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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:07.05.24)
第111巻 第5号/平成19年5月1日
Vol.111, No.5, May 2007
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総 説 |
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長谷川 久弥 649 |
原 著 |
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小林 慈典,他 659 |
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土屋 喬義,他 666 |
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福島 啓太郎,他 672 |
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縄手 満,他 677 |
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塩田 光隆,他 682 |
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嶋田 淳,他 688 |
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加藤 晋,他 692 |
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大曽根 眞也,他 700 |
日本小児科学会倫理委員会 |
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703 |
厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室 |
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鉛含有金属製アクセサリー類等の安全対策に関する検討会報告書について
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711 |
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718 |
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725 |
【原著】
■題名
インフルエンザ脳症特殊治療の全国調査
■著者
インフルエンザ脳炎・脳症治療研究会 小林 慈典 富樫 武弘 水口 雅 宮崎 千明 市山 高志 河島 尚志 木村 宏 奥村 彰久 栗原 まな 黒木 春郎 塩見 正司 布井 博幸 細矢 光亮 鍵本 聖一 森島 恒雄 横田 俊平
■キーワード
インフルエンザ脳症, ガンマグロブリン大量療法, ステロイド・パルス療法, グリア細胞, 炎症性サイトカイン
■要旨
インフルエンザ脳症は,おもに乳幼児が罹患する予後不良な疾患である.最近の研究により,免疫の活性化により過剰に産生された炎症性サイトカインが引き起こす中枢神経系および全身の組織障害が病態の中心をなしていると推定される.本症の治療法の確立を目的に,「インフルエンザ脳炎・脳症治療研究会」が発足し,有効と報告された治療法について検討を行い,「インフルエンザ脳炎・脳症の特殊治療試案」を策定した.この試案を全国の小児医療施設に配布し,その後試案の治療法の有効性について検証を行った.その結果,発症日に意識障害の進行が著しい例,入院時のASTとLDHの高値例,入院翌日のAST, LDH, CK高値例は有意に予後不良であった.治療法の効果検討では,抗ウイルス療法はほとんどの症例で用いられており,約半数でガンマグロブリン大量療法とステロイド・パルス療法が施行されていた.一方,アンチトロンビン大量療法,脳低体温療法,血漿交換療法,シクロスポリン療法の実施例は少なかった.多くの症例で用いられていたガンマグロブリン大量療法とステロイド・パルス療法について検討を行ったところ,ステロイド・パルス療法は意識障害の強い症例に用いられており,入院後早期に実施した症例は,遅れて実施された症例に比べ,予後が良好である傾向にあった.以上から,早期にステロイド・パルス療法を導入することにより予後の改善が図れる可能性が推察された.
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【原著】
■題名
気管支喘息患児の保護者に実施したアンケートによるロイコトリエン受容体拮抗薬の効果
■著者
土屋小児病院・獨協医科大学小児科1),済生会川口総合病院2),杉本こどもクリニック3),高木病院4),川口市立医療センター5),越谷市立病院6),埼玉医科大学病院・清見ファミリークリニック7),大宮医師会市民病院8) 土屋 喬義1) 大山 昇一2) 杉本 日出雄3) 高木 学4) 目澤 憲一5) 木下 恵司6) 大鹿 栄樹7) 安田 正8) 埼玉小児ロイコトリエン研究会
■キーワード
気管支喘息, ロイコトリエン受容体拮抗薬, 保護者, アンケート
■要旨
埼玉県内で喘息治療を受けている小児の保護者を対象としてアンケート調査を実施した.そのアンケート調査からロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)の効果について検討した.その結果,LTRAを約2カ月間投与することによって,有意に喘鳴,たん,咳,夜間睡眠など喘息症状の改善が認められ,外出や夜間睡眠など保護者のQOLも向上した.また,LTRAのコンプライアンスは大変良好であった.以上のことより,小児気管支喘息に対してLTRAは,長期管理薬として有用性の高い薬剤と考えられる.
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【原著】
■題名
新生児・乳幼児に対する院内分割による輸血製剤の供給
■著者
長野県立こども病院血液・腫瘍科1),同 輸血管理室2) 福島 啓太郎1)2) 岡田 まゆみ1) 安部 マサ子1) 石井 栄三郎1)2)
■キーワード
小児輸血療法, 分割輸血製剤, 院内輸血供給体制
■要旨
新生児や乳児の場合,最小規格単位より少量を輸血することがほとんどである.当院ではこれまで輸血製剤の残血液は廃棄していた.同一輸血製剤を有効利用するとともに輸血ドナー数を減らすことを目的に,規格単位より少量の輸血を複数回必要としている場合に,院内で無菌的に輸血製剤を分割して供給した.
血液バッグ,白血球除去フィルター,3連の血液分離バッグを無菌接合装置で結合し,白血球除去をした後,MAP加濃厚赤血球液(RC-MAP)1単位を2または3分割,PC 10単位または5単位を2分割して分離バッグに入れて供給した.PCではガス交換性の高いポリオレフィン製多連分離バッグを用いた.
分割件数は月平均RC-MAPで7.8件,PCで4.5件であった.分割製剤の廃棄率はRC-MAPで26.8%,PCで34.1%にとどまった.複数回輸血を受けた新生児において,赤血球平均輸血回数6.2回に対し使用したRC-MAPは平均3.7本(平均ドナー数3.7人)で39.1%削減され,血小板平均輸血回数9.2回に対し使用したPCは平均7.6本(平均ドナー数7.6人)で17.5%削減された.廃棄血液を減らし有効利用できるばかりではなく,患者あたりのドナー数を減らせることで,血液を介した感染症のリスクや同種免疫反応などの輸血副作用を軽減できると考えられた.
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【原著】
■題名
CLCNKB変異によるBartter症候群の1例
■著者
KKR札幌医療センター1),石川こどもクリニック2),北海道大学医学部小児科3) 縄手 満1) 市川 瑞穂1) 鴨志田 久子1) 鹿野 高明1) 高橋 豊1) 石川 順一2) 田島 敏広3)
■キーワード
Bartter症候群, CLCNKB, 体重増加不良, 電解質異常, 遺伝子異常
■要旨
CLCNKB異常によるBartter症候群の3カ月女児例を経験した.責任遺伝子の1つであるCLCNKBをPCR直接シークエンス法を用いて解析した.exon 16にTGGがTGAに変異し終止コドンとなるナンセンス変異がヘテロ接合体で認められたが,もう片方のalleleの変異は同定できなかった.本症例では,インドメサシン投与開始後,電解質異常のコントロールが可能となり,成長障害も改善し,また腎石灰化の進行も認めず順調に経過した.今回同定した変異は過去に報告のない新しいものであった.CLCNKB変異が日本人に多いものかどうかは,今後さらに症例を増やして検討する必要がある.
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【原著】
■題名
短期間で便中から毒素及び菌が検出されなくなったB型ボツリヌス症の1乳児例
■著者
田附興風会医学研究所北野病院小児科 塩田 光隆 西田 仁 中川 権史 南方 俊祐 小野 麻由子 森嶋 達也 熊倉 啓 吉岡 孝和 上松 あゆ美 羽田 敦子 秦 大資
■キーワード
乳児ボツリヌス症, B型毒素, 呼吸不全
■要旨
B型乳児ボツリヌス症の日齢118の女児を経験した.発熱,咳嗽を認め気管支炎の診断のもと入院となり,抗生剤投与を開始した.翌日より解熱するも活気なく,哺乳力低下・啼泣減弱を認めた.入院3日目に嚥下障害・四肢麻痺・散瞳・深部腱反射減弱に気付かれ,急速に呼吸不全が進行し同日夕方より人工呼吸器管理を15日間必要とした.鑑別診断の1つとしてボツリヌス症を疑い,保健所に検査を依頼した.症状出現当日に浣腸にて得られた便よりB型ボツリヌス菌及び毒素が後日検出され,乳児ボツリヌス症との診断に至った.一般的に便からのボツリヌス菌及び毒素の検出期間は数カ月に及ぶとされるが,本症例では非常に短く入院10日目以降は検出されなかった.特異的治療を行わなかったが大きな合併症なく回復し,入院44日目に退院となった.時期を逸すると診断に至らない症例であり,呼吸不全への対応も含め早期診断の重要性を改めて認識させられた.
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【原著】
■題名
胸痛を契機に発見された左心室のう腫の1例
■著者
青森労災病院小児科1),さしなみ小児クリニック2) 嶋田 淳1) 大高 雅文1) 金城 学1) 差波 司2)
■キーワード
胸痛, 心臓腫瘍, 左心室のう腫, マルチスライスCT
■要旨
胸痛を契機として発見された左心室のう腫の男児例を報告した.症例は14歳男児.くり返す胸痛を主訴に小児科医院を受診し,心エコー検査にて左心室内異常陰影を指摘され当科に紹介された.理学的所見,胸部X線,心電図,血液生化学検査に異常なく,心エコーで同様に左心室内乳頭筋付着部位に直径約20 mmの円形異常陰影を認め,内部はのう胞様の低エコー輝度であった.マルチスライスCTにて,同部位に造影効果を認めない内部が均一の球状腫瘤を認め,そのCT値は0〜20 H.Uと水に近い値であった.冠動脈に走行異常はなく球状腫瘤との交通も認めなかった.以上より左心室のう腫と診断した.小児科領域では極めて稀な疾患であり,胸痛との関連も含めてきめ細かい経過観察が必要と思われた.
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【原著】
■題名
重症心身障害児(者)の気管軟化症5例の管理経験
■著者
聖隷三方原病院小児科 加藤 晋 木部 哲也 横地 健治
■キーワード
重症心身障害児(者), 気管軟化症, 喉頭気管分離術, Negative Pressure Pulmonary Edema
■要旨
重症心身障害児(者)5例に気管軟化症を認めた.3例は気管軟化症,2例が気管気管支軟化症であった.5例とも,突発的な呼吸困難のエピソードを繰り返し,時に危急的状態に陥った.いずれも気管切開孔からの気管支鏡検査により,特徴的な気道の扁平化の所見を確認する事で確定診断した.全例とも重度の胸郭変形を来たしていた事と,4例で喉頭気管分離術後であった事が共通しており,その両者は気管軟化症の危険因子と考えられた.2例において呼吸困難時のレントゲンで両側肺門部中心のびまん性陰影の所見を認めたが,その後の検討でNegative Pressure Pulmonary Edema(NPPE)の機序がもっとも合致していると考えられた.治療については,持続陽圧呼吸(CPAP)が1例,1例は気管カニューレのサイズ変更により,また2例で調節型気管カニューレを採用し,1例でY字型ステントを新たに作製して対応した.
重症心身障害児(者)の呼吸障害の原因の中で,気管軟化症は報告が少なく実態が不明確だが,早期の的確な診断と治療が児(者)の予後を著しく改善することが期待できる. |
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【原著】
■題名
大頭症,先天性血管拡張様大理石皮斑症の1例
■著者
明石市立市民病院小児科 大曽根 眞也 中林 佳信 東道 公人 野崎 友子 三宅 広和 貫名 貞之 大塚 拓治
■キーワード
大頭症, 水頭症, 過成長, 先天性血管拡張様大理石皮斑症, 発達遅滞
■要旨
症例は日齢0の男児.妊娠経過は正常で,在胎41週に経腟分娩で仮死なく出生した.出生体重4,012 g,身長53 cm,頭囲35 cm.生下時から全身の暗赤色皮斑と胸腹壁の静脈怒張を認めた.皮斑の一部は生後2週間で退色して大理石様に変化したが,一部はポートワイン母斑として残存した.生後,非閉塞性水頭症が出現し,2カ月時に脳室腹腔短絡術を施行した.その後,水頭症はコントロールされたが頭囲拡大は進行し,過成長と発達遅滞も認めている.喉頭軟化症と乳歯萌出異常も合併した.臨床像から鑑別診断を進め,大頭症,先天性血管拡張様大理石皮斑症(M-CMTC)と診断した.M-CMTCは,先天性血管拡張様大理石皮斑症(CMTC)に大頭症,水頭症,発達遅滞,過成長,四肢奇形などを合併する稀な症候群であり,結合組織の異常が想定されているが病因は不明である.2004年までに75例の報告があり,全て孤発例である.本例は本邦で2例目の報告となる.M-CMTCには特異的な検査所見はなく,診断はCMTC,大頭症を軸とした症状の組み合わせによってなされる.予後の詳細は不明であるが,不整脈を来して突然死した症例が報告されており,本例においても慎重な経過観察が必要と考えられた.
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