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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:08.01.31)
第112巻 第1号/平成20年1月1日
Vol.112, No.1, January 2008
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総 説 |
1. |
Consensus2005に基づく日本版新生児心肺蘇生法ガイドラインとその普及のための講習会推進事業
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田村 正徳 1 |
2. |
小児腎臓病における薬の適応外使用とその解決策
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本田 雅敬 8 |
原 著 |
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小川 尚洋,他 15 |
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山田 勝彦,他 22 |
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鈴木 僚子,他 27 |
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西村 龍夫 31 |
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高橋 千晶,他 36 |
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石田 和子,他 43 |
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南部 光彦,他 47 |
論 策 |
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辻 聡,他 52 |
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野村 裕一,他 55 |
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地方会抄録(中部日本,兵庫,島根,栃木,福岡,福島)
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60 |
日本小児科学会倫理委員会報告 |
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超重症心身障害児の医療的ケアの現状と問題点―全国8府県のアンケート調査―
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94 |
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102 |
日本小児内分泌学会糖尿病委員会(1) |
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国際小児思春期糖尿病学会 臨床診療コンセンサスガイドライン2006〜2008日本語訳の掲載について
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112 |
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129 |
【原著】
■題名
18歳以下のバセドウ病に対する放射性ヨード治療
■著者
田尻甲状腺クリニック1),日本甲状腺学会・小児甲状腺疾患診療委員会2) 小川 尚洋1) 合志 和人1) 田尻 淳一1)2)
■キーワード
放射性ヨード治療, 甲状腺推定重量, 小児バセドウ病, 短期治療成績, 甲状腺機能
■要旨
【目的】小児バセドウ病に対する放射性ヨード治療(RI治療)については,米国でさえ報告数が少なく,本邦では皆無である.小児バセドウ病に対するRI治療の短期的治療成績について検討した.【対象】1999年7月〜2005年7月までに当院で外来RI治療を受けた18歳以下のバセドウ病患者36例(男10例,女26例).年齢は,15.8±1.5歳(13〜18歳).【結果】抗甲状腺薬(ATD)開始からRI治療までの期間は,25.3±21.5月(1〜78月).治療回数は,1回20例,2回14例,3回2例.初回投与量7.8±2.9 mCi(3.6〜13.0 mCi),総投与量12.3±7.7 mCi(3.6〜29.8 mCi).RI治療前の甲状腺推定重量42.6±23.4 g(15.5〜99.4 g),RI治療後の甲状腺推定重量7.1±3.0 g(2.0〜13.6 g).RI治療後の観察期間は,41.1±18.0月(6〜71月).現在の甲状腺機能は,低下症15例(42%),潜在性低下症8例(22%),正常5例(14%),潜在性亢進症8例(22%).低下症は,甲状腺ホルモン剤服用.潜在性低下症は,治療しないで経過をみている.潜在性亢進症で,ATDやKIを服用している例はない.【結論】18歳以下の小児バセドウ病36例にRI治療を行い,良好な治療成績であった.しかし,安全性について長期にわたって経過観察が必要である.
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【原著】
■題名
けいれんを合併した川崎病症例の検討
■著者
清恵会病院小児科1),なぎさクリニック2),大阪医科大学小児科3) 山田 勝彦1)2) 森信 孝雄1) 堀内 俊幸1) 山本 真司1) 森信 若葉1) 三宅 宗典2) 美濃 真1) 玉井 浩3)
■キーワード
川崎病, けいれん, 乳児, 顔面神経麻痺
■要旨
(目的)川崎病(KD)は全身の血管炎を特徴とし,経過中に様々な臨床症状が見られる.これまでに神経合併症としては,脳炎や脳症1)〜5),無菌性髄膜炎1)2),顔面神経麻痺6)〜9)などの報告がある.KD患児の初期症状を検討し,迅速なKDの臨床診断に役立てるため,特にKD急性期に合併するけいれんについて,当院で経験した症例を後方的に検討し年齢的な考察を加えてみた.(方法)2003年〜2005年までの3年間に当院で入院したKD 26症例(男:女=22:4),また同時期に当院で入院した1歳未満のけいれん症例50例(男:女=29:21)を臨床症状,検査データ,心エコー所見,治療,合併症などについて後方的に検討した.けいれんを合併したKD5症例は臨床経過,検査データをまとめた.(結果)当院で3年間に経験したKD症例26例中,けいれん合併例は5例であった.平均発症年齢は3か月であり,5例全て7か月未満の症例であった.その5例の中には髄膜炎を合併した症例と顔面神経麻痺を合併した症例があった.一方1歳未満のけいれん50症例中ほとんどが熱性けいれん(FC)であった(79%;39/50)が,KDは10%存在していた.KDに合併したけいれんは全例発熱後24時間以降に発症したが,FCの発症は全例発熱後24時間以内であった.(結論)KDに合併するけいれんは7か月未満という年齢と関連があると思われた.乳児のKD急性期でけいれんに注意することは適切な診断,治療に役立つと思われた.
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【原著】
■題名
潰瘍性大腸炎のステロイド治療における効果判定期間の検討
■著者
群馬大学大学院医学系研究科小児生体防御学1),パルこどもクリニック2),みらいこどもクリニック3) 鈴木 僚子1) 友政 剛1)2) 石毛 崇1) 宮沢 麗子1) 金子 浩章3) 森川 昭廣1)
■キーワード
小児, 潰瘍性大腸炎, 治療, ステロイド
■要旨
平成15年に作成された小児潰瘍性大腸炎治療指針案では,中等症または重症例に対してはステロイドによる治療を行い,2週間経過しても改善がみられない場合に,追加治療を行うこととされている.一方,成人患者を対象としたガイドラインでは,この観察期間が7〜10日である.小児でもステロイド治療の効果判定のための観察期間が1週間で十分であれば,より早く緩解導入することが可能であり,かつ,治療過程で生じるステロイドの副作用を少なくすることができると思われる.本研究では,この観察期間が,小児でも1週間で十分か否かを検討した.緩解導入の始めにステロイドのみで1週以上治療されたのべ19例の小児潰瘍性大腸炎患者を,治療開始後1週間での臨床症状の改善の有無(病勢スコア)で2群にわけ,その転帰を解析した.1週後改善群では,10例中9例が,ステロイド投与のみで改善し,緩解にいたった.一方,非改善群では,9例中8例がその後もステロイドのみでは緩解にいたらず,なんらかの追加治療を必要としていた.すなわち,小児においても,1週間でステロイドの効果を評価し追加治療の適否を判定することが可能であると考えられた.
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【原著】
■題名
小児の長引く咳嗽に関与する副鼻腔炎の頻度
■著者
にしむら小児科 西村 龍夫
■キーワード
副鼻腔炎, 咳嗽, エコー, 小児
■要旨
目的 小児の長引く咳嗽に関与する副鼻腔炎の頻度を調べ,咳嗽が長引く場合の原因疾患を考察する.
対象・方法 2005年1月〜12月に小児科開業医である「にしむら小児科」を受診した4〜9歳の小児で,発熱を伴わない咳嗽が連続して10日以上続く患者を咳嗽群として研究対象にした.コントロール群として2006年7月に受診した発熱のみで咳嗽のない患者を対象にした.これらの症例が受診した場合,上顎洞のエコー検査を行い,液貯留により上顎洞が描出されるものを副鼻腔炎陽性,空気により内部が描出できない場合は陰性とした.
結果 咳嗽群の症例は57例(男児27例,女児30例),年齢は5.81±1.69歳(mean±SD),咳嗽の持続日数は18.1±8.1日であった.34例(59.6%)で副鼻腔エコーが陽性であり,副鼻腔炎と診断した.一方,コントロール群は38例(男児18例,女児20例,年齢は5.16±1.95歳,副鼻腔エコー陽性は1例のみであり,対象症例と明らかな差があった(p<0.01).
咳嗽群の中で,副鼻腔炎陽性例34例は男児17例,女児17例,年齢は5.44±1.44歳であった.陰性群は23例で,男児10例,女児13例,年齢は6.35±1.92歳であった.副鼻腔炎陽性群の中で経過中に6例(17.6%)に急性中耳炎を,6例(17.6%)に滲出性中耳炎を合併した.陰性群では急性中耳炎は1例(4.3%),滲出性中耳炎は2例(8.7%)であった.アレルギー性鼻炎や気管支喘息などのアレルギー性気道疾患は副鼻腔炎陽性群の9例(26.5%)に,陰性群の10例(43.5%)に認めた.
結論 小児の長引く咳嗽患者の中には,多くの副鼻腔炎が存在し,診断に上顎洞エコー検査が有用である.
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【原著】
■題名
転座型13番トリソミー症候群の遺伝カウンセリング
■著者
兵庫医科大学小児科1),同 遺伝学2),兵庫医科大学病院臨床遺伝部3),兵庫医科大学先端医学研究所発生・生殖部門4),愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所5),兵庫県立こども病院新生児科6) 高橋 千晶1)2)3) 玉置 知子2)3) 澤井 英明3)4) 小川 智美1) 皆川 京子1) 齊藤 優子3)5) 中尾 秀人6) 谷澤 隆邦1)
■キーワード
13トリソミー症候群, 遺伝カウンセリング, 染色体転座, 転座保因者, 自律的決定
■要旨
13トリソミー症候群は比較的稀で予後不良の疾患とされており,その約20%は染色体転座による.転座型であれば次子についての遺伝カウンセリングが重要となり,状況に応じて出生前診断に対する遺伝カウンセリングも必要となる.我々は,転座に関わる13トリソミー症候群3例の遺伝カウンセリングを経験した.症例はロバートソン転座による2例と部分トリソミー1例であった.3例の両親は,患児に認めた染色体異常の詳しい説明と次子への再発についての説明を希望して受診された.3例とも児の生命予後に対する不安や自分たちの染色体検査ついての不安を示された.出生前診断に関しては,3例とも来院以前から,情報を収集されていた.
複数回の遺伝カウンセリングを通じ疾患や児に対する不安の解消に努め,次子への情報の提供を行った.結果,両親は自律的な判断にて染色体検査をうけるかどうかを決定し児の受け入れも良好に行われた.出生前診断に関して両親は,明文化されたガイドラインの存在とその説明をおこなったところ,「心理的負担が軽減された」と述べられた.転座保因者の可能性のある血縁者にどのように情報提供するかについては今後の課題である.
転座型13トリソミー症候群・13部分トリソミー症候群の症例においては子どもへの受容や適応に加えて保因者診断と次子再発の可能性について問題となる.情報提供と心理社会的支援を含んだ遺伝カウンセリングという医療行為としての対応が重要と考えられた.
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【原著】
■題名
経皮的中心静脈カテーテルの末梢留置による血管外漏出障害の創部処置
■著者
秋田大学医学部小児科1),秋田赤十字病院小児科2) 石田 和子1) 河村 正成1) 三浦 忍1) 新井 浩和2) 松田 武文2) 中島 発史2) 石田 明1) 後藤 良治2) 高田 五郎1)
■キーワード
経皮的中心静脈カテーテル, 血管外漏出障害, カルシウム製剤, ドパミン
■要旨
経皮的中心静脈カテーテル(PICC)を末梢留置した新生児2例で血管外漏出障害を経験した.症例1は在胎28週5日,出生体重757 gの超低出生体重児で,障害部位は右大腿部内側だった.血管外漏出後26時間以上たってから壊死が発見され,ステロイド局所注射と二次感染予防の軟膏塗布を行い,目立たない瘢痕を残して治癒した.症例2は在胎39週2日,出生体重3,430 gの重症新生児仮死児で,漏出は右下腿に広範に起こり,新生児仮死後の多臓器不全で死亡した.原因薬剤はドパミン,カルシウム製剤,重炭酸ナトリウムと考えられる.血管外漏出障害を来たしやすい薬剤は中心静脈留置のPICCを用いるべきであった.血管外漏出障害は治療に時間がかかり,治癒後に醜い瘢痕や機能障害を残す危険がある.予防と共に早期発見に努め,起こってしまった際は,局所の冷却,原因薬剤の排出などの外科的処置を迅速に行う必要がある.
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【原著】
■題名
食道通過障害による誤嚥が反復する気管支炎の原因と考えられた9pトリソミーの1乳児例
■著者
天理よろづ相談所病院小児科 南部 光彦 田中 尚子 塩見 夏子 吉村 真一郎 長門 雅子 新宅 教顕 山中 忠太郎 松村 正彦 高橋 泰生 太田 茂
■キーワード
気管支炎, 誤嚥, 食道通過障害, 9pトリソミー
■要旨
気管支炎を反復した9pトリソミーの乳児例を経験した.食道造影検査を行ったところ,下部食道から胃への造影剤の通過不良が認められた.下部食道の造影剤は容易に頸部食道へ逆流し,さらに一部は気管へ流入した.下部食道の拡張はみられなかった.経管栄養導入後,呼吸状態は安定した.誤嚥が原因で気管支炎を繰り返した可能性がある.誤嚥によると思われる気管支炎を反復する場合には,胃食道逆流だけでなく食道から胃への通過障害も念頭に置く必要がある.
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【論策】
■題名
緊急時骨髄路確保の際の骨髄針製品特性に関する報告
■著者
国立成育医療センター総合診療部救急診療科1),同 手術集中治療部2) 辻 聡1) 清水 直樹2) 小原 崇一郎1) 上村 克徳1) 羽鳥 文麿1)
■キーワード
骨髄針, 骨髄路, 骨髄内投与, 心肺蘇生
■要旨
今回我々は蘇生時にクック社製16 G骨髄針が挿入困難で針先の屈曲を来たし,カーディナルヘルス社製15 G骨髄針にて輸液路確保が可能となった来院時心肺停止症例を経験した.
救急現場で蘇生を要する重症例の多くは末梢静脈路の確保が通常困難であるが,骨髄針は迅速な緊急薬剤投与経路の確保において極めて有用である1).小児科医にとって骨髄針留置は,もはや必須習得手技であり,成人領域でも有用性が示されている2)3).このように,骨髄針は全年齢で広く使用可能と考えられているが,製品特性を理解することでその利点を最大限に発揮でき,骨髄針の普及啓発を今後さらに進める上で有益であろう.
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【論策】
■題名
新卒後臨床研修プログラム「桜島」の大学病院と協力病院における小児研修の相違
■著者
鹿児島大学病院小児科 野村 裕一 今中 啓之 溝田 美智代 河野 嘉文
■キーワード
卒後臨床研修, 大学病院, 協力病院, 小児科研修
■要旨
【背景】新卒後臨床研修プログラム「桜島」の小児科研修は大学病院を含む9病院で行われている.三次小児医療を担当する大学病院と一次・二次医療を担当する協力病院の小児科研修は均一ではない.小児科研修改善にはこれらの研修状況の検討が重要である.【対象および方法】当プログラムで平成17年度に小児科研修を行った研修医59名において,経験が求められる疾患の受け持ち患児数と小児科研修目標の自己評価,研修の感想についてのアンケート結果を大学病院と協力病院で比較・検討した.【結果】経験が求められる疾患の受け持ち患児数は大学病院で少なかった.基本的診療態度や診療技術の評価は両病院間に有意な差は見られなかったが,疾患への対応はほとんどの項目で大学病院より協力病院が高評価だった.経験数の少ない疾患に関する項目は両病院ともに低評価だった.研修の感想では両病院のほとんどの研修医が満足と回答していた.【考案】小児の基本的な診察や小児・家族とのコミュニケーションといった基本的な部分の研修は,どちらの施設でも同程度に実施できたものと考えられた.また,研修医の自己評価と実際に症例を経験することの密接な関連が再認識された.【結語】大都市圏以外の地方における小児科研修の満足度をあげるためには,大学病院と一次・二次病院での共同プログラムで指導医数確保と小児疾患の症例数確保が重要である.
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