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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:07.06.15)

第111巻 第6号/平成19年6月1日
Vol.111, No.6, June 2007

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総  説

ケトン体代謝異常症:特にアセトン血性嘔吐症と鑑別すべきサクシニル-CoA:3-ケト酸CoAトランスフェラーゼ(SCOT)欠損症を中心に

深尾 敏幸  727
原  著
1.

川崎病疫学像の最近の推移1989〜2004

屋代 真弓,他  740
2.

新生児仮死症例における生後早期の血清ビリルビン値の検討

谷口 一登,他  746
3.

本邦初のInterleukin-1 receptor associated kinase 4欠損症兄弟例の臨床的特徴

吉川 秀人,他  750
4.

腺外症状で発症し長期経過観察後に診断に至ったSjögren症候群の1例

高橋 久美子,他  755
5.

気管腕頭動脈瘻に対してグラフト付きステント留置術を施行した1例

赤澤 陽平,他  761
6.

パルボウイルス心筋炎による心不全に対するベータ遮断薬の効果

盛一 享徳,他  765
7.

発達フォロー中に発見したLhermitte-Duclos病の1例

若泉 克次,他  770

地方会抄録(北陸,富山,新潟,京都,和歌山,茨城,静岡,鹿児島,福岡)

  774

日本小児科学会理事会議事要録

  821

雑報

  834

医薬品・医療機器等安全性情報 No.236

  837


【原著】
■題名
川崎病疫学像の最近の推移1989〜2004
■著者
自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門1),埼玉県立大学2)
屋代 真弓1)  中村 好一1)  柳川 洋2)

■キーワード
疫学, 川崎病, 年次推移, 罹患率
■要旨
 最近16年間に全国調査によって報告された川崎病患者110,877人の疫学特性を4年ごとに観察した結果,罹患率は0〜4歳人口10万対年間87.0から154.0へ急増し,年齢別にみると高年齢ほど増加傾向が顕著であった.性比(男/女)は1.40から1.36に減少した.再発例の出現割合は,3.22%から3.64%に,同胞発生の割合は,1.12%から1.17%にやや増加した.致命率は0.13%から1/4以下の0.03%まで低下した.初診月は第4四半期(10〜12月)が少なかった.地域分布をみると,地域により異なった時期に局地的な流行を繰り返していた.心障害出現率は,ガンマグロブリン治療(特に短期大量療法)の普及と並行して減少しており,ガンマグロブリン治療の改善による効果が現れているといえる.


【原著】
■題名
新生児仮死症例における生後早期の血清ビリルビン値の検討
■著者
国立病院機構佐賀病院小児科
谷口 一登  杉原 進  古賀 正啓  垣内 俊彦  小形 勉  村田 紀子  漢 伸彦  松尾 幸司  高柳 俊光

■キーワード
血清ビリルビン, 新生児仮死
■要旨
 新生児仮死症例における日齢1までの血清総ビリルビン値の推移を検討した.対象は5分アプガールスコア7点未満で生後3時間以内に当科に入院した32名.対象を入院時の血液ガス所見より重症群(入院時Base Excess:以後B.E.が−10未満)8名と軽症群(入院時B.E.が−10以上)の24名に分け,両群の日齢1までの血清総ビリルビン値の動向を比較検討した.また,全32症例の入院時pH及びB.E.と日齢1までの血清総ビリルビンの時間当たりの上昇速度(Bil.)の相関を求めた.その結果,入院時の血清総ビリルビン値は両群間で有意の違いを認めなかったが,日齢1及びBil.は重症群で有意に低下していた.また,Bil.は入院時pHと有意の相関を認め(r=0.44, p=0.009),入院時B.E.とも有意の傾向を示した(r=0.29, p=0.09).以上より,血清ビリルビンは新生児仮死(酸血症)の程度が強い児ほど,日齢1までの上昇の程度が抑えられることが示された.


【原著】
■題名
本邦初のInterleukin-1 receptor associated kinase 4欠損症兄弟例の臨床的特徴
■著者
宮城県立こども病院神経科1),同 総合診療科2),同 臨床病理科3),同 血液腫瘍科4),九州大学大学院医学研究院成長発達医学5),東北大学大学院医学系研究科小児病態学6)
吉川 秀人1)  北村 太郎1)6)  渡邊 周永1)  虻川 大樹2)  稲垣 徹史2)  武山 淳二3)  今泉 益栄4)  高田 英俊5)  原 寿郎5)

■キーワード
IRAK4, TLR, 肺炎球菌髄膜炎, 肺炎球菌ワクチン
■要旨
 Interleukin-1 receptor associated kinase 4(IRAK4)はToll-like receptorで認識したシグナルを伝達する経路に存在する自然免疫における重要な蛋白質である.IRAK4欠損症は常染色体劣性遺伝の稀な免疫不全症であり,肺炎球菌,黄色ぶどう球菌などの細菌感染症を繰り返し致死的になることもある.今回,本邦初のIRAK4欠損症の兄弟例を経験したので,その臨床的特徴について報告する.症例1:2歳4か月男児.臍帯脱落遅延あり.生後2週に尿膜管遺残のMRSA感染,1歳1か月時,肺炎球菌髄膜炎,股関節炎,2歳4か月時,再び肺炎球菌髄膜炎に罹患し永眠した.種々の免疫機能検査を施行したが異常は認められず,肺炎球菌髄膜炎を繰り返し,通常の治療に反応しなかったことによりIRAK4欠損症を疑い遺伝子解析を施行したところエキソン2に1塩基挿入(c.167_172insA)がホモで認められた.症例2:1歳4か月男児.臍帯脱落遅延あり.IRAK4遺伝子検査で兄と同じ変異が認められた.感染症予防のため,ガンマグロブリン補充療法,7価肺炎球菌ワクチンを施行し現在まで重篤な感染症には罹患していない.
 細菌感染症,特に重症肺炎球菌感染症を繰り返す場合には,本疾患も鑑別疾患にあげ,また臍帯脱落遅延が早期診断に有用である可能性が示唆された.有効な感染予防法は確立されていないが,ガンマグロブリン補充療法,肺炎球菌ワクチンの効果が期待される.


【原著】
■題名
腺外症状で発症し長期経過観察後に診断に至ったSjögren症候群の1例
■著者
東京慈恵会医科大学附属柏病院小児科1),東京慈恵会医科大学小児科2)
高橋 久美子1)  南波 広行1)  和田 靖之1)  久保 政勝1)  衞藤 義勝2)

■キーワード
subclinical Sjögren症候群, 腺外症状, 過敏性肺臓炎, 間質性腎炎, 耳下腺造影
■要旨
 長期にわたる経過観察後,診断に至ったsubclinical Sjögren症候群の1男児例を経験した.症例は6歳時よりくり返す発熱,呼吸困難に一致して右中葉の浸潤影を認めた.12歳時に過敏性肺臓炎の診断基準を満たし,prednisoloneとmizoribineによる加療を行い呼吸器症状は改善したが,炎症反応の持続と進行性の尿細管機能障害が持続した.腎病理組織標本では間質性病変を認め,Sjögren症候群の可能性を考え,唾液腺シンチグラフィ,耳下腺造影,口唇生検より診断に至った.小児ではsubclinical Sjögren症候群例が主で,腺外症状として間質性腎炎の合併例は少なく,不明熱を考える上で重要であると考え報告する.


【原著】
■題名
気管腕頭動脈瘻に対してグラフト付きステント留置術を施行した1例
■著者
飯田市立病院小児科1),長野県立こども病院集中治療科2),同 循環器科3)
赤澤 陽平1)  竹岡 正徳1)  津野 隆久1)  宮坂 恵子2)  長沼 邦明1)  安河内 聰3)

■キーワード
気管腕頭動脈瘻, グラフト付きステント留置
■要旨
 気管カニューレ装着約4年後に気管内出血で発症した気管腕頭動脈瘻に対し,グラフト付きステント留置で一旦止血できたが,10か月後,気管壁の壊死を生じた1例を報告する.症例は12歳男児.交通事故後の脳後遺症による呼吸管理のため8歳時に気管切開を施行した.気管切開から約4年後,気管カニューレと腕頭動脈の交叉部に気管腕頭動脈瘻を生じ,大量の気管出血をきたした.輸血と鎮静による保存的療法後,気管腕頭動脈瘻に対して大腿動脈よりグラフト付きステント(PassergerTM)を挿入留置し止血に成功し,救命できた.留置から23日後にグラフト付きステントの位置がずれたため再出血し,グラフト付きステントの追加を必要としたが,その後は気管出血は消失し経過順調であった.ステント追加留置後10か月よりCRP値の上昇を認め,気管より再出血が認められるようになった.気管内視鏡検査で,気管内肉芽形成と気管壁の壊死がみられグラフト付きステントの外壁の気管内への露出が確認された.止血剤等の内科的治療では気管壁からの出血がコントロールできず,ステント留置15か月後,再出血のため死亡した.
 気管腕頭動脈瘻に対するグラフト付きステント留置術は緊急時の出血に対して非常に有効な救命法だが,過拡大による気管壁の壊死や肉芽形成を生じる可能性があり,今後の検討が必要である.


【原著】
■題名
パルボウイルス心筋炎による心不全に対するベータ遮断薬の効果
■著者
釧路労災病院小児科1),北海道大学大学院医学研究科小児科学分野2)
盛一 享徳1)  仲西 正憲1)  村上 智明2)

■キーワード
慢性心不全, 心筋炎, ベータ遮断薬, 心保護
■要旨
 慢性心不全に対するベータ遮断薬の効果は小児領域においても報告が増加しているが,その機序に関してはいまだ不明なところが多い.われわれはベータ遮断薬の導入にともなう心機能改善の経過を応力・速度関係を用いて,定量的かつ経時的に観察し得たので報告する.症例は4歳男児.発熱・感冒様症状および発疹に引き続く浮腫を主訴に当科受診した.パルボウイルス心筋炎に続発する高度な心不全の診断でホスホジエステラーゼIII阻害薬および利尿薬で鬱血性心不全は改善した.アンギオテンシン変換酵素阻害薬を投与し,心不全はさらに改善したがホスホジエステラーゼIII阻害薬からは離脱出来なかったため,ベータ遮断薬を導入した.投与後,始めに左室の後負荷が減少し,続いて左室心筋の収縮性が改善した.少量のベータ遮断薬の投与では,収縮性の改善は見られなかった.


【原著】
■題名
発達フォロー中に発見したLhermitte-Duclos病の1例
■著者
済生会滋賀県病院小児科
若泉 克次  戸澤 雄紀  太田 智和  榊原 敏記  辻 桂嗣  中島 浩司

■キーワード
先天性喘鳴, Lhermitte-Duclos病, Cowden病, 発達遅滞
■要旨
 Lhermitte-Duclos病は小脳半球皮質の顆粒層で神経細胞が大型化し,その結果小脳回が腫大して腫瘤を形成する稀な病変である.Lhermitte-Duclos病は多発性過誤腫を示すCowden病と合併することで知られている.今回我々は,先天性喘鳴は徐々に改善したが発達遅滞が進行した症例を経験した.2005年6月(1歳2か月)の頭部MRIにて右小脳半球にT2強調像で高信号の占拠性病変を認め,2005年7月(1歳3か月)に腫瘤摘出術を施行し,外科病理所見からLhermitte-Duclos病と診断された.乳幼児期でのLhermitte-Duclos病の発症は極めて稀であるので,文献的考察を加えて報告する.

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