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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:07.08.21)
第111巻 第8号/平成19年8月1日
Vol.111, No.8, August 2007
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総 説 |
1. |
HHV-6の中枢神経症状―脳炎・脳症を中心に―
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吉成 聡,他 1013 |
2. |
小児科医は心をどのように診るのか―心身医学の勧め―
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冨田 和巳 1027 |
原 著 |
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楠 隆,他 1035 |
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高山 直秀,他 1042 |
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佐々木 尚美,他 1045 |
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高橋 あんず,他 1052 |
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八木 麻理子,他 1056 |
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八木 麻理子,他 1061 |
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高橋 信,他 1066 |
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武市 幸子,他 1072 |
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中村 好一,他 1078 |
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1084 |
分科会報告:日本小児リウマチ学会 |
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1103 |
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【原著】
■題名
3歳未満の卵白・卵黄特異的IgE陽性例に対する卵製品負荷試験の検討
■著者
滋賀県立小児保健医療センター小児科 楠 隆 三國 貴康 木村 暢佑 宮嶋 智子 鬼頭 敏幸 藤井 達哉 伊藤 正利
■キーワード
食物アレルギー, 卵アレルギー, 食物負荷試験, アナフィラキシー, 特異的IgE(抗体)
■要旨
【背景】卵製品除去を強いられると食生活にかなりの制約が加わるため母子ともに負担が重く,早期に解除できればメリットが大きい.【目的】卵白・卵黄特異的IgE(CAP RAST)が陽性で卵製品除去を指導されていた1歳以上3歳未満の小児に対し,希望に応じて卵製品負荷試験を行い,解除の可能性を検討する.【対象と方法】入院の上で加熱卵黄37例,マヨネーズ17例,卵ボーロ40例,加熱卵白53例に負荷し,24時間後まで観察した.症状のなかったものについては自宅で負荷量を超えない緩やかな解除を指示し,外来で経過をみた.【結果】加熱卵黄は37例全例(100%),マヨネーズは14例(82.4%),卵ボーロは31例(77.5%)で解除可能であり,特異的IgEとの相関はなかった.加熱卵白解除可能例は26例(49.1%)にとどまり,卵白特異的IgEがクラス2以下,3, 4以上における解除可能例は各々68.2%,41.2%,30.8%で,クラスが高いほど症状出現例が増加しかつ重篤化した.卵白特異的IgEがクラス3以上の加熱卵白解除可能群11例と,症状出現群18例につき,症状発現を予測できる因子がないか比較検討したところ,いずれの指標も有意差はなかったが女子が男子より症状出現例が多い傾向を認めた(P=0.08).【結論】卵製品除去を指導されていた3歳未満の小児でも,実際には特異的IgEに関わらず卵ボーロ,加熱卵黄,マヨネーズは解除可能例が多かった.一方加熱卵白は,特に卵白特異的IgEが高いと症状が出現する危険性が高く,慎重な判断が必要である.
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【原著】
■題名
改正結核予防法2005年施行後の全国BCGワクチン累積接種率調査
■著者
東京都立駒込病院小児科1),崎山小児科2),国立感染症研究所感染症情報センター3) 高山 直秀1) 崎山 弘2) 岡部 信彦3)
■キーワード
BCG, 結核予防法, 累積接種率, 完了率
■要旨
2005年度よりBCGワクチンの接種対象年齢が,結核予防法改正前の「生後4歳に達するまで」から「生後6カ月に達するまで」に引き下げられた.法改正に伴いBCGワクチンの接種率が低下し,接種もれ者が増加することが懸念されたため,法改正後にBCGワクチン接種年齢に達した小児におけるBCGワクチンの全国累積接種率を調査した.改正法実施後の全国累積接種率は生後6カ月以前に約97%に達しており,約93%の接種対象者が生後3カ月から6カ月に達する前までに接種を受けていた.今後は接種漏れ者を早期に発見して接種を勧奨できる体制を整備するとともに,BCGワクチンの早期接種がジフテリア・百日咳・破傷風3種混合(DPT)ワクチン及びポリオ生ワクチンの接種率にどのような影響を与えているかを検証する必要がある.
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【原著】
■題名
小児期に末期腎不全に至った先天性異・低形成腎の発見契機と臨床症状
■著者
都立清瀬小児病院腎臓内科 佐々木 尚美 本田 雅敬
■キーワード
末期腎不全, 先天性腎疾患, 発見契機, 臨床症状, スクリーニング
■要旨
どうすれば末期腎不全にいたる先天性腎疾患を早期発見することができるかを知る目的で都立清瀬小児病院において,1971年から2000年に,20歳未満で維持透析・移植した346例中,40.2%をしめた先天性異・低形成腎(hypoplasia and dysplasia of kidneys,以下HDK)139症例について検討した.発見契機では新生児期の異常によるものが22.3%で年代を経るごとに著明に増加し,検尿異常や末期腎不全状態で発見される割合は減少していた.発見に至るまでの臨床症状の検討では,新生児期の異常(呼吸障害,哺乳障害,胎児エコー異常,早期産,外表奇形など)60.4%,乳児期成長障害56.1%,尿路感染症30.9%,多飲・多尿21.6%などで,のべ86.3%の症例に基礎疾患に関わる臨床症状を認めた.HDKの早期発見のためには,全人口を対象とした複雑なスクリーニングシステムよりも,上記のような臨床症状を的確に診断へと結びつけることの方が重要である.
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【原著】
■題名
特発性血小板減少性紫斑病を合併した自己免疫性肝炎の男児例
■著者
島根大学医学部小児科1),勝部小児科医院2) 高橋 あんず1) 竹谷 健1) 金井 理恵1) 山口 清次1) 勝部 隆好2)
■キーワード
自己免疫性肝炎, 特発性血小板減少性紫斑病, ステロイドパルス, 血漿交換
■要旨
8歳男児.眼球黄染,倦怠感を主訴に来院した.肝腫大と黄疸,出血斑がみられた.血小板減少,ビリルビンおよび肝胆道系酵素の上昇,凝固能低下を認め,肝生検より自己免疫性肝炎(AIH)と診断した.また,血小板減少は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と考えられた.血漿交換および血液濾過透析,ステロイドパルス療法,シクロスポリンに反応して,現在ステロイドおよびアザチオプリンにより寛解を保っている.AIHはいくつかの自己免疫性疾患を合併することが報告されているが,小児においてITPを合併した症例は稀である.合併の機序として,血小板膜蛋白と肝細胞の自己蛋白に相同性があるのではないかと考えられる.
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【原著】
■題名
精神遅滞・自閉性障害を合併したシトリン欠損症の1例
■著者
神戸大学大学院医学系研究科臨床薬効評価学1),同 小児科学2),鹿児島大学大学院医歯学総合研究科分子病態生化学3) 八木 麻理子1) 西山 敦史2) 石橋 和人2) 竹島 泰弘2) 小林 圭子3) 松尾 雅文2)
■キーワード
シトリン欠損症, 新生児肝内胆汁うっ滞症, 精神遅滞, 自閉性障害
■要旨
精神遅滞および自閉性障害を合併したシトリン欠損症の1男児例を経験した.本症例は,新生児マススクリーニングにて高ガラクトース・メチオニン血症を指摘されたことを契機に遺伝子診断を行い,シトリン欠損症と確定診断された.初診時(日齢40)に認められた,高ガラクトース血症,高アンモニア血症,メチオニンやシトルリンを含む複数のアミノ酸高値などの検査値の異常は生後5カ月時に正常化した.生後11カ月頃よりアンモニア値やシトルリン値の再上昇を認めたが,約半年で自然軽快した.成長発達は生後1歳3カ月頃までは順調であったが,検査値が正常化した生後1歳6カ月頃より,精神遅滞・自閉性障害が顕在化した.シトリン欠損症に精神遅滞や自閉性障害を合併する可能性があること,また,原因不明の精神遅滞例や自閉症例にシトリン欠損症が潜在する可能性があることが示唆された.
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【原著】
■題名
保存新生児期ろ紙血でも異常が確認されたホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症の1乳児例
■著者
神戸大学大学院医学系研究科臨床薬効評価学1),同 小児科学2),神戸市立西市民病院小児科3),島根大学医学部小児科4),千葉大学大学院医学研究院環境医学講座公衆衛生学5) 八木 麻理子1) 起塚 庸2) 西山 敦史2) 竹島 泰弘2) 江口 純治3) 小林 弘典4) 長谷川 有紀4) 山口 清次4) 鈴木 洋一5) 松尾 雅文2)
■キーワード
ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症, 新生児スクリーニング, タンデム質量分析
■要旨
ホロカルボキシラーゼ合成酵素の活性の低下は,糖新生,アミノ酸代謝,脂肪酸合成に重要な役割を果たす4種類のカルボキシラーゼの活性低下を招き,マルチプルカルボキラーゼ欠損症とよばれる病態を呈する.
私達は,ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症の4カ月女児例を経験した.アシドーシスを伴う意識障害を認め当科入院となったが,腹膜透析およびビオチン投与によって症状は速やかに改善した.尿中有機酸分析および遺伝子解析の結果,ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症と診断され,ビオチンとカルニチンの内服のみで順調に経過している.後日,患児の新生児期ろ紙血についてタンデム質量分析を行ったところ,本症に合致するものであった.本症例でタンデム質量分析計を用いた有機酸・脂肪酸代謝異常症の新生児スクリーニングが実施されていれば,発症を予防できた可能性がある.
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【原著】
■題名
修正大血管転位症に合併した重症心不全に対する心臓再同期と三尖弁置換の併用療法
■著者
岩手医科大学附属循環器医療センター小児科1),同 循環器内科2),岩手医科大学小児科3) 高橋 信1)3) 小山 耕太郎1)3) 旗 義仁2) 外舘 玄一朗3) 佐藤 陽子3) 千田 勝一3)
■キーワード
修正大血管転位症, 三尖弁閉鎖不全, 心不全, 心臓再同期療法, 三尖弁置換術
■要旨
成人では心室内伝導障害を伴う慢性心不全に対して心臓再同期療法が適応となったが,これを小児に試みた報告は少ない.症例は9歳の男児.出生後,修正大血管転位症に合併した完全房室ブロックに解剖学的左室ペーシングを行った.今回,三尖弁逆流による重症心不全をきたし,左脚ブロック型の心電図波形を認めた.これに対して両室ペーシングによる心臓電気生理学検査を行った結果,心機能の改善がみられたため,外科的に心外膜電極を縫着してDDDモードで心臓再同期療法を開始した.さらに,房室弁手術を施行してQOLの顕著な改善が認められた.修正大血管転位症に合併した左脚ブロック型波形と三尖弁逆流を伴う重症心不全に対して,心臓再同期と三尖弁置換の併用療法は有効な治療法と考えられた.
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【原著】
■題名
小児期にみられた睡眠障害の3例
■著者
藤田保健衛生大学精神医学教室1),同 小児科2),刈谷総合病院小児科3) 武市 幸子1) 北島 剛司1) 楠 和憲1) 新田 真理1) 浅野 喜造2) 矢崎 雄彦3)
■キーワード
睡眠障害, 不登校, 睡眠相後退症候群, ナルコレプシー, 終夜睡眠ポリソムノグラフィー
■要旨
倦怠感等の身体症状が主体で不登校状態と思われていた,睡眠時相後退症候群,非24時間睡眠覚醒症候群,およびナルコレプシーの患児各1例を経験した.睡眠記録日誌による睡眠覚醒リズム障害の検索,終夜睡眠ポリグラフィー,及び睡眠潜時反復検査で診断を行い,薬物療法にて症状の軽快を認めた.
不登校状態と思われて治療されている患児の中には睡眠障害症例が認められ,これらに対し適切な問診および生理学的検査からの早期診断と,専門医による早期治療が重要であると考えられた.
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【原著】
■題名
わが国の川崎病患者は小児循環器専門医が勤務している病院を受診しているか
■著者
自治医科大学公衆衛生学教室1),埼玉県立大学2) 中村 好一1) 屋代 真弓1) 上原 里程1) 大木 いずみ1) 萱場 一則2) 柳川 洋2)
■キーワード
川崎病, 医療機関, 小児循環器専門医, 地域格差
■要旨
川崎病の患者は急性期から小児循環器専門医による循環器系の評価を受ける必要があるが,どの程度の割合の患者が受けているかはこれまでデータがなかった.第18回川崎病全国調査では報告施設のデータとしてその病院に勤務する小児循環器専門医の人数を入手したので,川崎病の患者が受診した病院の小児循環器専門医の勤務状況を中心とした状況を解析した.その結果,以下のような現状が明らかとなった.(1)半数以上の患者が2年間の受診患者数が30人以上の病院から報告されていた.(2)半数以上の患者が小児科一般病床が25床以上の比較的規模の大きな小児科から報告されていた.(3)6割の患者が常勤小児科医が5人以上勤務する病院を受診していた.(4)情報が把握された17,690人の患者のうち14,478人(81.8%.小児循環器専門医が常勤の病院:10,029人,常勤はいないが非常勤で勤務している病院:4,449人)が何からの形で小児循環器専門医が勤務する病院を受診していた.この割合の都道府県較差は大きく,青森,大分では100%で,福岡,山形,滋賀,徳島,愛媛,和歌山,栃木では90%以上の患者が何らかの形で小児循環器専門医が勤務する病院を受診していた.逆に奈良(44%),岩手(48%),熊本(49%),鳥取(51%),山梨(57%),山口(58%)で患者の4割以上が小児循環器専門医が不在の病院を受診していた.
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