 |
日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:07.10.18)
第111巻 第10号/平成19年10月1日
Vol.111, No.10, October 2007
バックナンバーはこちら
|
 |
|
総 説 |
|
高梨 潤一 1243 |
|
田中 あけみ 1255 |
第110回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
|
メタボリックシンドロームの病態解析から食育を考える
|
|
益崎 裕章,他 1263 |
教育講演 |
|
皆川 公夫 1273 |
原 著 |
|
北爪 勉,他 1282 |
|
牧野 泰子,他 1289 |
|
竹谷 健,他 1293 |
|
山川 勝,他 1300 |
|
大谷 勝記,他 1308 |
|
平田 陽一郎,他 1313 |
|
大橋 敦,他 1318 |
|
幸山 洋子,他 1323 |
|
|
1327 |
小児医療改革・救急プロジェクトチーム委員会報告 |
|
1338 |
|
「日本小児科学会・小児科医バンク」全国展開のお知らせ
|
|
1353 |
|
1354 |
小児医学研究振興財団設立準備室 |
|
1356 |
|
|
1357 |
【原著】
■題名
川崎病後のACバイパス術後例のMRIによる経過観察の有用性について
■著者
東京逓信病院小児科1),同 放射線科2),日赤医療センター小児科3),日本医科大学小児科4) 北爪 勉1) 鈴木 淳子1) 武村 濃2) 稲葉 利佳子1) 土屋 恵司3) 薗部 友良3) 小川 俊一4)
■キーワード
川崎病, MRCA, ACバイパス, MR心筋造影, MRI
■要旨
川崎病冠動脈障害例のACバイパス術後の経過観察と,心機能評価におけるMagnetic Resonance Imaging(MRI)の有用性を検討した.装置はPhilips社製のGyroscan intera 1.5Tを用い,MR Coronary angiography(MRCA)で冠動脈障害とバイパスグラフトを描出し,MR心筋造影で心筋虚血と壁運動を観察した.対象は川崎病既往でACバイパス術を行った16例で検査時年齢は5歳から27歳(中央値17歳).バイパスグラフトは28本(左内胸動脈16本,右内胸動脈9本,大伏在静脈2本,右胃大網動脈1本)であった.選択的冠動脈造影(CAG)に基づいて,非造影のMRCAにおけるバイパスグラフト開存の検出率を検討したところ,鋭敏度96%,特異度67%,陽性予測値96%,陰性予測値67%であった.吻合部の描出率は92%,吻合部より末梢冠動脈血流の描出率は100%であった.また,MR心筋造影は造影剤にGd-DTPA(0.1 mg/kg)を用い5例に行われた.このうち3例は術前と術後で施行され,術前のMR心筋造影で心筋梗塞部位のバイアビリティが確認されACバイパス術の適応ありとされた.術後のMR心筋造影で心筋虚血と心機能の改善を評価した.
以上よりMRCAおよびMR心筋造影は川崎病のACバイパス術前後の経過観察に有用であることが示された.
|
|
【原著】
■題名
先天性の多発性関節拘縮症と白内障を合併した非典型的脊髄性筋萎縮症の1例
■著者
豊橋市民病院小児科1),蒲郡市民病院小児科2),聖隷三方原病院小児科3) 牧野 泰子1) 幸脇 正典1) 村田 水紀1) 今井 一徳2) 河辺 義和2) 小山 典久1) 横地 健治3)
■キーワード
脊髄性筋萎縮症, 先天性白内障, 先天性多発性関節拘縮症
■要旨
先天性の多発性関節拘縮症と白内障を認めた脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy,SMA)の男児を経験した.出生時より呼吸障害が高度で,人工呼吸管理を継続した.また進行性の筋力低下,腱反射消失,舌線維束性攣縮がみられた.筋病理所見は大群萎縮があり,神経原性変化の所見であった.頭部MRIで橋小脳低形成を認めなかった.遺伝子検査では,SMA,SMARD1(spinal muscular atrophy with respiratory distress type 1)の既知の遺伝子異常は検出されなかった.先天性の多発性関節拘縮症(arthrogryposis multiplex congenita,AMC)と白内障の合併している点,出生時より呼吸機能障害を発症している点,SMA遺伝子とリンクしない点において非典型的なSMAと考えられた.
|
|
【原著】
■題名
潰瘍性大腸炎を合併しステロイドが奏功した原発性硬化性胆管炎の14歳男児例
■著者
島根大学医学部小児科1),松江生協病院小児科2) 竹谷 健1) 金井 理恵1) 山口 清次1) 佐々木 佳裕2)
■キーワード
潰瘍性大腸炎, 原発性硬化性胆管炎, 自己免疫性肝炎, 自己免疫性膵炎, ステロイド
■要旨
14歳男児.主訴は下痢,腹痛,倦怠感.肝生検で門脈領域に炎症浸潤がみられる自己免疫性肝炎(Autoimmune Hepatitis,AIH)様の組織所見を呈していたが,潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis,UC)を合併しており,トランスアミラーゼよりも胆道系酵素が優位に高く,MRCPで胆管の拡張が認められたことから原発性硬化性胆管炎(Primary Sclerosing Cholangitis,PSC)と診断した.また,膵酵素の上昇と主膵管の不整がみられ,慢性膵炎を併発していた.自己抗体はc-ANCAが陽性であった.ステロイドを投与したところ,PSCとUCのどちらにも奏功して,発症1年現在緩解を維持している.UCとPSCの合併例は成人ではよくみられるものの小児では稀である.本症例はAIHに似ている肝組織を呈したPSCで,UCおよび慢性膵炎を合併しており,ステロイドが効果的であった.これらの結果から,本症例のPSCの発症に,自己免疫的機序が深く関与している可能性が示唆された.
|
|
【原著】
■題名
新生児心房粗動に対する経食道ペーシング治療
■著者
神戸市立中央市民病院小児科 山川 勝 冨田 安彦 神田 健志 田場 隆介 原田 明佳 宇佐美 郁哉 辻 雅弘 山岡 幸司 春田 恒和
■キーワード
新生児心房粗動, 胎児心房粗動, 胎児水腫, 経食道ペーシング, 連射刺激
■要旨
心房粗動は胎児頻拍性不整脈の三分の一を占め,40%に胎児水腫をきたし,8%が死亡し,半数が出生後も遷延する1).乳児期心房粗動の20%が心不全を呈するが,一旦洞調律化すれば再発は少なく予後良好である2)3).しかし抗不整脈薬による粗動停止は必ずしも確実ではなく,また直流通電心拍同期は非緊急の児に対しては侵襲性が問題となる.
経食道ペーシングにより侵襲なく洞調律化に成功した新生児心房粗動の1例を経験した.在胎29週に胎児心エコー図により心房粗動,胎児水腫と診断した.ジゴキシン,フレカイニド経胎盤投与により,心拍数が低下し,胎児水腫は改善した.在胎37週で帝王切開により出生,心電図上通常型心房粗動を認めた.日齢2に経食道連射ペーシング施行,短時間の心房細動の後洞調律化し,2年間再発をみていない.
経食道ペーシング法は新生児心房粗動に対する治療選択として有用と考えられた.
|
|
【原著】
■題名
ヒトパルボウィルスB19感染により劇症型心筋炎を発症した8歳女児例
■著者
榊原記念病院小児科 大谷 勝記 朴 仁三 佐藤 裕幸 佐藤 潤一郎 末永 智浩 藁谷 理 嘉川 忠博 西山 光則 畠井 芳穂 村上 保夫 森 克彦 三森 重和
■キーワード
ヒトパルボウィルスB19, 伝染性紅斑, 劇症型心筋炎, 経皮的心肺補助装置
■要旨
ヒトパルボウィルスB19(以下,HPVB19)感染は日常よく遭遇し多彩な所見を呈する.HPVB19による心筋炎の報告は稀であるが,近年,移植後の合併症としてHPVB19による心筋炎が注目されている.今回我々はHPVB19による劇症型心筋炎を経験したので報告する.症例は8歳女児.伝染性紅斑罹患後の経過中,失神,呼吸停止となり,急性心筋炎として治療されたが,心室頻拍に対して頻回の電気的除細動を要するため転院となった.劇症型心筋炎として経皮的心肺補助装置を含めた集中治療を行い,送血管による右大腿動脈の損傷を合併したが,心機能障害・神経学的後遺症・下肢血行障害等を認めずに退院した.HPVB19による心筋炎は,これまで見過ごされていた可能性もあり,今後,特に免疫能の未熟な乳児や免疫抑制状態下において,原因不明の心筋炎,心不全症状を認めた場合,迅速な対応とHPVB19の検索も重要と思われる.
|
|
【原著】
■題名
毒素性ショック症候群に限局的な心筋障害を合併した1例
■著者
埼玉県立小児医療センター循環器科1),東京慈恵会医科大学付属病院小児科2),埼玉県立小児医療センター感染免疫科3) 平田 陽一郎1) 浦島 崇2) 菱谷 隆1) 星野 健司1) 小川 潔1) 岡崎 実3)
■キーワード
Toxic shock syndrome, 心筋障害, 敗血症, 小児
■要旨
症例は16歳男児.発熱と全身性の地図状紅斑を主訴に入院し毒素性ショック症候群(Toxic shock syndrome:以下TSS)と診断した.入院当日に血圧と尿量の低下が出現し強心剤の投与を必要とした.心電図でST上昇,心エコーでは一過性の心収縮力低下,心筋シンチグラムでは下壁に集積低下を認めた.退院後2か月での左室造影検査で,左室後壁に瘤状の突出部分を認めた.TSSにおける一過性の心機能低下は,種々のサイトカインによる作用であろうとする報告があるが,本症例では,さらに限局的な心筋障害をも合併した.今後,同様の症例を注意して観察し,さらなる発症機序の検討が必要である.
|
|
【原著】
■題名
在胎22週2日(出生体重340 g)で生存退院しえた超低出生体重児の管理経験
■著者
関西医科大学枚方病院総合周産期母子医療センター 大橋 敦 木下 洋 北村 直行 辰巳 貴美子 辻 章志 竹安 晶子 金子 一成
■キーワード
超早産児, 慢性肺障害, 動脈管開存症, 発達予後
■要旨
わが国における在胎週数24週未満の超早産児の生存率は,最近の報告では49.1%とされているが,在胎22週台での出生児に関しては,31.1%といまだに低い.
今回私たちは在胎22週2日,体重340 gで出生し,4歳まで経過を観察している1女児例を経験した.
そこで本症例における出生直後の蘇生術,急性期管理および慢性期管理,すなわち呼吸管理,水分・電解質管理,循環管理,栄養管理,感染対策などについて筆者らが行った種々の工夫について述べるとともに文献的考察を加えて報告した.
このような超早産児の治療・管理において重要な点は,在胎24週以上の早産児とは大きく異なる超未熟性に起因する種々の合併症への十分な配慮はもちろんのこと,24時間高度な医療レベルを維持するために,スタッフ全員が時々刻々と変化する患者情報を常に共有することであると考えられた.
|
|
【原著】
■題名
14番父性片親性ダイソミー表現型を呈した14番環状染色体の1例
■著者
高松赤十字病院小児科 幸山 洋子 関口 隆憲 井上 奈巳 松下 正民 須賀 健一 高橋 朋子 秋田 裕司 大原 克明
■キーワード
14番環状染色体, 14番父性片親性ダイソミー
■要旨
14番環状染色体/14番モノソミーモザイクの男児例を経験した.症例は小頭症,短頸,眼裂狭小や高口蓋等の特異顔貌と重度の発達発育障害,てんかんなどの14番環状染色体に共通する特徴を認めた.さらに14番父性片親性ダイソミーの表現型である波打つような肋骨とベル型胸郭,生直後から続く呼吸障害を合併していた.症例の環状染色体は母親由来であることが確認され,この14番長腕の欠失部位に存在するインプリンティング遺伝子の発現がないために父性片親性ダイソミーの表現型を呈した初めての症例と考えられた.
|
|
|
バックナンバーに戻る |
|