に治療し,その効果を検討した.その結果,基本療法が有効であった患者は91.5%(初回IVIG 76.3%,2回目IVIG 64.2%),選択療法まで含めた治療が有効であった患者は99.6%であった.ステロイド療法はIVIG 2回無効症例(以下IVIG無効例)の80%(12/15)に有効,PEX療法は85.7%(6/7)に有効であり,これらもIVIG無効例の治療法として有用である可能性が示唆された.本研究での一過性および持続性冠動脈病変合併率はそれぞれ7.1および3.6%であり,巨大動脈瘤は1例(0.45%)にみられた.
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【原著】
■題名
重度肢体不自由児(者)に対するA型ボツリヌス毒素療法の有用性
■著者
にこにこハウス療育センター小児科・リハビリテーション科 足立 昌夫
■キーワード
A型ボツリヌス毒素, 痙性斜頸, 重度肢体不自由児(者), 脳性麻痺, リハビリテーション
■要旨
重度肢体不自由児(者)(以下,重肢児(者))の日常生活を著しく妨げる痙性斜頸の原因となる筋緊張の緩和と生活機能改善を目的としてA型ボツリヌス毒素療法(以下,BTX-A)を施行した.合計60例へ延べ278回のBTX-Aを投与し,57例(95%)において,頸部,肩甲帯周囲,腰背部など施注部位への直接的効果としての筋弛緩作用を認め,結果として痙性斜頸の改善34例(56.7%)や体軸偏位の改善42例(73.4%),有痛性筋痙縮の緩和50例(83.3%)などを得た.また,間接的には呼吸,消化,栄養をはじめ,生理機能や睡眠などの全身性症状の改善,精神発達への影響,介助者の身体的および精神心理的負担の軽減など多岐に渡る有効性が示唆された.一方で,意思疎通が困難な者への投与という点で,その身体的特性や取り巻く社会的な要因にも配慮を行う必要があり,重肢児(者)への適応や有害事象を含めたBTX-A施行時の留意点についても検討した.
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【原著】
■題名
尿中有機酸分析が早期診断に有用であったビタミンB1欠乏症の2例
■著者
島根大学医学部小児科1),鳥取県立中央病院小児科2),横浜市立みなと赤十字病院小児科3) 長谷川 有紀1) 遠藤 充1) 小林 弘典1) 宇都宮 靖2) 由井 崇子3) 山口 清次1)
■キーワード
尿中有機酸分析, ビタミンB1欠乏症, 清涼飲料水, 末梢神経障害, 心不全
■要旨
ビタミンB1は糖代謝経路の補酵素であるチアミン二リン酸の前駆体で,エネルギー産生に重要な役割を果たす.ビタミンB1が欠乏すると脚気(末梢神経障害)やWernicke脳症,および脚気衝心といわれる右心不全などをきたす.近年ではアトピー性皮膚炎における過剰な食事制限や,清涼飲料水の過剰摂取によるビタミンB1欠乏症の報告が散見されるが,症状のみで早期診断を行うことは容易ではない.我々は代謝異常症を疑って行われた尿中有機酸分析を契機に,ビタミンB1欠乏症の診断に至った幼児の2例を経験した.尿中有機酸分析は,先天性代謝異常症のみならず二次性に起こる脚気のような代謝障害の同定にも有用である.
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【原著】
■題名
生後3か月で発症した3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAリアーゼ欠損症の1例
■著者
高松赤十字病院小児科1),島根大学医学部小児科2),京都大学大学院医学研究科発生発達医学講座発達小児科学分野3) 高橋 朋子1) 関口 隆憲1) 岡村 和美1) 阪田 美穂1) 清水 真樹1) 須賀 健一1) 幸山 洋子1) 大原 克明1) 小林 弘典2) 依藤 亨3)
■キーワード
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAリアーゼ, 非ケトン性低血糖, アシルカルニチン分析, 遺伝子変異, 頭部MRI
■要旨
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAリアーゼ(HMGL)欠損症は常染色体劣性遺伝形式をとり,ロイシンの異化過程および脂肪酸のβ酸化過程に障害をきたす.本邦での報告例は極めて少なく,7例目である.
症例は3か月の男児で,家族歴に血族結婚はない.上気道炎罹患時に嘔吐,意識障害,呼吸停止をきたした.非ケトン性低血糖,代謝性アシドーシス,高アンモニア血症,肝障害を認めた.尿中有機酸分析および血中アシルカルニチン分析でHMGL欠損症と診断した.保管されていた本患児の新生児期濾紙血を用いてアシルカルニチン分析を行ったところ,同様の所見が検出され,新生児期にスクリーニング可能な疾患と考えられた.HMGL遺伝子解析ではこれまでに報告のないエクソン3のW81X(c. 242 G>A)と遺伝子欠失の複合へテロ接合体と考えられた.
生活指導を行うとともに,L-カルニチン内服,ロイシン除去ミルクを用いた食餌療法を行っている.しかし,感染を契機に急性発作を頻回に起こしている.生後10か月時の頭部MRI検査ではT2強調,FLAIR画像で大脳白質および淡蒼球に高信号域を認め,1歳3か月現在,軽度発達遅滞がみられている.
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【原著】
■題名
ステロイドパルス療法を繰り返し救命しえたアデノウイルス3型が考えられた重症肺炎
■著者
鹿児島市立病院小児科1),鹿児島こども病院2),鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児発達機能病態学分野3) 西川 拓朗1) 久保田 知洋1) 島子 敦史1) 奥 章三2) 西 順一郎3) 河野 嘉文3) 川上 清1)
■キーワード
アデノウイルス3型, ステロイドパルス療法, 血球貪食症候群, 急性呼吸窮迫症候群, 腹臥位換気
■要旨
発達遅滞を伴うKlippel-Feil症候群の2歳男児.アデノウイルス(adenovirus:Ad)迅速抗原陽性で持続する発熱と呼吸不全のため,11病日に紹介入院となった.胸部レントゲン写真で両肺野にすりガラス陰影,動脈血液ガスではPaO2/FiO2比116と肺酸素化能の低下を認めた.血液検査では汎血球減少と逸脱酵素の著増を認め,骨髄は低形成で組織球が増加し,血球貪食像が多数みられた.急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS),血球貪食症候群(virus-associated hemophagocytic syndrome:VAHS)を合併したAd重症肺炎と診断し,人工呼吸管理下でステロイドパルス療法,大量免疫グロブリン療法を施行した.しかし治療後も解熱せず,検査所見の改善も乏しかった.ステロイドパルス療法を繰り返し,3クール後に解熱し検査所見も改善した.肺酸素化能は腹臥位換気を併用することにより改善し,入院20日目に抜管できた.入院時の便からアデノウイルス3型(Ad3)を分離した.ARDSを生じるようなAd3重症肺炎の報告は少なく,Ad3によるVAHSの報告は検索しえた限りではない.ステロイドパルス療法はAd重症肺炎の主な治療法であるが,無効例や再燃例に対する治療法は明らかでない.本例では,大量免疫グロブリン療法も試みたが,高サイトカイン血症は続き,ステロイドパルス療法を3クール繰り返すことにより終息した.初期治療で効果不十分と判断してもステロイドパルス療法を繰り返すことは,重要な選択肢と考えられた.
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【原著】
■題名
脊髄髄膜瘤を合併したSplit cord malformationの2例
■著者
福岡大学病院総合周産期母子医療センター新生児部門1),福岡大学小児科2),同 脳神経外科3),同 放射線科4),国際医療福祉大学大学院5) 友納 優子1)2) 小川 厚1)2) 大西 広一3) 林 仁美1) 中村 公紀1) 森 聡子1) 雪竹 浩1) 坂元 政三郎3) 継 仁3) 福島 武雄3) 宇都宮 英綱4) 満留 昭久5) 廣瀬 伸一2)
■キーワード
脊索, 割髄症, split cord malformation
■要旨
脊髄髄膜瘤を合併したsplit cord malformation(以下SCM)の症例を経験したので報告する.症例1は脊髄髄膜瘤,第8胸椎の蝶形椎体,同レベルで骨性隔壁に二分される割髄症を認めSCMと診断した.キアリII型奇形,水頭症,肋骨奇形,腹壁ヘルニア,両下肢完全麻痺,内反足などもみられた.症例2は剖検で脊髄髄膜瘤,骨性隔壁に二分される割髄症を認めSCMと診断した.SCMは発生学的な分類では脊索の形成異常に分類される.当科で過去20年間に経験した二分脊椎20症例のうち,顕在性二分脊椎は10例あったが,この中で本症は2例(全体の10%)で,顕在性二分脊椎の中では20%を占め,決して少なくないと思われた.顕在性二分脊椎は出生すると十分な画像評価をする前に緊急手術を受けることが多く,今回の症例のように特に高位のレベルである場合や重度の奇形を伴う場合,SCMが埋もれている可能性がある.術前に3DCTやMRIなどの画像評価を行うことは,術式や治療方針の選択にも非常に有用であると思われた.
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【原著】
■題名
多彩な解離性障害を呈した重症型血友病Aの1例
■著者
奈良県立医科大学小児科1),同 看護学科2) 柴田 真理1) 櫻井 嘉彦1) 山田 佳世1) 嶋 緑倫1) 飯田 順三2) 吉岡 章1)
■キーワード
解離性障害, 血友病, 家族関係, X連鎖性劣性遺伝
■要旨
症例は14歳の男子.生後9か月時に血友病Aの診断を受け,現在は第VIII因子製剤を定期的に補充する在宅自己注射療法を行っている.生来まじめでおとなしい性格であり,厳しい父に対して反抗したこともなく,学校の成績も優秀であった.X年8月末(14歳5か月時)に,持続する腹痛を主訴に当科を受診したが,外科にて慢性虫垂炎と診断され虫垂切除術を施行した.術後の経過は良好であったが,その後,左下肢の知覚消失を訴え,さらに上腹部痛も出現した.自宅で患児の腹痛について父と激しい口論中に,突然過呼吸状態となり,意識消失とともに四肢の強直が出現した.その発作以降,父に関する記憶が消失し,また,同様の発作が頻回に出現するようになったため,X年10月に解離性障害の疑いにて当科に入院した.入院による精神療法と家族(支援)療法を開始し,その際両親の面会制限を行った.入院中の対応で葛藤が軽減し高校に合格したことで,退院可能となった.本症例の解離性障害の発症には血友病というX連鎖劣性遺伝性疾患特有の母・息子関係と父・息子関係とが深く関与していると思われた.家族関係の精神的負担の大きい血友病症例と長期に関わる場合は,身体症状のみならず,疾患の遺伝様式からもたらされうる特殊な親子関係を理解した上で,両親の児に対する関わりや父母の連合といった家庭環境,さらに児自身の精神的心理的側面をも同時に注意深く対応する必要性が示唆された.
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【原著】
■題名
胃原発バーキットリンパ腫の1例
■著者
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学1),同 保健学科2) 宮村 能子1) 茶山 公祐1) 山下 美保1) 石田 敏章1) 森下 直人1) 鷲尾 佳奈1) 萬木 章1) 小田 慈2) 森島 恒雄1)
■キーワード
貧血, 悪性リンパ腫, 上部消化管潰瘍
■要旨
小児において胃を原発とする悪性リンパ腫はまれである.今回,我々は腫瘍に伴う潰瘍性病変からの出血性貧血で発症した胃原発バーキットリンパ腫の8歳男児例を経験した.1か月前より顔色不良,動悸,嘔吐,心窩部痛,食思不振,3 kgの体重減少が出現し,血液検査にて著明な小球性貧血,便潜血陽性がみとめられた.腹部CT,超音波検査にて胃前庭壁の肥厚,隆起性病変をみとめ内視鏡下生検にてバーキットリンパ腫と診断した.プロトンポンプ阻害剤併用で化学療法を開始し,症状はすみやかに消失した.化学療法に対する反応は良好であった.小児における重篤な出血性貧血や胃潰瘍は悪性腫瘍の合併も念頭においた慎重な精査が必要と考えられた.
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