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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:08.03.25)
第112巻 第3号/平成20年3月1日
Vol.112, No.3, March 2008
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総 説 |
周産期と国際保健 |
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森 臨太郎 419 |
周産期と国際保健 |
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岩本 あづさ 430 |
周産期と国際保健 |
3. |
カンガルーケアによる新生児の死亡・罹患率の減少―科学的根拠の集積と今後の課題
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永井 周子 438 |
4. |
けいれん群発型HHV-6脳症の概念と位置づけ
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長澤 哲郎,他 448 |
原 著 |
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寺田 喜平,他 458 |
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岡田 あゆみ,他 463 |
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村上 貴孝,他 471 |
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泉 真由子,他 476 |
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泉 真由子,他 483 |
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伊藤 康,他 489 |
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小宮山 真美,他 494 |
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疋田 敏之,他 499 |
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松林 里絵,他 504 |
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地方会抄録(奈良,山陰,鳥取,宮城,栃木,青森,山口,福岡,北陸,富山,愛媛)
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507 |
日本小児科学会次世代育成プロジェクト委員会 |
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553 |
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554 |
日本小児科学会学校保健・心の問題委員会 |
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入院中の患児・家族を支援するシステムに関する二次調査
―平成19年度アンケート調査:入院患児の心の問題の発見
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556 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
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563 |
日本小児内分泌学会性分化委員会 |
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565 |
日本小児内分泌学会糖尿病委員会(2) |
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国際小児思春期糖尿病学会 臨床診療コンセンサスガイドライン2006〜2008
日本語訳の掲載について
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579 |
イーライリリー海外研修フェローシップ報告 |
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原田 謙 599 |
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607 |
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608 |
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609 |
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614 |
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616 |
【原著】
■題名
入園・入学時における調査と接種証明書による麻疹・風疹対策
■著者
川崎医科大学小児科第1講座1),ふじの小児科医院2),なんば小児科医院3),山岡小児科内科医院4),倉敷中央病院小児科5) 寺田 喜平1) 藤野 光喜2) 難波 弘志3) 山岡 秀樹4) 馬場 清5) 片岡 直樹1)
■キーワード
予防接種, 麻疹, 風疹, 予防接種対策
■要旨
倉敷市における麻疹,風疹の予防接種対策として,2002〜2006年にかけて幼稚園および小中学校の入園・入学時に接種歴と既往歴を調査し,予防接種を勧奨して感受性者と不明者には接種証明書を提出してもらうようにした.その結果,5年間の調査において麻疹の非感受性者率は幼稚園で92.5%から96.4%,小学校91.1%から93.9%,中学校88.7%から88.5%になった.風疹の非感受性者率は幼稚園で83.7%から94.0%,小学校で72.8%から89.0%,中学校で53.1%から70.1%に増加し,接種率の低かった風疹で大きな効果を上げることができた.感受性者か非感受性者か判別不明であった割合は,小学校において麻疹が4.6%から1.3%に,風疹が6.3%から2.0%に減少した.また中学校においても麻疹が10.1%から4.5%に,風疹が18.5%から8.9%に減少した.接種証明書の提出率は全体的に徐々に減少し約10%となった.中学校の提出率がもっとも低く,任意接種で有料のためと思われた.以上より,これらの対策は保護者の接種動機形成と調査の不明率減少に役立ち,感受性者を減少させた.またこの接種証明書の提出は母子手帳や予防接種手帳の紛失を防ぐことに効果があったと推察されたが,今後さらに接種証明書の提出率を増加させる工夫が必要と思われた.
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【原著】
■題名
食行動異常46症例の臨床的検討と小児科医の役割
■著者
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学1),興生総合病院小児科2),住友別子病院小児科3),三原赤十字病院小児科4),岡山大学大学院保健学研究科5) 岡田 あゆみ1) 宗盛 絵里子1)2) 中村 彩1)3) 細木 瑞穂1)4) 渡邉 久美5) 大重 惠子1)5) 森島 恒雄1)
■キーワード
食行動異常, 摂食障害(eating disorder), 恐食症(phagophobia), 心因性嚥下障害(functional dysphagia), 解決志向アプローチ(solution focused approach)
■要旨
本研究の目的は,食行動異常を呈する小児の特徴を明らかにすることである.我々は,食行動異常(拒食,少食,偏食など)とやせ(体重減少または体重増加不良)を主訴に,岡山大学病院を受診した46症例について報告した.
患者の診断は,摂食障害(Eating Disorder:ED)が多かった.病識の有無とやせ願望の明確さに注目して検討したところ,肥満恐怖はあるがやせ願望が明確でない群は,やせ願望が明確な群と比較して,発症が低年齢である,発症の誘因がダイエットではないことが多い,やせの程度は重症で身体的に重篤であるが予後は比較的良好である,などの特徴を持つことが明らかになった.また,ED以外の食行動異常は35%存在した.発症の誘因は嘔吐や窒息など明らかなことが多く,背景には摂食に対する恐怖や不安があり,重症度は様々であった.
小児の食行動異常には複数の病態があり,診断には注意が必要であった.また,やせの影響で心理療法の効果が減弱されるため,低栄養状態の改善が重要であり,小児科医が治療に果たす役割は大きいと考えられた.
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【原著】
■題名
けいれん性疾患の実態と保護者への指導
■著者
特別医療法人中野こども病院 村上 貴孝 森 喜造 木全 貴久 内山 敬達 藤井 喜充 目黒 敬章 圀府寺 美 木野 稔 中野 博光
■キーワード
けいれん性疾患, けいれん重積, 小児救急, 熱性けいれん, 保護者指導
■要旨
平成18年の1年間に,けいれんを主訴に受診した,のべ891名(総外来患者中1.8%)をまとめた.2歳未満が約半数を占め,6歳未満が約90%であった.インフルエンザの流行に一致して1月が最も多く,11月はノロウイルスの流行に伴い,下痢による無熱性けいれんが多かった.時間帯では,20時から22時の受診が最多で,18時から0時で約40%を占めた.全患者の81%が救急車で受診したが,87.2%は受診時には発作は抑制されており,持続していたのは5.5%に過ぎなかった.けいれん持続時間は5分以内が88.8%で,30分以上持続したのは3.7%であった.発熱からけいれんまでの時間は,約60%が12時間以内,80%が24時間以内と早期であり,48時間以上経過してから発症したのは5.5%に過ぎなかった.
これらのデータに基づき保護者対象けいれんリーフレットを作成した.これらを利用して説明することで保護者の過剰な不安が解消されれば,小児救急現場の混乱の緩和に結びつくと思われる.
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【原著】
■題名
保育園・小中学校が抱えるこころの問題を持つ子どもの実態調査
■著者
お茶の水女子大学文教育学部1),国立成育医療センターこころの診療部2) 泉 真由子1) 奥山 眞紀子2)
■キーワード
心の診療医, ニーズ, 保育園・小中学校, 子どもの精神的問題
■要旨
子どもの心の診療に関して,需要の急速な増加に追いついていない現状が存在し,子どもの心の診療医の養成が急務との意識が高まっている.そのための施策を考える上では,基礎となるニーズを把握する必要があるが,最近の日本におけるニーズの全国調査がないため,今回,全国の全国保育協会加盟保育園・公立小中学校の20%を無作為抽出し,調査を行った.その結果,保育園で78.1%,小学校で76.7%,中学校で88.7%と,非常に多くの園や学校が子どもの精神的な問題への対応経験を持つことが明らかとなった.何らかの対応が必要な精神的問題を持つ子どもの存在頻度は,保育園で4.57%,小学校で2.90%,中学校で4.21%であった.海外での有病率の約1/3程度という結果だが,「何らかの対応が必要な」子ども,つまりニーズとして参考になる値と考えられた.
問題の内容としては,低年齢で多く年齢とともに減少していくものとして「発達の遅れ」,「行動の問題」,「他人とのかかわりの問題」,「こだわりの問題」があり,小学校中学年頃から増加し始め中学で多くなる問題として「不登校」,「非行の問題」,「心の問題が原因の身体症状」,「自殺念慮・自傷行為」がみられた.特に,「発達の遅れ」は保育園や小学校低学年では約30%と最も大きな問題であるが,中学では11.4%まで減少し,逆に「不登校」が中学校では40%を超えて最大の問題となっていた.
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【原著】
■題名
保育園・小中学校と医療機関の連携に関する実態調査
■著者
お茶の水女子大学文教育学部1),国立成育医療センターこころの診療部2) 泉 真由子1) 奥山 眞紀子2)
■キーワード
保育園・小中学校, 医療機関, 連携, ニーズ
■要旨
学校や保育園での子どもの精神的な問題の増加が指摘されており,医療との連携が必要という声は多いが医療との連携に関する全国調査は存在していなかった.本研究では全国保育協会加盟保育園及び公立小・中学校への調査を行い,子どもの精神的問題に保育・教育機関が対処する際の他機関との連携状況について分析した.園・学校の中のみで対応する割合は保育園(28.7%),小学校(44.0%),中学校(47.2%)と子どもの年代が上がるに伴って多くなる傾向がみられ,「医療機関へ受診させた」割合は,保育園(15.9%),小学校(14.5%),中学校(12.3%)とそれ程多いものではなく,子どもの年代が上がるに伴って減少していた.しかしながら,精神的問題を持つ子どもに対応する際に園や学校が困る点として「病気かどうか迷う」という答えが最も多く,医療に対する潜在的な需要が伺われた.医療機関に受診させた際には「医学的な知識に基づく対処策の示唆」と,「家族への対応」に対して利点があったと感じ,また問題点としては「本人又は家族に勧めにくい面があった」,「なかなか予約が取れず受診までに時間がかかった」という意見が多く挙げられた.医療機関の敷居の高さを是正し,子どもや家族に必要な医療に結びつけるため,医療は園や学校との連携を築くことと,その啓発が求められていると考えられた.
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【原著】
■題名
てんかん発作が疑われた神経調節性失神8例の臨床的検討
■著者
東京女子医科大学小児科 伊藤 康 小国 弘量 田宮 さやか 大澤 真木子
■キーワード
意識消失, けいれん, けいれん性失神(convulsive syncope), 神経調節性失神(neurally mediated syncope)
■要旨
意識消失とけいれんを繰り返し,過去にてんかん発作が疑われていた神経調節性失神(neurally mediated syncope;NMS)8例の臨床的検討を行った.本研究におけるけいれん性失神(convulsive syncope;CS)は,疼痛,恐怖・不安などの情動ストレス,長時間起立,入浴後などの誘因の存在下に生じ,臥位,睡眠時では認めなかった.全例脳虚血症状としての前兆(嘔気,気分不快,眼前暗黒感,めまいなど)が先行し,顔面蒼白を呈した.主な発作型は強直発作で,非律動性の間代攣縮も認められた.発作持続時間は1分以内と短く,発作後麻痺はなく,意識回復も速かった.病歴,身体所見,12誘導心電図に基づいて適切な初期評価を行い,不必要な検査や治療が行われることがないよう注意すべきである.また母親の失神歴,心理社会的問題の存在が診断,治療上において重要と考えられた.
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【原著】
■題名
超低出生体重児における甲状腺ホルモン補充療法
■著者
自治医科大学小児科 小宮山 真美 高橋 尚人 矢田 ゆかり 小池 泰敬 本間 洋子 桃井 真里子
■キーワード
超低出生体重児, 甲状腺機能低下症, 腹部膨満, 体重増加不良, 甲状腺ホルモン
■要旨
超低出生体重児,特にsmall-for-dates(SFD)児は腹部膨満を呈し消化管栄養が困難な場合が多い.我々は,甲状腺ホルモン補充により,腹部膨満,体重増加不良が改善した超低出生体重児を7例経験した.
症例は腹部膨満または体重増加不良が見られた超低出生体重児で,在胎22〜31週,出生体重452〜992 gのappropriate-for-dates(AFD)児4名,SFD児3名.この7例のfree thyroxin(fT4)値は平均0.75±0.31 ng/dlで,6例で1.0 ng/dl未満であり,TSH(thyroid stimulating hormone)値は平均4.38±2.58 μU/mlだった.この7例にレボチロキシンナトリウム(T4-Na)の補充を開始した結果,全例で腹部膨満ないし体重増加の有意な改善が得られた.有効な作用が得られた時のT4-Na投与量は平均7.6±3.0 μg/kg/日,fT4の血中濃度は平均1.34±0.21 ng/dlであった.
超低出生体重児では腹部膨満,体重増加不良に対し甲状腺ホルモン補充が必要な場合があり,その場合,fT4<1.2 ng/dlを治療開始基準としてよいが,目標血中濃度は個体差が大きく設定しにくいと考えられた.
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【原著】
■題名
ヘパリン起因性血小板減少症による下大静脈血栓・肺血栓梗塞症
■著者
帝京大学医学部小児科1),同 内科2),兵庫県立淡路病院内科3),帝京大学医学部放射線科4) 疋田 敏之1) 鈴木 晴郎1) 脇田 傑1) 北國 圭一1) 加賀 文彩1) 川杉 和夫2) 松尾 武文3) 神武 裕4) 古井 滋4) 柳川 幸重1)
■キーワード
ヘパリン起因性血小板減少症II型(HIT II型), 下大静脈血栓症, 肺血栓梗塞症, 抗platelet factor(PF)4-複合体抗体, ヘパリン惹起性血小板凝集試験
■要旨
症例は8歳女児.けいれんを主訴に入院した.ウイルス性脳炎と診断し,けいれん抑制のためにチオペンタールで鎮静して人工呼吸管理を行った.同時に右大腿静脈から中心静脈カテーテルを用いて高カロリー輸液(未分画ヘパリン1単位/ml混合,1日投与量として50〜100単位/kg)を開始したところ,入院14日目に下大静脈血栓症を合併した.治療のために全身性にウロキナーゼと遺伝子組み換え型組織プラスミノーゲン活性化因子を投与したが,下大静脈血栓症の改善は見られなかった.そのためヘパリン3,000単位の投与下で経カテーテル的に下大静脈内にフィルターを留置して血栓内でウロキナーゼを注入する局所血栓溶解療法を行った.1週間後に再度,経カテーテル的に局所血栓溶解療法を行ったがカテーテル術中に突然血圧が低下し死亡した.生存中に著明な血小板減少は認めなかったが,ヘパリンを使用中に血栓症を認めたことから,ヘパリン起因性血小板減少症(Heparin-induced thrombocytopenia:HIT)を疑い,生前の血液検体で抗ヘパリン―血小板第4因子(PF4)複合体抗体(HIT抗体)測定およびヘパリン惹起性血小板凝集試験を行った.その結果,入院時は陰性で入院15日では陽性であり,生存中に著明な血小板減少は認めなかったが,血栓症の合併を見たことと合わせて本例ではHIT-II型を合併したと診断した.
本邦では小児例のHITの報告は無く臨床経過を中心に報告する.
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【原著】
■題名
虐待が原因と考えられた高ナトリウム血症の1例
■著者
聖隷浜松病院小児科 松林 里絵 横田 卓也 武田 紹 榎 日出夫 松林 正
■キーワード
虐待, 高ナトリウム血症, 低カリウム血症, 横紋筋融解症
■要旨
虐待が原因と考えられた高ナトリウム血症の1例を経験した.症例は4歳男児で,活力低下を主訴に受診し,血液検査上Na 178 mEq/Lと異常高値であったため入院となった.入院時,活力の低下はあったが,意識清明,皮膚ツルゴールは正常であった.入院後輸液による補正により速やかに高ナトリウム血症は改善し,その後再燃はなかった.高張食塩水負荷試験の結果は正常で,その他高ナトリウム血症を来すような基礎疾患もないことから,原因は不適切な食事の与えられ方,すなわち虐待が強く疑われた.乳幼児で著明な高ナトリウム血症を示す場合は,その原因として虐待も念頭におくべきである.
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