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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:07.11.26)
第111巻 第11号/平成19年11月1日
Vol.111, No.11, November 2007
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総 説 |
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加藤 光広 1361 |
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小枝 達也 1375 |
3. |
日本人小児における血清シスタチンCの基準値と腎機能マーカーとしての有用性
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亀井 宏一,他 1381 |
第110回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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岩井 直躬,他 1388 |
原 著 |
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大園 秀一,他 1392 |
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金山 和裕 1399 |
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松嵜 くみ子,他 1404 |
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桑原 功光,他 1411 |
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生越 剛司,他 1415 |
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粟野 宏之,他 1421 |
論 壇 |
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梶井 正 1426 |
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地方会抄録(福島,秋田,千葉,熊本,東京,福岡,佐賀,長崎,沖縄)
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1429 |
日本小児腎臓病学会分科会報告 |
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1466 |
報告書:日本整形外科学会骨系統疾患委員会 |
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1473 |
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1487 |
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1488 |
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1489 |
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1490 |
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1492 |
【原著】
■題名
小児がん長期フォローアップ調査報告
■著者
久留米大学小児科1),愛媛大学小児科2),愛知県心身障害者コロニー中央病院児童精神科3),新潟県立がんセンター小児科4),国立国際医療センター小児科5),日本医科大学小児科6),国立成育医療センター総合診療部7),長野県立こども病院血液腫瘍科8),東北大学小児科9),あけぼの小児クリニック10),国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター11) 大園 秀一1) 石田 也寸志2) 栗山 貴久子3) 浅見 恵子4) 松下 竹次5) 前田 美穂6) 有瀧 健太郎7) 石井 栄三郎8) 吉成 みやこ9) 石本 浩市10) 堀部 敬三11) 日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)長期フォローアップ委員会
■キーワード
小児がん, 長期フォローアップ, 晩期合併症, キャリーオーバー, リスクベースケア(危険因子に基づく管理)
■要旨
近年の小児がん治癒率向上の一方で,治療や原疾患に伴う合併症が長期に及んだり,治療終了後遠隔期に合併症を発症する症例が報告されている.このような小児がんの晩期合併症は今後増加してゆくものと考えられ,長期フォローの重要性は高まっている.2005年4月に結成されたJPLSG長期フォローアップ委員会は,初期の活動として全国的な現状を把握し,小児がん経験者の長期フォローのあり方を提言する目的で施設アンケートを行った.対象はJPLSG登録211施設で,そのうち145(68.7%)施設から回答を得た.施設の概要,長期フォローに当たる小児科の状況,コメディカルとの連携の体制,系統別に晩期合併症の経験の有無と,各合併症の診療体制,長期間受診のない症例への対応,患者が成人した後の診療体制,治療経過の総括方法や情報開示の現状,今後期待される長期フォローのあり方などを評価した.結果より各施設が限られた体制で多様な晩期合併症に対処している現状が浮き彫りとなった.今後委員会活動の方向性として,(1)患者が受けた個別の抗がん治療に応じたリスクベースケア(危険因子に基づく管理)の導入と指針作成,(2)治療や合併症の基本情報が共有できる「治療総括ひな型」の作成,(3)長期フォローアップセンターを土台としたネットワークの確立と一次診療医や患者家族への教育,(4)公費負担のあり方に関して国への提言などが示唆された.
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【原著】
■題名
先天性単腎症に合併した膀胱尿管逆流症の治療戦略
■著者
順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科 金山 和裕
■キーワード
膀胱尿管逆流症, 外科的治療
■要旨
先天性単腎症に合併した膀胱尿管逆流症(VUR)の治療戦略について検討した.対象は当科で経験した単腎VURの24例で,対側腎形態は,腎無発生/無形成10例,低異形成無機能腎7例,多嚢胞性異形成腎7例であった.尿路感染症を認めたのは18例で,他の6例は無症状で発見された.排尿時膀胱尿道造影(VCUG)におけるVURのgradeは,II度=5例,III度=7例,IV度=10例,V度=2例であり,II度の5例は保存的に経過観察され,III度以上の19例には外科的治療が施された.
手術群19例の術時平均年齢は4.3±5.3歳で,平均5.8±4.7年の術後観察期間で,有意な腎機能低下を呈した症例はなく,DMSAシンチグラフィーにおける腎瘢痕の新規発生を認めた症例もない.保存的観察群の5例中4例で逆流は自然消失したが,1例でIII度への逆流悪化と腎瘢痕の発生がみられ,外科的治療の適応とした.
我々は,単腎でIII度以上のVURが認められた場合,積極的に外科的治療を行い良好な術後経過を得ている.単腎症におけるVUR合併頻度は高く,無症状の単腎症例にも高度VURの合併を多く認めていることから,単腎が確認された際には,VCUGによるVURのスクリーニングを行うことが望ましいと考える.
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【原著】
■題名
日本における「中学生版QOL尺度」の検討
■著者
青山学院大学文学部1),太田総合病院小児科2),国立成育医療センターこころの診療部3),昭和大学医学部小児科4),亀田総合病院小児科5),渡邉こどもクリニック6),川崎市立川崎病院精神科7),神奈川県立保健福祉大学8) 松嵜 くみ子1)4) 根本 芳子2)4) 柴田 玲子3)4) 森田 孝次4) 佐藤 弘之5)4) 古荘 純一1)4) 渡邉 修一郎6) 奥山 眞紀子3) 久場川 哲二7) 前川 喜平8)
■キーワード
中学生版, 信頼性, 妥当性, 生活の質(Quality of life:QOL)尺度
■要旨
【目的】The Kiddo-KINDLR(13歳から16歳用)を翻訳して「中学生版QOL尺度」とし,日本における信頼性と妥当性を検討する.【対象と方法】「中学生版QOL尺度」を首都圏,市部,町村部の国公立私立中学校9校に配布し,各学校で集団実施し,郵送にて回収した.その内の2校には信頼性検討のために1〜2週間後に再調査を依頼し,さらに1校では妥当性検討のため,他の心理的適応尺度として子ども用うつ尺度,および自尊感情尺度を実施した.【結果】回収できた2,926人(有効回答率92%)を対象に分析した.「小学生版QOL尺度」と同様に,内的整合性(α係数.86),再検査信頼性(.81),基準関連妥当性(子ども用うつ尺度との相関r=−.80,自尊感情尺度との相関r=.66)が確認され,日本における,中学生のQOLを測定する測定具として信頼性と妥当性のある有効な質問紙であることが示唆された.
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【原著】
■題名
ジアゼパム坐剤投与後に呼吸抑制を呈したキアリ奇形I型
■著者
東京都立清瀬小児病院総合小児科1),同 神経科2) 桑原 功光1) 後藤 知英2) 賀来 卯生子1) 三山 佐保子1)2)
■キーワード
キアリ奇形, ジアゼパム坐剤, 呼吸抑制
■要旨
キアリ奇形は下垂した小脳の脳幹部圧迫により呼吸障害を合併することがある.過去に明らかな神経学的異常を認めず,呼吸障害を呈したことを契機にキアリ奇形と診断された症例が報告されている.喘息発作時にジアゼパム坐剤を投与し,呼吸抑制をきたしたことをきっかけとして,キアリ奇形I型の診断に至った症例を経験した.神経学的異常所見のない3歳男児.熱性けいれんと喘息の既往あり.喘息発作時に発熱を認めたためジアゼパム坐剤を挿肛,その数分後に呼吸が微弱となり,チアノーゼ,呼吸停止をきたした.数分間の呼吸抑制状態が続き刺激により回復.呼吸抑制の原因として中枢神経系の要因を疑い,頭部MRI検査を行ったところ,キアリ奇形I型を認めた.明らかな神経症状を呈していないキアリ奇形でも,喘息等の呼吸障害時のジアゼパム投与は呼吸抑制をきたす可能性がある.
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【原著】
■題名
シクロスポリンが奏効した治療抵抗性特発性血小板減少性紫斑病の2例
■著者
高知赤十字病院小児科1),独立行政法人国立病院機構高知病院小児科2),JA高知病院小児科3),ふないキッズクリニック4),川上小児科クリニック5) 生越 剛司1)2) 品原 久美1)2) 眞鍋 哲也1) 金子 真也3) 本淨 謹士3) 船井 守4) 川上 浩一郎5)
■キーワード
特発性血小板減少性紫斑病, シクロスポリン, 治療抵抗性, 小児
■要旨
治療抵抗性の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対する治療指針として,確立されたものはない.今回我々は,従来からの治療法である免疫グロブリンやステロイド薬に治療抵抗性を示し,シクロスポリン(CsA)が奏効した2例の小児ITPを経験した.CsAに対する反応は緩徐で,投与3週頃から血小板数の増加が得られた.CsAの投与量(血中トラフ値)と血小板数の相関は認めなかった.CsAの副作用として1例で低マグネシウム血症を認めたが,CsAの減量で改善した.CsAは,小児治療抵抗性ITPに対しても有効な治療法であると考えられた.
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【原著】
■題名
小腸内視鏡で診断したメッケル憩室の1例
■著者
加古川市民病院小児科 粟野 宏之 石田 明人 住永 亮 樋上 敦紀 伴 紘文 金澤 育子 佐藤 有美 藤林 洋美 牟禮 岳男 伊東 利幸 村瀬 真紀
■キーワード
メッケル憩室, ダブルバルーン式小腸内視鏡
■要旨
メッケル憩室は卵黄腸管により形成される先天性の消化管奇形で,人口の1〜2%に認める.ほとんどは無症状で経過するが,その4〜6%にイレウス,出血,憩室炎などの合併症を認める.メッケル憩室の診断は通常,腹部CT,小腸造影検査,99mTcシンチグラフィにより行われるが,診断が困難なことも少なくない.今回われわれはイレウスで発症し,保存的加療でイレウスの軽快をみたが,画像検査などで原因が長く特定できず,小腸内視鏡にて診断したメッケル憩室の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
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【論壇】
■題名
わが国の高齢出産とDown症候群増加傾向の分析
■著者
山口大学名誉教授 梶井 正
■キーワード
高齢出産, Down症候群, 母年齢, 母体血清マーカー検査, 胎児超音波検査
■要旨
1970〜2005年のわが国の全出生中の高齢出産(35歳以上)によるものの割合を調査した.高齢出産による出生の割合は1975年の3.8%を最低としてその後は一貫して増加し,2005年には16.4%に達した.出生総数は1970年の193万余から2005年の106万余まで減っている.高齢出産の増加と共にDown症候群の頻度は1975年の1/932(932人の新生児中に1人)から2005年の1/583に増えている.患者頻度の増加は出生数の減少により相殺され,患者数は1975年の2,040人から2005年の1,825人まで殆ど横ばいだったが,以後は増加して2012年には2,800人になると予想される.2012年には高齢出産の割合は24.1%(1995〜99年度のパリとその周辺の水準)になり,Down症候群の頻度は1/358で1970年の2.6倍になると推定される.Down症候群患者で高齢出産によるものの割合は61%に達する.ヨーロッパ諸国では高齢出産の増加は我が国より十数年早く,アメリカではわが国とほぼ同じ時期・レベルで推移しているが,いずれも母体血清マーカー検査・胎児超音波検査と出生前染色体検査の組み合わせによって患者の頻度を以前と同じかより低く保つことに成功している.わが国で同様の方法で出生を防止した患者数は毎年80人以下に過ぎないと思われる.
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