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|  | 日本小児科学会雑誌 目次 |  
 (登録:08.5.30) 
| 第112巻 第5号/平成20年5月1日 Vol.112, No.5, May 2008
 
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| 原  著 |  
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| 加治 正行  837 |  
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| 清水 純,他  842 |  
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| 福村 忍,他  848 |  
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| 田代 克弥,他  852 |  
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| 石川 貴充,他  858 |  
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| 福原 信一,他  863 |  
| 短  報 |  
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| 佐々木 吉明,他  867 |  
| 論  策 |  
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| 小林 智幸  869 |  
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| 伊川 泰広,他  874 |  
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| 江原 朗  879 |  
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| 883 |  
| 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |  
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|  | Injury Alert(傷害注意速報)No.4 浴槽用浮き輪による溺水 |  |  
| 910 |  
| 日本小児リウマチ学会 |  
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|  | 若年性特発性関節炎に対する生物学的製剤治療の手引き(2008) I.トシリズマブ |  |  
| 911 |  
| 日本小児内分泌学会糖尿病委員会(4) |  
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|  | 国際小児思春期糖尿病学会 臨床診療コンセンサスガイドライン2006〜2008 日本語訳の掲載について |  |  
| 924 |  
| 日本小児内分泌学会薬事委員会報告 |  
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|  | 小児期発症バセドウ病薬物治療のガイドライン2008 |  |  
| 946 |  
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| 953 |  
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| 【原著】■題名
 小児への禁煙治療に関する検討
 ■著者
 静岡県立こども病院内分泌代謝科
 加治 正行
 ■キーワード
 タバコ, 喫煙, ニコチン依存症, ニコチンパッチ, 禁煙治療
 ■要旨
 わが国の中学生,高校生の喫煙率は高く,しかも喫煙の低年齢化が進んでいる.ニコチンには強い依存性があり,喫煙開始からニコチン依存状態になるまでの期間が,未成年者では成人に比べて非常に短い.喫煙している子どもたちの多くはニコチン依存状態であり,治療なしでは禁煙が困難である.そこで静岡県立こども病院では,喫煙をやめられない子どもたちを治療するための「卒煙外来」を2002年10月に開設した.治療としては,主としてニコチンパッチを用いたニコチン代替療法を実施した.
 今回,当院「卒煙外来」受診者30名(中学生20名,高校生7名,その他3名)について検討した.28名にニコチンパッチを処方したが,処方枚数は一日1枚1〜2週間の者が大半で,70%以上の例が2週間以内の比較的短期間の治療で禁煙に成功した.外来受診1週間後の禁煙成功率は83%と高かったが,1年後は23%に低下していた.治療によって一旦は禁煙できても,家族や友人に喫煙者が多いことや,自動販売機で容易にタバコを入手できる環境など,様々な要因によって再喫煙してしまう者が多いことが大きな問題である.長期成績を改善するためには,一旦禁煙できた子どもたちへの精神的サポートを継続することが重要であり,家庭,学校,医療機関の連携,協力が必要と考えられる.今後は全国の医療機関に子どものための禁煙治療の窓口ができることが望まれる.
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| 【原著】■題名
 保育園,幼稚園における与薬の実態と問題点
 ■著者
 小山市民病院小児科1),自治医科大学小児科2),同 公衆衛生学3)
 清水 純1)2)  齋藤 貴志1)2)  五十嵐 浩1)2)  桃井 真里子2)  上原 里程3)  大木 いずみ3)
 ■キーワード
 与薬, 保育園, 幼稚園, 小児保健, 時間外保育
 ■要旨
 保育現場における与薬の実態と問題点を明らかにする目的で,栃木県の全保育園,幼稚園を対象に与薬の実態調査を行った.郵送にて調査票を送付,回収した.回収率は保育園84%,幼稚園64%であった.
 急性疾患の与薬は約90%の園で対応していた.保育園では,低年齢児の与薬が多く,与薬日数も長かった.約90%が依頼書で保護者からの与薬依頼を受けていた.一方,幼稚園では,口頭や連絡帳などの簡便な方法で与薬依頼を多く受けていた.慢性疾患については,定期与薬に際し医師の診断書の提出を求める園は約30%に止まった.また,熱性けいれんへの抗けいれん薬の座薬の投与が適正に行われていない例があった.園での病児の預かりは軽症児に限定して日常的に行われていた.
 幼稚園の低年齢保育が拡大する現状において,園内与薬が支障なく行われるためには,与薬の安全性の確保と簡略化を計るための,地域で統一された与薬の指示書の作成が必要であると考えられた.また,園医,主治医といった医療側との連携や,看護師の配置,さらには病児,病後児施設の整備を要すると考えられた.
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| 【原著】■題名
 中脳周囲非動脈瘤性くも膜下出血の女児例
 ■著者
 青森県立中央病院小児科
 福村 忍  會田 久美子  高山 留美子  安保 亘
 ■キーワード
 頭痛, 家族発症, くも膜下出血, 小児, 中脳周囲非動脈瘤性くも膜下出血
 ■要旨
 中脳周囲非動脈瘤性くも膜下出血(Perimesencephalic nonaneurysmal subarachnoid hemorrhage:PNSH)は良性のくも膜下出血として成人領域ではよく認められるが,小児領域では報告数が少なく,あまり知られていない疾患である.症例は生来健康な10歳の女性.授業中突然の頭痛で発症し,CT,MRIで中脳周囲に限局したくも膜下出血を認めた.血小板や凝固系には異常を認めず,血管造影にて動脈瘤や異常血管を認めないことからPNSHと診断した.大きな合併症はなく,保存的療法のみで軽快し,1か月の入院後に退院した.その後,再発はしていない.
 これまでの小児例の報告では家族歴は認められなかったが,本例の母は2年前に42歳で非外傷性のくも膜下出血により死亡している.遺伝的背景が推察されたが,血液検査や血管造影では異常を認めなかった.
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| 【原著】■題名
 亜鉛単独療法が奏効した肝型Wilson病の1例
 ■著者
 佐賀大学医学部小児科
 田代 克弥  大中 愛子  松尾 宗明  浜崎 雄平
 ■キーワード
 Wilson病, 亜鉛療法, MRI
 ■要旨
 Wilson病に対し亜鉛単独治療を行い2年以上に渡り経過を観察している10歳女児例を報告した.患児は2005年貧血と肝機能障害で発見された.初診時の血液検査では中等度の貧血と慢性肝障害パターンの肝機能異常を示し,同時に施行した画像検査ではMRI・腹部エコー共に肝硬変パターンを呈していた.明らかな神経学的異常は認めず,血清セルロプラスミン低値と尿中銅の高値及びKayser-Fleischer輪を認めたことより肝型Wilson病と診断した.この症例の治療にはキレート剤は使用せず,亜鉛剤単独投与を行った.治療開始後溶血性貧血は速やかに改善し,凝固能・血清肝機能マーカー何れも経過と共に徐々に正常化した.また,肝臓の形態学的所見はMRIにてフォローしてきたが,こちらも治療経過と共に改善している.現在治療開始後2年を経た.経過中に一過性のアミラーゼ上昇と好中球減少がみられたものの重症感染や膵炎の合併もなく経過しており,日常生活も支障なく経過良好である.
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| 【原著】■題名
 重度肺高血圧・僧帽弁疣贅を合併した慢性活動性EBウイルス感染症
 ■著者
 浜松医科大学小児科
 石川 貴充  岩島 覚  岡田 周一  古橋 協  飯嶋 重雄  本郷 輝明  大関 武彦
 ■キーワード
 慢性活動性EBウイルス感染症, 心血管合併症, 肺高血圧, 僧帽弁疣贅, 僧帽弁閉鎖不全
 ■要旨
 重度肺高血圧,僧帽弁疣贅を合併した慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)症例を経験したので報告する.
 症例は17歳女性.7歳時に発熱,頬部皮疹,肝機能障害を認めCAEBVと診断した.以降3〜4か月ごとに発熱,皮疹,汎血球減少を繰り返した.16歳時に肺高血圧,僧帽弁閉鎖不全,大動脈弁閉鎖不全を発症,17歳時に高熱と心不全増悪を認め当科入院となった.入院時心臓超音波検査により僧帽弁疣贅が確認された.入院後多臓器不全を認め集中治療により一時的に軽快するも,無顆粒球症を契機に入院31日目に永眠された.
 CAEBVは経過中に様々な合併症を呈し,予後不良の転機をとることが少なくない.特に心血管合併症は,致死的経過をとりうる重症合併症と捉えられる.本症における肺高血圧や僧帽弁疣贅の合併は稀であるが,心血管合併症として常に考慮する必要があると考えられた.
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| 【原著】■題名
 少量ステロイド投与によって救命した輸液療法・カテコラミン抵抗性敗血症性ショックの1例
 ■著者
 独立行政法人国立病院機構岡山医療センター小児科
 福原 信一  竹内 章人  清水 順也  古城 真秀子  古山 輝久  金谷 誠久  白神 浩史  久保 俊英
 ■キーワード
 小児救急, 少量ステロイド, 敗血症性ショック, 敗血症
 ■要旨
 敗血症性ショックは現在でも致死的となり得る疾患である.かつて高容量ステロイド療法は転帰を改善させないとして否定的な報告がなされたが,近年少量ステロイド療法の有効性が示唆されている.今回我々は上気道感染から敗血症性ショックを来たし,輸液療法とカテコラミンに抵抗性であった症例に少量ステロイド投与を行った.血圧は改善し,問題となる副反応は見られなかった.輸液療法・カテコラミン抵抗性の敗血症性ショックの症例に対して少量ステロイド療法は考慮されるべき治療法である.
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| 【短報】■題名
 嚥下障害を合併した重症心身障害児に対するポリオワクチン接種の1経験例
 ■著者
 美幌療育病院小児科
 佐々木 吉明  丸山 静男
 ■キーワード
 ポリオワクチン, 重症心身障害児, 経管栄養, 嚥下障害, 中和抗体
 ■要旨
 症例は,8歳女児.生後まもなくより低酸素性虚血性脳症後遺症として療養していた.摂食障害のため経管栄養にて管理されており,唾液の嚥下が困難であった.2004年に2回経口生ポリオワクチンを接種された.接種方法は経管によるワクチン注入は不適当と判断し,接種前に可能な限り口腔内の唾液を吸引の後,口腔内にポリオワクチンを滴下する事で免疫獲得を試みた.接種約3年後,ポリオウイルスの中和抗体価の上昇が確認できた.この事からも嚥下困難を合併する症例においても,感染予防の観点からもポリオワクチン接種を試みるべきである.
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| 【論策】■題名
 モロッコの地方公立病院における新生児医療の現状―貧困層と中間・富裕層の比較について―
 ■著者
 独立行政法人国際協力機構モロッコ王国シニア海外ボランティア
 小林 智幸
 ■キーワード
 途上国, 新生児医療, 国際協力, モロッコ王国, 貧困層
 ■要旨
 モロッコ王国のメクネス県メクネス市にあるパニヨン(PAGNON)病院にて,2004年10月から2005年10月までの新生児科入院患者(以下患者)を家族の経済状況をもとに貧困層群と中間・富裕層群に分け,それぞれの疾患の特徴について検討した.同院はメクネス県唯一の公立周産期病院である.分娩数はメクネス県全体の公立施設分娩数の65%を占めており,患者家族の73%は貧困層に属している.患者の死亡率は,貧困層群20.1%,中間・富裕層群8.1%と貧困層群のほうが有意差を持って高かった.在胎週数別の死亡率について検討したところ,在胎31週未満の症例は全例死亡しており,しかもそれらの症例はすべて貧困層群であった.在胎31週以降の死亡率も,貧困層群が中間・富裕層群を上回っていた.分娩場所の比較では,両群ともにパニヨン病院や保健センター(Centre de Sante)が多かった.特徴として,貧困層群には自宅分娩が多く含まれていたこと,中間・富裕層群には自宅分娩はなく,開業医での分娩が多いことがあげられた.疾患別にみると,出生時仮死,早期産,感染症が両群ともに多かった.貧困層群と中間・富裕層群の患者の死亡率に差が認められた要因として,児の出生後の治療だけでなく,産前の妊産婦の健康を取り巻く環境が関与している可能性が示唆された.
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| 【論策】■題名
 手袋着用の有無による小児の採血・点滴の成功率
 ■著者
 公立能登総合病院小児科
 伊川 泰広  西浦 可祝  和田 英男
 ■キーワード
 Personal Protective Equipment, 小児, 処置成功率, 感染対策
 ■要旨
 2004年,米国疾病予防管理センター(CDC)は「医療現場における個人防護具(PPE)の選択と使用に関するガイダンス」を提示し,医療従事者が採血や点滴処置を行う時に手袋などPPEを正しく着用することを強く推奨している.しかし,日本ではPPEの着用率が低く,なかでも小児科医は手技の難しさなどを理由に,採血や点滴を行う際に手袋着用を行っていない事が多い.我々は採血や点滴が必要とされた小児454例を対象として,手袋着用の有無により手技の成功率が低下するか検討を行った.成功率は着用群で84.3%,非着用群で83.3%と有意差は認めなかった.また,小児科医のPPE使用状況を調査する目的で北陸3県の小児科医を対象とした手袋着用に関するアンケートを実施した.採血や点滴の際に「手袋を着用することが多い」と回答した医師はわずか13%であり「必ず使用する」と回答した医師は一人もいなかった.また,半数以上の医師はPPEの使用について「過去に指導されたことはない」と回答した.採血や点滴などの処置を行う機会の多い若手小児科医や研修医は,手袋などのPPEを積極的に着用すべきであり,指導的立場の小児科医は部下のPPE使用を徹底させて医療安全管理に努めるべきであると思われた.
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| 【論策】■題名
 病院小児科の集約化は患者の受診に大きな影響を与えるのか―北海道を例として―
 ■著者
 コアラメディカルリサーチ
 江原 朗
 ■キーワード
 集約化, 病院小児科, 受診距離, 時間距離, 小児救急
 ■要旨
 平成19年9月11日,北海道は「小児科医療の重点化計画(仮称)素案」を提示し,道民にパブリックコメントを求めた.そして,平成20年1月11日「小児科医療の重点化計画」が公表された.21の病院に小児科機能が集約化される予定である.集約化された場合,全道180の市町村の小児が受診可能であるのか,地図情報システムを用いて解析した.
 最寄りの重点化病院からの距離が100 km以上離れた市町村は180市町村中11に過ぎなかった.一方,100 km未満の市町村に,北海道全体の年少人口(15歳未満)の98%以上が居住していた.
 年少人口のカバー率から見ると,15都市21病院に小児救急機能を集約化しても,各地域の小児の受診には大きな影響を与える可能性は低い.もちろん,重点化病院から100 km以上の遠隔地に居住する年少人口が約13,000人存在するので,これらの子供たちへの救急医療の提供は必須である.また,冬季間の搬送に対する配慮も必要である.こうした場合には,小児科以外の診療科の医師が小児の診療を行う体制を築き,必要に応じて二次搬送できる体制を整備する必要がある.
 また,重点化・集約化においては,地元の利害が衝突する.こうした利害衝突の解決には,大学,医師会,行政の強力なリーダーシップの存在が必要である.
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