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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:08.06.27)
第112巻 第6号/平成20年6月1日
Vol.112, No.6, June 2008
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総 説 |
1. |
小児難治性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ療法
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飯島 一誠 965 |
2. |
小児科外来で経験した肺炎球菌occult bacteremia症例の臨床疫学的検討
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西村 龍夫,他 973 |
原 著 |
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石崎 優子,他 981 |
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池谷 真苗,他 991 |
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萩原 悠紀,他 997 |
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真部 哲治,他 1002 |
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鈴木 繁,他 1005 |
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吉田 路子,他 1010 |
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平田 修,他 1013 |
短 報 |
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岡田 賢司,他 1017 |
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1021 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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1024 |
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Injury Alert(傷害注意速報)No.5 計測器による大腿部圧迫
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1037 |
日本小児リウマチ学会 |
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若年性特発性関節炎におけるメトトレキサート適応拡大の取得
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1038 |
日本小児内分泌学会薬事委員会 |
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ターナー症候群におけるエストロゲン補充療法ガイドライン
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1048 |
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1051 |
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1056 |
【原著】
■題名
15歳未満小児の心身・精神領域の問題に対する向精神薬の適応外処方の実態
■著者
厚生労働科学研究費補助金「小児等の特殊患者群に対する医薬品の有効性,安全性情報の収集とそれらの情報に基づくリスク評価・管理手法に関する研究(主任研究者:松田一郎)」班1),日本小児心身医学会薬事委員会2),日本小児精神神経学会薬事委員会3),日本小児神経学会薬事委員会4) 石崎 優子1)2) 宮島 祐1)3) 伊藤 正利1)4) 関口 進一郎1) 深井 善光2) 永井 章2) 宮地 泰士3)
■キーワード
向精神薬, 適応外使用, 小児心身・精神疾患, 処方実態
■要旨
向精神薬の15歳未満の小児患者に対する使用の実際を明らかにするために,日本外来小児科学会ならびに日本小児精神神経学会に所属する医師を対象として,2006年11月に処方実態調査を行った(対象者数2,535名,回答者数443).その結果,小児心身・精神領域の患者数と向精神薬の処方頻度において,この領域を専門とする医師と専門としない医師との間に大きな差が見られた.向精神薬の適応外使用経験者は,回答者全体の42.0%,小児心身・精神領域を専門とする医師の90%以上であった.処方実態では,メチルフェニデート,フルボキサミン,リスペリドンの3薬剤については,小児心身・精神領域を専門とする医師による1か月の平均処方患者数が10人を超えていた.小児の向精神薬治療に関する自由記述では,「保険適応外」であること,ならびに「用法・用量が明確でない」ことを問題視する意見が多かった.本研究により,本邦でも15歳未満の小児に対する向精神薬の適応外使用が拡がっていることが明らかになった.これらの薬剤に対するすみやかな適応外使用問題の解決が望まれる.
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【原著】
■題名
呼吸不全を合併した中毒性表皮壊死症の1例
■著者
聖隷三方原病院小児科 池谷 真苗 宮原 純 廣瀬 悦子 森 有加 神農 英雄 宮崎 直樹 大場 悟 木部 哲也 横地 健治 岡田 眞人
■キーワード
中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis;TEN), acute respiratory distress syndrome(ARDS), 呼吸不全, acetaminophen, γグロブリン大量療法
■要旨
症例は11歳.女児.急性上気道炎に対して近医で処方されたclarithromycin,acetaminophenを内服開始後,発熱,全身の多形滲出性紅斑,呼吸困難感を主訴に受診した.胸部単純レントゲンでは両側下肺野のスリガラス陰影を認めた.入院2日目には紅斑は水疱化しStevens-Johnson syndrome(SJS)進展型中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)と診断した.同日から多呼吸,低酸素血症を認め,心臓超音波検査,BNPの所見からは左心不全は否定的でありARDSの所見を満たした.TENに伴う呼吸不全の診断でICUにて人工呼吸器管理,γグロブリン大量療法,好中球エラスターゼ阻害剤などの投与により入院7日目には上皮化がみられ,入院9日目に抜管した.多臓器不全,眼科合併症を認めず,皮膚の色素脱失を残すのみで入院16日目に退院となった.退院後(第43病日)に施行したDLSTではacetaminophenが陽性で原因薬剤と考えられた.
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【原著】
■題名
血球貪食症候群と遷延する肝門部リンパ節腫脹を呈した2a型自己免疫性肝炎の1男児例
■著者
福井大学医学部病態制御医学講座小児科1),福井大学医学部附属病院病理部2) 萩原 悠紀1) 大嶋 勇成1) 古畑 律代1) 小俣 合歓子1) 畑 郁江1) 谷澤 昭彦1) 今村 好章2) 眞弓 光文1)
■キーワード
2a型自己免疫性肝炎, 血球貪食症候群, 抗LKM-1抗体, 肝門部リンパ節腫脹
■要旨
症例は4歳男児.感冒様症状に引き続き血球貪食症候群を発症し,ステロイド投与により軽快したが,肝門部リンパ節の腫脹が持続し,肝トランスアミナーゼの軽度上昇が遷延した.抗LKM-1抗体単独陽性と肝生検組織像から2a型自己免疫性肝炎と診断された.血球貪食症候群の発症誘因として,2a型自己免疫性肝炎に伴う免疫異常を背景に何らかの感染が関与した可能性,2a型自己免疫性肝炎が1型に比べ急性発症し重症化しやすいことから,自己免疫性肝炎の増悪そのものによる可能性が考えられた.血球貪食症候群の軽快後も肝門部リンパ節腫脹を伴う肝障害が持続する場合には,基礎疾患として自己免疫性肝炎を考慮する必要があると考えられた.
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【原著】
■題名
両眼出血を呈した百日咳の1例
■著者
横浜市立大学附属市民総合医療センター小児総合医療センター 真部 哲治 伊藤 玲子 相原 雄幸
■キーワード
百日咳, DPTワクチン, 年長児, 眼球出血
■要旨
症例は7歳女児.2歳前までに,DPTワクチンのI期追加接種を終了していた.気管支喘息の既往があり,咳嗽,喘鳴を主訴に当科を受診した.治療により,喘鳴は改善し,肺機能良好となった.しかし,咳嗽は悪化し,両側の眼球出血を呈した.マイコプラズマ感染症を考慮してマクロライド系抗菌薬を投与したところ約3週間の経過で咳嗽は軽減し,それに伴い眼症状の改善も認められた.その後,百日咳菌流行株に対する抗体の上昇が判明し,百日咳と確定診断した.しかし,患児には,百日咳に特徴的レプリーゼや末梢血白血球数ならびにリンパ球数の増多は認められなかった.
このように年長児における百日咳は症状,検査所見がともに非典型的である.それに加え,現時点では,早期確定診断に有用な検査に乏しく,早期に診断するのは困難である.DPTワクチンによる免疫期間は数年であることも考慮すると,就学前にDPT接種を追加するか,あるいは年長児の追加接種を百日咳含有ワクチンへ変更することを検討すべきと思われた.
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【原著】
■題名
視神経管内異物により脳髄膜炎を繰り返した1例
■著者
防衛医科大学校小児科1),聖隷佐倉市民病院小児科2),自衛隊横須賀病院教育部3),新所沢キッズクリニック4),国立病院機構西埼玉中央病院5) 鈴木 繁1)2) 若松 太1) 滝沢 真理1) 辻田 由喜3) 石渡 隆寛1) 小林 治4) 田村 喜久子5) 浅野 優1) 野々山 恵章1)
■キーワード
視神経管内異物, 外傷性視神経症, (化学性)脳髄膜炎
■要旨
頭痛,頸部痛を主訴に,繰り返し脳髄膜炎を発症した11歳男児例を経験した.
CT,MRIなどの画像所見では左前頭葉から側脳室前角にいたる限局した炎症像を示していた.また6歳時に左外傷性視神経症と診断されていたが,受傷時の状況を再聴取し,過去に撮影された画像の再検索により,視神経管内異物の可能性を見出した.開頭手術により異物を摘出し,以降脳髄膜炎の再発は認められていない.
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【原著】
■題名
自閉性障害児に発症したステロイド誘発性精神障害に対しリスペリドンが著効した1例
■著者
明石市立市民病院小児科1),京都府立医科大学小児発達医学2) 吉田 路子1) 千代延 友裕1) 藤木 敦1) 石井 るみ子1) 貫名 貞之1) 森本 昌史2)
■キーワード
ステロイド誘発性精神障害, 自閉性障害, ドパミン, セロトニン, リスペリドン
■要旨
症例は3歳3か月の男児.2歳6か月時に自閉性障害と診断されたが,攻撃性や自傷行為などの行動異常は目立っていなかった.今回ネフローゼ症候群に罹患しステロイド療法を行ったところ,投与ごく早期から激しい攻撃性,自傷行為が出現した.臨床経過よりステロイド誘発性精神障害と診断したが,ネフローゼ症候群の治療を考えるとステロイドの中止は困難であった.リスペリドンを少量(0.02 mg/kg/day)で併用したところ,速やかに症状の改善を認め,ステロイド療法を完遂しえた.広汎性発達障害児の行動異常にはドパミン,セロトニンの異常が関与しているとされている.ステロイドの投与は両神経伝達物質に影響を与えるため,急激な行動異常が誘発された可能性もある.両神経伝達物質に対する拮抗作用を介してリスペリドンが有効であったと考えられる.また自閉性障害児では海馬の病理学的異常が報告されており,ステロイド濃度上昇に対するネガティブフィードバック機構の異常が存在する可能性も考えられる.これらの点を考慮すると広汎性発達障害児にステロイドを投与する際には中枢神経系副作用の出現に注意が必要であると考えられる.
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【原著】
■題名
虐待に起因する腸壁内血腫の1例
■著者
広島赤十字・原爆病院小児科 平田 修 溝口 洋子 藤田 直人 浜本 和子 西 美和
■キーワード
虐待, 腸壁内血腫, 腹部外傷
■要旨
腸壁内血腫は比較的まれな疾患で,腹部外傷を契機に発症することが多い.小児での受傷機転は,転倒,自転車ハンドル事故による腹部外傷が多く,そのため活動期の年長男児で十二指腸に発症することが多い.しかし,虐待による腹部外傷は幼少児に多く,空腸に多い,症状がはっきりしないなどの特徴があり,早期発見が難しい.今回我々は,虐待に起因する腸壁内血腫の1例を経験したので報告する.症例は2歳男児.発熱,嘔吐,下痢を主訴に感染性腸炎の疑いで近医より紹介された.加療により解熱し腸炎症状は改善したが,経口摂取開始後に再度嘔吐を認めた.腹部超音波での小腸壁内腫瘤と腹部CTでの著明な腸管拡張から小腸壁内腫瘤による閉塞性イレウスと診断した.保存的治療により症状改善し,腹部超音波で腫瘤の縮小も確認できたため,腸壁内血腫と診断した.入院時の体表外傷,入院までの虐待歴,入院中の両親の態度,入院経過などから虐待に起因する腸壁内血腫と考え,児の保護など児童相談所への連絡を必要とした.
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【短報】
■題名
RSウイルス感染重症化予防による後年の反復性喘鳴・喘息発症抑制効果の検討
■著者
日本小児アレルギー学会1),日本未熟児新生児学会2),日本小児呼吸器疾患学会3) 岡田 賢司1) 楠田 聡2) 望月 博之3) 戸苅 創2) 森川 昭廣3) 西間 三馨1)
■キーワード
Respiratory syncytial virus(RSV), 抗RSVヒト化モノクローナル抗体, 反復性喘鳴/喘息
■要旨
乳児期にRSV感染の重症化を予防することで後年の反復性喘鳴を抑制できるかを検討した.わが国では2002年から早産児を対象にRSV感染重症化予防を目的として抗RSVヒト化モノクローナル抗体「palivizumab」の投与が開始されている.初年度のpalivizumab投与児および非投与児の3歳児健診において,後方視的に生後3年間の咳や喘鳴などに関するアンケート調査を行った.Palivizumab投与群の喘鳴2回以上発症の抑制効果は,非投与群と比較して出生体重500〜999 g群ではオッズ比0.339(95%信頼区間0.118〜0.980)と有意な関連を認めた.一方,出生体重1,000〜2,499 g群では有意な関連はなかった.今後,症例数や患者背景をそろえた前方視的調査が必要である.
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